英語長文が読めない原因は、たいてい長文ではない
「長文が読めません」という相談は、高校生からもっとも多く受けるものの一つです。ところが答案と読み方を見せてもらうと、原因が長文そのものにあることはあまりありません。
読めない原因は、ほぼ次の4つのどれかに落ちます。語彙・文法(構文)・情報処理・速度です。この4つは順番になっていて、下から積み上げないと上が機能しません。長文問題集を何冊解いても伸びない生徒は、下の層が抜けたまま上を練習しています。
1. どこで止まっているかを判定する
判定は簡単にできます。長文を1つ用意して、次の順で確かめてください。
- 時間無制限・辞書なしで読ませる——ここで内容が取れなければ、語彙か構文の問題。
- 辞書ありで読ませる——辞書を引けば取れるなら語彙が原因。辞書を引いても取れない文があるなら構文が原因。
- 時間無制限なら取れる/時間内だと取れない——速度が原因。
- 内容は取れているのに設問を外す——情報処理(設問の処理)が原因。
この判定を飛ばして「とにかく長文を毎日1題」を始めるのが、もっともよくある遠回りです。原因が語彙なら、長文を解く時間の大半は無駄になります。その時間を単語に使ったほうが早く着きます。
2. 語彙——「知っている」の基準が甘い
語彙不足が原因である生徒は非常に多く、しかも本人に自覚がないことがあります。理由は、「見たことがある」を「知っている」と数えているからです。
長文を読む速度で必要なのは、見た瞬間に意味が出てくる状態です。3秒考えて思い出せる単語は、長文の中では知らない単語と同じです。1文に2つそういう語があれば、その文の処理は止まります。
手当て
単語帳を1冊決め、1語1秒で回します。思い出そうとして止まらない。出てこなければ即座に答えを見て次へ進む。これを高速で何周もします。
1日100語を7日で1周より、1日500語を毎日回して7周するほうが定着します。忘却の間隔を短くするほうが効くからです。1周にかける時間を短くし、周回数を増やすのが原則です。
さらに、長文の中で覚えるのも併用します。単語帳で意味を覚えた語が長文に出てきたとき、文の中で機能するのを見ると記憶が固まります。単語帳だけ、長文だけ、のどちらかに偏らせないでください。
3. 構文——単語は分かるのに文が分からない
辞書を引いても意味が取れない文があるなら、原因は構文です。よく詰まるのは次の形です。
- 主語が長い——名詞句や関係詞節で主語が10語以上ある。述語まで届かない。
- 挿入——コンマに挟まれた部分を本線と読んでしまう。
- 後置修飾——分詞・関係詞・不定詞が名詞の後ろから修飾する形。日本語と語順が逆なので慣れが要る。
- 倒置・強調構文——語順が崩れた形。知らないと読めない。
- 等位接続——andが何と何を結んでいるかを取り違える。
手当て
SVOCを振る作業を、量をこなして通過させます。「文型を取る」は退屈な作業ですが、後置修飾とandの結び先を毎回確定させる訓練になります。
目安として、1文が長い英文を100文ほど処理すると、振らなくても構造が見えるようになります。ここは通過するべき工程で、飛ばすと後で必ず戻ってくることになります。
なお、構文が原因の生徒が「速読」をしても意味がありません。速く読んでも構造は取れないからです。この層にいるうちは、1文ずつ正確にが正しい指示です。
4. 情報処理——内容は取れているのに設問を外す
本文の内容は説明できるのに、選択肢で外す生徒がいます。この場合、読解ではなく設問処理の問題です。
選択肢の外し方
不正解の選択肢は、たいてい次のどれかの作り方をしています。
| 型 | 見分け方 |
|---|---|
| 言い過ぎ | always / all / never / only など強い語が入っている |
| すり替え | 本文にある語は使っているが、主語や対象が違う |
| 本文にない | もっともらしいが、本文に根拠がない |
| 部分的に正しい | 前半は合っているが後半が違う |
とくに「部分的に正しい」は落としやすい型です。選択肢を最後まで読まずに切る/選ぶと、これに引っかかります。
手当て
正解した問題も含めて、すべての選択肢について「なぜ違うのか」を本文の行番号で示す練習をします。時間はかかりますが、10題もやると選択肢の作り方が見えるようになります。
当塾が個別指導で英語長文を扱うときに時間を使うのは、ここです。解説を聞くだけでは、この判断力は身につきません。生徒に説明させて、根拠の行を指ささせるところまでやって初めて残ります。
5. 速度——最後に手をつける
時間内に終わらない、という相談は多いのですが、ここに直接手をつけるのは最後です。1〜4が整っていれば、速度は自動的に上がっているはずだからです。
そのうえで、速度に効く具体的な習慣が2つあります。
返り読みをやめる
日本語の語順に直そうとして、文の後ろから前へ戻る読み方を返り読みといいます。これをしている限り、速度は上がりません。英語の語順のまま、前から意味を取る。最初は理解が粗くなりますが、それでよいのです。
音読
一度読んで構造を取り終えた英文を、繰り返し音読します。意味の分かっている英文を音読するのが条件です。意味の分からない英文を音読しても、音を出しているだけになります。
