試験本番の準備と、当日の運営

本番で失う点は、実力とは別の場所で発生する

入試の得点は、学力だけで決まりません。会場までの移動、当日の体調、時間配分、途中でのつまずきからの立て直し——こうした要素が、数点から数十点を動かします。

この部分は、直前期に短時間で整えられます。学力を上げるより確実で、効果が読みやすい領域です。この記事では、その手順を整理します。

一般的な整理です。持ち物や会場の規則は、必ず受験票と要項で確認してください。

1. 移動と宿泊

遠方の受験では、宿泊が必要になります。ここで問題になるのが、入試期間に宿が取りにくくなることです。近年は観光需要も重なり、直前では選択肢が限られる年があります。

  1. 出願前に予約する——受験校が確定する前でも、キャンセル可能な条件で押さえておく。
  2. 会場から一駅離す——最寄り駅は埋まりやすく、価格も上がります。
  3. 乗り換えの少ない場所を選ぶ——距離より乗り換え回数のほうが遅延の影響を受けます。
  4. 前泊するか決めておく——始発の移動で間に合う場合でも、遅延を考えると前泊のほうが安全な場合があります。

また、当日の経路は2つ用意してください。1つの路線が止まると、それだけで詰みます。振替輸送の経路を事前に確認しておきます。

2. 持ち物

分類 内容
必須 受験票、筆記用具(予備を含む)、時計(通信機能のないもの)
体調 飲み物、軽食、常用薬、ハンカチ
環境 上着(脱ぎ着で調整)、ひざ掛けが可か要確認
学習 見直し用の1冊だけ。新しい教材は持ち込まない
予備 現金、交通系ICの残高、充電

3行目の温度調整は軽視されがちです。会場の空調は席によって体感が大きく違います。脱ぎ着で調整できる服装にしてください。

4行目も重要です。持ち込む教材が多いと、休み時間に開いて焦るだけになります。「これだけ見る」と決めた1冊に絞ってください。

3. 当日のルーティンを事前に決める

本番の緊張は、判断力を落とします。だからこそ、当日に判断する項目を減らしておくことが有効です。

  1. 起床時刻——試験開始の3時間前を目安に。1週間前から合わせておく。
  2. 朝食——普段と同じもの。当日に新しいものを試さない。
  3. 会場到着——開場直後を狙う。ぎりぎりに着くと落ち着く時間がない。
  4. 休み時間の過ごし方——何を見るか、何をしないかを決めておく。
  5. 昼食——量を控えめに。午後の集中に影響します。

4番目については、終わった科目の答え合わせをしないと決めておくことを勧めます。周囲の会話が聞こえてくる環境で、確認しても得るものはありません。

4. 切り替えの技術

1科目目で失敗したと感じたとき、そのまま午後まで引きずると全体が崩れます。切り替えの方法を持っておいてください。

方法 内容
呼吸を長くする 吸うより吐く時間を長くする。数回で心拍が落ち着く。
身体を動かす 立つ、歩く、肩を回す。座ったままだと反芻が続く。
視線を遠くに向ける 近くを見続けると緊張が続きます。
次の科目の準備動作に入る 公式や単語を1つ確認する。作業に切り替える。
言い直す 「終わった」ではなく「次で取る」と口に出す。

これらは特別な技法ではありません。やることを決めておくこと自体に意味があります。決めていないと、休み時間の10分をずっと反芻に使ってしまいます。

5. 試験中の時間配分

  1. 最初に全体を見る——問題数と配点を確認し、時間を割り振る。30秒で足ります。
  2. 解く順序を決める——必ずしも1番からでなくてよい。
  3. 詰まったら飛ばす——1問に固執すると、解ける問題を落とします。
  4. 飛ばした問題に印をつける——戻る場所を明示しておく。
  5. 解答欄のずれを確認する——飛ばした場合に最も起きやすい事故です。
  6. 最後の5分は見直しに使う——新しい問題に着手しない。

3番目の判断基準を決めておいてください。「2分考えて方針が見えなければ飛ばす」といった形です。基準がないと、その場で決められません。

5番目は毎年一定数が起こす事故です。マークシートでも記述でも、飛ばした後は必ず番号を確認してください。

6. 直前1週間

この時期にやることと、やらないことを分けます。

やる やらない
既習範囲の確認 新しい教材に着手する
間違えた問題の見直し 難問に挑戦する
生活リズムを試験時間に合わせる 徹夜する
持ち物と経路の確認 模試の判定を見返す
過去問を時間どおりに1年分 体調を崩すような無理

右列の1行目は、この時期に最も起こりやすい行動です。不安になると新しい教材を買いたくなりますが、消化できません。むしろ「まだこんなに知らない」という感覚だけが残ります。

7. 体調

  • 睡眠を削らない——直前期の徹夜は、当日の処理速度を確実に落とします。
  • 人混みを避ける——感染症の流行期と重なります。
  • 試験時間に脳を合わせる——午前に試験があるなら、午前に演習する習慣を。
  • 体調を崩した場合の連絡先を確認——追試験の有無、当日の連絡方法。

最後の項目は、事前に確認しておいてください。体調不良時の対応は大学によって異なります。当日になってから調べる時間はありません。

当塾の立場

当塾では、直前期に新しい単元へ入らないことを方針にしています。この時期に増やせる知識より、失点を減らす手当てのほうが確実だからです。

塾としては、直前講習を増やして受講いただくほうが売上になります。その利害を前提に申し上げますが、直前期の講座を積み増すことを勧めてはいません。消化できない量を抱えると、かえって不安が増えます。

代わりに面談で確認しているのは、この記事に挙げた実務的な項目です。経路、宿泊、持ち物、時間配分の基準。いずれも学力とは関係ありませんが、点数には関係します。

なお、当日の失敗は起こります。起きたときに立て直せるかどうかが差になるので、「失敗しない」ではなく「失敗しても戻れる」ことを目標にしています。

まとめ

  1. 宿泊は出願前にキャンセル可能な条件で押さえる。会場から一駅離す。
  2. 当日の経路は2つ用意する。
  3. 持ち込む教材は1冊だけ。新しい教材は持たない。
  4. 当日の判断項目を減らす。起床・朝食・到着・休み時間・昼食を事前に決める。
  5. 終わった科目の答え合わせをしない
  6. 「◯分考えて方針が見えなければ飛ばす」という基準を決めておく
  7. 飛ばした後は解答欄のずれを確認する。

この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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