「読解力がない」で終わらせない
現代文の成績が上がらないとき、家庭でも学校でも「読解力がない」という言葉で説明されがちです。しかしこの言葉は、何をすればよいかを何も指していません。
当塾で現代文の答案を実際に見ていくと、点が取れない原因はいくつかの具体的な場所に分かれます。そして、そのどれに当たるかで打つ手がまったく違います。この記事では、原因の切り分け方と、それぞれの手当てを書きます。
1. 失点の原因は5つに分かれる
- 語彙が足りない——本文の単語の意味が分からない。
- 文の構造が取れない——一文が長いと主語と述語を見失う。
- 段落どうしの関係が見えない——どこが主張でどこが具体例か分からない。
- 設問の指示に答えていない——内容は分かっているのに答え方がずれる。
- 記述の書き方を知らない——言いたいことはあるが文にならない。
この5つは階層になっています。下の層が崩れていると、上の層をいくら練習しても点になりません。語彙が足りない生徒に記述の型を教えても、書く材料が本文から拾えないので書けません。
だから最初にやるのは、どの層で止まっているかの特定です。順番を飛ばすと時間を失います。
2. 語彙——現代文の語彙は「日常語」ではない
現代文で出る語には、日常会話ではほとんど使わないものが多く含まれます。「抽象/具体」「普遍/特殊」「相対化」「必然」「恣意的」「アイロニー」といった語です。
これらは知らなければ絶対に読めません。文脈から推測できる、というのは半分は本当ですが、こうしたキーワードが本文の主張そのものを担っている場合、推測では届きません。
手当て
現代文単語の問題集を1冊、繰り返します。英単語と違って冊数は要りません。1冊を3周するほうが、3冊を1周するより確実に残ります。
確認の仕方も重要です。意味を言えるかではなく、その語を使って一文が作れるかで確かめてください。「恣意的とはどういう意味か」に答えられても、使えなければ本文中で機能しません。
3. 文の構造——一文が長いときの読み方
評論の一文は、しばしば80字を超えます。修飾が重なり、挿入句が入り、主語と述語が遠く離れます。ここで迷子になる生徒は多くいます。
手当て
やることは単純で、主語と述語に印をつけることです。長い一文を読んだら、「何が」「どうした」の2つだけを取り出す。修飾はいったん捨てます。
これを50文もやると、修飾を飛ばして骨組みを取る動きが習慣になります。塾の授業で当塾がよく使う手も、この地味な作業です。テクニックではなく、単純な反復で身につく部分です。
「読むのが遅い」という相談の多くは、実は速く読めないのではなく、一文の中で何度も戻っていることが原因です。骨組みを取れるようになると、戻る回数が減り、結果として速くなります。
4. 段落の関係——本文は「主張」と「支え」でできている
評論文は、主張とその支え(具体例・データ・対比・引用)でできています。設問で問われるのは、ほとんどの場合主張のほうです。
ところが、具体例のほうが読みやすく印象に残るため、そちらを答えてしまう生徒がいます。「筆者の考えを説明せよ」に対して具体例を書いてしまうのは、この取り違えです。
手当て
段落の頭に、その段落が何をしているかを一言で書き込みます。「主張」「例」「反論の紹介」「言い換え」など。5〜6語で足ります。
この作業をすると、本文の構造が図になります。そして「例」と書いた段落は設問の答えにならないという判断が自動的に働くようになります。
接続語も手がかりです。「しかし」「つまり」「たとえば」「むしろ」——これらの後ろが主張なのか支えなのかは、語ごとにほぼ決まっています。とくに「つまり」の後ろは筆者の言いたいことである確率が高く、設問の答えがそこにあることが多くあります。
5. 設問——聞かれていることに答える
内容は理解しているのに点にならない生徒がいます。この場合、原因は本文側ではなく設問側にあります。
「どういうことか」と「なぜか」は違う問いです。前者は言い換えを求めており、後者は理由を求めています。「なぜか」に対して言い換えを書けば、内容が正しくても0点です。
| 問いの形 | 求められているもの | 文末 |
|---|---|---|
| どういうことか | 傍線部の言い換え・具体化 | 〜ということ。 |
| なぜか | 理由 | 〜から。/〜ため。 |
| どのような気持ちか | 心情とその根拠 | 〜という気持ち。 |
| 説明せよ | 要素を漏らさず示す | 問いに合わせる |
手当て
解き始める前に、答案の文末を先に書く。これだけで設問のずれはかなり減ります。「〜から。」と先に書いてしまえば、理由以外を書きようがなくなります。
当塾の授業では、答案を書かせる前にこの文末だけを口頭で言わせることがあります。ここで詰まる生徒は、そもそも何を問われているかを掴んでいないので、本文に戻る前に設問を読み直させます。
6. 記述——採点されるのは要素
記述問題の採点は、感想の良し悪しではありません。必要な要素が入っているかで点がつきます。多くの場合、要素は2〜4個です。
つまり記述は、作文ではなく要素の回収作業です。本文から必要な要素を拾い、指定字数に収まるようにつなぐ。この手順を持っていない生徒は、書き出しから悩んで手が止まります。
