英検を大学入試でどう使うか——4つの使われ方と確認すべき6項目

英検を「持っているだけ」で終わらせている家庭が多い

英検を取っている高校生は珍しくありません。しかし、その級を大学入試でどう使えるかを正確に把握している家庭は、当塾が面談してきた範囲では多くありません。

英語外部検定の入試利用には、大きく分けて4つの使われ方があります。このうち「加点」しか知らないまま出願校を決めてしまうと、使えたはずの制度を丸ごと逃します。

以下は制度の型の説明です。具体的な条件は大学・学部・方式ごとに違い、毎年変わります。最終的には必ず各大学の募集要項で確認してください。ここで書くのは「何を探せばよいか」です。

1. 英語外部検定の4つの使われ方

(1) 出願資格

「英検◯級以上を持っていること」が出願の条件になっている方式です。持っていなければそもそも受験できません。

これがもっとも重い使われ方です。高3の秋に志望校を決めてから慌てても、受検日程が間に合わないことがあります。出願資格型を狙うなら、高2のうちに取り終えておくのが安全です。

(2) 得点換算(みなし得点)

英語の試験を受けたうえで、外部検定のスコアに応じて英語の得点を一定点に置き換える方式です。「みなし満点」という言い方をする大学もあります。

これは効き方が大きい制度です。英語が満点扱いになれば、本番で英語に使うはずだった時間と労力を他科目に回せます。英語が得意な生徒にとっては、実質的に受験科目が1つ減るのに近い効果があります。

(3) 加点

総得点に一定点を足す方式です。もっともよく知られていますが、加点幅は大学により幅があり、数点から数十点まで差があります。加点が小さい場合、合否への影響は限定的です。

(4) 試験免除

英語の個別試験そのものを受けなくてよくなる方式です。当日の受験科目が減るため、試験日の負担が直接軽くなります。連続受験が続く時期には、この差は想像以上に大きくなります。

「英検を持っていると有利」という漠然とした理解では、(2)と(4)を見落とします。この2つがもっとも実利が大きい使われ方です。

2. 募集要項で確認すべき6項目

使えるかどうかは、次の6つで決まります。ひとつでも外すと使えません。

  1. 対象の検定は何か——英検だけか、TEAP・GTEC・TOEFL・IELTSなども対象か。
  2. どのスコアが基準か——「級」なのか「CSEスコア」なのか。近年はCSEスコアで指定する大学が増えています。級は取れていてもスコアが足りないということが起こります。
  3. 取得時期の有効期間——「出願日から遡って2年以内」といった条件が一般的です。中学時代に取った級が使えないことがあります。
  4. 受検方式の指定——従来型、S-CBT、準会場など、認められる方式が限定されることがあります。
  5. どの入試方式で使えるか——一般選抜、共通テスト利用、総合型選抜、学校推薦型で扱いが違います。同じ大学でも方式ごとに別物と考えてください。
  6. 証明書の提出方法と締切——原本提出が必要な場合、発行に日数がかかります。

とくに2番目のCSEスコアは要注意です。英検の合否は級で出ますが、大学が見るのはCSEスコアであることが増えています。「2級に合格した」と「CSEスコアが基準に届いている」は別の話です。合格していてもスコアが基準未満なら使えません。

3. CSEスコアの考え方

英検のCSEスコアは、級をまたいで同じ尺度で英語力を表す指標です。技能ごと(Reading・Listening・Writing・Speaking)にスコアが出て、合計が総合スコアになります。

ここで実務上重要なのは、各技能のスコアに上限があるという点です。受検した級によって各技能で取れる最大値が決まっているため、上位級を受けないと届かないスコア帯があります。

つまり「準2級で高得点」より「2級で合格ライン」のほうがCSEスコアが高くなる、という状況が生じます。基準スコアから逆算して、受ける級を決めるのが正しい順序です。何級を取るかではなく、何点必要かから考えてください。

4. 技能ごとの伸ばし方が違う

CSEスコアを上げるには、どの技能で失点しているかを特定する必要があります。当塾で見ている範囲では、日本の高校生がスコアを落とす場所には偏りがあります。

Writing

もっとも短期間で上がりやすい技能です。英検のライティングは形式が決まっているため、構成のテンプレートを身につけるだけでスコアが動きます。「主張→理由2つ→まとめ」という型を守り、語数を過不足なく収める。これだけで採点基準の複数項目を満たせます。

逆にいえば、対策していない生徒がもっとも損をしている技能でもあります。

Speaking

練習量がそのまま出ます。話す内容の質より、沈黙しないこと質問に答えていることが先です。難しい構文を使おうとして詰まるより、簡単な文で答え切るほうがスコアが安定します。

Reading

語彙で決まる部分が大きい技能です。ここは時間がかかります。英語長文が読めない理由に詳しく書きましたが、語彙が不足したまま読解テクニックだけを練習しても伸びません。

Listening

音と文字が結びついていない場合、聞き取れません。単語を「読めるが聞き取れない」状態の生徒は多く、この場合は音読と、音声を聞きながらの黙読で結びつけるところから始めます。

