現代文の選択肢で迷ったときの決め方——誤答の6つの型

2択で外すのは偶然ではない

現代文の選択肢問題で、「2つまで絞れたのに外した」という経験は誰にでもあります。しかしこれが毎回起きるなら、偶然ではありません。絞り方に手順がないため、最後は印象で選んでいるという状態です。

選択肢問題は、本文の内容を問う問題であると同時に、作られた誤答を見抜く問題でもあります。誤答には型があり、型を知っていれば、迷う場面そのものが減ります。この記事では、誤答の型と、2択に残ったときの決め方を整理します。

1. 解く順序を固定する

まず、選択肢問題を解く順序を決めます。順序が毎回変わると、精度も安定しません。

手順1:設問文を読む。何が問われているかを確認します。傍線部の説明か、筆者の主張か、本文全体の趣旨か。

手順2:選択肢を見る前に、本文から答えを作る。これが最も重要です。自分なりの答えを一言でよいので頭に置いてから選択肢に進みます。先に選択肢を読むと、そこに書かれた内容に引きずられます。

手順3:選択肢を一つずつ検討する。最初から正解を探すのではなく、誤りを探します。一箇所でも本文と矛盾すれば、その選択肢は落ちます。

手順4:残ったものを比較する。2つ残ったら、次の章の手順に移ります。

この順序のうち、手順2を飛ばす人が非常に多くなっています。本文から答えを作るのは面倒に見えますが、ここを行うと手順3の速度が上がるため、全体では速くなります。

2. 誤答の6つの型

誤答の選択肢は、無作為に作られているわけではありません。もっともらしく見えるように、本文の内容を少しずらして作られます。ずらし方には型があります。

型1:言い過ぎ。「すべて」「必ず」「〜に限る」「唯一の」といった強い限定が入っている。本文が「多くの場合」と述べているのに、選択肢が「常に」となっていれば誤りです。強い語が入っている選択肢は、まず疑います。

型2:因果の逆転。本文では「AだからB」なのに、選択肢では「BだからA」となっている。内容語はすべて本文に出てくるため、一見すると正しく見えます。矢印の向きを確認します。

型3:本文にない内容の追加。前半は本文どおりだが、後半に本文に書かれていない要素が足されている。一般常識として正しい内容が足されることが多く、これが厄介です。正しいかどうかではなく、本文に書いてあるかどうかで判断します。

型4:範囲のずれ。本文では特定の条件下でのみ成り立つ話を、選択肢では一般論として述べている。あるいはその逆。限定条件の有無を確認します。

型5:主体のすり替え。誰の意見かがずれている。本文では筆者が批判している他者の見解を、選択肢では筆者の主張として提示している。評論文でよく使われる型です。

型6:部分的正解。述べていること自体は本文にあるが、設問が問うている箇所への答えになっていない。「本文の内容として正しい」が「設問への答えではない」というパターンです。

3. 2択に残ったときの決め方

2つに絞れたら、印象で選ばず、次の手順を踏みます。

手順A:2つの選択肢の差分を特定する。2つの選択肢は多くの部分が共通しています。違っているのは一箇所か二箇所です。まずその差分に線を引きます。この作業をせずに全体の印象で比べるから、外れます。

手順B:差分だけを本文で確認する。選択肢全体をもう一度本文と照合する必要はありません。差分の部分について、本文に根拠があるかを確認します。

手順C:根拠がない側を落とす。両方に根拠があるように見える場合は、設問が問うている範囲に照らして、より直接的に答えている側を取ります。

この手順の要は手順Aです。差分を特定すると、判断すべきことが一点に絞られます。一点であれば、本文で確かめられます。

4. 注目すべき語

選択肢を読むときに、機械的に印をつけるべき語があります。これらは誤答の合図になりやすい語です。

強度を示す語。「すべて」「必ず」「決して」「唯一」「最も」「〜に他ならない」。本文にこれらに対応する記述があるかを確認します。ただし、本文自体が強い主張をしている場合は、選択肢が強くても正解になります。強い語が必ず誤りというわけではありません。本文との対応を見ます。

