高1・高2・高3——学年別にやることを分ける

「まだ早い」と「もう遅い」の間には、何もない

受験準備の話は、学年が上がるほど焦りの語彙で語られます。高1では「まだ早い」と言われ、高3の夏には「もう遅い」と言われる。その間に何をすればよかったのかは、あまり具体的に語られません。

この記事では、学年ごとに「その時期にしかできないこと」「後回しにしてよいこと」を分けて整理します。

一般的な整理です。総合型選抜を主軸にする場合は、時期の設計が変わります(後述)。

1. 準備には2つの層がある

受験準備を1本の線で考えると、学年ごとの優先順位が見えなくなります。次の2層に分けてください。

内容 効いてくる時期
土台 英語・数学・国語の基礎。学習習慣。読む速度。 2〜3年後
直結 過去問、志望校対策、暗記科目の詰め、出願書類。 数か月後

高1・高2でやるべきは土台、高3でやるべきは直結です。順番を逆にすると効率が落ちます。高1で志望校の過去問を解いても得るものは少なく、高3の秋に中学英文法へ戻るのは時間が足りません。

2. 高1——土台と、情報収集の入口

高1でしかできないことは、次の3つです。

  1. 英語と数学の穴を残さない——この2科目は積み上げ式で、後から戻るコストが最も高くなります。
  2. 定期テストで評定を確保する——学校推薦型選抜や、一部の総合型選抜で評定平均が要件になります。高1の成績も算入されます。
  3. 学習の型を作る——毎日机に向かう時間帯を決める。ここで作った習慣は3年間効きます。

2番目は見落とされがちです。高1の評定は、高3で取り返せません。推薦系を一切使わないと決めているなら別ですが、選択肢を残すなら意識しておく価値があります。

逆に、高1で後回しにしてよいのは、志望校の決定と、受験科目の絞り込みです。この時期に絞ると、情報が足りないまま決めることになります。

3. 高2——分岐点

高2は、受験準備で最も差がつく学年です。理由は、やることが多いのに締切がないからです。

高2で扱うべき項目は3つあります。

時期 やること
高2前半 英語の基礎完成(文法と語彙)。数学は履修範囲の穴を潰す。
高2後半 志望の方向を絞る。受験方式(一般/総合型/推薦)を検討する。
高2の冬〜春 英語外部検定の取得を狙う。受験科目を確定させる。

3行目は特に重要です。英語外部検定は、高3になってから取ろうとすると受験勉強と衝突します。高2のうちに取っておけば、高3の負荷が一段下がります。詳しくは英検の入試利用を参照してください。

志望校が決まっていない場合

高2の終わりまでに方向が決まらないと、次の実害が出ます。

  • 受験科目が絞れず、勉強の配分が決まらない——全科目を薄くやることになります。
  • 総合型選抜の準備が間に合わない——書類の準備には数か月かかります。
  • 模試の判定が使えない——比較の基準がないため、現在地が分かりません。

決められない場合は、大学名ではなく「学部の系統」と「国公立か私立か」の2点だけ先に決めると、科目の配分は決まります。学部の選び方も参考にしてください。

4. 高3——直結の作業に切り替える

高3は、土台作りから直結の作業へ切り替える年です。切り替えの目安は次のとおりです。

時期 主な作業
〜春 英数の総復習を終える。受験校の候補を10校程度出す。
過去問に一度触れる。暗記科目に着手。総合型の書類作成を開始。
過去問演習を主軸に。総合型・推薦の出願と選考。
共通テスト対策。出願校の確定。
直前 新しい教材を増やさない。既習範囲の確認に絞る。

夏に過去問へ一度触れておくことを勧めています。解けなくて構いません。目的は、必要な水準と現在地の差を知ることです。これをやらないと、秋まで「何のための勉強か」が曖昧なままになります。

5. 出遅れた場合

高3から始める場合でも、やることの順序は変わりません。変わるのは切り捨てる量です。

  1. 受験方式を絞る——3教科型に絞る、科目数の少ない方式を探す。
  2. 配点の高い科目に寄せる——満遍なくやる余裕はありません。
  3. 戻る範囲を最小にする——全部やり直すのではなく、出題される単元だけ。
  4. 推薦・総合型の可能性を確認する——評定が足りていれば、経路が増えます。

「今から間に合うか」という質問には、科目と志望校を聞かないと答えられません。科目数が少なく、英語が仕上がっているなら可能性はあります。逆に、国公立で5教科が必要なら、時期によっては厳しくなります。

ここで大事なのは、「間に合わない」と言われて何もしないのが最悪だということです。志望を変えれば経路はあります。

6. 総合型選抜を主軸にする場合

総合型選抜を主軸にすると、時間の流れが変わります。出願が夏〜秋にあるため、準備のピークが半年ほど前倒しになります。

時期 作業
高2まで 評定の確保。英語外部検定。興味のある分野の読書と活動。
高3春 出願要件の確認。問い(RQ)の設定。
高3夏 志望理由書の作成。小論文の練習。
高3秋 選考。並行して一般選抜の勉強を継続。

最後の行が要点です。総合型で不合格だった場合、そこから一般選抜まで数か月しかありません。一般の勉強を止めてしまうと、退路がなくなります。詳しくは総合型選抜の総論で扱っています。

当塾の立場

当塾は、高1・高2の段階で受験対策を前倒しすることを、あまり勧めていません。この時期にやるべきは土台であって、志望校対策ではないからです。

塾としては、早くから通っていただいたほうが売上にはなります。その利害があることは申し上げたうえで、高1の生徒に志望校の過去問を解かせることはしていません。効果が薄いためです。

一方で、高2の後半以降は話が変わります。この時期の遅れは、高3で取り返しにくくなります。とくに英語外部検定と評定は、後から動かせません。

「今から間に合いますか」というご相談には、科目・志望・現在の学力を確認したうえで、難しい場合は難しいと申し上げます。可能性を高く見積もってお預かりすることは、結果として双方の損になります。

まとめ

  1. 準備は土台(高1・高2)と直結(高3)の2層。順番を逆にしない。
  2. 高1でしかできないのは英数の穴を残さない・評定の確保・習慣づくり
  3. 高1の評定は高3で取り返せない
  4. 高2は締切がないのにやることが多いため、最も差がつく。
  5. 英語外部検定は高2のうちに。高3では受験勉強と衝突する。
  6. 高3の夏に過去問へ一度触れる。解けなくてよい。差を知るため。
  7. 総合型を主軸にするなら準備は半年前倒し。一般の勉強は止めない。

この記事と関わりの深い記事です。あわせてお読みいただくと、判断の材料が揃います。

記事全体の見取り図は記事の索引——テーマ別に、どれから読めばよいかにまとめています。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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