東京大学 学校推薦型選抜(令和9年度)|校内枠と併願の制約

東京大学の学校推薦型選抜は、「高校が何人推薦できるか」から始まります

東京大学の学校推薦型選抜には、受験生本人の努力ではどうにもならない条件が最初に立ちはだかります。

学校長が推薦できるのは合計4人、男女各3人まで。同一学部への推薦は男女各1人まで。

つまり、同じ高校から同じ学部に推薦されるのは、男女それぞれ1人ずつです。校内選考を通ることが、実質的な第一関門になります。

この記事では、令和9(2027)年度の募集要項から、制度の構造と併願の制約を整理します。

出典:東京大学「令和9年度 学校推薦型選抜 学生募集要項」(2026年7月10日公表/2026年9月11日確認)

1. 募集人員

全体で100人程度です。学部別の内訳は次のとおりです。

学部 募集人員
法学部 10人程度
経済学部 10人程度
文学部 10人程度
教育学部 5人程度
教養学部 5人程度
工学部 30人程度
理学部 10人程度
農学部 10人程度
薬学部 5人程度
医学部医学科 3人程度
医学部健康総合科学科 2人程度

工学部が30人程度と突出しています。全体の約3割です。逆に医学部医学科は3人程度です。

要項には、合格者が募集人員に満たない場合の扱いも書かれています。残余は各学部が主に対応する科類の一般選抜(前期日程)に繰り入れられます。枠を埋めるために基準を下げることはしない、という意思表示と読めます。

2. 推薦の枠——校内選考が第一関門

要項の規定を正確に書きます。

  1. 学校長は合計4人、男女各3人まで推薦できる(男女いずれかのみが在学する学校は3人)。
  2. 同一学部への推薦は男女各1人まで。
  3. 同一の志願者を複数学部に推薦することはできない。

この3つから導かれる実務は明確です。

同じ高校で同じ学部を志望する同性の生徒が2人いたら、どちらか1人しか出られません。大学に願書を出す前に、校内で決着がついてしまいます。

したがって、東大の推薦を考えるならまず学校の先生に「今年この学部を志望している生徒がいるか」を確認するところから始まります。これは遠慮する場面ではありません。出願できるかどうかの問題です。

さらに要項には、受験生にとって重要な一文があります。

「推薦要件に該当するかどうかの事前の個別問い合わせには答えない」

つまり、「この実績で要件を満たしますか」と大学に聞くことはできません。要項を読んで自分と高校で判断するしかありません。

3. 出願資格と推薦要件

  • 高校等を令和7(2025)年4月以降に卒業した者および令和9(2027)年3月卒業見込みの者 等。
    既卒者も出願できますが、直近2年程度に限られます。
  • 学部ごとの推薦要件に該当し、学校長が責任をもって推薦できる者。
  • 合格した場合、必ず入学することを確約できる者。

学部ごとの推薦要件は要項の各学部の項に書かれています。学部によって求めるものが大きく異なります。全学共通の「東大推薦の基準」というものはありません。

4. 併願の制約——ここが最も複雑です

国公立大学の推薦・総合型選抜には併願の制限があり、東大の要項はそれを明記しています。

対象 可否
東大の一般選抜(前期日程)への出願 可能(別途手続が必要)
推薦に合格し2/17までに入学手続を行った場合 前期日程を受験しても合格者とならない
UTokyo College of Designとの併願 認めない
国公立大学の学校推薦型選抜(共通テストの有無を問わず) 1つの大学・学部のみ
他の国公立大学の総合型選抜に出願した者 東大の学校推薦型選抜に出願できない
不合格に備えた一般選抜 前期1つ・後期1つの計2つに出願可能

4行目と5行目が重要です。他の国公立大学の総合型選抜に出願してしまうと、東大の推薦には出願できません。「とりあえず両方出しておく」ができない制度です。

一方で、東大の推薦と東大の前期日程は併願できます。推薦で不合格でも前期で受け直せます。ここは受験生にとって大きな救いです。

5. 共通テストは必須

要項の記述です。

「共通テストは必須。志望学部が指定する教科・科目の全てを受験すること。過年度の成績は利用しない。」

ここを誤解すると致命的です。推薦だからといって共通テストが免除されるわけではありません。そして既卒者であっても、過年度の成績は使えません。今年度の共通テストを受験します。

最終合格は、提出書類・面接等・共通テストの成績を総合評価して決まります。共通テストは「足切り」ではなく評価の一部です。

6. 日程

項目 日程
インターネット入学志願票作成 2026年10月15日(木)正午頃〜11月6日(金)17時厳守
高等学校による出願(書類・資料のアップロード) 2026年11月1日(日)正午頃〜11月6日(金)17時厳守
第1次選考結果発表 2026年12月1日(火)15時
面接等 2026年12月12日(土)・13日(日)(学部ごとに日程)
共通テスト成績請求チケット提出期限 2026年12月22日(火)必着
共通テスト本試験 2027年1月16日(土)・17日(日)
最終合格者発表 2027年2月10日(水)12時頃
入学手続 2027年2月11日〜2月17日 必着

