形成的評価——「途中で測る」ことの効果量
教育の世界で、最も広く信じられている数字のひとつがあります。
「形成的評価の効果量は 0.4〜0.7」。
この数字は、イギリスの国家戦略に、アメリカの州政策に、そして日本の「指導と評価の一体化」にまで流れ込みました。——では、その数字はどこから来たのでしょうか。
一言でいうと(この記事の結論)
形成的評価には効果があります。ただし 0.4〜0.7 ではありません。
複数の独立したメタ分析が示す値はおおむね 0.19〜0.29 です [3][6][7][8]。
そして——その 0.4〜0.7 という数字の出所を、追跡できないという指摘があります [2]。
結論を先に8点書きます。
- 1,351回引用された批判論文は、よく引かれる効果量が「追跡不能・欠陥あり・古い・未公刊の出典に由来する」と述べています [2]。
- 300本超を精査して、効果量を計算できたのは13本だけでした。加重平均は 0.20 [3]。
- 反証。その批判自体に4つの方法論的問題があるという再反論があります [4][5]。
- 118研究・258効果量の最新メタ分析(2024年)は g = 0.25 [6]。
- 13のメタ分析を統合したアンブレラレビューでは、証拠の確実性(GRADE)が「非常に低い」が9件 [9]。
- PISA 19か国・15万人の分析では、「フィードバックを与える」だけでは読解力と有意に結びつきませんでした [12]。
- 効いていたのは「生徒自身が始める自己評価」(d = 0.61)です [7]。
- そもそも「形成的評価」という語が、定まった実践群を指していないという指摘があります [2][16]。
1. 起点——1998年の「ブラックボックス」
1998年、ポール・ブラックとディラン・ウィリアムが、教室内の評価に関するレビューを発表しました。
タイトルは『Inside the Black Box(ブラックボックスの中身)』。教室の中で何が起きているかは、外からほとんど見えない——その「黒い箱」を開けよう、という趣旨でした(3,897引用)[1]。
彼らの主張は明快です。「形成的評価は教室での仕事に不可欠な要素であり、生徒の達成を引き上げうる」。
その後、24人の中等学校の数学・理科教師と実施した研究も発表されています(1,352引用)[19]。質問の仕方の改善、成績づけではなく「どう改善するか」に焦点を当てたフィードバック、相互評価と自己評価への生徒の参加——これらを導入した教師は、生徒の動機づけと態度が改善し、外部試験の成績も同じ学校の他の生徒より高くなったと報告しました。
一言でいうと(何が新しかったのか)
「評価」を、成績をつける行為から、指導を変えるための情報収集へ移し替えたことです。
テストは成果を測るものから次に何を教えるかを決めるものになる。
——この発想の転換そのものは、いまも生きています。問題は、そこに付けられた数字のほうです。
2. その 0.4〜0.7 は、どこから来たのか
2011年、『Assessment in Education』に「形成的評価——批判的レビュー」という論文が掲載されました(1,351引用)[2]。
著者は、形成的評価をめぐる6つの論点を扱っています——定義、効果についての主張、領域の軽視、測定原理の欠落、教師支援の負担、教育システム全体の影響。
そして、効果量について、次のように書きました。
「加えて、効果についてよくなされる量的主張の大きさは疑わしい。それらは、追跡不能な、あるいは欠陥のある、あるいは古い、あるいは未公刊の出典に由来している」
一言でいうと
「0.4〜0.7」という数字には、遡れる原典がありません。
——これは数字が間違っているという指摘ではなく、数字の根拠を確認できないという指摘です。より深刻な種類の問題です。
同じ論文は、定義についても厳しい判断を下しています。
「『形成的評価』という語は、まだ明確に定義された人工物や実践の集合を表していない。……既存の定義は非常に多様な実装を許容しており、そのため効果は実装ごと、生徒集団ごとに大きく変動すると予想されるべきである」
2009年の批判的レビュー(678引用)も、同じ方向を指しています。「形成的評価に関して合意された語彙は存在せず、正の効果を示そうとする試みには疑わしい方法論的アプローチが見られる」 [16]。
