大学群の呼称を分解する——GMARCH・日東駒専・関関同立という括りの成り立ちと限界

大学群の呼称は、誰が何のために作ったのか

受験の話題では、大学名を個別にではなく「GMARCH」「日東駒専」「関関同立」といった括りで語ることが多くあります。便利な言葉ですが、この括りが何を根拠に、誰によって作られたのかを知っている受験生は多くありません。

括りを鵜呑みにすると、受験校選びを誤ります。同じ括りの中でも入試難度は大きく違い、学部によっては括りをまたいで逆転します。この記事では、呼称の成り立ちと限界、そして受験校選びで実際に見るべき指標を整理します。

1. 呼称はどこから来たか

大学群の呼称の多くは、予備校が模試の結果を整理するために作った区分に由来します。大学側が名乗ったものではありません。

性質 内容
作った主体 主に予備校・受験情報誌
作った目的 模試の判定や併願指導で、似た難度の大学をまとめて扱うため
基準 その時点の偏差値帯、所在地、規模など
更新 頻繁には更新されない。実態とずれていくことがある

重要なのは4つ目です。括りは作られた時点の相場を反映していますが、その後の変化を自動的には取り込みません。学部の新設、入試方式の変更、定員の増減によって、実際の難度は動きます。10年前の括りを今の受験に使うと、判断を誤ります。

2. 同じ括りの中の差

括りの中は均質ではありません。差が生まれる要因は主に4つです。

要因 どう効くか
学部 同じ大学でも、学部間で難度が大きく違う。人気学部と不人気学部で偏差値が10以上離れることがある
入試方式 全学部統一、個別日程、共通テスト利用で難度が変わる。共通テスト利用は高めに出やすい
科目数 3科目型と2科目型では、必要な学力の幅が違う
所在地 都心キャンパスと郊外キャンパスで志願者数が変わる

このうち入試方式の影響を軽く見る受験生が多いという印象があります。同じ大学の同じ学部でも、方式が違えば合格に必要な得点率が変わります。括りで語るときには消えてしまう情報です。

3. 括りで語ると何が失われるか

  • 学部の中身。同じ経済学部でも、カリキュラムもゼミの体制も大学によって違います。括りはこれを消します。
  • 教員の専門。自分の関心に近い研究をしている教員がいるかどうかは、括りからは分かりません。
  • 卒業後の進路の傾向。大学ごと・学部ごとに就職先の分布は違います。
  • 通学の負担。4年間毎日通う距離は、実際の生活を大きく左右します。

受験校を決める段階では、括りは最初の絞り込みにだけ使い、最終判断では使わないのが現実的です。括りは「だいたいこのあたり」を示すもので、選ぶための道具ではありません。

4. 偏差値の性質を確認する

括りの根拠になっている偏差値についても、性質を押さえておく必要があります。

性質 意味すること
母集団に依存する 誰が受けた模試か。難関大志望者中心の模試と、幅広い層が受ける模試では数字が変わる
合格可能性の指標 学力そのものではなく「その集団の中での位置」を示す
方式ごとに出る 大学単位ではなく、学部・方式単位で見る必要がある
定員の影響を受ける 定員が少ない方式は偏差値が高く出やすい

最後の点は見落とされがちです。定員10名の方式と定員300名の方式では、同じ偏差値表示でも意味が違います。少数定員の方式は変動が大きく、前年の数字がそのまま参考になりません。

5. 受験校選びで実際に見る指標

括りの代わりに何を見るか。優先順に挙げます。

見るもの どこで確認するか
1 学びたい内容がカリキュラムにあるか 大学公式のカリキュラム表、シラバス
2 関心に近い研究をしている教員がいるか 教員紹介ページ、研究業績
3 入試方式ごとの科目と配点 募集要項
4 過去数年の実質倍率 大学公表の入試結果
5 通学時間と費用 経路検索、学費表

4つ目の実質倍率(受験者数÷合格者数)は、志願倍率より実態に近い数字です。志願者の中には出願だけして受験しない人が含まれます。大学が公表している入試結果に、受験者数と合格者数が載っていることが多いので確認してください。

