中学受験の算数でつまずく5つの型

中学受験の算数は、学校の算数とは別の科目に近い

中学受験で最も差がつく科目は算数だと言われます。配点が高い学校が多く、得点の分布も広いためです。

ここでつまずく子について、「算数のセンスがない」という説明がなされることがあります。しかし、実際に起きていることは、もう少し具体的に分解できます。

この記事は一般的な整理です。志望校ごとの出題傾向は、必ず過去問で確認してください。

1. 学校の算数との違い

項目 学校の算数 入試の算数
問題の形 習った解法をそのまま使う 何を使うかを自分で決める
手順の数 1〜2手 3〜5手以上
数値 きれいな数 途中で分数・小数が出る
時間 余裕がある 1問あたり数分
解法 方程式に近い考え方も使える 比・線分図・面積図など固有の手法

最大の違いは1行目です。「何を使うか」を自分で決める段階が加わります。学校のテストで満点でも入試問題が解けないのは、この段階の練習がないためです。

2. つまずきの5類型

算数が伸びない子を観察すると、原因は次のいずれかに分類できることが多くあります。

  1. 計算が遅い・不正確——考える前に時間と気力を消費している。
  2. 条件を書き出していない——問題文を読んだだけで解こうとする。
  3. 解法を思い出そうとしている——「この問題は何番の解法か」と探している。
  4. 図が描けない——線分図・面積図・ダイヤグラムを使わない、または描き方が定着していない。
  5. 見直しの型がない——間違えた問題を「もう一度解く」だけで終えている。

3番目が最も厄介です。解法の暗記で対応できるのは、ある水準までです。それを超えると、問題数だけを増やしても伸びなくなります。

3. 計算から確認する

1番目の「計算」は、地味ですが最初に確認すべき項目です。次の点を見てください。

確認項目 目安
四則混合の速度 1問あたり何秒かかっているか、実測する
分数と小数の変換 0.125=8分の1などが即答できるか
約分の見落とし 計算の途中で約分しているか
工夫の有無 分配法則などを使っているか
筆算の書き方 桁がずれない書き方になっているか

計算に時間を取られていると、考える段階に入る前に集中力が切れます。ここは毎日短時間で改善できる部分なので、優先度が高くなります。

4. 条件を書き出す習慣

2番目の「書き出していない」は、指導で最も改善しやすい項目です。

  1. 与えられた数値を、単位つきで書き出す
  2. 聞かれていることを、別の場所に書く
  3. 分かることを1つずつ足していく
  4. 使っていない条件がないか確認する

4番目は特に効きます。入試問題では、使わない条件はほとんど出ません。使っていない数値が残っているなら、方針が違う可能性が高くなります。

この手順は、家庭でも確認できます。答案ではなく、計算用紙に何が書かれているかを見てください。何も書かずに答えだけ書いている場合、伸び悩みの原因はここにあります。

5. 図を描く

中学受験の算数では、図が解法そのものになります。代表的なものは次のとおりです。

主な用途
線分図 和差算、分配、割合の関係
面積図 平均、つるかめ算、濃度
ダイヤグラム 速さと時間の関係、旅人算
周期、規則性、場合分け
ベン図 集合の重なり

これらは「描けば解ける」のではなく、「描き方が正しければ解ける」ものです。線分図の長さの比が実際の比と合っていない、面積図の縦横が何を表すか決まっていない——こうした状態では機能しません。

家庭で確認するなら、本人に図の各部分が何を表すか説明させるのが早い方法です。説明できなければ、形だけ真似ている状態です。

6. 直しの型

5番目の「見直しの型がない」は、学習効率に最も影響します。間違えた問題の扱い方を決めてください。

  1. 間違いの種類を判定する——計算ミスか、方針の誤りか、知らなかったか。
  2. 計算ミスなら、どこで間違えたかを特定する——「ケアレスミス」で終わらせない。
  3. 方針の誤りなら、正しい方針に気づく手がかりを言葉にする——「◯◯と書いてあったら△△を疑う」
  4. 知らなかったなら、その手法を単独で練習する
  5. 日を空けてもう一度解く——直後に解き直しても、解法を覚えているだけです。

3番目が、次に似た問題が出たときに効く部分です。解法を覚えるのではなく、「どういうときにその解法を使うか」を覚えるということです。前掲の3番目の類型は、これで抜けます。

7. 量をどう考えるか

算数は演習量が必要な科目ですが、量だけでは解決しない場面があります。

  • 同じ間違いを繰り返している間は、量を増やしても改善しません——直しの型が先です。
  • 計算が遅い状態で問題数を増やすと、疲労だけが増えます——計算が先です。
  • 解説を読んで納得しただけでは、解けるようになりません——手を動かして再現できるかで判定します。

進度と量の設計は、本人の状態によって変わります。塾のカリキュラムが合わない場合、追いかけ続けるより一度戻るほうが早いことがあります。

当塾の立場

当塾は中学受験の大手集団塾ではありません。個別指導として、集団塾に通いながら特定の単元を補う形でお預かりすることが多くなります。その前提でお読みください。

そのうえで申し上げると、「大手塾のカリキュラムに追いつくための補習」が最善とは限りません。計算や図の描き方に穴がある状態で先へ進むと、単元が増えるほど差が開きます。

また、当塾は中学受験そのものを勧める立場ではありません。受験するかどうかの判断については中学受験の判断調査の数字の読み方で扱っています。

算数に関しては、「センスがない」という説明をしないことを方針にしています。上に挙げた5類型のどれかである場合がほとんどで、いずれも手当てできる項目だからです。

まとめ

  1. 入試の算数は「何を使うかを自分で決める」段階が加わる点で学校の算数と違う。
  2. つまずきは計算・条件の書き出し・解法暗記・図・直しの5類型。
  3. まず計算を実測する。考える前に消耗していないか。
  4. 計算用紙に何が書かれているかを見る。何も書いていなければそこが原因。
  5. 図は描けば解けるのではなく、描き方が正しければ解ける。説明させて確認する。
  6. 直しでは「どういうときにその解法を使うか」を言葉にする。
  7. 同じ間違いを繰り返している間は、量を増やしても改善しない

この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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