グループにすれば学ぶ、わけではない——協同学習の条件

グループにすれば学ぶ、わけではない

生徒を数人の班に分け、課題を与える。教室で日常的に行われるこの形式は、協同学習と呼ばれます。

この形式については、膨大な研究が蓄積されています。そして、報告されている結論は二つに分かれます。適切に設計された協同学習は、一斉授業より高い成果をもたらす。設計を欠いた集団作業は、個別学習より劣ることがある。

効果の有無が、形式ではなく設計に依存する。この点で、協同学習は連載で扱った反転授業や能力別編成と同じ構造を持ちます。「グループ学習は効くか」という問いは、答えられる形になっていません。

この記事では、何が効果を分けるのか、どのような失敗が起きるのかを整理します。

1. 何が確かめられているか

JohnsonとJohnsonらによる長年のレビューは、この領域で最も広く参照されています。数百件の研究を統合した分析で、協同的な条件が競争的・個別的な条件より高い成果を示したと報告されています。

Slavinによる一連の分析も、同様の方向を示しています。ただし、Slavinはより限定的な条件を付しました。効果が確認されるのは、集団の目標と個人の説明責任の両方が組み込まれている場合に限られるという整理です。

この条件を欠いた研究、つまり単に「グループで取り組ませた」だけの研究では、効果は小さいか確認されない。この所見は、その後のレビューでも繰り返されています。

効果量については、報告に幅があります。研究の質を統制すると効果量が縮小するという指摘、出版バイアスの可能性を示唆する分析も存在します。「協同学習は効く」という主張は、条件を明示しない限り、証拠に支えられていません。

2. 集団作業で起きる失敗

設計を欠いた集団作業で、何が起きるのか。社会心理学の研究が、複数の機構を特定しています。

社会的手抜き。集団で作業すると、一人あたりの努力量が低下する現象です。綱引きや発声の実験で古くから報告されており、認知的な課題でも確認されています。個人の貢献が識別できない状況で強く生じます。

ただ乗り。他者の成果に依存し、自分は関与しない。能力の高い成員がいる集団で起きやすい。

徒労感による撤退。ただ乗りを察知した成員が、自分も努力を減らす。集団全体の努力水準が下がる連鎖です。

分業による学習機会の喪失。効率を上げるために作業を分担すると、各自は自分の担当部分しか学びません。集団としての成果物は完成しますが、個人の学習は限定されます。成果物の質と学習量が乖離する典型例です。

地位の効果。成績や発言力によって、集団内での発言機会が不均等になります。学力の低い成員が周辺化され、参加の機会を失う。連載の能力別編成の記事で扱った、集団内での分離と同じ現象です。

これらはいずれも、努力や意欲の不足ではなく、集団という構造が生む現象です。したがって、対処も構造の側で行う必要があります。

3. 効果を分ける条件

研究が特定してきた条件を整理します。

肯定的な相互依存。各成員の成功が、他の成員の成功に依存する構造。資源を分割して配る、役割を分ける、集団としての目標を設定する、といった方法で作ります。

個人の説明責任。各成員が個別に評価される仕組み。集団の成果物だけを評価すると、ただ乗りが成立します。個別のテスト、無作為に指名しての説明、個人の担当箇所の明示などが用いられます。

この二つは、どちらか一方では機能しません。相互依存だけなら、ただ乗りが生じます。説明責任だけなら、集団で取り組む理由がなくなります。両方が同時に必要だという点が、この領域の中心的な所見です。

対面での相互作用。説明する、質問する、反論するといったやりとりが生じる配置と時間。

協同の技能の指導。話し合いの進め方、意見の求め方、反論の仕方。これらが自然に備わっていることを前提にしない。

集団の振り返り。作業の進め方について、集団として検討する時間を設ける。

4. なぜ効くのか

効果の機構について、いくつかの説明が提出されています。

説明することによる効果。他者に説明するには、内容を再構成する必要があります。この処理が、説明する側の理解を深める。複数の研究で、説明を与えた成員の学習量が最も大きいことが報告されています。

この所見には注意すべき含意があります。学力の高い成員が説明役になる構造では、最も学ぶのが、最も学ぶ必要の小さい成員になる。役割を固定しない設計が要る理由です。

認知的葛藤。異なる考えに触れることで、自分の理解の不整合が露呈する。連載の数学の記事で扱った誤概念の議論と接続します。誤った理解は、対立する情報に直面したときに修正の機会を得ます。