3. 2011年のメタ分析——13本しか残らなかった
同じ2011年、『Educational Measurement: Issues and Practice』に「形成的評価——メタ分析と、研究への呼びかけ」が掲載されました(432引用)[3]。
冒頭の一文はこうです。「形成的評価の有効性について約 .70(あるいは .40〜.70)という効果量がしばしば主張されるが、既存の研究基盤はこれを支持していない」
著者らが行ったことは単純です。K-12 の形成的評価の有効性を扱っていると思われる300本超の研究を精査しました。
- 多くの研究は研究設計に重大な欠陥があり、解釈不能な結果しか出していなかった
- 効果量を計算するのに十分な情報を提供していたのは、13本だけだった
- 独立した効果量は42個。観測された中央値は .25
- 変量効果モデルによる加重平均は .20
教科による違いも報告されています。
| 教科 | 推定効果量 |
|---|---|
| 国語(英語) | .32 |
| 数学 | .17 |
| 理科 | .09 |
実装の型では、教員研修に基づくもの(.30)とコンピュータ型の形成的システム(.28)が、他の方法より有効に見えました。
一言でいうと
「0.7」が「0.20」になりました。3分の1以下です。
そして著者らの結論は「良い形成的評価実践の広範な利用と潜在的な有効性を考えると、現在の研究基盤の乏しさは問題である。より質の高い研究への呼びかけを行う」でした。
——「効かない」ではなく「まともに測られていない」という結論です。
4. 「.70」のもう一つの源——1986年、特別支援教育の教室で
ここで、数字の出所をもう一歩たどります。
実は、.70 という値を実際に報告したメタ分析は存在します。ただし1986年、対象は特別支援教育でした(722引用)[10]。
- 21の統制された研究から、96の効果量
- 加重平均効果量 .70
- 効果の大きさは、次の4つと関連していた——出版形態、データの評価方法、データの図示、行動修正の併用
この研究が扱っていたのは「体系的な形成的評価(systematic formative evaluation)」です。生徒の遂行を頻繁に、決まった手続きで測り、結果をグラフに描き、その線が伸びなければ指導を変える——という、かなり厳密な手続きでした。
一言でいうと(なぜ一般化できないのか)
この .70 は「教室で先生が声をかける」ことの効果量ではありません。
特別支援教育で、決まった手続きに沿って測り、グラフに描き、伸びなければ指導を変える——という体系の効果量です。
——そして「データの図示」と「行動修正の併用」が効果を調整していた、つまり手続きの厳密さが効いていたと読めます。
2節で見た批判論文が「古い(dated)出典に由来する」と書いていたのは、こうした構造を指しています [2]。数字そのものは実在する。ただし、それが測っていた対象は、いま「形成的評価」と呼ばれているものとかなり違う。
これは、この連載が繰り返し当たってきた問題です。——「1万時間」も、「3000万語」も、元の研究が扱っていた範囲を超えて流通しました。数字は、文脈から切り離されると独り歩きします。
5. 反証——その批判への、批判
この論争には続きがあります。
翌2012年、同じ雑誌に反論が掲載されました [4]。著者らは、4つの方法論的懸念を挙げています。
- 研究を選定する方法
- 選定基準の適用の仕方
- 統合される効果量がどの程度バイアスを含んでいるか
- 効果量の大きさと、アウトカム指標の特性との関係
結論はこうです。「これらの問題を検討すると、形成的評価の実践が生徒の達成に与える効果については、依然としてかなりの不確実性が残っているように見える」
2020年には、さらに踏み込んだ再検証も出ています(100引用)[5]。
「これらの分析は、他のレビューと整合的に、キングストンとナッシュが到達した結論のいくつかが信用できない可能性を示唆する」——理由として、選定過程の性質、方法論の質の疑わしさ、そして形成的評価が多様な仕方で定義・操作化されていたことが挙げられています。
一言でいうと(当塾はどちらも判定できません)
「0.7は根拠がない」も、「0.20という批判も信用できない」も、どちらも専門家の主張です。
——言えるのは「この分野の効果量は、専門家のあいだで決着していない」ということだけです。