6. 「格」をめぐる議論との距離

大学群の話題は、しばしば「どちらが上か」という議論になります。ネット上の比較記事や動画も多くあります。

こうした議論に触れるときは、何を基準にした上下なのかを確認してください。入試難度なのか、就職実績なのか、研究業績なのか、知名度なのか。基準が違えば順序は変わります。基準を示さずに順序だけを語る主張は、根拠を確かめようがありません。

基準 測るもの 注意点
入試難度 入学時点の学力の目安 方式・学部で大きく変わる
就職実績 卒業生の進路 学部構成の違いが影響する
研究業績 論文数・被引用数など 学部生の学習環境とは別の話
知名度 認知の広さ 地域差が大きい

3つ目に注意が必要です。研究業績が高い大学が、学部生にとって良い環境とは限りません。大学院中心の大学では、学部教育の手厚さは別の要因で決まります。

7. 地域による評価の違い

大学の評価は地域によって変わります。同じ大学でも、首都圏と関西、地方では認知も評価も異なります。

この差が実際に効くのは、就職活動で地域を限定する場合です。地元企業に強い大学と、全国的な知名度のある大学は必ずしも一致しません。地元で就職したいなら、その地域での実績を見るほうが実用的です。

逆に、進学後に住む場所を選びたいなら、大学の所在地そのものが選択に影響します。括りの議論は、この地域性をほぼ扱っていません。全国一律の順序であるかのように語られる点に、注意が必要です。

8. それでも括りが役に立つ場面

括りを全否定する必要はありません。役に立つ場面もあります。

  • 最初の視野を広げるとき。知らない大学の名前を知るきっかけになる。
  • 併願の組み立てを考えるとき。似た難度帯を把握する目安になる。
  • 家族と話すとき。共通の言葉として使える。ただし中身の説明は必要。

問題は、括りを目標そのものにしてしまうことです。「GMARCH以上」を目標にすると、そのどこで何を学ぶのかが空白のまま受験が進みます。総合型選抜では、この空白が志望理由書で露呈します。

9. 総合型選抜では括りが使えない

総合型選抜を受ける場合、大学群の括りはほとんど役に立ちません。理由は明確です。

理由 内容
方式が大学ごとに違う 書類のみ、小論文あり、口頭試問あり。括りの中でもばらばら
出願要件が違う 評定基準、英語資格、専願かどうか
評価の重心が違う 同じ括りでも、実績重視の大学と問いの質を重視する大学がある
志望理由が問われる 「この括りだから」は理由にならない

とくに4つ目です。志望理由書で「難易度が自分に合っていたから」とは書けません。その大学でなければならない理由を書く必要があり、それは括りからは出てきません。

10. 保護者の方へ

大学群の呼称は、保護者の世代と現在とで内容が変わっていることがあります。学部の新設や統廃合、入試方式の多様化によって、当時の印象がそのまま当てはまらない場合があります。

お子さんと進路の話をされるときは、括りではなく「何を学ぶか」から話を始めると、噛み合いやすくなります。括りの話は、どうしても優劣の話になりがちです。学部の中身の話であれば、本人が調べたことを話しやすくなります。

また、入試方式の多様化によって、同じ大学に複数の入り口があることも変化のひとつです。一般入試だけを前提に話すと、選択肢が狭く見えます。

11. 括りが生まれた背景を、もう少し詳しく

なぜ大学を群でまとめる必要が生じたのかを考えると、括りの限界がよく見えてきます。

受験人口が多かった時期、予備校は膨大な数の受験生に対して短時間で進路指導を行う必要がありました。一人ひとりの関心を聞き取って学部を選ぶ時間はなく、模試の偏差値から機械的に「このあたりが射程」と示す方法が求められます。そこで、似た偏差値帯の大学をまとめて扱う区分が便利に使われるようになりました。呼称の多くが語呂のよい頭文字の並びになっているのは、指導の現場で口頭で使うためです。

つまり括りは、受験生の側の必要から生まれたというより、大量の受験生を捌く側の必要から生まれたものです。この出自を知っておくと、「自分の進路を決めるための道具ではない」ことが理解しやすくなります。似た難度の大学をまとめて示す機能しか、もともと持っていないのです。

また、括りは一度広まると、それ自体が受験生の行動を左右するようになります。ある括りに入っている大学は志願者が集まり、入っていない大学は同程度の内容でも志願者が集まりにくい。括りが難度を反映するだけでなく、難度を作り出す側面もあるということです。この循環があるため、括りは実態から遅れながらも、それなりに持続します。

