総合型選抜は「楽な入試」か——2027年度の面接必須化を含めて

「総合型は楽」という理解は、どこから来るのか

総合型選抜について、「学力試験がないから楽」という説明を聞くことがあります。この理解のまま出願準備を始めると、途中で行き詰まる家庭が多くあります。

誤解の出どころははっきりしています。一般選抜との比較で「筆記試験の有無」だけを見ているからです。総合型選抜で問われるものは筆記試験の代わりに置かれているのであって、なくなっているわけではありません。

この記事では、総合型選抜で実際に何が問われるのか、準備に何が必要か、そしてどういう生徒には向かないかを書きます。なお、制度の詳細は大学ごとに大きく異なり、毎年変わります。必ず各大学の募集要項で確認してください。

1. 2027年度からの変更点——面接の必須化

まず、これから受験する家庭にとってもっとも影響が大きい点から書きます。

2027年度入試から、総合型選抜で面接が必須化されるとされています。書類と小論文だけで完結する方式が減り、対面で問われる場面が増えるということです。

確認のお願い:制度の適用範囲や実施方法は大学・学部・方式ごとに異なり、変更もあり得ます。受験する大学の募集要項で必ずご確認ください。この記事は、変更が受験準備にどう効いてくるかを整理するものです。

なぜこれが重い変更なのか

面接が入ると、書類を「作れる」だけでは通らなくなります。

志望理由書は、時間をかけて書き直せます。誰かの助けを借りることもできます。しかし面接では、その場で答えなければなりません。書いた内容について「なぜそう考えたのか」「その研究テーマのどこに関心があるのか」と重ねて聞かれたとき、自分の言葉で説明できるかが露わになります。

つまり、書類と本人が一致しているかを確認する工程が加わるということです。ここが、準備のしかたを根本から変えます。

準備期間が長くなる

面接で答えられるようになるには、自分が書いた内容を自分のものにしている必要があります。これは短期間では作れません。

したがって、高3の夏から始めて間に合う範囲はさらに狭まります。受験の設計は、単年ではなく数年単位で考えるべきものになります。高1・高2のうちに、関心のあるテーマについて調べ、考えを積み上げておく——これが面接で答えられる状態の土台になります。

2. 総合型選抜とは何か

総合型選抜は、かつてAO入試と呼ばれていた枠組みが改称されたものです。大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合う受験生を、多面的な評価で選ぶ方式とされています。

ここで押さえるべきは、「多面的」であって「学力を見ない」ではないという点です。文部科学省の方針では、総合型選抜においても学力の3要素を評価することが求められており、多くの大学が何らかの形で学力を測る要素を課しています。

具体的には、次のようなものが使われます。

  • 調査書(評定平均を含む)
  • 小論文
  • プレゼンテーション・口頭試問
  • 大学入学共通テストの成績
  • 英語外部検定のスコア
  • 資格・活動実績
  • 面接

このうち共通テストを課す大学もあります。「総合型だから共通テストの勉強は要らない」と決めてしまうと、出願できる大学が限られます。

3. 準備の負担はどこにあるか

総合型選抜の準備が重くなるのは、次の理由からです。

(1) 準備期間が長い

出願は多くの場合9月以降ですが、志望理由書や活動報告に書く内容は、それ以前に積み上げたものです。高3の夏に始めて間に合う部分は限られます。

(2) 一般選抜の準備と並行する

総合型で不合格だった場合、一般選抜に切り替えます。したがって、多くの生徒は両方の準備を並行して進めます。9月〜11月に総合型の準備で時間を取られ、その間に一般選抜の演習が止まると、切り替えたときに苦しくなります。

これが「総合型は楽ではない」ともっとも強く言える理由です。片方だけを選ぶのではなく、両方をやることになるのが実態です。

(3) 書類の作成に時間がかかる

志望理由書は、書き上げるまでに何度も書き直します。自分の経験を整理し、大学の教育内容と結びつけ、入学後の計画まで書く。これを一人でやるのは簡単ではありません。

(4) 結果が読みにくい

一般選抜なら、模試の判定である程度の見通しが立ちます。総合型では、この予測が立ちにくくなります。不合格を前提にした準備が必要だという点で、精神的な負担も小さくありません。

4. 志望理由書で問われていること

志望理由書で見られているのは、文章のうまさではありません。その大学・学部でなければならない理由が、具体的に示されているかです。

評価されにくい志望理由書には、共通した特徴があります。

よくある型 なぜ弱いか
「昔から興味がありました」 他大学でも成り立つ。この大学である理由になっていない。
「貴学の理念に共感しました」 パンフレットの引き写しで、自分の経験と結びついていない。
「社会に貢献したいです」 抽象的で、学部の内容と接続していない。
体験談だけで終わる 経験は書けているが、大学での学びにつながっていない。

逆に、評価される志望理由書は次の構造を持っています。

  1. 具体的な経験——いつ、何をして、何に気づいたか。
  2. そこから生まれた問い——経験を通して、何を知りたくなったか。
  3. その問いを扱うのがこの学部である理由——カリキュラム、研究内容、教員の専門など、調べた事実で示す。
  4. 入学後の計画——何を学び、どう進めるか。

3番目がもっとも差がつきます。ここを書くには、大学のシラバスや研究内容を実際に調べる必要があります。調べていない受験生の書類は、読めば分かります。

5. 活動実績は「量」ではない

「実績がないから総合型は無理」と考える家庭がありますが、大会の入賞や特別な経歴が必須というわけではありません。多くの大学が見ているのは、経験の中で何を考え、どう行動したかです。

