小論文は感想文でも作文でもない
小論文で点が伸びない生徒の多くは、書く力が足りないのではなく何を書けばよいかの型を知らない状態にあります。
小論文には決まった構造があります。そして採点は、文章の美しさではなくその構造が成立しているかで行われます。型を知れば、短期間でも点は動きます。この記事では、その型を手順として書きます。
1. 基本構造——主張・反論・再反論
小論文の骨格は次の4段です。
- 問題提起——何を論じるのかを絞る。
- 主張——自分の立場を明示する。
- 反論の紹介——自分と反対の立場を、公平に提示する。
- 再反論——その反論に応えたうえで、主張を維持する。
多くの受験生が書けているのは1と2までです。3と4を書けているかどうかが、点差の大部分を作ります。
なぜ反論を書くのか
理由は2つあります。1つは、反対の立場を理解していることを示せるから。もう1つは、再反論を通じて主張が強くなるからです。
反論を書かずに主張だけを重ねた文章は、どれだけ長くても一面的に見えます。逆に、最も強い反論を自分で持ち出し、それに応えて見せれば、その主張は検討されたものとして扱われます。
2. 反論の書き方——ここで手を抜かない
反論を書く段で、多くの受験生が失敗します。倒しやすい弱い反論を持ち出してしまうのです。
「◯◯という意見もあるが、それは根拠がない」——このような書き方は、反論を検討したことになりません。採点者から見れば、都合のよい相手を作って倒しているだけです。
正しい手順
- 自分の主張の弱点を探す——どこを突かれると苦しいか。
- その弱点を突く立場を、その立場の言い分で書く——相手が納得する形にする。
- そのうえで応える——事実で応えるか、前提の違いを示すか、範囲を限定する。
3番目の「応え方」には型があります。
| 応え方 | 使う場面 |
|---|---|
| 事実で応える | 反論が事実誤認に基づく場合。データや事例を示す。 |
| 前提の違いを示す | 何を目的にするかが違う場合。目的が違えば結論が違う。 |
| 範囲を限定する | 反論が一部の場面で正しい場合。「その場面ではそうだが」と限定する。 |
| 程度の問題にする | どちらも一理ある場合。どこまでなら成立するかを示す。 |
「反論はまったく間違っている」と切り捨てる形は、ほとんどの場合うまくいきません。部分的に認めたうえで、なお自分の主張が成り立つ範囲を示すほうが強くなります。
3. 課題文型——まず要約できるか
課題文を読んで論じる形式では、要約が土台になります。筆者の主張を取り違えたまま論じると、内容がどれだけ立派でも0点に近づきます。
要約の手順
- 各段落の役割を書き込む——主張/具体例/反論の紹介/言い換え。
- 「主張」と書いた段落だけを拾う——具体例は要約に入れない。
- 筆者が何に反対しているかを特定する——主張は、たいてい何かへの反対として書かれている。
- 指定字数に収める——字数が要素の数を決める。
3番目が要点です。評論文の主張は、対立軸の中にあります。筆者が何を否定しているかが分かれば、主張の輪郭が決まります。
要約の練習は、現代文の読解とそのまま重なります。小論文のために別の勉強をする必要はありません。
4. 答案構成——書き出す前に決める
いきなり書き始めると、途中で方向が変わり、字数が合わなくなります。書き出す前に構成を決めるのが原則です。
構成メモに書くのは4行だけです。
- 主張:(一文で)
- 理由:(1〜2個)
- 反論:(最も強いもの1つ)
- 再反論:(応え方の型を決める)
この4行が書ければ、あとは膨らませるだけになります。構成に使う時間は、全体の2〜3割が目安です。600字なら5分程度、1200字なら10分程度。
ここを惜しんで書き始めるほうが、結果的に時間を失います。途中で行き詰まって書き直すコストのほうが大きいからです。
5. 字数配分
| 部分 | 目安 |
|---|---|
| 問題提起 | 1割 |
| 主張と理由 | 4割 |
| 反論の紹介 | 2割 |
| 再反論 | 2.5割 |
| 結び | 0.5割 |
結びを長く取る必要はありません。最後に主張を繰り返すだけで十分です。ここに新しい話を入れると、論じきれずに終わります。
また、字数が少ない設問(400字以下)では、反論の紹介と再反論を1つの段落にまとめます。構造を捨てるのではなく、圧縮します。
6. 材料をどう仕入れるか
小論文の出題は、社会的なテーマが中心です。材料がないと、主張はしても理由が書けません。
仕入れ方には順序があります。
- 志望学部に関係する領域から——法学部なら法制度、経済学部なら経済政策、というように絞る。
- 賛否が分かれている論点を選ぶ——両論あるテーマのほうが、小論文の材料になります。
- 1つのテーマについて両方の立場を調べる——片側だけでは反論が書けません。
- 数字を1つ覚える——具体的な数字が1つ入るだけで、文章の強度が上がります。
数を追う必要はありません。10テーマについて、賛否と数字まで押さえているほうが、50テーマを浅く知っているより使えます。
7. 減点される書き方
- 「〜と思う」の連続——主張は断定形で書きます。
- 問いに答えていない——設問が「賛成か反対か」なら、必ずどちらかを明示します。
- 課題文の引き写し——要約は必要ですが、それだけでは自分の論がありません。
- 体験談だけで論じる——個人の経験は根拠として弱い。一般化できる形にします。
- 字数不足——指定の8割を下回ると、大きく減点されることがあります。
- 結論が途中で変わる——構成を先に決めていれば起きません。
4番目は補足が要ります。体験を使ってはいけないのではなく、体験を一般化する一段が必要だということです。「私はこうだった」で終わらせず、「この経験は、より広く◯◯という構造を示している」とつなげます。
8. 練習のしかた
書きっぱなしでは伸びません。1本書いたら、次を確認します。
- 主張が一文で言えるか
- 反論は、自分の主張の弱点を突いているか(弱い相手を作っていないか)
- 再反論は、その反論に実際に応えているか(話をそらしていないか)
- 設問に答えているか
- 字数配分は適切か
この5項目は自分でも確認できます。添削を受ける前に、自分でこの確認を通すと、添削で得られるものが変わります。
本数の目安としては、型が身につくまでに10本程度、志望校の形式に慣れるまでにさらに10本程度です。毎日書く必要はなく、1本を丁寧に検討するほうが効きます。
当塾の立場
小論文について当塾が伝えているのは、「型は短期間で身につくが、材料は短期間では作れない」ということです。
構造の指導は数回で済みます。しかし、何について書くかの中身は、それまでに何を読み、何を考えてきたかで決まります。ここを混同して「小論文対策」を直前に始めると、型だけの空虚な答案になります。
また、面接が必須化される流れの中では、小論文で書いた内容について口頭で問われる可能性も考えておく必要があります。自分で説明できない主張を書くのは、その意味でも避けるべきです。
まとめ
- 骨格は問題提起→主張→反論→再反論。3と4で差がつく。
- 反論は自分の主張の弱点を突く形で、相手の言い分として書く。
- 応え方は事実/前提の違い/範囲の限定/程度の問題の4型。
- 課題文型は要約が土台。筆者が何に反対しているかを特定する。
- 書き出す前に4行の構成メモ。時間の2〜3割を使う。
- 材料は10テーマを賛否と数字まで。数を追わない。
- 体験は一般化する一段を挟んで使う。
- 添削の前に自分で5項目を確認する。
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