定期テストは「直前の頑張り」で決まらない
テスト前2週間になってから慌てて勉強を始める——これがもっとも一般的なやり方ですが、この形では点数の上限が決まってしまいます。理由は単純で、2週間で処理できる量には限りがあるからです。
定期テストは、範囲が事前に分かっている数少ない試験です。範囲が分かっているということは、逆算して設計できるということでもあります。この記事では、設計の手順を具体的に書きます。
1. 直前型が抱える構造的な問題
2週間前から始める場合、実際に使える時間はもっと短くなります。部活が停止になるのは1週間前からという学校が多く、それまでは平日の可処分時間が限られます。
その限られた時間で、5教科あるいは9教科分の範囲を処理しなければなりません。結果として起きるのは次のことです。
- ワークを1周するのが精一杯——2周目に入れないため、間違えた問題が放置される。
- 暗記科目に時間が寄る——短期で点が動く社会・理科に時間を使い、積み上げが要る英数が後回しになる。
- 提出物に追われる——ワーク提出が締切に間に合わず、作業として埋めるだけになる。
3番目が特に問題です。提出物を「埋める作業」にした時点で、それは勉強ではなくなります。答えを写して埋めても、テストの点には結びつきません。
2. 逆算の設計——3週間前から
当塾で生徒に組ませているのは、次の形です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3週間前 | 範囲の確定。ワークの該当ページを確認し、総量を数える。1日あたりの必要量を出す。 |
| 3〜2週間前 | ワーク1周目。この段階では分からない問題があってよい。印をつけて進む。 |
| 2〜1週間前 | ワーク2周目(間違えた問題のみ)。提出物はこの時点で完了させる。 |
| 1週間前〜前日 | 3周目+教科書・プリントの確認。ここで初めて暗記科目に時間を寄せる。 |
重要なのは提出物を1週間前に終わらせることです。直前の1週間は、点を取るための時間に使います。この配置ができるかどうかで、同じ勉強量でも結果が変わります。
3週間前に「総量を数える」という作業も外せません。ワークが何ページあるかを数え、日数で割る。これをやると、1日にやるべき量が数字になります。数字になっていない計画は、実行されません。
3. 範囲の確定を早める
「範囲が発表されるのが2週間前だから、それより早くは始められない」という声があります。しかし実際には、範囲はかなり予測できます。
- 前回のテストの終わりが今回の始まりです。
- 授業がどこまで進んでいるかで、終わりの見当がつきます。
- 教科によっては、年間の進度計画が配られています。
前回の範囲の終わりから、現在の授業の位置までは確実に範囲に入ります。ここを先に処理しておけば、正式な範囲発表後にやることは大きく減ります。
4. ワークの使い方
多くの学校で、ワークが提出物になっています。これをどう扱うかで、テストの点はかなり変わります。
やってはいけない使い方
- 答えを写して埋める
- 直接書き込んで1周で終える
- 丸つけだけして、間違いを放置する
推奨する使い方
- ノートに解く——ワークに直接書き込むと2周目ができません。提出が必要な場合、2周目以降の答えを書き込むようにします。
- 1周目で3分類する——できた/解説を読んで分かった/分からない、の3つ。
- 2周目は後ろ2つだけ——できた問題に時間を使わない。
- 3周目は「分からない」だけ——ここまで残る問題は数問です。
この方法だと、2周目・3周目にかかる時間は1周目よりはるかに短くなります。「3周は無理」と感じるのは、毎回全問解くことを想定しているからです。
5. 教科ごとの配分
時間配分を決めるときの原則は、積み上げが要る教科を先に、暗記で動く教科を後にです。
| 教科 | 性質 | 着手時期 |
|---|---|---|
| 数学 | 積み上げ。演習量が必要 | 最初から毎日 |
| 英語 | 積み上げ。単語・本文の音読が必要 | 最初から毎日 |
| 国語 | 漢字・文法は暗記、読解は積み上げ | 漢字は早め、読解は本文の復習 |
| 理科 | 計算分野は積み上げ、暗記分野は短期 | 計算分野を先に |
| 社会 | 暗記の比重が高い | 1週間前から集中 |
社会を早くから始めると、テスト当日には忘れています。逆に数学を直前に詰めても、解けるようにはなりません。教科の性質に合わせて着手時期をずらすのが設計の要点です。