因果を示す語。「ため」「によって」「結果」「原因」。矢印の向きを確認します。

限定を示す語。「〜の場合に限り」「〜においてのみ」。本文にその限定があるかを見ます。

評価を示す語。「望ましい」「問題である」「意義がある」。筆者が価値判断をしているのか、事実を述べているだけなのかを区別します。事実の記述を価値判断にすり替えるのは頻出の型です。

時制・順序を示す語。「かつては」「現在では」「やがて」。評論文では時代の対比がよく使われ、前後を入れ替えた誤答が作られます。

5. 迷わせるための工夫

作問者の側から見ると、誤答は「選ばせるため」に作られています。どう選ばせるかを知っておくと、防げます。

本文の語を多く含める。本文中の印象的な語が並んでいると、正しく見えます。しかし語が本文にあることと、述べている内容が本文にあることは別です。

常識的に正しい内容を入れる。読者が納得しやすい内容を入れると、本文を確認せずに選んでしまいます。評論文では、筆者が常識を批判している場合があり、この型が特に効きます。

正解に近い内容を、一箇所だけずらす。9割正しく、1割誤り。全体の印象で選ぶと引っかかります。差分を特定する手順が必要になるのはこのためです。

長い選択肢と短い選択肢を混ぜる。長い選択肢は情報量が多く、正しく見えます。しかし長さと正しさは無関係です。長いものを選びたくなる心理があることを知っておくだけで、偏りは減ります。

6. 本文全体の趣旨を問う設問

傍線部のない、本文全体についての設問は、別の扱いが必要です。

この種の設問では、選択肢のそれぞれが本文のどこかの部分に対応していることがよくあります。つまり、どれも本文に書いてある。しかし「全体の趣旨」として適切なのは一つだけです。

判断の基準は、その内容が本文全体を貫いているかです。一つの段落でしか述べられていない内容は、部分であって全体ではありません。段落要約を取っていれば、ここで役に立ちます。

もう一つの基準は、結論部に対応しているかです。評論文の多くは、終盤に筆者の主張が置かれます。全体の趣旨を問う設問では、そこに対応する選択肢が正解になる傾向があります。

ただし、結論部だけを読んで選ぶのは危険です。結論に至る過程が選択肢に含まれていない場合、要素の欠落として不適切になることがあります。

7. 復習のやり方

選択肢問題の復習は、正解の確認だけでは足りません。

1問について、すべての選択肢に判定と理由を書きます。「①誤り:型1(言い過ぎ)、本文には『多くの場合』とある」「②誤り:型3(本文にない)、後半の『経済的な理由』は本文になし」というように、型の番号と根拠をセットで記録します。

これを20問ほど続けると、自分が引っかかりやすい型が見えてきます。人によって偏りがあります。因果の逆転に弱い人、本文にない追加に弱い人。偏りが分かれば、そこだけを重点的に確認する習慣をつけられます。

時間は1問あたり5分から8分かかります。演習の本数を減らしてでも、この復習を行うほうが点数は上がります。解いた数ではなく、型を何個見抜けるようになったかが進捗の指標です。

8. 共通テストと私大の違い

同じ選択肢問題でも、出題の性格には違いがあります。

共通テスト型では、複数の資料を照合する設問や、生徒の会話を題材にした設問が出ます。ここで問われるのは、情報を正確に対応させる作業です。誤答の型としては、資料の取り違えや、範囲のずれが多くなります。

私大の設問では、本文の抽象度が高いものが多く、選択肢も抽象的になります。誤答の型としては、主体のすり替えや因果の逆転が多くなります。

どちらを受けるにせよ、手順は同じです。ただし、演習に使う素材は志望校に合わせます。共通テストのみなら共通テスト型を、難関私大を受けるなら抽象度の高い評論を選びます。素材が違うと、出会う型の分布が変わるためです。

9. 小説の選択肢

小説の選択肢問題には、評論とは別の型があります。

最も多いのが、心情の過剰な断定です。本文の描写からは「戸惑っている」までしか言えないのに、選択肢が「強い怒りを覚えている」となっている。描写と選択肢の温度差を見ます。