そして、この不確実性こそが実務で知っておくべき情報です。
6. その後の統合——0.19〜0.29 に収束する
論争の後、より大きなデータで統合が進みました。結果は、驚くほど一致しています。
2024年のメタ分析は、こう述べています。「形成的評価を定義・理解するにあたって広いレンズを用いることで、本研究は形成的評価の有用性を確認した」——ただし値は 0.25 です [6]。
教科別の内訳(2020年)はこうでした [7]。数学 d = .34、読み書き d = .33、芸術 d = .29。
一言でいうと
0.20〜0.29 という値は「小さい」とされる範囲です。
ただし——教室全体に安価に適用できる介入としては、決して無視できる大きさではありません。
問題は「0.7だと思って設計された政策が、0.25の現実に当たったときに何が起きるか」のほうです。
7. 証拠の確実性——アンブレラレビューが出した評価
2024年、13のメタ分析を統合したアンブレラレビューが発表されました(64引用)[9]。
この種のレビューの価値は、効果量だけでなく「その効果量をどれだけ信じてよいか」を評価する点にあります。
- 形成的評価は、些細から大きいまでの正の効果を生んだ。負の効果は同定されなかった
- 効果の大きさは、形成的評価の型によって変動した
- 方法論的な質(AMSTAR-2):中程度が10件、高いが1件、低いが2件
- 証拠の頑健性(GRADE):非常に低いが9件、低いが3件、中程度が1件
著者らの結論です。「利用可能な証拠の確実性が低〜非常に低いことは、K-12の生徒の学習にとって最適な形成的評価の方略について、頑健な推奨を行うことを妨げる」
一言でいうと(効果量とGRADEは別の話)
「効果量 0.25」は「その値が 0.25 だと確信できる」という意味ではありません。
GRADE が「非常に低い」とは——今後の研究で値が大きく変わる可能性が高いという評価です。
——運動と認知、インクルーシブ教育の記事でも、同じ構造に当たりました。
8. 何が効いているのか——「フィードバック」だけでは動かない
ここが、この記事で最も実務に関わる部分です。
2022年、PISA 2018 のデータを用いた大規模分析が発表されました。19の国・地域、5,225校、151,969人の15歳が対象です(33引用)[12]。
教師の形成的評価方略を3つに分けて、読解力との関連を見ています。
- 目標を明確にし、進捗を把握する → 読解力と正の関連
- 指導を調整する → 読解力と正の関連
- フィードバックを提供する → 単独では、有意な影響がなかった
著者らは「形成的評価が多面的な概念であることの複雑さと、方略ごとに生徒の学習への影響が異なることを浮き彫りにする」と述べています。
一言でいうと(これは重い所見です)
「フィードバックを返す」という、最も広く実践されている部分が、単独では効いていませんでした。
効いていたのは「何ができればよいかを明示する」と「その結果で教え方を変える」のほうです。
——フィードバック研究の記事で扱った「フィードバックが逆効果になりうる」という所見と、同じ方向を向いています。
効いている型を、数字で見る
2020年の系統的レビューは、どの特徴が効果を高めたかをメタ回帰で調べています [7]。
| 特徴 | 効果量 |
|---|---|
| 生徒が始める自己評価を支援する | d = .61 |
| 中サイクル(単元内〜単元間)で行う | d = .52 |
| 形式的な形成的証拠を提供する(小テストへの書面フィードバックなど) | d = .40 |
| 全体平均 | d = .29 |
読解のメタ分析でも同じ方向です。「教師主導の評価だけより、教師主導と生徒主導を統合したほうが有効だった」 [8]。
相互評価(peer assessment)についても、54研究・141比較のメタ分析があります(233引用)[13]。g = 0.31。評価なしより良く(g = 0.31)、教師評価より良く(g = 0.28)、自己評価とは有意差がありませんでした(g = 0.23、p = .209)。
9. 効かなかった実験
うまくいかなかった研究も、同じ重さで挙げます。
2023年、中学校の数学教師14人を無作為に抽出し、形成的評価の教員研修プログラムを受けさせた研究があります(43引用)[14]。