検索練習としての効果。話し合いの中で内容を思い出して述べる行為は、想起の試行です。連載の検索練習の記事で扱った機構が、副次的に働きます。

動機づけの経路。集団への関与が、課題への関与を高める。連載の動機づけの記事で扱った関係性の欲求に対応します。

5. 構造化された方式

条件を満たすように設計された具体的な方式が、いくつか開発されています。

ジグソー法。教材を分割し、各成員が異なる部分を担当する。同じ部分を担当する成員どうしで集まって理解を深めた後、元の集団に戻って互いに教え合う。各成員が固有の情報を持つため、相互依存が構造的に成立します。

この方式は、もともと人種統合が進む学校での集団間の緊張を緩和する目的で開発されました。学習成果への効果については、報告に幅がありますが、集団内の関係性の指標については比較的一貫した結果が報告されています。

集団の成果に基づく個別評価。個々人が個別にテストを受け、その伸びを集団の得点として合算する方式。個人の説明責任と集団目標を同時に満たします。Slavinが効果を報告した方式の中心です。

相互教授。要約、質問生成、明確化、予測という四つの活動を、順番に担当しながらテキストを読む方式。読解指導の文脈で開発され、効果が報告されています。連載の読解の記事で扱った方略指導の一形態です。

これらに共通するのは、相互作用の内容と順序が指定されている点です。「話し合いなさい」という指示だけでは、この構造は生じません。

6. 集団は認知負荷を分散させるか

協同学習を、認知負荷の枠組みから検討した研究があります。

この視点では、集団は一種の情報処理システムとして扱われます。各成員の作業記憶を合わせた容量が使えるため、個人では処理しきれない課題を扱えるという利点が想定されます。

一方、集団で作業するには、成員間の調整という追加の負荷が生じます。誰が何をするかの決定、意見の伝達、不一致の処理。これらは課題そのものとは別の処理です。

この枠組みからは、明確な予測が導かれます。課題の負荷が高いときは、容量を合算する利点が調整の負荷を上回り、集団が有利になる。負荷が低いときは、調整の負荷だけが残り、個人作業が有利になる。

実験による検証でも、この予測に沿う結果が報告されています。単純な課題では個別学習の成績が高く、複雑な課題では協同学習の成績が高いという交互作用です。

実務的な含意は直接的です。単純な反復練習を集団でやらせる設計は、根拠が乏しい。計算練習や語彙の暗記のような課題は、個人で行うほうが効率的です。集団の形式が向くのは、複数の情報を統合する必要がある課題、解法が複数ありうる課題、判断の根拠を言語化する必要がある課題です。

連載の認知負荷の記事で扱った、初学者と熟達者で最適な支援が逆転するという論点も、ここに関わります。その課題が誰にとって高負荷なのかによって、同じ形式の評価が変わります。

7. 対面でない場合

集団学習を対面以外で行う形式についても、検討が進んでいます。

報告されている所見の一つは、非同期の形式では相互作用の密度が下がりやすいことです。書き込みが並置されるだけで、互いの内容に応答しない状態が生じます。

対処として検討されているのは、応答を構造的に要求する設計です。他者の投稿の要約を求める、反論を一つ書かせる、疑問を提示させる。連載を通じて繰り返し現れる原則——行動の水準で指示する——が、ここでも当てはまります。

同期的な形式では、対面との差は小さくなりますが、発言の重なりや沈黙の扱いが異なるため、参加の不均等が生じやすいという指摘があります。発言順を指定する、記録役を交代させるといった操作が検討されています。

いずれの形式でも、効果を分ける条件は変わりません。相互依存と個別の説明責任という二つの要件は、媒体によらず必要です。媒体の議論が、設計の議論を置き換えてしまうことが、この領域でよく起きる混乱です。

8. 集団の構成

誰と組ませるかについては、明確な結論が出ていません。

学力が異なる成員で構成する方式では、説明の機会が生じやすい一方、役割が固定されやすい。学力が近い成員で構成する方式では、対等な議論が生じやすい一方、誤りが修正されない場合がある。

報告されている所見として、中位層は異質な集団で不利になりやすいという分析があります。上位層は説明役として、下位層は支援の受け手として明確な役割を得ますが、中位層は関与が曖昧になる。

人数についても検討があります。人数が増えるほど社会的手抜きが起きやすくなるため、小さい集団のほうが参加の機会が確保されます。2名から4名程度が推奨されることが多い。

いずれも、決定的な証拠があるわけではありません。連載の能力別編成の記事で述べたとおり、構成を変えれば相互作用の仕方も変わるため、観察された関係をそのまま政策の予測に使うことはできません。