したがって、書けることは次のような日常の中にもあります。

  • 部活で役割を担い、課題に対して何かを変えた経験
  • 文化祭や委員会で、うまくいかなかったことをどう扱ったか
  • 継続してきたこと(結果ではなく、続けた過程と工夫)
  • 関心のあるテーマについて、自分で調べたこと

重要なのは、結果ではなく過程を言語化できるかです。入賞していなくても、そこで何を考えたかが具体的に語れれば材料になります。逆に、大きな実績があっても「参加した」としか書けなければ弱くなります。

6. 総合型が向かない場合

正直に書きます。次のような場合、総合型選抜は勧めにくくなります。

(1) 一般選抜の学力が明らかに不足している

総合型を「学力が足りないから」という理由で選ぶと、失敗しやすくなります。不合格だった場合に戻る先が一般選抜だからです。総合型は一般選抜の代替ではなく、追加の機会と考えてください。

(2) 志望理由が固まっていない

「どこでもいいから受かりたい」という状態では、志望理由書が書けません。書けたとしても、面接で崩れます。面接官は、書類に書いていないところを聞いてきます。

(3) 準備を始める時期が遅い

高3の夏以降に「総合型もやってみよう」と始める場合、書類の質が上がりきらないまま出願になります。この場合、一般選抜の準備が止まるコストのほうが大きくなる可能性があります。

(4) 評定平均が出願条件に届かない

出願資格に評定平均を設けている大学があります。この場合、高1からの成績が効いてきます。内申点の実務で書いたとおり、高校の評定は累積で見られるのが通例です。

7. 出す・出さないの判断基準

当塾が生徒と一緒に確認しているのは、次の点です。

  1. その大学に、一般選抜でも行きたいか——総合型でしか行きたくない大学なら、動機が弱い可能性があります。
  2. 書く材料があるか——経験を3つ挙げて、それぞれ何を考えたか言えるか。
  3. 一般選抜の準備が止まらない設計ができるか——書類作成の時間を、どこから確保するか。
  4. 出願条件を満たしているか——評定平均、英語外部検定、共通テストの要否。
  5. 不合格だった場合の切り替えが決まっているか——いつから、何をやるか。

5番目を先に決めておくことが、実務的にはもっとも重要です。不合格の通知が来てから考え始めると、そこで数週間を失います。あらかじめ決めておけば、翌日から切り替えられます。

8. 制度は変わる

入試制度は毎年変わります。方式の名称、出願条件、共通テストの扱い、英語外部検定の基準——どれも固定されていません。

したがって、先輩の情報や数年前の解説記事をそのまま信じるのは危険です。確認すべきは、その年度の募集要項だけです。

とくに変わりやすいのは次の点です。

  • 共通テストを課すかどうか、および必要科目
  • 英語外部検定の対象・基準スコア
  • 評定平均の出願条件
  • 選抜の日程(出願時期・試験日・合格発表)
  • 定員(総合型・学校推薦型・一般選抜の配分)

最後の定員配分は、合格しやすさに直接影響します。前年の倍率をそのまま参考にできないことがあるのは、このためです。

当塾の立場

当塾は、総合型選抜を勧めることも、否定することもしません。その生徒の状況によって、出すべき場合と出すべきでない場合があるだけです。

そのうえで、面談で必ず伝えているのは次の2点です。

1つは、「楽な入口」ではないということ。面接の必須化はその方向をさらに強めます。準備期間が長く、一般選抜と並行することになり、結果が読みにくい。負担の総量は、一般選抜だけの場合より増えるのが普通です。

もう1つは、一般選抜の準備を止めないこと。総合型の書類作成に集中して英数の演習が2か月止まると、切り替えたときに取り戻すのに時間がかかります。書類は、時間を決めて作るべきものです。

また、当塾は総合型選抜の専門塾ではありません。書類の添削や面接練習は行いますが、それを主商品にしているわけではないことは、最初に伝えています。専門の指導が必要な状況であれば、その旨も伝えます。

まとめ

  1. 2027年度入試から面接が必須化とされる。書類を作れるだけでは通らなくなる(要項で要確認)。
  2. 総合型選抜は「学力を見ない」方式ではない。共通テストを課す大学もある。
  3. 負担が重いのは、準備期間の長さと、一般選抜との並行による。
  4. 志望理由書は「経験→問い→この学部である理由→入学後の計画」の構造で書く。
  5. 活動実績は量や結果ではなく、過程を言語化できるか
  6. 学力不足の代替として選ぶと失敗しやすい。追加の機会と考える。
  7. 不合格時の切り替えを先に決めておく。
  8. 準備は単年ではなく数年単位で設計する。
  9. 制度は毎年変わる。確認するのはその年度の募集要項だけ。

この記事は制度の型と準備の考え方を整理したものです。個別の大学の条件・日程・定員は必ず最新の募集要項でご確認ください。

この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

当塾について

武蔵野個別指導塾は武蔵境駅から徒歩30秒の完全個別指導塾です。総合型選抜(旧AO)入試対策授業料のご案内よくあるご質問に、指導の進め方と費用をまとめています。実際に通われた方の声は合格者の声をご覧ください。ご相談・体験のお申し込みはお問い合わせから承ります。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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