音読は、英語の語順のまま処理する回路を作る作業です。同じ英文を10回、20回と読み、それを何本か積むと、初見の英文でも前から処理する感覚が残ります。
6. どれだけやれば足りるか
目安を書きます。ただし現在地によって大きく変わるので、あくまで参考としてください。
| 層 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 語彙 | 単語帳1冊を高速周回 | 1冊を10周以上。期間は2〜3か月 |
| 構文 | SVOCを振る/構文の参考書1冊 | 長文100文程度で通過 |
| 情報処理 | 全選択肢の根拠を示す練習 | 10〜20題 |
| 速度 | 読み終えた長文の音読 | 1本20回×10本程度 |
数字を見て「多い」と感じたなら、それが実情です。英語は積み上げに時間がかかる科目で、短期で仕上がるものではありません。だからこそ、原因を外した練習をしている余裕がありません。判定を先にやってください。
7. 「訳せる」と「読める」は違う
丁寧に和訳できる生徒が、試験になると点を落とすことがあります。これは、和訳という作業が英語を日本語に組み替える工程を含むためです。試験中にその工程を全文でやっていると、時間が足りません。
入試で必要なのは、日本語に直さずに意味だけを取る読み方です。頭の中に日本語の文が浮かばなくても、「誰が」「何を」「どうした」が分かっていればそれで足ります。
ただしこれは、構文が取れるようになった後の話です。構文が取れないうちに和訳をやめると、ただの雰囲気読みになります。順序としては、和訳で構造を確定させる時期を通過してから、和訳を捨てます。この切り替えの時期を見誤ると、どちらかで止まります。
8. 段落単位で読む
1文ずつ正確に読めるようになったら、次は段落の役割を意識します。英語の評論的な文章は、段落の最初の文(トピックセンテンス)に主張が来ることが多く、残りはその支えです。
これを知っていると、設問に戻るときの探し方が変わります。「筆者の主張」を問われたら各段落の1文目を見る、「具体例」を問われたら for example / such as / in fact の後ろを見る、という具合に、探す場所が絞れます。
また、段落と段落のつながりを示す語(However / Therefore / On the other hand / Nevertheless)は、本文の展開が変わる合図です。ここに印をつけながら読むと、長い文章でも迷子になりません。
設問の順序が本文の順序と対応していることも多く、この対応を利用すると探す範囲がさらに狭まります。第2問の答えが第1問の答えより前にあることは、あまりありません。
9. よくある遠回り
- 単語帳を何冊も買う——1冊が完成していないうちに次を買うと、どれも中途半端になります。
- いきなり志望校の過去問だけを解く——現在地と差がありすぎると、何も残らずに在庫だけ減ります。
- 解説を読んで納得して終わる——納得と再現は別です。次に同じ形が出たとき自力で処理できるかを確かめてください。
- 速読のテクニックから入る——語彙と構文が足りない状態では機能しません。
- 音読を意味の分からない英文でやる——効果はほとんどありません。
これらに共通するのは、現在地を測らずに方法を選んでいることです。方法そのものが悪いのではなく、その方法が効く層にいないだけ、ということが大半です。
英検との関係
英検のReadingで失点している場合も、原因の切り分けは同じです。語彙で止まっているのか、構文なのか、設問処理なのか。英検の入試利用で書いたとおり、CSEスコアは技能別に出るので、Readingのスコアが低いこと自体は分かります。しかしその中のどこで落としているかまでは、スコアからは分かりません。
入試の長文と英検のReadingは、必要な力の大部分が共通しています。どちらか一方のための勉強、という切り分けは実際にはほとんど不要です。語彙と構文を積めば両方に効きます。
当塾の立場
英語について当塾のクチコミで言及が多いのは事実ですが、短期間で劇的に伸びるという言い方はしません。上に書いたとおり、語彙と構文は量が必要で、量には時間がかかります。
個別指導で意味があるのは、その生徒がどの層で止まっているかを特定し、そこだけをやらせる点です。語彙で止まっている生徒に長文演習をさせない、構文で止まっている生徒に速読をさせない——外さないことが、結局は最短になります。
逆にいえば、判定をせずに一律のカリキュラムを進める個別指導なら、集団授業と変わりません。ここは正直に書いておきます。
まとめ
- 読めない原因は語彙・構文・情報処理・速度の4つ。まず判定する。
- 判定は「時間無制限+辞書」の有無で切り分けられる。
- 語彙は1語1秒。周回数を増やす。
- 構文はSVOCを振る作業で通過する。飛ばせない工程。
- 選択肢は全部について根拠の行を示す練習で外さなくなる。
- 速度は最後。返り読みをやめ、意味の分かった英文を音読する。
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