成蹊大学の総合型選抜(2027年度)|名称変更と出願要件の読み方

成蹊大学の総合型選抜は、2027年度に名前が変わりました

成蹊大学の総合型選抜は、長く「AOマルデス入試」という名称で実施されてきました。この名前で検索している受験生も多いと思います。

ところが2027年度入試から、名称が「総合型選抜(自己推薦型)」に変わりました。さらに、これまであった「総合型選抜 基礎学力型」は実施を取りやめることが公表されています。名前で探していると、そもそも情報にたどり着けない状態になっています。

この記事は、2026年9月11日時点で成蹊大学の公式サイトに掲載されている内容をもとに書いています。入試の要件は毎年変わります。出願の際は必ず、その年度の入学試験要項をご自身で確認してください。

出典:成蹊大学 入試情報サイト S-NET「総合型選抜入試概要」および「法学部|AOマルデス入試」(2026年9月11日確認)

1. 2027年度の変更点

  1. 名称変更——「AOマルデス入試」から「総合型選抜(自己推薦型)」へ。
  2. 基礎学力型の廃止——「総合型選抜 基礎学力型」は実施を取りやめ。

2番目は、志望者にとって影響が大きい変更です。学科試験に近い形で受けられる経路がなくなったということなので、基礎学力型を前提に準備していた場合は設計を組み直す必要があります。

こうした変更は、大学のウェブサイトで静かに行われます。塾や情報サイトの記事は、更新されないまま残ります。だからこそ、要項の原本を見る習慣が要ります。

2. 募集人員

自己推薦型の募集人員は、学部・学科ごとに公表されています。

学部 学科・専攻 募集人員
経済学部 経済数理学科 4名
経済学部 現代経済学科 10名
経営学部 総合経営学科 25名
法学部 法律学科 9名
法学部 政治学科 6名
国際共創学部 国際日本学専攻 5名
国際共創学部 環境サステナビリティ学専攻 7名
理工学部 データ数理ほか4専攻 15名

目を引くのは経営学部の25名です。他学科と比べて枠が大きく、この経路を主軸にする設計が成り立ちます。一方、経済数理学科の4名や国際日本学専攻の5名は、少数の枠を争うことになります。

同じ大学でも、学科によって性格がまったく違うということです。「成蹊の総合型は入りやすい/入りにくい」という一般論は成り立ちません。

3. 選考の構造

公式サイトには、「書類審査と各学部における課題審査の2段階で総合的に合否を判定」と書かれています。

この一文から読み取れることは3つあります。

  1. 2段階である——書類だけでは終わらない。課題審査に進まなければ合格しない。
  2. 課題審査は学部ごとに違う——「各学部における」と明記されている。共通の対策では届かない。
  3. 総合判定である——どこか一つが突出していれば通る形ではない。

法学部については、かつて「討論力審査」——事前に発表されたテーマについてグループで討論し、参加姿勢や発言内容を審査する形式——が実施されてきました。グループディスカッションへの備え方はグループディスカッションで見られていることで扱っています。

ただし、名称変更にともなって審査の中身が変わっている可能性があります。ここは、必ずその年度の要項で確認してください。過去の形式を前提に練習を積んで、当日まったく違う課題が出るのが最悪の形です。

4. 出願資格について

公式の概要ページには、評定平均や英語外部検定を出願資格とする記載はありません。経済学部の現代経済学科・経営学部・法学部については、履修科目や資格の条件がないという説明がなされてきました。

これは、「誰でも出願できる」という意味であって、「誰でも受かる」という意味ではありません。むしろ条件がないぶん、書類と課題審査だけで差がつきます。

出願資格に条件がない入試では、次のことが起こります。

  • 志願者の幅が広くなる——実績のある受験生も、そうでない受験生も出願できます。
  • 書類の質がそのまま差になる——足切りの材料がないため、書類で判断されます。
  • 「出せるから出す」という出願が増える——準備の薄い出願と比較されることになります。