5. いつ取るべきか

逆算すると、次のようになります。

時期 やること
高1 志望校の候補を粗く決め、英語外部検定の扱いを調べる。必要スコアを把握する。
高2前半 目標スコアに向けて受検を開始。1回で決めない前提で計画する。
高2後半〜高3前半 基準に届くまで再受検。ここまでに取り終えるのが安全。
高3後半 証明書の準備と出願。ここで新規取得を目指すのは間に合わないことが多い。

英検は年に複数回あり、S-CBTを併用すればさらに受検機会が増えます。1回で決めようとしないことが現実的な計画です。何度か受けて最高スコアを使う、という前提で組んでください。

6. よくある取りこぼし

  • 中学時代に取った級が有効期限外——「2年以内」の条件で使えないケース。
  • 級は取れたがCSEスコアが基準未満——合格=使えるではありません。
  • 方式の指定を見落とす——S-CBT不可の大学で、S-CBTしか受けていなかった。
  • 使える方式を勘違い——一般選抜では使えるが、共通テスト利用では使えない、など。
  • 証明書の発行が締切に間に合わない——出願直前の受検は、この危険があります。

これらはすべて、募集要項を1回読めば防げるものです。にもかかわらず毎年起こります。理由は、募集要項を読むのが高3の秋になるからです。高1のうちに一度読んでおくだけで、取れる選択肢が変わります。

7. 費用と回数の現実

英検は受検料がかかります。級が上がるほど高くなり、S-CBTは従来型と料金体系が異なります。年に何度も受ければそれだけ積み上がります。

ここで家庭が判断を迷うのは「あと1回受けるか」という場面です。判断の基準は単純で、次の受検までに、スコアを動かすだけの練習ができるかどうかです。何も変えずに再受検しても、スコアはほぼ同じところに戻ります。

前回の技能別スコアを見て、どこで何点足りないかを特定し、その技能に手を打ってから受ける。これができないうちに回数だけ重ねるのは、費用と時間の両方を失います。

逆に、Writingの型を身につける・Speakingの受け答えを10回練習する、といった具体的な手当てを挟めば、次の受検で動く可能性は十分にあります。受検の間隔は「練習の期間」として設計するものです。

8. 英検だけが選択肢ではない

大学によっては、TEAP・GTEC・TOEFL iBT・IELTS・ケンブリッジ英検なども対象にしています。それぞれ問題の性質が違うため、生徒によって取りやすい検定が違います。

  • TEAP——大学入試を想定した出題。アカデミックな題材に慣れている生徒に向きます。
  • GTEC——学校で団体受検している場合、追加の手間なくスコアが手元にあることがあります。すでに持っているスコアを確認せずに英検を受け直すのは無駄になり得ます。
  • TOEFL iBT・IELTS——海外進学も視野に入れる場合の選択肢。難度が高く、国内入試だけが目的なら効率は良くありません。

まずすでに持っているスコアの棚卸しをしてください。学校で受けたGTECのスコアが志望校の基準に届いていた、という例は珍しくありません。持っているものを使わずに新しく取りに行くのは、もっとも無駄の大きい動き方です。

9. 中学生のうちにできること

高校入試でも英語外部検定を評価する高校があります。都立高校の推薦や私立高校の優遇制度など、扱いは学校ごとに異なります。

ただし中学生に対して当塾が勧めるのは、入試優遇そのものよりも「先に進んでおくこと」の効果です。中学のうちに準2級・2級の語彙に触れておくと、高校の英語が始まったときに教科書の負荷が下がります。高1で余裕が生まれれば、その分を他科目に回せます。

ここでも順序は同じです。級を取ること自体ではなく、語彙と読解の土台が積み上がることが目的で、級はその結果としてついてきます。級だけを狙って過去問を回すと、点は取れても土台が残りません。

当塾での扱い

当塾は英検の指導を行っており、クチコミでも英語・英検への言及が最も多くなっています。そのうえで正直に書きますが、英検を取ること自体が目的になると、かえって遠回りになります。

英検は入試で使うための手段です。志望校がその検定を評価しないなら、その時間は他の科目に回すほうが合理的です。当塾の面談で最初に確認するのは「志望校の候補で、英語外部検定がどう扱われているか」であって、「何級を目指すか」ではありません。

そのうえで、必要なスコアが決まったら、技能別にどこで失点しているかを測り、伸びしろの大きい技能から手をつけます。Writingから始めることが多いのは、上で書いたとおり短期間で動くからです。

まとめ

  1. 英語外部検定の使われ方は出願資格・得点換算・加点・試験免除の4つ。実利が大きいのは後ろ2つ。
  2. 見るのは級ではなくCSEスコア。必要スコアから受ける級を逆算する。
  3. 有効期間・受検方式・対象入試方式の3つで取りこぼしが起きる。
  4. 取り終えるのは高3前半まで。1回で決めない前提で計画する。
  5. 募集要項は高1のうちに一度読む。これだけで選択肢が変わる。

入試制度は毎年変わります。この記事は制度の型と確認すべき項目を整理したもので、個別の大学の条件は必ず最新の募集要項でご確認ください。

この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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