内申点は「態度が良ければ上がる」ものではない
内申点について、家庭で語られる説明は曖昧なことが多くあります。「先生に気に入られると上がる」「発言すれば上がる」といったものです。
実際の評定は、観点別評価という仕組みに基づいてつけられています。何を見て評価するかは学習指導要領で定められており、その観点は各教科で共通です。仕組みを知れば、何をすればよいかも具体的になります。
なお、評定の具体的な運用は学校ごと・教科ごとに違います。この記事は仕組みの型を説明するもので、通っている学校での実際の扱いは、必ず学校配布の資料や面談で確認してください。
1. 観点別評価の3つの観点
現行の学習指導要領では、各教科の評価が次の3観点で行われます。
- 知識・技能——覚えているか、できるか。
- 思考・判断・表現——知識を使って考え、説明できるか。
- 主体的に学習に取り組む態度——学習を調整しながら粘り強く取り組んでいるか。
この3つがそれぞれA・B・Cで評価され、その組み合わせから5段階の評定が決まります。つまり評定はテストの点だけで決まっていません。
3番目の観点は、かつての「関心・意欲・態度」と混同されがちですが、内容は変わっています。挙手の回数や熱心さの印象ではなく、自分の学習を振り返って調整しているかを見る観点です。振り返りシートや学習記録が評価材料になるのは、このためです。
2. 何が評価材料になるか
教科によって違いますが、一般的には次のものが材料になります。
| 材料 | 主に関わる観点 |
|---|---|
| 定期テスト | 知識・技能/思考・判断・表現 |
| 小テスト | 知識・技能 |
| ワーク・課題の提出 | 知識・技能/主体的に取り組む態度 |
| レポート・作文・発表 | 思考・判断・表現 |
| 振り返りシート・学習記録 | 主体的に取り組む態度 |
| 実技(実技4教科) | 知識・技能 |
ここで見落とされやすいのが小テストです。1回あたりの重みは小さくても、回数が多いため合計では大きくなります。定期テストは年に4〜5回ですが、小テストは何十回もあります。
また、提出物は「出したかどうか」だけでなく中身も見られます。答えを写しただけのワークと、間違えた問題に印をつけて解き直したワークでは、評価が変わり得ます。
3. 実技4教科の重み
都立高校の一般入試では、調査書点を算出する際に実技4教科(音楽・美術・保健体育・技術家庭)の評定を2倍して計算する方式が採られています。制度の詳細は年度・自治体によって異なるため必ず確認が必要ですが、実技教科の重みが主要5教科より大きいという点は押さえておく価値があります。
ところが、塾に通う生徒の多くは主要5教科に時間を使い、実技教科は「やらない」状態になりがちです。ここが、内申点でもっとも取りこぼしが起きる場所です。
実技教科で評定を落とさないために
- 提出物を必ず出す——実技教科は提出物の比重が高い傾向があります。
- 筆記テストを軽視しない——実技教科にも定期テストがあり、暗記で取れる部分が大きい。ここは投入時間に対する効果が高い領域です。
- 実技そのものが苦手でも、他の要素で補える——運動が苦手でも、保健の筆記と提出物で評価は動きます。
実技教科の筆記テストは、範囲が狭く暗記中心です。数時間の勉強で評定が1つ上がることがある領域で、しかもそれが2倍で計算されます。優先順位としてはかなり高いはずですが、実際には後回しにされています。
4. 「主体的に取り組む態度」で見られていること
この観点は、印象で決まるものではありません。文部科学省の説明では、次の2つの側面を見るとされています。
- 粘り強い取組を行おうとする側面
- 自らの学習を調整しようとする側面
2番目が重要です。できなかったことに気づき、やり方を変えているかを見ています。したがって、振り返りシートに「頑張ります」と書いても評価されません。
評価されるのは、次のような記述です。
- 「前回は用語を覚えるだけだったので、今回は図と結びつけて覚えるようにした」
- 「計算ミスが多かったので、途中式を省略せずに書くようにした」
- 「時間が足りなかったので、解く順番を変えて取り組んだ」
共通しているのは、前回の課題→やり方の変更→結果という構造です。この型で書けば、観点に沿った記述になります。
これは小手先の技術ではなく、実際に学習を改善するための思考でもあります。書くために振り返ると、本当に改善が起きます。
5. 「学ぶ態度」の扱いは変わる方向にある
ここまで3観点の話を書いてきましたが、この枠組み自体が見直される方向にあります。
次期学習指導要領の検討において、「主体的に学習に取り組む態度」を評定の対象から外す方針が示されたと報じられています。適用は2030年ごろとされます。
確認のお願い:制度改正は検討段階を含み、内容も時期も変わり得ます。お子さんの学年にいつから適用されるかは、学校や教育委員会の案内で確認してください。
なぜ見直されるのか
この観点は、導入当初から「何をどう評価しているのかが分かりにくい」という指摘がありました。振り返りシートの書きぶりで差がつくのか、実際の学習改善を見ているのか、判断が教員ごとにぶれやすい構造があったためです。
評価される側から見ても、何をすれば上がるのかが読みにくい観点でした。テストの点や提出物と違い、基準が外から見えません。
何が変わり、何が変わらないか
| 見通し | |
|---|---|
| 知識・技能 | 引き続き評価される。テスト・小テストの比重は変わらない。 |
| 思考・判断・表現 | 引き続き評価される。記述・レポート・発表。 |
| 主体的に取り組む態度 | 評定の対象から外れる方向。ただし所見等での記録は残り得る。 |
