復習をいつやるか——忘れる前提で組み立てる

忘れるのは失敗ではない

「覚えたはずなのに忘れている」という悩みをよく聞きます。しかし、忘れることは正常な働きであり、防ぐことはできません。問題は忘れることではなく、忘れる前提で組み立てていないことにあります。

一度で覚えようとする勉強は、効率が悪くなります。完璧に覚えようと時間をかけても、数日後には抜けています。それより、不完全なまま何度も戻るほうが、同じ時間で定着します。

この記事では、復習をいつ、どのように行うかを整理します。あわせて、復習が続かない理由とその対処も扱います。

1. 復習のタイミング

復習の間隔について、原則を述べます。厳密な日数にこだわる必要はありませんが、考え方は共通です。

1回目は当日または翌日。学んだ直後は覚えている気がしますが、この段階で一度戻ると定着が違います。時間は短くて構いません。5分でも効果があります。

2回目は数日後。やや忘れかけた頃に戻ります。ここで思い出せないことがあっても問題ありません。思い出そうとする作業そのものが定着を作ります。

3回目は1〜2週間後。この段階で思い出せるなら、かなり定着しています。

4回目は1か月後。ここまで残っていれば、長期の記憶に入っています。

重要なのは、間隔を空けることです。同じ日に4回繰り返すより、4日に分けて1回ずつのほうが残ります。詰め込みが効きにくいのは、この性質によります。

2. 「思い出す」形で復習する

復習のやり方にも差があります。最も差が出るのは、読み返すか、思い出すかです。

教科書やノートを読み返す方法は、負担が軽く、理解している感覚が得られます。しかし、読んでいるときの「分かる」は、自力で出せることを意味しません。目の前に情報があるから分かるだけで、試験では情報がありません。

効果が高いのは、何も見ずに思い出す方法です。ノートを閉じて、その単元で学んだことを白紙に書き出す。単語帳を見ずに、日本語から英語を言う。問題の解答を見ずに解き直す。

この方法は負担が重く、できない部分がはっきり出るため、気分のよい作業ではありません。しかし、できない箇所が見えることこそが目的です。見えれば、そこだけを重点的に戻せます。

具体的な方法として、白紙復元を勧めています。単元を学んだあと、白紙にその内容を再構成して書きます。書けない箇所が、理解できていない箇所です。所要時間は10分程度で、効果は読み返しの数倍になります。

3. 復習を計画に組み込む

復習が続かない最大の理由は、計画に入っていないことです。新しい範囲を進めることだけが計画になっており、戻る時間が確保されていません。

対処は単純で、週に1日、復習だけの日を作ります。新しいことはやらず、その週にやったことと、前の週のことを戻る日にします。

この日があると、平日の学習に余裕が生まれます。「今日できなかった分は復習日に回せる」という前提があるため、詰め込まずに済みます。

もう一つの方法は、1日の学習の最初に前日の復習を置くことです。最初の10分を前日の内容に充てます。始める前の助走にもなり、習慣化しやすい形です。

どちらの方法でも、重要なのはあらかじめ時間を確保しておくことです。余った時間で復習しようとすると、余る時間は生まれません。

4. 科目別のやり方

復習の形は科目によって変わります。

英単語。最も間隔反復が効く領域です。1日に多くを高速で通し、回転数を上げます。1回で覚えようとしないことが原則です。7回通す前提で、1回あたりの負担を下げます。

英文法・構文。問題を解き直す形が基本ですが、それだけでは不足します。なぜその形になるかを説明できるかを確認します。説明できない項目は、暗記で乗り切っている状態です。

数学。解き直しが中心です。ただし、全問を解き直す時間はありません。方針が立たなかった問題だけを対象にします。計算ミスで間違えた問題は、解き直しより計算練習の対象です。

現代文。復習しにくい科目と思われがちですが、方法はあります。解いた文章の段落ごとの要点を、何も見ずに再現します。あわせて、間違えた設問の根拠が本文のどこにあったかを確認します。