手当て
- 傍線部を分解する——傍線部の中の語句のうち、説明が必要なものに印をつける。
- それぞれの説明を本文から探す——傍線部の前後3〜5行にあることが多い。
- 拾った要素を並べる——この時点ではメモでよい。
- 設問に合う文末でつなぐ——ここで初めて文にする。
字数配分の目安も持たせます。60字なら要素2つ、100字なら3つ、といった具合です。字数が要素の数を教えてくれるので、字数を見てから本文に戻るのが順序として正しくなります。
7. 小説と評論は別の科目だと思ってよい
評論が得意で小説が苦手、あるいはその逆という生徒は多くいます。読み方が違うからです。
小説で問われるのは心情ですが、答えるべきは「本文に根拠のある心情」です。自分がその状況ならどう思うか、ではありません。行動・情景描写・会話——本文に書かれた事実から、心情を逆算します。
ここを取り違えている生徒は、共感力が高いほど外します。「私ならこう思う」が邪魔をするからです。手当てはひとつで、答案の要素それぞれについて、本文の何行目が根拠かを言わせること。言えない要素は書かせません。
8. 時間配分は最後に整える
「時間が足りない」という相談を早い段階で受けますが、ここに手をつけるのは最後です。上の1〜6が整っていないうちに速く読む練習をしても、雑に読む癖がつくだけです。
骨組みを取る読み方が身につけば、速度は自然に上がります。そのうえで、本文を読む時間と設問に答える時間を分けて計ると、どちらで時間を失っているかが分かります。設問側で時間を失っているなら、原因は5番(設問の読み違え)です。
9. 音読が効く場面と、効かない場面
現代文の勉強法として音読を勧められることがあります。当塾の見立てでは、音読が効くのは2番(文の構造)で止まっている生徒です。声に出すと、意味の切れ目で自然に間が入るため、修飾のかたまりが体感で分かるようになります。
逆に、1番(語彙)で止まっている生徒に音読をさせても効果は薄くなります。読めない語をそのまま音にしているだけで、意味は通っていないからです。この場合は先に語彙をやります。
4番・5番(設問と記述)で止まっている生徒にも、音読は直接には効きません。ここは答案を書いて添削を受ける以外に道がありません。勉強法は「よい/悪い」ではなく、どの層の生徒に効くかで選ぶものです。万能の方法はありません。
10. 過去問をいつ始めるか
過去問は、実力を測る道具であって、実力をつける道具ではありません。したがって解ける状態になってから使うのが基本です。
とはいえ、志望校の問題形式を早めに知っておく価値はあります。当塾では次のように分けています。
| 時期 | 過去問の使い方 |
|---|---|
| 早い時期 | 1年分だけ見る。解かなくてよい。記述の字数・設問数・本文の長さを確認する。 |
| 基礎が固まった段階 | 時間を計らずに解く。1問ずつ、なぜその答えかを説明できるまで詰める。 |
| 直前期 | 時間を計って通しで解く。ここで初めて時間配分を調整する。 |
もっとも避けたいのは、実力が足りない段階で過去問を大量に消費してしまうことです。過去問の在庫は限られています。解ける状態になったときに残っていなければ、本番形式での確認ができません。
また、解いた後の処理のほうが重要です。答え合わせをして丸をつけるだけなら、やらないほうがましです。間違えた設問について、上の5つのどこで落としたのかを毎回分類してください。同じ層で繰り返し落としているなら、そこが今の課題です。
当塾の立場
現代文は「センスの科目」と言われることがあります。当塾はその見方を取りません。上に書いたとおり、失点の原因は特定でき、それぞれに手当てがあります。
ただし、正直に書いておくと現代文は成績が動くまでに時間がかかる科目です。語彙と構造の層から積み直す場合、数か月単位で見る必要があります。1か月で偏差値が10上がるという話を当塾はしません。
個別指導でこの科目を扱う利点は、答案を1枚ずつ見て、5つのどこで止まっているかを特定できる点にあります。集団授業では解説はできても、その生徒がどこで詰まったかまでは追い切れません。逆にいえば、答案を見ずに進む個別指導なら、集団と変わりません。
まとめ
- 「読解力がない」を、語彙・構造・段落・設問・記述の5つに分解する。
- 下の層から順に手を打つ。飛ばすと時間を失う。
- 長い一文は主語と述語だけ取り出す練習で読める。
- 設問は文末を先に書くとずれが減る。
- 記述は作文ではなく要素の回収。字数が要素の数を教えてくれる。
- 小説は共感ではなく本文の根拠から心情を逆算する。
- 時間配分は最後。先に読み方を直す。
関連記事
この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。
記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。
当塾について
武蔵野個別指導塾は武蔵境駅から徒歩30秒の完全個別指導塾です。高校生コース、授業料のご案内、よくあるご質問に、指導の進め方と費用をまとめています。実際に通われた方の声は合格者の声をご覧ください。ご相談・体験のお申し込みはお問い合わせから承ります。