- 事前テストの得点を統制したあと、介入群と統制群のあいだに、事後テストの有意差はなかった
- 実施された形成的評価活動の数と、事後テストの得点のあいだにも、有意な相関はなかった
著者は「達成を高めるために決定的でありうる、形成的評価の実装の特徴」を議論する、という形で論文を締めています。
一言でいうと
「形成的評価の活動を増やす」だけでは、成績は上がりませんでした。
——回数ではなく、何のために測り、その結果で何を変えるかのほうが問題だということです。
もう一つ、方向の違う所見があります。1910年から2010年までの英語文献149研究・509効果量を統合した大規模メタ分析は、テスト頻度・利害の大きさ・フィードバックの3要素を合わせた効果量を 0.84 と報告しています。ただし、そのモデレータ分析では——「形成的ではなく総括的な(summative)テストのほうが、効果量が高かった」のです [15]。
10. 文化差と、小標本の問題
効果量の内訳を見ると、気になる規則性が2つあります。
(1) 北米・西欧の外で、効果が大きくなる
2024年のメタ分析は、「北米と西欧の外で実施された研究のほうが、平均効果量が有意に大きかった」と報告しています [6]。
実際、トルコで32研究を統合したメタ分析の総合効果量は.72 [11]、中国のEFL教育で27研究を統合したものは0.46 [20]、ケニアの高校数学の準実験ではη² = 0.38 [22] でした。
読解のメタ分析は、この点を明示的に扱っています。「形成的評価の介入が読解に与える効果量は、儒教文化圏と英語圏のあいだで有意に異なり、有効な特徴も分かれていた」——そして「異なる文化を越えて、適応なしに形成的評価を一般化することには注意が必要である」 [8]。
(2) 小さな研究ほど、大きな効果が出る
同じ読解のメタ分析は、こうも報告しています。「250人以下の研究は、大標本の研究より有意に大きな効果量をもたらした」 [8]。
一言でいうと(この規則性は、良い兆候ではありません)
小さな研究ほど大きな効果が出るというパターンは、出版バイアスや小規模研究効果の典型的な指標です。
——バイリンガルの認知の記事で扱ったのと同じ構造です。
ただし2024年のメタ分析は、北米・西欧の研究については出版バイアスを検出しなかったと報告しています [6]。
11. 教師の側に、何が要るのか
この分野には、もう一つ別系統の研究があります。「なぜ形成的評価は、これほど推奨されながら教室に定着しないのか」という問いです。
54研究を統合した系統的レビュー(296引用)は、3種類の前提条件を同定しました [17]。
- 知識と技能——とくにデータリテラシー(測定結果を読む力)
- 心理的要因——社会的な圧力など
- 社会的要因——同僚との協働など
高校の理科教師3人を追った事例研究(75引用)は、実際の障壁を具体的に挙げています [21]。
- 生徒の側の期待・習慣・気質
- 年度末の高利害試験に備えて、カリキュラムを「網羅」しなければならないという圧力
- 構成主義的ではなく教授主義的な、教えることへの構え
一言でいうと
形成的評価が定着しない最大の理由は、教師の意欲ではありません。
「終わらせなければならない量」と「測って戻る時間」が、正面から衝突するからです。
——これは説明責任政策の記事で扱った構造と、同じ場所にあります。
数学教育に絞った2025年の系統的レビューも、同じ複雑さを報告しています。45研究の結果は混在していましたが、「3か月にわたる定期的な実施」「内容に固有の学習意図と測定手段」「無作為化された設計」が有効性に寄与しうる要因として挙げられ、「低〜中位の成績層と、社会経済的背景の低い生徒を支える可能性」が指摘されています [18]。
日本の「指導と評価の一体化」
この論争は、日本の教育政策とも直結しています。
2016年、日本の研究者による批判的検討が公表されています [23]。論点は「形成的評価が、小さな総括的評価(mini-summative assessment)に、あるいは成績や評定を上げるための指導技術の寄せ集めに切り縮められるとき、問題が生じる」というものです。
そして著者は、その危険が「形成的評価の誤解」から生じるのではなく、ブラックとウィリアムの元の理論枠組みそのものに内在していると論じています。