古文・漢文。単語と文法は英語と同じく間隔反復。加えて、一度読んだ文章を音読することが有効です。文の形が身体に入ります。

社会。用語の暗記だけでなく、出来事のつながりを口で説明する形が効きます。年号を覚えていても、因果が説明できなければ論述で使えません。

理科。現象の説明を自分の言葉で再現します。公式に数値を入れる練習と、なぜその式になるかの理解を分けて扱います。

5. 復習が続かない理由

やり方が分かっていても続かない。その原因を分けます。

理由1:範囲が広すぎる。「今週やったこと全部」を復習しようとすると、量が多くて着手できません。対象を絞ります。間違えた問題だけ、覚えられなかった単語だけ。

理由2:新しいことのほうが楽しい。復習は既知のものを扱うため、退屈に感じます。対処として、思い出す形にすると負荷が生まれ、単調さが減ります。

理由3:効果が見えない。復習は進んでいる感覚が薄く、やった気がしません。対処は、再現できた割合を記録することです。前回は6割、今回は8割。数字になると進捗が見えます。

理由4:時間が確保されていない。前述の通り、計画に組み込むしかありません。

理由5:何を復習すべきか分からない。記録がないと、戻る対象が特定できません。次の章で扱います。

6. 復習の対象を残す

復習を機能させるには、戻るべき対象が特定されている必要があります。そのための記録の取り方を示します。

最も簡単なのは、印をつけることです。問題集の問題番号の横に、自力で解けたら丸、解けなかったら三角、手も出なければバツ。復習の対象は三角とバツだけです。丸の問題に戻る必要はありません。

2回目に解いたときも同じように印をつけます。三角が丸になれば対象から外れ、三角のままなら残ります。印の推移を見れば、自分の弱点が固定されている箇所が分かります。

単語帳も同様です。覚えられない語だけに印をつけ、その語だけを回します。全体を毎回通すのは、後半になるほど非効率になります。

この記録に必要な時間は、1問あたり数秒です。にもかかわらず、やっている生徒は多くありません。記録がない状態では、復習の対象を毎回探すことになり、それ自体が負担になります。

7. 睡眠と復習

復習の話に関連して、睡眠についても触れておきます。

記憶の定着には睡眠が関わっていることが知られています。学んだあとに十分な睡眠を取ったほうが、定着がよくなるという報告があります。詳細な仕組みはここでは扱いませんが、実務上の示唆は明確です。

睡眠を削って勉強時間を増やす方法は、割に合いません。削った時間で学んだ内容が、定着しないためです。特に試験直前期に徹夜をすると、当日の判断力も落ちます。

また、寝る前の時間は暗記に向くと言われます。就寝前に単語や用語に触れ、翌朝に確認するという流れは、間隔反復の形にもなっています。

高校生の生活では、部活や通学で睡眠が圧迫されがちです。その中で確保するには、時間の使い方を見直すしかありません。移動中、待ち時間、朝の30分。まとまった時間を作ろうとすると睡眠を削ることになりますが、細切れを使えば削らずに済みます。

8. 混ぜて解く

復習のやり方でもう一つ、効果が大きいわりに知られていないものがあります。単元を混ぜて解くという方法です。

通常の問題集は単元ごとに並んでおり、二次関数の章では二次関数の問題だけが出ます。この状態では、どの道具を使うかを考える必要がありません。章題を見れば分かるためです。

しかし試験では、問題に単元名は書かれていません。何の問題かを判断するところから始まります。この判断の訓練が、単元ごとの演習では抜け落ちます。

対処は、複数の単元から無作為に選んで解くことです。復習の時間に、これまでやった範囲から10問を無作為に選ぶ。単元が分からない状態で解くと、難度は上がります。しかしこれが試験に近い条件です。

この方法は、やっている最中の正答率が下がるため、手応えが悪くなります。手応えの悪さと効果は、しばしば逆になります。読み返しは手応えがよく効果が低い、混ぜて解くのは手応えが悪く効果が高い。この関係を知っておくと、方法の選び方が変わります。