9. 設計に落とす

実務に翻訳します。

個別の評価を必ず組み込む。集団の成果物だけを評価しない。無作為に指名して説明させる形式は、費用がかからず効果が確認されています。

役割を固定しない。説明する役が最も学ぶ以上、その役を交代させる必要があります。

分担ではなく相互依存にする。作業を分けて合体させる形式は、効率的ですが学習量を減らします。全員が全体を理解する必要がある構造にする。

話し合いの中身を指定する。「相談しなさい」ではなく、「相手の解法を聞いて、どこが違うかを述べる」のように、行動の水準で指示する。

課題の負荷で形式を選ぶ。単純な反復は個人で、複数の情報の統合や解法の比較は集団で。低負荷の課題を集団でやらせる設計には根拠がありません。

集団の規模を小さくする。人数が増えるほど、参加しない成員が生じます。

協同の前に個人で取り組む時間を置く。各自が自分の考えを持ってから集まるほうが、相互作用の内容が濃くなります。いきなり集団で始めると、発言力の強い成員の案に収束しやすい。

もう一点、教室で見落とされやすい論点があります。集団作業に要する時間です。

同じ内容を扱う場合、集団での活動は個人での活動より時間がかかります。調整、発言の順番待ち、脱線への対応が加わるためです。したがって、成果を比較するときは、投入された時間を揃えているかを確認する必要があります。

時間を揃えずに比較した研究では、集団のほうが多くの時間を使っている場合があります。その場合、観察された差は形式の効果ではなく、時間の効果を含みます。連載の教育技術の記事で扱った「置き換えなのか追加なのか」という論点と、同じ構造です。

実務的には、集団で扱う内容を選ぶ必要があります。時間あたりの学習量で見れば、多くの内容は個人で扱うほうが効率的です。集団に回すべきなのは、個人では生じない処理——他者の考えとの照合、説明の産出、反論への応答——が必要な内容に限られます。

この選別を行わずに形式を導入すると、活動は活発でも学習量が伸びないという結果になります。連載のアクティブラーニングの記事で扱った、活動の量と学習量の乖離が、ここでも現れます。

10. 証拠の限界

留保を述べます。

第一に、この領域の研究は実施者が方式の開発者である場合が多く、利益相反の影響を否定できません。

第二に、効果量の報告に幅が大きく、研究の質を統制すると縮小するという指摘があります。

第三に、実装の忠実度が測られていない研究が多い。「協同学習を実施した」と記述されていても、条件を満たしていたかは確認できません。

第四に、比較の相手が明示されていない研究があります。何と比べて効果があったのかが不明な場合、効果量の解釈はできません。

まとめ

グループで学習させること自体には、効果がありません。効果を分けるのは設計です。研究が一貫して特定してきた条件は二つ——成員どうしの成功が結びついていることと、各成員が個別に評価されること。どちらか一方では機能しません。

設計を欠いた集団作業では、社会的手抜き、ただ乗り、分業による学習機会の喪失、地位による周辺化が生じます。これらは意欲の問題ではなく、集団という構造が生む現象であり、構造の側で対処する必要があります。

効果の機構として最も明確なのは、説明することによる効果です。ただしこれは、説明役が最も学ぶことを意味します。役割が固定される設計では、最も学ぶ必要の小さい成員が最も学ぶという逆転が起きます。

実務で効くのは、形式の導入ではなく、個別評価の組み込み、役割の交代、話し合いの中身の指定、個人作業を先に置くことです。いずれも追加の費用をほとんど要しません。

主な参照研究

  • Johnson, D. W., & Johnson, R. T. (1989, 2009). Cooperation and Competition / An educational psychology success story: Social interdependence theory.
  • Slavin, R. E. (1996). Research on cooperative learning and achievement: What we know, what we need to know.
  • Aronson, E., et al. (1978). The Jigsaw Classroom.
  • Palincsar, A. S., & Brown, A. L. (1984). Reciprocal teaching of comprehension-fostering and comprehension-monitoring activities.
  • Karau, S. J., & Williams, K. D. (1993). Social loafing: A meta-analytic review and theoretical integration.
  • Webb, N. M. (1989, 2009). Peer interaction and learning in small groups / The teacher’s role in promoting collaborative dialogue.
  • Kirschner, F., Paas, F., & Kirschner, P. A. (2009). A cognitive load approach to collaborative learning.
  • Cohen, E. G. (1994). Restructuring the classroom: Conditions for productive small groups.

教育学・認知心理学・社会心理学・行動経済学・教育経済学の研究をもとにした連載です。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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