| 提出物 | 「態度」からは外れても、知識・技能の材料としては残る。 |
誤解しやすいのは、「提出物を出さなくてよくなる」わけではないという点です。提出物は複数の観点にまたがる材料であり、出さなければ評価材料そのものが失われます。
今の受験学年はどうすべきか
現行の枠組みで評価される学年は、今の3観点で動くと考えてください。制度が変わるのは先の話であり、いま評定を受けている生徒には適用されません。
一方、下の学年の家庭にとっては、「振り返りシートの書き方で評定を上げる」という発想の賞味期限が見えているということでもあります。長い目で見れば、学力そのものと提出物の中身に力を向けるほうが確実です。
6. 成績が動く時期
評定は学期ごと、あるいは年間でつきます。中学3年生の場合、高校入試に使われるのは3年生の評定であることが一般的です(自治体・学校により異なるため要確認)。
ここから逆算すると、次のようになります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 中1〜中2 | 学習習慣と提出物の習慣をつくる。評定の仕組みを理解する。 |
| 中3 1学期 | ここから本番。実技教科を含めて全教科に手を入れる。 |
| 中3 2学期 | 入試に使われる評定が固まる時期。もっとも重要。 |
中3の2学期に慌てても、間に合う部分は限られます。提出物の習慣や小テストの積み上げは、その時期には結果が出てしまっています。中2の段階で仕組みを理解しておくことに、実務的な価値があります。
7. 学校に確認すべきこと
上に書いたのは仕組みの型であって、実際の運用は学校ごとに違います。次のことは、面談や配布資料で確認する価値があります。
- 各教科で、3観点の評価材料が具体的に何か
- 定期テストと提出物・小テストの重みの目安
- 評定の算出時期(学期ごとか、年間の累積か)
- 提出物の締切遅れがどう扱われるか
多くの学校では、年度初めに教科ごとの評価規準が配布されています。これを読んでいる家庭は多くありません。読むだけで、何をすれば評定が上がるかがかなり具体的になります。
8. 高校生の場合
高校でも評定はつき、大学入試の学校推薦型選抜や総合型選抜で使われます。指定校推薦では評定平均が出願条件になることが一般的です。
ここで押さえておくべきは、評定平均は高1から高3の1学期までの累積で計算されるのが通例だという点です(大学・高校により異なるため要確認)。つまり高1の成績がそのまま残ります。
高1の段階では、まだ進路が決まっていないことが多くあります。「推薦は使わない」と思って評定を落としておくと、後から選択肢が消えます。逆に評定を確保しておけば、一般選抜と推薦の両方を残せます。
当塾が高1の生徒に伝えているのは、「進路が決まっていないうちは、選択肢を消さない」ということです。高1の評定を確保しておくコストは、後から取り返すコストよりはるかに小さくなります。
9. よくある質問
テストの点は良いのに評定が上がりません
提出物か、主体的に取り組む態度の観点で落としている可能性があります。テストで9割取っていても、提出物が未提出なら評定は上がりません。まず提出状況を確認してください。
先生との相性が悪いと不利になりますか
観点別評価は評価材料に基づくものであり、印象で決まる仕組みにはなっていません。ただし、提出物の中身や授業中の取り組みが材料になる以上、関わり方が結果に影響しないとは言えません。確認すべきは、自分の提出物と小テストが評価規準に照らしてどうかという点です。不明なら教科の先生に直接聞くのが早く、それ自体が「学習を調整しようとする姿勢」でもあります。
実技教科を頑張る時間がありません
実技の練習ではなく、提出物と筆記テストに絞ってください。この2つは短時間で対応でき、評定への影響が大きい部分です。実技そのものの上達は、優先順位としては下がります。
一度下がった評定は戻りますか
学期ごとに評価される仕組みであれば、次の学期で取り戻せます。ただし年間の累積で見る場合は影響が残ります。どちらの方式かを学校に確認することが、次の一手を決める前提になります。
当塾の立場
内申点について当塾が保護者に伝えているのは、「テストの点だけを見ていると取りこぼす」という一点です。塾でできるのはテストの点を上げることですが、評定はそれだけで決まりません。
とくに実技4教科は、塾の範囲外でありながら入試での重みが大きい領域です。ここについては、当塾は指導しません。しかし優先順位として高いことは伝えます。塾が教えられない領域だから触れない、というのは家庭にとって不利益になります。
提出物の管理や振り返りシートの書き方も、塾の主業務ではありません。ただし、生徒の状況を見て手が回っていないと分かれば指摘します。成績を上げるという目的から見て必要なら、範囲外でも言うという立場を取っています。
まとめ
- 評定は3観点(知識・技能/思考・判断・表現/主体的に取り組む態度)で決まる。
- テストだけでなく、小テスト・提出物・振り返りが材料になる。
- 都立一般入試では実技4教科が2倍で計算される(制度は要確認)。取りこぼしが起きやすい。
- 実技教科の筆記は投入時間に対する効果が高い。
- 「主体的に取り組む態度」は課題→やり方の変更→結果の型で示す。
- ただしこの観点は2030年ごろに評定の対象から外れる方向とされる(要確認)。提出物の重要性は変わらない。
- 学校配布の評価規準を読むだけで、やることが具体化する。
- 地域差もある。武蔵野市のように付け方が分かりにくいという声が出ている自治体もあり、面談で具体的に聞く価値がある。
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