9. 人に説明する

定着を確認する方法として、説明が有効です。

誰かに説明しようとすると、自分が分かっていない箇所が即座に見つかります。説明が止まる箇所、曖昧な言い方になる箇所。そこが理解できていない部分です。

相手がいなくても構いません。声に出して説明する、あるいは白紙に説明を書く。頭の中で分かった気になるのを防ぐのが目的です。

友人と教え合う形も有効ですが、注意点があります。教える側は定着しますが、教わる側は聞いているだけになりがちです。交代で説明する形にすると、双方に効果があります。

また、説明するときに用語を正確に使うことを意識すると、質が上がります。曖昧な言葉でごまかしていた部分が表面化します。

10. 時期ごとの復習の重み

学年や時期によって、復習に割く比率は変わります。

新しい単元を学んでいる時期。新規7割、復習3割程度。ただし復習をゼロにしないことが条件です。

範囲が一通り終わった時期。新規と復習が半々、あるいは復習が多くなります。高3の夏以降がこれに当たります。

直前期。新規はほぼ入れません。やったことの確認に絞ります。この時期に新しい教材に手を出すのは、不安から来る行動であることが多く、効果は薄くなります。

特に注意したいのが、高3の夏です。ここで新規の学習に偏ると、それまでの範囲が抜けたまま秋を迎えます。夏は総復習の時期と位置づけるのが一般的で、これには理由があります。

11. 保護者の方へ

家庭から見て、復習ができているかを判断する手がかりを挙げます。

同じ教材を繰り返しているか。次々に新しい問題集を買っている場合、復習が機能していない可能性があります。1冊を複数回やっているほうが、定着しています。

「前にやった」と言えるか。今日やったことを聞いたとき、前にやった内容との関係を説明できるなら、つながりが見えています。

教材に書き込みがあるか。印や日付が書かれていれば、戻る仕組みがあります。きれいなままの問題集は、1回しか解いていない可能性があります。

そして、「忘れた」と言ったときの反応が重要です。ここで責めると、忘れたことを言わなくなります。忘れることは正常であり、分かったのは収穫だという扱いにしていただけると、状況が見えやすくなります。

12. 1週間の具体例

実際にどう組むか、平日5日と週末という形で例を示します。部活がある前提です。時間は目安として調整してください。

平日。最初の10分を前日の復習に充てます。単語であれば前日分の確認、数学であれば前日に間違えた問題の解き直し。ここは短く、毎日必ず行います。

そのあと、その日の新しい学習に入ります。学校の課題、進めている問題集。ここが中心の時間です。

寝る前の10分に、その日の内容を白紙に書き出します。何を学んだか、要点は何か。書けない箇所に印をつけ、翌日の最初の10分で確認します。

週末。どちらか1日に、1〜2時間の復習の時間を取ります。対象は、その週に印がついた項目と、前の週に残った項目。ここで混ぜて解く形を使います。

残りの時間は、平日にできなかった分と、まとまった時間が必要な作業に充てます。英語の長文、数学の重い問題、小論文の作成。細切れではできないものを週末に置くと、平日の負担が下がります。

この形の要点は、復習の時間が固定されていることです。毎日20分、週末に1〜2時間。合計すると週に3〜4時間になります。この時間を確保できるかどうかで、1年後の残り方が変わります。

