英語が嫌いになるのは、たいてい特定の時期に起きる
英語が苦手だという相談は、学年を問わず寄せられます。しかし、話を聞いていくと、苦手になった時期はかなり限られていることが分かります。
多くは中学1年の後半から2年の前半です。この時期に何が起きているのか、そして後から回復できるのかを整理します。
一般的な傾向の整理です。個別の状況によっては当てはまらない場合があります。
1. なぜ中1後半なのか
中学1年の英語は、最初の数か月と、その後で難易度が大きく変わります。
| 時期 | 内容 | つまずきの有無 |
|---|---|---|
| 中1前半 | アルファベット、be動詞、簡単な単語 | ほとんど出ない |
| 中1後半 | 一般動詞、三単現、疑問文・否定文の作り分け | ここで分かれる |
| 中2前半 | 過去形、未来表現、助動詞 | 前半の穴が表面化 |
| 中2後半 | 不定詞、動名詞、比較 | 穴があると崩れる |
要点は2行目です。be動詞と一般動詞の区別ができないまま進むと、その後のすべての文型で判断を誤ります。疑問文の作り方も、否定文の作り方も、この区別に依存しているためです。
ここでつまずいた子は、テストで点が取れなくなり、「英語は苦手」という自己認識が固定されます。実際には、区別が1つ抜けているだけです。
2. 放置したときに起きること
英語は積み上げ式の科目なので、穴を残したまま進むと差が拡大します。
- 文法の穴が、読解の穴になる——文の構造が取れないため、長文が読めません。
- 語彙が増えない——文の意味が取れないと、単語だけ覚えても使えません。
- 定期テストで点が取れず、評定が下がる——推薦系の選択肢が狭まります。
- 高校で必修科目として続く——逃げられません。
- 大学入試で配点が高い——多くの学部で英語の比重は大きくなっています。
5番目が最終的に効いてきます。英語は、大学入試で最も配点の大きい科目の一つです。中1の躓きを放置すると、6年後にその分の負担がまとめて来ます。
逆に言えば、中学のうちに埋めるコストは、高校で埋めるコストよりはるかに小さくなります。
3. どこまで戻るか
回復の手順は、どこで止まっているかの特定から始まります。次の順で確認してください。
| 確認 | できない場合に戻る場所 |
|---|---|
| be動詞と一般動詞を区別して否定文が作れるか | 中1後半 |
| 三単現のsを、主語を見て判断できるか | 中1後半 |
| 過去形の規則・不規則を使い分けられるか | 中2前半 |
| 不定詞の3用法を、文中で見分けられるか | 中2後半 |
| 関係代名詞のある文の主語と動詞を特定できるか | 中3 |
上から順に確認し、最初にできなかった項目まで戻ります。そこから先は、順に進めれば埋まります。
高校生でも同じです。高2で英語が読めない場合、中学範囲に穴があることは珍しくありません。戻ることに抵抗が出やすい部分ですが、戻らないと進めません。詳しい判定は英語長文が読めない原因で扱っています。
4. 学校の授業との関係
「学校の授業だけでは足りない」という話をよく聞きます。これについては、条件を分けて考える必要があります。
- 授業の進度——学校によって差があります。教科書の進み方を確認してください。
- 演習量——授業内で書く量が少ない場合、定着しません。
- 4技能の配分——話す活動が多い場合、文法の定着は別に確保する必要があります。
- 個別の対応——40人の授業で、個々のつまずきに対応するのは構造的に困難です。
4番目は教員個人の問題ではありません。一斉授業では、どこでつまずいたかを一人ずつ特定することができないという構造の話です。
だからこそ、家庭または塾で「どこで止まっているか」の特定だけは行う価値があります。特定さえできれば、埋める作業自体は難しくありません。
5. 英検をどう使うか
中学生の英語学習で、英検は目標として機能します。理由は3つです。
- 範囲が明確——級ごとに必要な語彙と文法が決まっています。
- 締切がある——試験日があることで、学習に期限が生まれます。
- 高校・大学入試で使える——出願要件や加点として利用できる場合があります。
ただし、級を追いかけることが目的化すると逆効果になります。過去問の暗記で合格しても、次の級で行き詰まります。級別の進め方は英検の級別対策で扱っています。
入試での使われ方は英検の入試利用にまとめています。
6. 帰国生・英語が得意な子の場合
逆に、海外経験などで英語が得意な場合の注意点も挙げておきます。
- 会話ができることと、入試の英語ができることは別——文法用語や構文の分析が必要になります。
- 日本の入試特有の設問形式に慣れる必要がある——和訳、文法問題、空所補充など。
- 英語以外の科目に時間を配分する——英語が得意な分、他科目に回せます。
- 帰国生入試には要件がある——滞在期間、現地校か日本人学校か、など。募集要項の確認が必要です。
1番目は見落とされがちです。「話せるのに点が取れない」という状態は実際に起きます。読解量と文法の整理で解決する場合が多くなります。
当塾の立場
当塾は英語の指導を行っており、この記事は当塾の業務と直接関係します。その前提でお読みください。
そのうえで、「今すぐ通わないと手遅れになる」という言い方はしていません。中学英語の穴は、高校生になってからでも埋められます。ただしコストは上がります。その事実を、脅しではなく情報としてお伝えするようにしています。
また、塾に通わなくても埋められる場合があります。止まっている箇所が特定できていて、本人が中学の教材に戻ることを受け入れられるなら、家庭学習で足ります。その場合はそう申し上げます。
当塾が関われるのは、主に「どこで止まっているかの特定」と「戻ることへの抵抗を減らすこと」です。中2の内容を高2でやり直すのは、本人にとって心理的な負担があります。そこを一緒に処理する部分に、個別指導の意味があると考えています。
まとめ
- 英語が苦手になる時期は中1後半から中2前半に集中している。
- 分岐点はbe動詞と一般動詞の区別。ここが疑問文・否定文のすべてに関わる。
- 穴を残すと文法→読解→語彙の順に影響が広がる。
- 英語は大学入試で配点が大きい。負担は後でまとめて来る。
- 回復は止まっている箇所の特定から。最初にできなかった項目まで戻る。
- 一斉授業では個々のつまずきを特定できない。そこは別に確保する。
- 英検は範囲と締切があるため目標として機能する。ただし級の追いかけを目的化しない。
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