つまり、要件が緩いことは有利に働きません。むしろ準備の密度が問われます。

5. 専願であること

成蹊大学の総合型選抜には、明確な制約があります。

  1. 成蹊大学内の学部併願はできません。
  2. 合格した場合は必ず入学することを前提とした入試です。

検定料は1学部・1学科(専攻)につき35,000円と公表されています。

1番目は見落としやすい条件です。「経営学部と法学部の両方に出す」ができません。枠の大きい経営学部と、志望度の高い法学部で迷う、という状況が起こり得ます。

2番目は、出願の前に家庭で確認しておくべき点です。合格したら他大学には行けません。「受かったら行く大学」であるかどうかを、出願前に決めておく必要があります。

この判断は、他の大学の併願方針と合わせて考えることになります。出願要件の読み方で、専願・併願の整理のしかたを扱っています。

6. 準備の設計

2段階選考で、しかも学部ごとに課題が違う形式では、準備を時期で分けると管理しやすくなります。

時期 やること
高2まで 志望学部の決定。学部で扱う分野の本を数冊読む。評定は確保しておく。
高3春 要項の公表を待ち、公表されたら当日中に全文を読む。変更点を確認。
高3初夏 書類の骨格を作る。問い(RQ)の設定。過去の課題形式の確認。
高3夏 書類の推敲。課題審査の形式に合わせた練習を開始。
出願直前 書類の最終確認。一般選抜の勉強を止めない。

2行目を強調しておきます。要項が出たら、その日のうちに全文を読んでください。今回の名称変更や基礎学力型の廃止のような変更は、要項を読まないと気づけません。

書類の作り方は志望理由書の構造で詳しく扱っています。原体験、問い、先行研究、リサーチギャップ、研究手法という順序は、どの大学でも共通です。

7. 一般選抜との関係

総合型選抜で不合格になった場合、そこから一般選抜までの時間は限られます。だからこそ、総合型の準備期間中も一般選抜の勉強を止めないことが前提になります。

実務的には、次のように配分します。

  • 書類作成の時期——一般の勉強を6〜7割、書類を3〜4割。
  • 課題審査の直前——1〜2週間だけ課題対策を厚くする。
  • 結果が出た後——不合格ならその日から一般に全振り。

「総合型に集中したほうが受かる」という助言を受けることがありますが、枠が一桁の学科で、退路を断つ合理性は薄いと考えています。

8. 書類で書くべきこと

出願資格に条件がない以上、書類の中身がそのまま評価になります。成蹊大学の総合型選抜で提出する書類を作るとき、次の順序で考えてください。

  1. 問い(RQ)を先に決める——「何を学びたいか」ではなく「何を明らかにしたいか」。ここが決まらないと、以降がすべてぼやけます。
  2. その問いに至った経緯を書く——原体験は派手である必要がありません。日常の観察で十分です。
  3. すでに分かっていることを調べる——志望学科の教員が書いた論文を読む。ここを飛ばすと、問いが素朴なまま止まります。
  4. まだ分かっていないことを特定する——リサーチギャップ。ここが問いの価値になります。
  5. どう調べるかを書く——手法。高校生に可能な範囲で構いません。
  6. その学科でなければならない理由を書く——カリキュラム、教員、演習の形式。調べていないと書けません。

6番目について補足します。成蹊大学は少人数教育を特色として掲げており、演習(ゼミ)の形式が学科ごとに違います。「少人数だから」では理由になりません。どの演習で、誰の指導のもとで、何をやりたいのかまで書けるかが分かれ目です。

この作業は、大学のシラバスを読めば誰でもできます。塾に通う必要はありません。やるかやらないかだけの差です。

9. 課題審査の練習

学部ごとに課題が違うため、練習の形も変わります。過去に実施されてきた形式をふまえると、次の3系統に整理できます。

系統 練習の方法
読解と文章表現 3,000〜6,000字程度の論説を読み、要約と自分の見解を書く。週1本。
討論 4〜6人で20〜30分の議論を実際に行う。録音して発言量と内容を確認する。
口頭での説明 自分の問いを3分で説明し、質問に答える。答えられなかった質問を記録する。

どの系統でも共通して効くのは、「反対の立場を、その立場の言葉で説明できるか」です。これができないと、討論でも記述でも深さが出ません。論理的思考の道具小論文の型が土台になります。

なお、練習相手がいない場合、討論の練習だけは独力では難しくなります。学校の先生や友人に協力してもらうか、実際に人が集まる場を探してください。

10. よくある誤解

「実績がないと出せない」

出願資格に実績の要件は記載されていません。大会の入賞や資格がなくても出願できます。問われるのは、何をどこまで考えてきたかです。

「評定が低いと不利」

評定平均が出願資格になっているという記載はありません。ただし、提出書類には調査書が含まれるのが通例で、まったく見られないとは考えないほうが安全です。高1・高2の評定は後から動かせません。