13. やってしまいがちな復習

効果が薄い復習の形を挙げます。

ノートをきれいに作り直す。作業として達成感がありますが、思い出す作業が入っていません。時間のわりに定着しません。

解答を写す。間違えた問題の解答を書き写す。手を動かしているようで、思考は伴っていません。写すのではなく、解答を閉じて自分で書く形にします。

マーカーを引き直す。読み返しの一種であり、その場では分かった気になりますが、自力で出せるかは確認できていません。

得意な部分を繰り返す。できる問題を解くのは気分がよいため、無意識にそうなります。復習の対象は、できなかった部分に限ります。

試験前だけ大量にやる。間隔反復の逆です。直後の試験には効きますが、長期には残りません。

これらに共通するのは、負荷が低いことです。復習は、ある程度苦しいほうが効いています。楽に感じる方法を選んでいるなら、効果を疑ってよいと思います。

14. 続けるための工夫

方法が正しくても、続かなければ意味がありません。続けるための工夫をいくつか挙げます。

開始の合図を決める。「席に着いたらまず単語帳を開く」のように、考えずに始められる形を作ります。何から始めるか毎回考えると、その判断だけで消耗します。

量ではなく回数を目標にする。「単語を100個」ではなく「1日1回単語帳を開く」。量の目標は、忙しい日に達成できず、そこで途切れます。回数の目標なら、5分でも達成できます。途切れないことが最も重要です。

記録を残す。やった日に印をつけるだけで構いません。連続した記録は、それ自体が続ける理由になります。

完璧を目指さない。1日抜けたときに「もう駄目だ」となってやめるのが、最も多い失敗です。抜けた日は数に入れず、翌日から再開します。

場所を固定する。同じ場所で同じ時間に始めると、習慣になりやすくなります。逆に、場所や時間がばらばらだと、毎回立ち上げる労力がかかります。

15. 最後に

復習について書いてきましたが、要点は単純です。忘れることを前提にして、戻る時間をあらかじめ確保する。これだけです。

多くの生徒が、新しい範囲を進めることを勉強だと考えています。進んだ量が目に見えるため、達成感もあります。しかし、進んだ範囲のうち、残っている部分だけが実力です。進んだ距離ではなく、残った量で測る必要があります。

そして、復習は楽しい作業ではありません。できないことが見えるため、気分が下がります。それでも、この作業を避けると、同じところを何度も新規のつもりでやり直すことになります。結果的に、復習をするほうが時間は少なくて済みます。

やり方を変えて、効果が見えるまでには時間がかかります。1か月では分かりません。2〜3か月続けたところで、模試の結果や、初見の問題への対応に変化が出てきます。それまでは、再現できた割合という指標を見て進んでいることを確認してください。

16. 道具をどう選ぶか

復習に使う道具について、簡単に触れておきます。

紙か画面か。どちらでも構いません。ただし、切り替えの手間が少ないほうを選びます。画面を開くたびに他の通知が目に入る環境なら、紙のほうが続きます。逆に、移動中に使いたいなら画面のほうが現実的です。

専用のノートを作るか。間違いノートを新たに作ると、作ること自体に時間を取られます。問題集に直接印をつけるほうが、手間が少なく続きます。作業を増やさないことを優先します。

単語カードなどの道具。覚えられない語だけを抜き出す用途には向いています。ただし、作るのに時間がかかるため、対象を絞ることが条件です。全語をカードにするのは労力に見合いません。

道具の選択で迷う時間があるなら、手元にあるもので始めるほうが早く進みます。道具を変えても、思い出す作業をしているかどうかは変わりません。そこだけを守れば、形式は問いません。

当塾の立場

当塾では、授業の最初に前回の内容を何も見ずに再現してもらう時間を取ることがあります。短い時間ですが、これがあるかないかで定着が変わります。

また、宿題の量を増やすことを目的にしていません。新しい範囲を大量に出すより、前の範囲に戻る課題を混ぜるほうが、結果として進みます。

そして、「忘れた」ことを問題視しません。忘れるのは当然であり、忘れたことが分かったのは収穫です。そこから戻ればよいだけのことです。忘れたことを責められると、生徒は忘れたことを隠すようになり、抜けが見えなくなります。

まとめ

  1. 忘れるのは正常。忘れる前提で組み立てる
  2. 間隔を空けて4回程度。当日 → 数日後 → 1〜2週間後 → 1か月後
  3. 読み返すより何も見ずに思い出す。白紙復元が有効。
  4. 復習はあらかじめ時間を確保する。余った時間は生まれない。
  5. 戻る対象を記録する。問題番号の横に丸・三角・バツ。
  6. 単元を混ぜて解くと、どの道具を使うかの判断が訓練される。
  7. 手応えのよい方法と効果の高い方法は、しばしば逆になる。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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