講習の案内は、判断材料が足りない状態で届く
春期・夏期・冬期の講習案内は、学期の途中に届きます。多くの場合、講座数と料金の一覧があり、締切が設定されています。
ここで家庭が直面するのは、「何を取ればよいか判断できない」という問題です。全部取れば費用がかさみ、取らなければ不安が残る。この記事では、判断の基準を整理します。
塾によって講習の位置づけは異なります。当塾も講習を実施しており、この記事には利害があります(後述)。
1. 講習には2つの目的がある
| 目的 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| 復習・穴埋め | 学期中に積み残した内容を整理する | 春・夏 |
| 先取り・演習 | 次学期の内容、または入試演習 | 夏・冬 |
この2つは、必要な生徒が違います。学期中の内容が定着していない生徒に先取りをさせても、穴が増えるだけです。逆に、定着している生徒に復習だけをさせても時間の無駄になります。
案内を見るとき、まずその講座がどちらの目的かを確認してください。名称だけでは分からない場合、塾に聞いてください。
2. 春期講習の位置づけ
春休みは期間が短く、学年の切り替わりに当たります。この時期にしかできないことは、次の2つです。
- 前学年の穴を、次学年が始まる前に埋める——学期が始まると、新しい内容が積まれます。
- 学習の型を作り直す——学年が変わる区切りは、習慣を変えやすい時期です。
特に1番目が重要です。数学と英語は積み上げ式なので、穴を残したまま新学年に入ると、その学年の内容も理解できません。
逆に、春期に大量の先取りをする必要は薄くなります。期間が短く、消化しきれないためです。
3. 夏期講習の位置づけ
夏は期間が長く、まとまった時間が取れる唯一の時期です。だからこそ、設計を誤ったときの損失も大きくなります。
| 学年 | 優先すること |
|---|---|
| 中1・中2 | 1学期の穴を埋める。英数を優先。 |
| 中3 | 中1・中2範囲の総復習。入試演習は秋以降でよい。 |
| 高1・高2 | 英数の基礎完成。志望校対策はまだ早い。 |
| 高3 | 過去問に一度触れる。暗記科目に着手。 |
「夏を制する者が受験を制する」という言い方がありますが、制するのは講座数ではありません。1日の中で自分で演習する時間が確保できているかが実質です。
講座を詰め込むと、授業を受ける時間だけで1日が終わり、復習の時間がなくなります。これが最も多い失敗です。
4. 冬期講習の位置づけ
冬は期間が短く、受験直前と重なります。この時期の原則は次のとおりです。
- 新しい範囲に入らない——消化する時間がありません。
- 既習範囲の確認に絞る——できるはずのことを落とさない状態にする。
- 生活リズムを崩さない——年末年始で乱れやすい時期です。
- 受験学年以外は、無理に取らなくてよい——期間が短く、効果が限定的です。
直前期の過ごし方は本番の準備でも扱っています。
5. 取る講座を決める手順
- 直近の成績で、下がっている科目を特定する——全科目均等には取らない。
- その科目の「どこで詰まっているか」を確認する——単元まで特定する。
- その単元を扱う講座があるか調べる——なければ、講習ではなく通常授業や個別対応で扱う。
- 1日の時間割を書いてみる——授業と自習の比率を確認する。
- 自習の時間が半分を下回るなら、講座を減らす
- 費用の総額を出す——教材費・座席料などを含めた金額で判断する。
4番目と5番目が要点です。授業は「聞く時間」であり、できるようになる時間ではありません。聞いた内容を自分で再現する時間が必要です。
6番目については、案内の段階で総額が分かりにくい場合があります。教材費、施設費、模試代を含めた合計を確認してください。
6. 費用の考え方
講習費は、通常の月謝とは別に発生します。年間で見ると、月謝の数か月分に相当する場合があります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間の総額 | 月謝×12+春夏冬の講習費+教材費+模試代 |
| 単価 | 1コマあたりいくらか。授業時間で割る。 |
| 形態 | 集団か個別か。単価が違います。 |
| 振替 | 欠席時の扱い。 |
| 締切 | 申込後の変更・キャンセルの可否。 |
年間総額を出しておくと、翌年以降の見通しが立ちます。受験学年では、講習費が大きく増えるのが一般的です。先に把握しておくほうが、判断しやすくなります。
7. 取らないという選択
講習を取らない判断が正しい場合もあります。
- 自習の習慣があり、何をやるか自分で決められる——講習より自習のほうが進みます。
- 詰まっている単元が特定できていて、教材がある——独力で埋められます。
- すでに通常授業で手一杯——増やすと消化不良になります。
- 部活や行事で時間が取れない——出席できない講座は意味を持ちません。
1番目に該当する生徒は一定数います。「みんなが取っているから」という理由で取ると、自習の時間を削ることになります。
8. 塾に聞くべきこと
- この講座は、復習と先取りのどちらですか。
- うちの子の場合、どの科目を優先すべきですか。その理由は。
- この講座を受けた場合、家庭での学習時間はどれくらい必要ですか。
- 取らなかった場合、何が起きますか。
- 教材費を含めた総額はいくらですか。
4番目の質問への答え方で、塾の姿勢が分かります。「遅れます」「不安です」としか言えない場合、判断材料になっていません。科目と単元を挙げて説明できるかを見てください。
塾選びの基準全般は個別指導が機能する条件と対策塾の見分け方で扱っています。
当塾の立場
当塾も講習を実施しており、受講いただければ売上になります。この記事は中立ではありません。その前提でお読みください。
そのうえで、当塾は全科目のパッケージ受講を勧めていません。理由は上に書いたとおりで、授業時間が増えると自習時間が減り、結果として定着しないためです。
面談では、「この単元が詰まっているので、ここを扱います」という形で、必要な範囲を提示するようにしています。詰まっている箇所がない科目については、取らなくてよいと申し上げます。
また、「講習を取らないと遅れる」という言い方はしていません。遅れるかどうかは、講習の有無ではなく学習量で決まります。自習で確保できるなら、それで構いません。
費用については、聞かれる前に総額をお伝えするようにしています。後から追加費用が出る形は、家庭の計画を壊します。
まとめ
- 講習の目的は復習・穴埋めと先取り・演習の2種類。必要な生徒が違う。
- 春は前学年の穴埋め。期間が短いので先取りは向かない。
- 夏は設計の失敗が最も響く。講座を詰め込むと復習の時間が消える。
- 冬は新しい範囲に入らない。既習範囲の確認に絞る。
- 1日の時間割を書き、自習が半分を下回るなら講座を減らす。
- 費用は年間総額で把握する。
- 「取らなかったら何が起きるか」に科目と単元で答えられるかを確認する。
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