12. 括りで判断すると起きる失敗

実際に相談を受けていて多いのが、次のような失敗です。それぞれ、なぜ起きるのかを説明します。

ひとつ目は、併願校の難度を読み違えることです。「同じ括りだから、押さえになるだろう」と考えて出願したところ、その大学のその方式が定員の少ない特殊な形で、実際には第一志望より難しかった、という例があります。括りは大学単位の情報であり、方式単位の情報を含んでいません。押さえの学校を決めるときこそ、方式ごとの実質倍率と科目を確認する必要があります。

ふたつ目は、学部を後回しにすることです。括りで大学を決めてから「どの学部でもいいから入れるところ」と考えると、入学後に学ぶ内容と関心がずれます。総合型選抜ではこの順序では書類が書けませんし、一般入試で入学した場合でも、4年間の学習意欲に影響します。学部は入学後の生活を決める要素であり、大学名より生活への影響が大きいものです。

みっつ目は、地方大学を検討から外してしまうことです。括りの多くは首都圏と関西の私立大学を対象としており、地方の国公立大学は別の枠組みで語られます。そのため、括りを基準に考えていると、学費も安く、少人数教育を受けられる選択肢が視野に入りません。学びたい分野によっては、地方の国公立大学のほうが研究環境が整っていることもあります。

よっつ目は、括りの境界に固執することです。「この括りに入れるかどうか」で一喜一憂すると、境界付近の大学の中で、自分に合うかどうかの検討が飛びます。境界は人為的な線であり、そこに学びの質の断絶があるわけではありません。

13. 括りの代わりに使える整理の仕方

では、大学を比較するときに何を軸にすればよいのか。関心の段階に応じて、次のように整理すると考えやすくなります。

学びたい分野が決まっていない場合は、まず「どの学問領域があるのか」を知るところから始めます。大学のパンフレットではなく、学問分野を解説した本や、各学部のシラバスを見るほうが実態がつかめます。シラバスには半期で何を扱うかが書かれており、その分野で何を学ぶのかが具体的に分かります。この段階では大学名は関係ありません。

分野が決まっている場合は、その分野を扱う学部・学科を持つ大学を一覧にします。ここで初めて大学名が出てきますが、括りは使いません。学科名が同じでも中身は違うため、カリキュラム表を並べて比べます。必修科目の構成、卒業論文の有無、ゼミが何年次から始まるか。この3点だけでも、大学ごとの性格が見えてきます。

複数の候補が残った場合は、入試方式と通学条件で絞ります。ここまで来て初めて、難度の話が出てきます。順序が逆になっていないかを確認してください。難度から入ると、学びの中身が空白のまま受験が進みます。

14. 費用という軸

括りの議論からは抜け落ちがちですが、実際の進学では費用が大きな要素になります。私立大学と国公立大学では学費が大きく異なり、さらに理系・医療系では差が広がります。自宅から通えるかどうかで、住居費の有無も変わります。

費用を検討に入れるときは、4年間の総額で考えることをお勧めします。初年度納入金だけを見ると、2年目以降の実態が見えません。また、大学独自の給付型奨学金や、成績優秀者向けの学費減免制度を設けている大学もあります。これらは募集要項や大学の学費ページに記載されています。

費用の話を受験生本人が避けがちなのは理解できますが、進学後に無理が生じると学習にも影響します。早い段階で家庭内で共有しておくほうが、結果的に選択肢を広く保てます。括りの中で「上」を目指すことより、無理のない条件で学びたい内容が学べることのほうが、4年間の充実度に効きます。

15. 括りが実態とずれていく仕組み

括りが古びる原因を、具体的に挙げておきます。受験期に情報を見るとき、どこを疑えばよいかの目安になります。

学部の新設と改組が最も影響します。近年、多くの大学が国際系、データサイエンス系、心理系の学部・学科を新設しています。新設学部は初年度に志願者が集中することもあれば、認知が進まず低倍率になることもあり、数年間は難度が安定しません。括りはこの動きを反映していません。