注目すべきは「高等学校による出願」という仕組みです。書類・資料は高校がアップロードします。受験生が個人で送るのではありません。

しかも受付期間は11月1日から11月6日17時まで、実質6日間です。先生の作業時間がここに集中します。高校側の準備を早めに依頼しておくことが、そのまま出願できるかどうかに直結します。

7. 提出書類

  • 入学志願票
  • 調査書
  • 志願書(様式1)
  • 推薦書(様式2)
  • 学部が求める書類・資料

最後の「学部が求める書類・資料」が、学部ごとの個性が出る部分です。要項の学部の項を読んでください。

志願書の書き方は志望理由書の書き方で扱っています。

8. 入学後の扱い

意外に知られていない点です。

推薦で入学しても、東京大学の他の学生と同じく教養学部で前期課程2年を過ごします。ただし後期課程の進学先は出願時の志望により決定されます(前期課程の修了要件は満たす必要があります)。

一般選抜で入学した学生は前期課程の成績で進学先が決まる(進学選択)のに対し、推薦生は出願時の学部に進むことが前提だということです。

これは有利にも不利にもなります。進学選択の競争を経ずに志望学部に進めます。一方で、2年間の教養課程で興味が変わっても、進路は変えにくくなります。出願時の志望が重い意味を持ちます。

9. 選抜の流れ

段階 内容
(1) 提出書類・資料による第1次選考
(2) 第1次合格者に対する学部ごとの面接等
(3) 提出書類・面接等・共通テストの成績を総合評価して最終合格者決定

面接が12月、共通テストが1月です。面接を終えてから共通テストまでの1か月が、精神的に難しい期間になります。ここで学習が止まると総合評価で届きません。

10. よくある誤解

「推薦なら共通テストはいらない」

必要です。共通テストは必須で、志望学部の指定科目を全て受験します。

「他の国公立の総合型選抜と両方出せる」

出せません。他の国公立大学の総合型選抜に出願した者は、東大の学校推薦型選抜に出願できません。

「東大の前期日程とは併願できない」

できます。推薦と前期日程は併願可能です(別途手続が必要)。

「同じ高校から何人でも同じ学部に出せる」

出せません。同一学部への推薦は男女各1人までです。

「要件を満たすか大学に聞けばよい」

聞けません。事前の個別問い合わせには答えないと明記されています。

「既卒でも出願できる」

できますが、令和7年4月以降に卒業した者に限られます。

当塾の立場

当塾は総合型選抜・推薦系の指導を行っており、この記事には利害があります。その前提でお読みください。

そのうえで、東京大学の学校推薦型選抜について当塾の考えを書きます。

この入試を「一般選抜より楽な入口」として勧めることはしていません。共通テストは必須で、総合評価に組み込まれます。学力の準備を削れる入試ではありません。

当塾が最初に確認させるのは校内の推薦枠です。同一学部に男女各1人という制限がある以上、志望者が校内にいるかどうかで話がまったく変わります。これを確認せずに秋まで準備を進めるのは、時間の使い方として危険です。

もうひとつ重視しているのが併願の設計です。他の国公立の総合型選抜に出願した時点で東大の推薦は消えます。ここは取り返しがつきません。出願戦略を、夏の時点で紙に書いて確定させてください。

そして、この入試の最大の利点は東大の前期日程と併願できることだと考えています。推薦がだめでも前期で受け直せます。つまり「一般選抜の勉強をしながら挑戦できる」数少ない国立の推薦です。ここを理解している生徒は、12月の面接後も学習を止めません。

なお、学部ごとの推薦要件の具体的な中身は、この記事では扱っていません。学部で大きく異なり、要約すると誤解を生むからです。要項の該当学部の項を直接お読みください。

まとめ

  1. 募集人員は全体で100人程度。工学部30人程度、医学部医学科3人程度。
  2. 学校長の推薦は合計4人・男女各3人まで、同一学部は男女各1人まで。校内選考が第一関門。
  3. 共通テストは必須。過年度の成績は利用しない。
  4. 他の国公立の総合型選抜に出願した者は出願できない。国公立の推薦は1大学・学部のみ。
  5. 東大の前期日程とは併願可能。推薦で不合格でも受け直せる。
  6. 書類は高校がアップロード。受付は11月1日〜6日17時と短い。
  7. 面接等は12月12日・13日、最終合格発表は2月10日
  8. 入学後は教養学部で前期課程2年。後期課程の進学先は出願時の志望で決定。
  9. 要件該当の事前の個別問い合わせには大学は答えない。

この記事は2026年9月11日に東京大学の令和9年度 学校推薦型選抜 学生募集要項(2026年7月10日公表)で確認した内容にもとづいています。学部ごとの推薦要件・提出資料は要項の各学部の項をご覧ください。要件・日程は変更されることがあります。

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記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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