「AOマルデス入試の過去問をやればよい」

名称が変わり、一つの方式が廃止された年です。過去の形式がそのまま続く前提は危険です。要項を見てから対策の形を決めてください。

「専願だから倍率が低い」

専願であることは出願者を絞る方向に働きますが、募集人員も小さく設定されています。倍率は年度によって動きます。前年の数字を前提に判断しないでください。

11. 保護者が確認すること

  1. 合格したら進学する意思があるか——専願です。ここが最重要です。
  2. 学内併願ができないことを理解しているか——1学部1学科しか出せません。
  3. 検定料と、併願先の検定料の総額——35,000円が基準です。他大学の分も含めて年間の総額を出しておく。
  4. 不合格だった場合の計画があるか——一般選抜の勉強が止まっていないか。
  5. 要項を家庭でも読んだか——本人任せにすると、変更点を見落とします。

5番目は実務的に重要です。要項は本人だけでなく保護者も読んでください。出願書類の準備には家庭の関与が要る部分があり、締切を落とすと出願自体が成立しません。

12. この入試が向く人・向かない人

向く 向かない
成蹊大学の特定の学科を第一志望と言い切れる 複数の大学で迷っている
調べたことを文章にまとめるのが苦にならない 書く作業を先送りにしがち
人前で自分の考えを話せる(討論がある学部) 議論の場で黙ってしまう
高2までに評定を確保している 高3から挽回しようとしている
一般選抜の勉強も並行して続けられる 総合型に集中したいと考えている

右列に当てはまる項目が多い場合、この入試に時間を使うより、一般選抜に寄せたほうが合理的なことがあります。総合型選抜は「学力が足りない人の抜け道」ではなく、別種の負荷がかかる経路です。制度全体の理解は総合型選抜は「楽な入試」かにまとめています。

なお、向かないと判断した場合でも、書類作成の過程で得たものは無駄になりません。志望分野を調べ、問いを立て、文章にする作業は、面接や小論文を課す他の入試でもそのまま使えます。

当塾の立場

当塾は総合型選抜の指導を行っており、この記事には利害があります。その前提でお読みください。

そのうえで、成蹊大学の総合型選抜について申し上げると、「専願である」という条件が最も重いと考えています。要項に「合格した場合は必ず入学することを前提」と書かれている以上、出願は進学の意思表示です。

当塾では、この入試を勧める前に必ず「成蹊に合格したら、他を受けずに進学しますか」を確認します。ここで迷いがある場合は、併願可能な大学の総合型を先に検討するようお伝えしています。

また、当塾は過去の形式を前提にした対策を売りにしていません。名称が変わり、方式が一つ廃止されたという事実は、中身も動いている可能性を示しています。要項が出るまでは、書類と思考力という変わらない部分を鍛えるほうが安全です。

もう一点、当塾が扱わないと決めていることがあります。合格実績を前面に出した勧誘です。募集人員が一桁の学科では、合格者数の多寡はその塾の指導力よりも、集めた生徒の数と元の学力で決まります。数字の読み方は調査の数字の読み方と同じ考え方で見てください。

対策塾の選び方全般は対策塾の見分け方にまとめています。「昨年はこうでした」しか言わない塾には注意してください。制度が動いている年に、去年の形式だけを教える指導は機能しません。

まとめ

  1. 2027年度から「AOマルデス入試」は「総合型選抜(自己推薦型)」に名称変更
  2. 「基礎学力型」は実施を取りやめ。学科試験に近い経路がなくなった。
  3. 募集人員は学科差が大きい。経営学部25名、経済数理学科4名
  4. 選考は書類審査+各学部の課題審査の2段階。学部ごとに中身が違う。
  5. 評定・英語外部検定の要件は概要ページに記載がない。要件が緩いことは有利ではない
  6. 学内併願不可・合格したら必ず入学。出願は進学の意思表示。
  7. 要項が出たらその日のうちに全文を読む

この記事は2026年9月11日に成蹊大学公式サイトで確認した内容にもとづいています。要件・日程は変更されることがあります。出願前に必ず当該年度の入学試験要項をご確認ください。

この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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