次が、本文にない因果の説明です。「〜を思い出したため」「〜への後悔から」といった理由づけが、本文に書かれていない。物語として自然でも、根拠がなければ誤りです。

三つ目が、読者の感想の混入です。「読者に深い感動を与える」「人間の弱さを象徴している」といった、解釈の押しつけが入っているもの。表現の効果を問う設問では正解になる場合もありますが、心情を問う設問では外れます。

小説で迷ったときの基準は明確で、その内容が本文の何行目から言えるかを指差せるかです。指差せなければ選びません。評論より本文の根拠が分散しているため、この基準を厳格に守る必要があります。

10. 迷いを減らす読み方

そもそも迷う場面を減らすには、読む段階での作業が効きます。

対比に印をつける。評論文の大半は対比で構成されています。「かつて/現在」「西洋/東洋」「自然/人工」。対比の軸が見えていれば、主体のすり替えや範囲のずれはすぐ分かります。

筆者の立場を一行で書く。読み終えた時点で、筆者が何に賛成し何に反対しているかを一行で書けるようにします。これがあると、筆者の主張を問う設問で迷いません。

否定されている見解に印をつける。評論文には、筆者が批判するために紹介する見解が必ず出てきます。ここに印がないと、主体のすり替えに引っかかります。

この3つは、読みながら行う作業です。追加の時間はほとんどかかりません。しかし、設問に入ってからの判断速度がまったく変わります。

11. 保護者の方へ

現代文は「センスの科目」と見られがちで、対策のしようがないと思われることがあります。しかし選択肢問題に関しては、手順で改善する余地が大きい領域です。

お子さんの模試を見るとき、正答率だけでなく、どの選択肢を選んだかを見ていただくと分かることがあります。同じ不正解でも、正解に近い選択肢を選んでいるなら読解はできており、最後の判断だけの問題です。まったく外れた選択肢を選んでいるなら、本文の理解そのものに課題があります。

また、現代文の成績は短期間で大きく上下して見えることがあります。これは、出題された文章のテーマへの馴染みによる部分が大きくなります。1回の模試の結果に一喜一憂するより、複数回の平均で見るほうが実態に近くなります。

家庭でできることとしては、日常的に活字に触れる機会を保つことが挙げられます。ただし「本を読みなさい」という形の働きかけは、多くの場合うまくいきません。本人が関心を持っている分野の新書や記事から入るほうが続きます。読む対象より、抽象的な文章に触れる時間があるかどうかが重要です。

12. 実際の絞り方——手順を通しで見る

手順を通しで確認します。架空の設問で、どこで何を判断するかを追います。

本文の趣旨を、ここでは「技術の進歩は人間の能力を拡張すると同時に、拡張された部分に依存を生む。筆者はこれを否定はしないが、依存の自覚が必要だと述べている」としておきます。傍線部は「便利さは、失ったものを見えなくする」です。

手順1。設問は「どういうことか」。言い換えが求められています。

手順2。選択肢を見る前に答えを作ります。「便利な道具を使うようになると、それによって使わなくなった能力が衰えていることに気づかなくなる」。これで十分です。完璧である必要はありません。

手順3。選択肢を検討します。

「①技術の進歩によって、人間はすべての能力を機械に委ねるようになるということ。」——「すべて」が入っています。型1の言い過ぎです。本文は依存を指摘していますが、すべてとは述べていません。落とします。

「②便利な道具の使用が習慣になることで、その道具がなければできなくなった作業の存在自体を意識しなくなるということ。」——自分で作った答えと近い。残します。

「③技術に依存することは危険であり、人間は意識的に技術から距離を取るべきだということ。」——「べき」という主張が入っています。本文の筆者は否定していないと設定しました。型3、本文にない内容です。落とします。

「④便利さを追求した結果、人間は自分が何を失ったのかを思い出せなくなり、過去の生活様式に戻れなくなるということ。」——後半の「過去の生活様式に戻れなくなる」は本文になし。ただし前半は近い。残します。