6. 目標点の決め方
「今回は頑張る」という目標は機能しません。数字にしてください。ただし、数字の決め方には手順があります。
- 前回の点数を教科ごとに並べる
- どこで落としたかを分類する——計算ミス/覚えていない/時間切れ/そもそも分からない
- 分類ごとに上積みできる点を見積もる——計算ミスなら数点、覚えていないなら10点以上動くこともある
- 合計して目標点にする
この手順を踏むと、目標点に根拠が生まれます。根拠のある目標は、やるべきことを自動的に指してくれます。「覚えていないところで20点落とした」なら、やることは暗記の量を増やすことだと決まります。
7. テスト後にやること
返却された答案をそのまま片付けてしまう生徒が多くいますが、次のテストのための情報がここに全部あります。
やることは3つです。
- 失点を分類する——上の4分類(計算ミス/覚えていない/時間切れ/分からない)で仕分けます。
- 同じ分類が続いていないか見る——前回も計算ミスで10点落としているなら、それは偶然ではなく課題です。
- 間違えた問題を解き直す——とくに「分からない」に分類したものは、放置すると次の範囲で効いてきます。
この作業は30分ほどで終わります。にもかかわらず、やっている生徒はあまり多くありません。テスト後の30分が、次のテストの2週間分に相当することがあります。
8. 暗記科目で点を落とさない
社会・理科の暗記分野は、定期テストでもっとも点が動きやすい領域です。範囲が限られているため、やれば取れます。にもかかわらず落とす生徒がいるのは、覚え方に原因があります。
ありがちな失敗
- 教科書を読むだけ——読んでいる間は分かった気になりますが、覚えたかどうかは確かめていません。
- ノートをきれいにまとめる——まとめる作業は時間がかかる割に、記憶にはあまり残りません。
- 一問一答だけをやる——用語は言えても、流れやつながりを問われると答えられません。
推奨する手順
- 教科書を1回読む——全体の流れをつかむ。ここは短時間で。
- ワークを解く——覚えていないところが浮かび上がる。
- 覚えていないところだけを繰り返す——ここに時間の大半を使う。
- 説明できるか試す——用語だけでなく「なぜそうなったか」を口で言う。
4番目が、定期テストで応用問題を落とさないための鍵です。理科の実験問題や社会の記述問題は、用語の暗記だけでは届きません。「なぜ」を言えるかどうかで、上位の点が取れるかが決まります。
覚える作業の効率も、やり方で大きく変わります。1日で50語を1回やるより、10語を5日間毎日やるほうが残ります。間隔を空けて繰り返すのが記憶の原則で、これはテスト前の詰め込みでは実現できません。3週間前から始める設計が効くのは、この点でもあります。
内申点との関係
定期テストの点は、内申点の一部です。ただし内申は、テストの点だけで決まるものではありません。提出物・授業態度・小テスト・実技といった要素が加わります。内申点の実務で詳しく扱います。
ここで押さえておきたいのは、提出物を1週間前に終わらせる設計は、内申の観点でも有利に働くということです。締切ぎりぎりに埋めた提出物と、余裕をもって仕上げた提出物では、評価が変わることがあります。
当塾の立場
当塾では、テスト2週間前に生徒と一緒に計画を作ります。ただし、作った計画がそのまま実行されることはほとんどありません。部活の予定が変わり、体調が崩れ、他教科の課題が増える。これは織り込むべきことです。
そこで重要になるのが、計画に余白を入れておくことです。7日のうち1日は何も入れない。この1日が、ずれを吸収します。びっしり埋めた計画は、2日目のずれで破綻します。
もう一つ正直に書くと、この設計は1回では身につきません。2〜3回のテストを通して、生徒自身が「早く始めると楽だ」と実感して初めて定着します。1回目でうまくいかなくても、それが普通です。
まとめ
- 直前型では処理量に上限がある。3週間前から逆算する。
- 3週間前に総量を数えて日数で割る。数字にならない計画は実行されない。
- 範囲は前回の終わりと授業の進度から予測できる。
- 提出物は1週間前に完了。直前は点を取る時間に使う。
- ワークは3分類して周回。2周目以降は短時間で終わる。
- 積み上げ教科を先に、暗記教科を後に。
- テスト後の30分の分析が、次の2週間分に相当する。
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