総合型選抜の対策塾をどう見分けるか

総合型選抜の対策塾をどう見分けるか

総合型選抜の受験者が増えたことで、対策を掲げる塾も増えました。その中には、実務を伴わないものも混じっています。

当塾も塾業を営んでいる以上、この話題を書くのは利益相反を含みます。その前提を明示したうえで書きます。以下は当塾を選んでもらうための基準ではなく、どこを選ぶ場合でも確認したほうがよい項目です。

1. なぜ質の差が出やすいのか

一般選抜の指導は、成果が数字で見えます。模試の偏差値、過去問の得点。指導が機能しているかを外から測れます。

総合型選抜の指導には、この指標がありません。志望理由書の質を、家庭が判断するのは難しいのです。そのため、実務が伴っていなくても、それが見えにくい構造があります。

さらに、指導に必要な能力の幅が広いという事情もあります。

  • 学問領域の知識——その分野で何が問われているかを知っている必要がある
  • 研究の作法——問いの立て方、先行研究の探し方、手法の選び方
  • 文章の指導——構造をつくる指導
  • 面接の指導——深掘りに耐える練習をつけられる
  • 制度の知識——大学ごとの方式と要件

この全部を備えるのは簡単ではありません。結果として、テンプレートを配って埋めさせる形の指導が生まれます。

2. テンプレート指導の何が問題か

型を教えること自体は有効です。当塾も構造は教えます。問題は、型だけを渡して中身を生徒任せにすることです。

テンプレートに沿って書かれた志望理由書は、形式的には整います。しかし次の弱点が残ります。

  1. 他の受験生と似る——同じ塾から同じ形の書類が複数届きます。
  2. 原体験が薄い——枠に合わせて経験を選ぶため、本人の関心とずれます。
  3. 面接で崩れる——自分で考えていない部分は、深掘りで止まります。
  4. 先行研究がない——調べる工程が省かれます。

3番目が、2027年度以降はより深刻になります。面接が必須化されると、書類と本人の乖離が検出されるからです。書類を作る力より、本人が語れる状態を作る力が問われます。

3. 生成AIで作った書類の問題

生成AIで志望理由書を作ることについては、塾側にも極端な主張が両方あります。「AIで作れば十分」という主張も、「AIは一切使うな」という主張も、どちらも実務的ではありません。

実際に起こるのは次のことです。

  • AIが書いた文章は整っているが、具体性が薄い——原体験の細部が出ません。
  • 先行研究への言及が実在するか確認が必要——存在しない文献を挙げることがあります。
  • 本人が説明できない——面接で答えられません。

逆に、調べ物の入口、問いの検討相手、構造の確認としては有効です。「使うか使わないか」ではなく「どこまで使うか」の問題だと考えてください。詳しくは生成AIの使い方に書きます。

4. 説明会・面談で聞くべき9項目

どの塾を検討する場合でも、次を聞くと実務があるかが分かります。

  1. 誰が指導しますか——担当者の経歴と、その分野の知識。
  2. 指導の最初に何をしますか——いきなり書かせるのか、調べる工程があるのか。
  3. 先行研究はどう探しますか——具体的な方法を答えられるか。
  4. テンプレートを使いますか——使う場合、中身をどう個別化するか。
  5. 面接の深掘りにはどう対応しますか——想定問答の暗記以外の方法があるか。
  6. 志望理由書は何回書き直しますか——1〜2回で終わるなら、構造の検討が浅い可能性。
  7. 生成AIをどう扱いますか——方針が説明できるか。
  8. 不合格だった場合、どう切り替えますか——一般選抜への接続を考えているか。
  9. 合格実績の数え方は——併願含みか、指導期間はどれくらいの生徒か。

8番目が有効な質問です。不合格を前提にした計画を持っている塾は、実務をやっています。「必ず受かります」としか答えない場合、その手順がない可能性があります。

5. 合格実績の読み方

合格実績は、数え方によって見え方が大きく変わります。確認すべきは次の点です。

確認点 なぜ見るか
延べ数か実人数か 1人が5校合格すると「5名合格」と書けます。
指導期間 1回だけ添削した生徒も含まれることがあります。
母数 合格数だけでは率が分かりません。
方式 一般選抜の合格が混ざっていることがあります。
年度 過去数年の累計を1年分のように見せる場合があります。

「合格率100%」という表示を見たら、母数と、合格の定義を確認してください。受験校を絞れば率は上がります。

6. 費用の見方

総合型対策は高額になりやすい領域です。判断の材料としては次を確認します。

  • 総額がいくらか——月額だけでなく、入会金・教材費・志望校追加料金を含めた総額。
  • 何回の指導が含まれるか——回数無制限と書かれていても、実際の上限を聞く。
  • 途中でやめた場合の扱い——返金規定。
  • 追加費用の発生条件——出願校が増えた場合など。

費用の高さ自体は問題ではありません。何にいくら払っているかが説明できるかが判断材料です。

7. 塾を使わない選択

正直に書きますが、総合型選抜の対策は、塾を使わずに進めることも可能です。必要なのは次の環境です。

  • 調べ方を教えてくれる人がいる(学校の先生でもよい)
  • 書いたものを読んで、構造を指摘してくれる人がいる
  • 面接で深掘りしてくれる人がいる
  • 自分で調べ続ける習慣がある

これらが揃うなら、塾は必須ではありません。学校の進路指導や、志望分野に詳しい大人がいる場合、そちらのほうが有効なこともあります。

塾が提供できるのは、この環境を外注できることであって、魔法ではありません。

当塾の立場

繰り返しますが、この記事は塾業を営む立場から書いています。そのうえで明示しておきます。

当塾は総合型選抜の専門塾ではありません。書類の添削・面接練習・小論文指導は行いますが、それだけを扱う塾に比べて、方式ごとの網羅性では及ばない部分があります。専門的な指導が必要な状況であれば、その旨をお伝えします。

また、当塾が総合型対策を単独で勧めることはありません。一般選抜の学力を並行して積むことを前提にしています。理由は、不合格時に戻る先が必要だからです。

費用についても、総合型対策のみを高額のパッケージにする形は取っていません。上に書いたとおり、質を決めるのは指導の量ではなく、生徒自身が調べ考えた蓄積だと考えているためです。

まとめ

  1. 総合型の指導は質が外から見えにくい構造がある。
  2. テンプレート指導は形式は整うが、面接で崩れる
  3. 生成AIは「使う/使わない」ではなくどこまで使うか
  4. 聞くべきは9項目。特に「不合格ならどう切り替えるか」
  5. 合格実績は延べ数・母数・指導期間・方式を確認する。
  6. 費用は総額と、何に払っているかの説明で見る。
  7. 塾は必須ではない。環境を外注できるだけ。

この記事は塾を運営する立場から書いています。判断の材料としてお読みください。

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記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

当塾について

武蔵野個別指導塾は武蔵境駅から徒歩30秒の完全個別指導塾です。総合型選抜(旧AO)入試対策授業料のご案内よくあるご質問に、指導の進め方と費用をまとめています。実際に通われた方の声は合格者の声をご覧ください。ご相談・体験のお申し込みはお問い合わせから承ります。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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