プレゼンテーションは、話し方の上手さで決まらない
総合型選抜では、志望理由や活動の成果をプレゼンテーション形式で発表させる大学があります。持ち時間は5〜15分程度が多く、その後に質疑が続きます。
この形式でよく行われる準備が、原稿を書いて暗記することです。しかし、暗記した発表は質疑で崩れます。評価の重心は、発表そのものより質疑応答にあることが多いためです。
実施形式は大学・学部により異なります。必ず当該年度の募集要項で確認してください。
1. 構成の基本形
限られた時間で伝える構成には、ほぼ決まった形があります。
| 順序 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 結論・主張(何を明らかにしたいか) | 1割 |
| 2 | 背景(なぜその問いに至ったか) | 2割 |
| 3 | 現状の整理(すでに分かっていること) | 2割 |
| 4 | 自分の問いと方法 | 3割 |
| 5 | 大学で何をするか | 2割 |
最も多い失敗は、2番の背景に時間を使いすぎることです。自分の体験談が長くなり、4番の中身にたどり着かないという形です。
配分は、原稿を書く前に決めてください。書きながら調整すると、必ず前半が膨らみます。
2. 最初と最後が残る
人の記憶には、最初に聞いたことと最後に聞いたことが残りやすいという傾向があります。発表の設計では、この性質を利用します。
- 冒頭で結論を言う——「私は◯◯について、△△という観点から検討したいと考えています」
- 最後にもう一度言う——同じ内容を、別の言い方で。
- 中盤に、最も重要な情報を置かない——置くなら、繰り返す。
ただし、これは並べ方の工夫であって、中身の代わりにはなりません。構成が良くても、問いが浅ければ質疑で明らかになります。
3. 資料を作る場合
スライドや配付資料の作成が認められている場合、次の点を守ると読みやすくなります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 1枚あたりの情報 | 主題は1つ。文字は最小限。 |
| 枚数 | 1枚あたり1分程度が上限の目安。 |
| 読み上げ | スライドの文をそのまま読まない。 |
| 出典 | 数字・図を使ったら必ず出典を書く。 |
| 色 | 強調は1色に絞る。 |
4行目は必須です。出典のない数字は、質疑で必ず突かれます。逆に、出典を明記しておくと「調べている」ことの証拠になります。
4. 質疑が本番
質疑で問われるのは、多くの場合、次のいずれかです。
- 根拠の確認——「その数字はどこから来ていますか」
- 範囲の確認——「それは全国的な傾向ですか、地域限定ですか」
- 別解の提示——「別の説明も考えられませんか」
- 手段の妥当性——「その方法で、その問いに答えられますか」
- 接続の確認——「それは本学のどの授業・研究とつながりますか」
ここで暗記型の準備が崩れます。原稿を覚えていても、範囲や別解を聞かれると答えられないからです。
対策は、原稿を覚えることではなく、自分の主張について上の5つを自問しておくことです。答えられない箇所が見つかったら、そこが準備の穴です。
5. 「分かりません」の言い方
答えられない質問は必ず出ます。ここでの対応が評価を分けます。
| 避けたい対応 | 望ましい対応 |
|---|---|
| 黙る | 「そこはまだ調べられていません」と述べる |
| 知ったかぶりで話す | 分かる範囲と分からない範囲を区切る |
| 質問と関係ない話に逃げる | 「今の質問は◯◯という理解でよいですか」と確認する |
| 謝り続ける | 「調べるとすれば、△△を見ます」と方針を述べる |
右列の4行目が重要です。分からないこと自体は減点になりにくく、「どう調べるかが分かっていない」ことのほうが問題になります。研究の適性を見る場面だからです。
6. 質問する側にも回る
面接の最後に「何か質問はありますか」と聞かれることがあります。ここは形式的なやり取りに見えますが、調べてきたかどうかが最も出る場面です。
- 調べれば分かることを聞かない——学部の名称や入試日程など。
- 相手が答えられることを聞く——他大学との比較を求めるような質問は避ける。
- 自分の問いとつなげる——「◯◯の授業では、△△の手法も扱われますか」
3番目のような質問は、シラバスを実際に読んでいないと作れません。そこが伝わります。
7. 練習のしかた
- 録音する——速さと「えー」の回数が分かります。
- 時間を計る——本番は超過すると打ち切られます。9割の時間で終える設計に。
- 知らない人に聞いてもらう——身内は前提を共有しているため、伝わったかの判定になりません。
- 質問を10個作ってもらう——答えられない質問を探すのが目的です。
- 原稿を捨てて話す——最終的には要点のメモだけで話せる状態にします。
5番目まで到達しておくと、質疑で崩れません。原稿がある状態で完成としないでください。
当塾の立場
当塾では、プレゼンテーションの練習で原稿の添削に時間をかけません。添削すればするほど、本人の言葉から離れていくためです。
代わりに時間を使うのは、質問を作ることです。本人の主張に対して答えにくい質問を出し、答えられない箇所を潰していきます。この作業をすると、発表の内容も自然に締まります。
また、話し方の訓練——姿勢、声の大きさ、視線——は最小限にしています。不快でない程度で十分であり、そこを磨いても中身の評価は変わらないと考えているためです。
プレゼンテーション形式を課す大学は限られます。志望校が課さないなら、この準備は不要です。その場合は、同じ時間を志望理由書と小論文に回すほうが効きます。
まとめ
- 構成は結論→背景→現状→問いと方法→大学で何をするか。背景を膨らませない。
- 最初と最後が記憶に残る。結論は冒頭と末尾の2回。
- スライドは1枚1主題、数字には必ず出典。
- 評価の重心は質疑。根拠・範囲・別解・手段・接続の5つを自問しておく。
- 分からない質問には「どう調べるか」を答える。
- 逆質問はシラバスを読んでいないと作れない質問を用意する。
- 練習の到達点は原稿なしで話せること。
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