入試方式の多様化も大きな要因です。かつては一般入試が中心でしたが、現在は総合型選抜、学校推薦型選抜、共通テスト利用、全学部統一方式など入り口が複数あり、大学によって定員の配分が異なります。一般入試の定員を絞っている大学では、一般入試の難度が上がります。括りが示す難度は、主に一般入試の偏差値に基づいているため、この変化を追いきれません。

受験人口の変化も効きます。18歳人口の推移によって、同じ大学でも倍率は動きます。加えて、安全志向が強まる年は上位校の志願者が減り、中堅校に集まるといった動きもあります。こうした年ごとの変動は、括りには現れません。

キャンパスの移転も見逃せません。郊外キャンパスを都心に移した大学では、志願者が大きく増えた例があります。通学の利便性は受験生の選択に強く影響するため、移転の前後で難度が変わります。

16. 情報源をどう選ぶか

大学選びの情報は大量にありますが、信頼できる範囲が異なります。優先順位をつけて使い分けてください。

一次情報は、大学が公表しているものです。募集要項、入試結果、カリキュラム表、シラバス、学費表。これらは大学自身が責任を持って出しているもので、最も確実です。受験の最終判断は必ずここで行ってください。

二次情報は、予備校や進学情報サイトの集計です。偏差値表、倍率の推移、併願データ。複数の大学を横並びで見るには便利ですが、集計の方法や母集団が示されていないことがあります。参考として使い、最終判断には使いません。

三次情報は、個人の発信です。動画、ブログ、掲示板。生の声が得られる一方、個人の経験や立場に強く依存します。「自分はこうだった」という話を「一般にそうだ」と受け取らないことが重要です。とくに大学の優劣を断定する内容は、基準が示されていないことがほとんどです。

三次情報を使う場合は、そこで得た情報を一次情報で確かめるという使い方に限るのが安全です。「この大学のこの制度が良いらしい」と聞いたら、大学の公式ページでその制度の内容を確認する。この手順を踏めば、三次情報も有用な入口になります。

17. 括りの話題が出たときの受け答え

受験期には、親戚や友人から大学群の話題を振られる場面があります。そのときに消耗しないための考え方を挙げておきます。

まず、相手は基準を持っていないことが多いと理解しておくことです。「あそこはいい大学だ」という発言の多くは、知名度や過去の印象に基づいています。悪意はなくても、根拠は曖昧です。反論する必要はなく、「この学部でこういうことを学びたいと思っています」と、自分の基準で答えれば足ります。

次に、自分の中の基準を言葉にしておくことです。なぜその大学なのかを一文で言えるようにしておくと、外からの評価に揺さぶられにくくなります。これは総合型選抜の面接の準備にもそのまま使えます。一般入試を受ける場合でも、志望理由が言語化されていると、受験期の終盤に踏ん張りが効きます。

最後に、他人の受験結果と自分を比べないことです。括りは比較を誘発する道具でもあります。同じ括りの中で誰がどこに受かったかは、自分の進路とは関係がありません。

当塾の立場

当塾は大学受験の指導を行っています。その前提でお読みください。

そのうえで、当塾は大学群の括りを目標設定に使いません。「どこ以上」という目標は、学ぶ内容と切り離されており、総合型選抜では書類が書けなくなるためです。代わりに、学部のカリキュラムと教員の研究内容を見てもらい、そこから受験校を組み立てます。

一般入試についても、括りではなく学部・方式ごとの科目と配点から必要な学力を逆算します。同じ括りの中でも必要な準備は違うためです。

まとめ

  1. 大学群の呼称は予備校が模試のために作った区分が起源。大学が名乗ったものではない。
  2. 括りは作られた時点の相場で、その後の変化を取り込まない。
  3. 同じ括りの中でも学部・入試方式・科目数で難度が大きく違う。
  4. 偏差値は母集団と定員に依存する。方式単位で見る。
  5. 受験校選びではカリキュラム・教員・配点・実質倍率・通学を見る。
  6. 「どちらが上か」の議論は基準を確認する。基準が違えば順序は変わる。
  7. 総合型選抜では括りは使えない。志望理由にならないため。

入試方式・定員・配点は毎年変更されます。受験校の検討にあたっては、志望校が公表する最新の募集要項と入試結果でご確認ください。

この記事と関わりの深い記事です。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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