第一志望に落ちた後の選択肢は、3つある
受験の結果が出た後、進学するか浪人するかを短期間で決めることになります。合格発表から入学手続きの締切までは、多くの場合2週間もありません。
この判断は、疲れきった状態で、しかも家族の意見が割れやすい局面で行われます。だからこそ、決め方の枠組みを先に持っておく価値があります。
この記事は判断の枠組みについてのものです。どちらが正しいという結論を示すものではありません。
1. 3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 進学する | 合格した大学に入学し、そこで4年間を過ごす。 |
| 浪人する | どこにも入学せず、1年かけて再受験する。 |
| 仮面浪人 | 合格した大学に入学しつつ、再受験を目指す。 |
近年は、合格した大学に入学せずに再挑戦する「合格浪人」の比率が話題になることがあります。数字の出所は年度によって異なりますが、「受かったが行かない」という選択が珍しくなくなっているのは確かです。
これは、出願設計と本人の希望がずれた結果でもあります。出願要件の読み方の段階で、併願先を「行ってもよい大学」に絞れていたかが効いてきます。
2. 決める前に確認する6項目
感情で決めると後で揺れます。次の6つを、紙に書いて確認してください。
- 不合格の原因が特定できているか——「実力不足」では特定になっていません。科目、分野、時期のどこかまで言えるか。
- その原因は1年で埋まるか——埋まる根拠を、模試の推移などで示せるか。
- 今年、実際に何時間勉強したか——増やす余地が残っているか。すでに限界まで使っていたなら、来年の伸びしろは小さくなります。
- 経済的な条件——予備校費用と、1年分の機会費用。家庭内で数字を共有しているか。
- 行きたい理由が具体的か——「その大学の名前」以外に理由があるか。
- 合格した大学で、やりたいことができないか——学部・カリキュラム・編入制度を実際に調べたか。
6項目のうち、1と2に答えられない場合、浪人は勧めにくいというのが実務的な感覚です。原因が分からないまま1年やっても、同じ結果になりやすいためです。
3. 浪人が機能する条件
浪人して伸びる人には、共通点があります。
- 今年の勉強量に余地があった——部活の引退が遅かった、開始が遅かったなど、増やせる余白がある。
- 科目単位で穴が特定できている——「数学のIIBの微積分」まで言える。
- 生活リズムを他人に管理してもらえる環境がある——予備校の通学など。
- 1年後の出願先を、今年より広く設計できる——同じ受け方を繰り返さない。
逆に、今年すでに限界近くまで勉強していた場合、浪人の伸びは限定的になりやすくなります。この場合は勉強量ではなく、方法か出願設計を変える必要があります。
また、総合型選抜や学校推薦型選抜を使っていなかった場合、翌年はその経路も含めて設計し直せることは考慮に値します。
4. 仮面浪人の現実
仮面浪人は、退路を残せる点が利点です。ただし、次の負荷があります。
| 負荷 | 内容 |
|---|---|
| 時間 | 大学の授業・課題と受験勉強の両立。夏以降が特に厳しい。 |
| 単位 | 落とすと、進学した場合に響く。両方を中途半端にする危険。 |
| 費用 | 学費が二重にかかる。 |
| 心理 | 周囲に言いにくく、相談相手を作りにくい。 |
成功する場合の共通点は、「いつまでに決める」を先に決めていることです。夏の時点で模試の結果が想定に届かなければ切り替える、というように基準を作っておくと、判断が遅れずに済みます。
逆に、「とりあえず入学して、様子を見ながら」という始め方は、両方が中途半端になりやすい形です。
5. 進学を選ぶ場合
進学を選んだ場合、最初の数か月の過ごし方が後に影響します。
- 入学前に、その大学で何ができるかを調べる——シラバス、研究室、留学制度、編入・大学院進学の実績。
- 比較をやめる時期を決める——第一志望と比べ続けると、目の前の機会を使えません。
- 1年目の成績を取る——編入、他大学の大学院、奨学金、留学のいずれにも効きます。
3番目は特に実務的です。大学に入った後の選択肢は、大学名より成績で決まる場面が多くなります。編入や大学院進学は、入学時点の偏差値とは別の勝負になります。
6. 保護者の関わり方
この局面では、家庭内で意見が割れることがよくあります。次の点を意識すると、話が進みやすくなります。
- 費用の上限を先に示す——曖昧なまま議論すると、本人が現実を織り込めません。
- 「もう一年やっていい」と「やるべきだ」を区別する——許可と要求は別です。
- 決めるのは本人にする——親が決めた浪人は、うまくいかなかったときに立て直しが効きません。
- 結果発表直後には決めない——数日置くだけで判断が変わることがあります。
「落ちたこと」への評価と、「これからどうするか」の議論は、分けて行ってください。同時にやると、話が進まなくなります。
当塾の立場
当塾は、浪人を一律に勧めることも、一律に止めることもしていません。上に挙げた6項目のうち、原因の特定ができているかどうかで見方が変わるからです。
そのうえで、「もう一年あれば受かる」という見通しを、根拠なしに共有しないようにしています。1年後の合格を保証できる立場ではありませんし、そう言って浪人を選ばせるのは誠実ではないと考えています。
また、当塾は浪人生向けの大規模なカリキュラムを持っているわけではありません。予備校のほうが適している場合には、そう申し上げます。ここで無理に引き受けても、本人の利益になりません。
むしろ当塾が関われるのは、この判断の前段階です。出願設計の時点で「行ってもよい大学」に併願を絞っておけば、この局面自体が起きにくくなります。
まとめ
- 選択肢は進学・浪人・仮面浪人の3つ。
- 浪人を選ぶ前に、不合格の原因を科目・分野まで特定できているか確認する。
- 今年すでに勉強量が限界だった場合、浪人の伸びしろは小さい。方法か出願設計を変える。
- 仮面浪人は「いつまでに決めるか」を先に決める。
- 進学する場合、1年目の成績が編入・大学院・留学に効く。
- 保護者は費用の上限を示し、決定は本人に。結果発表直後には決めない。
- この局面を減らす最善の手は、出願設計の段階で併願先を絞ること。
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