手順4。②と④が残りました。差分を特定します。②は「存在自体を意識しなくなる」、④は「思い出せなくなり、戻れなくなる」。

傍線部は「見えなくする」です。見えないことと、戻れないことは別です。傍線部に直接対応しているのは②です。④は本文の別の箇所から引いてきた内容で、この傍線部の説明にはなっていません。型6の部分的正解です。

ここで重要なのは、④が誤りだと判断した根拠が「傍線部との対応」にあるという点です。④の内容が本文のどこかに書いてあるかどうかではありません。設問が何を問うているかに常に戻ります。

13. 速度と精度のバランス

ここまでの手順を全設問で丁寧に行うと、時間が足りなくなる場合があります。配分の考え方を示します。

手順1と手順2は、どの設問でも省きません。合わせて30秒程度です。ここを省くと精度が大きく落ちるため、時間節約の対象にしません。

時間を調整するのは手順3です。明らかに誤りの選択肢は、最後まで読まずに落として構いません。誤りは一箇所見つかれば十分だからです。全選択肢を全文読む必要はありません。

手順4に入る設問は、全体の3割程度が目安です。半分以上で2択に残るなら、手順2が機能していない可能性があります。本文から答えを作る作業が甘いと、選択肢に引きずられて絞り切れません。

演習の段階では、時間を測る回と、手順を守る回を分けるのが有効です。両方を同時に追うと、どちらも中途半端になります。手順が身についてから、速度を上げます。

14. 教材の選び方

選択肢問題の訓練に使う教材には、条件があります。

最も重要なのは、解説が「なぜ他の選択肢が誤りか」を書いているかです。正解の根拠だけを書いた解説では、型を学べません。書店で中身を確認するとき、この一点だけを見れば足ります。

次に、本文の分析が載っているかです。段落ごとの役割や対比の構造が図示されていると、読む段階の訓練にも使えます。

冊数は多くなくて構いません。1冊を、全選択肢の判定を書きながら通すほうが、3冊を解きっぱなしにするより効果があります。教材を替えても型は変わりません。

過去問に入る時期は、手順が身についてからです。過去問は診断の道具であり、訓練の道具ではありません。手順がない状態で過去問を消費すると、貴重な素材を無駄にすることになります。

15. 最後に——「読めている」の基準

現代文で難しいのは、自分が読めているかどうかを本人が判断しにくいことです。基準を一つ挙げておきます。

読み終えたあとに、筆者が何に反対しているかを言えるか。これが言えれば、少なくとも文章の骨格は取れています。言えない場合、内容を追ってはいても、構造は見えていません。

もう一つ。自分が選んだ選択肢の根拠を、本文の行番号で示せるか。示せるなら、その正解は再現します。示せないなら、次は外れる可能性があります。

この二つの基準は、点数より早く変化します。点数が動くまでには時間がかかりますが、この基準で見ると、自分が前進しているかどうかが毎回確認できます。指標を点数だけに置かないことが、現代文を続けるうえでは重要になります。

当塾の立場

当塾では、選択肢問題の復習で正解の理由だけでなく、他の選択肢が誤りである理由を全て説明させます。正解が分かっただけでは、次に同じ型で迷います。

また、「なんとなくこれっぽい」という選び方を認めません。合っていても、根拠を言えなければ不正解と同じ扱いにします。厳しく見えますが、根拠なしの正解は再現しないためです。

そして、センスや相性という言葉で説明しないようにしています。選択肢問題の精度は手順で上がります。手順がない状態を「相性が悪い」と表現してしまうと、改善の余地がないことになってしまいます。

まとめ

  1. 選択肢を見る前に、本文から自分の答えを作る
  2. 正解を探すのではなく、誤りを探して落とす
  3. 誤答の型は6つ。言い過ぎ・因果の逆転・本文にない追加・範囲のずれ・主体のすり替え・部分的正解
  4. 2択に残ったら、まず差分を特定し、その一点だけを本文で確認する。
  5. 「正しいか」ではなく「本文に書いてあるか」で判断する。
  6. 復習では全選択肢に型の番号と根拠を書く。自分の弱い型が見える。
  7. 読む段階で対比・筆者の立場・否定されている見解に印をつけると、迷いが減る。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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