- 「学習のギャップを埋める」という発想は、あらかじめ正解が定まっていることを前提にしやすい(収束的評価)
- それは「規準への適合(criteria compliance)」という実践に至りうる
- そして、形成的評価が説明責任システムに取り込まれると、有効性への深刻な脅威が生じる
一言でいうと(観点別評価という現実)
日本の学校で「観点別評価」が増えたことは、この文脈にあります。
ただし——その記録が内申点につながる限り、それは形成的評価ではなく総括的評価です。
評定に反映されると分かっている場面で、生徒が「まだできない」と正直に示すことは、合理的ではありません。
——これは説明責任政策の記事で扱ったキャンベルの法則と、同じ構造です。
12. 塾と家庭で、どう使うか
ここからは、上の知見を当塾の実務に翻訳した部分です。研究が直接そう言っているわけではない箇所は、そう明示します。
(1)「測る」より先に、「何ができればよいか」を言葉にする
8節のとおり、PISA分析で正の関連が出たのは「目標を明確にし、進捗を把握する」でした [12]。フィードバックを返すことは、単独では有意ではありませんでした。
(2) 生徒自身が始める自己評価を作る
8節のとおり、最も大きい効果量は「生徒が始める自己評価の支援」で d = .61 です [7]。相互評価も g = 0.31 で、自己評価と有意差がありません [13]。
(3) 小テストの後に「教え方を変える」工程を必ず置く
8節のとおり、正の関連が出たもう一つは「指導を調整する」でした [12]。測って戻さないなら、測る意味はありません。
(4) 回数を増やすことを目標にしない
9節のとおり、実施した形成的評価活動の数と成績のあいだに、有意な相関はありませんでした [14]。
(5) サイクルの長さは「単元内〜単元間」に置く
8節のとおり、中サイクルが d = .52 です [7]。毎回の授業ごとでも、学期末でもありません。
(6) 理科・数学では、期待値を下げて設計する
3節のとおり、教科別の推定は国語 .32 / 数学 .17 / 理科 .09 でした [3]。これは当塾の実務判断です——効果が小さい教科では、形成的評価に時間を割きすぎない。
13. この記事で言えないこと
- 「形成的評価は効かない」とは言えません。複数の独立したメタ分析が 0.19〜0.29 の正の効果を報告しています [6][7][8]。
- 「効果量は 0.20 である」とも言い切れません。その推定への方法論的批判があります [4][5]。
- 証拠の確実性は低いままです。GRADE で「非常に低い」が13件中9件 [9]。
- 「0.4〜0.7 は嘘だった」とも言えません。言えるのは「出所を追跡できない」までです [2]。
- 「フィードバックは無意味」ではありません。PISA分析で単独では有意でなかった、という所見です [12]。相関分析であり、実験ではありません。
- 文化差の理由は分かっていません。効果が北米・西欧の外で大きい理由は特定されていません [6][8]。
- 小標本ほど効果が大きいという規則性の解釈も、確定していません [8]。
- 日本の教室での検証は薄い領域です。ここで挙げた研究に日本のデータはほとんど含まれていません。
- 12節の運用は当塾の実務判断です。
当塾の立場
先に、この記事が当塾にとって不都合な部分を書きます。
塾は「測ること」を売っています。入塾テスト、月例テスト、単元テスト、模試。測るたびに、保護者に成果を示せます。
しかし——9節のとおり、実施した形成的評価活動の数と成績のあいだに有意な相関はありませんでした [14]。そして8節のとおり、フィードバックを返すことは単独では有意ではありませんでした [12]。
テストを増やし、丁寧な添削を返す。これは塾にとって最も見栄えのする仕事です。そして研究が最も支持していない部分でもあります。
当塾は、この矛盾を解決したふりをしません。できるのは、測った結果で実際に教え方を変えたかどうかを、こちらが説明できるようにしておくことだけです。
この記事の内容は、塾に来なくても実行できます
家庭でできることを書きます。費用はかかりません。
- 「何ができればできたことになるのか」を、始める前に言葉にする——これが最も効いていた要素です
- 丸つけを、子ども自身にさせる——生徒が始める自己評価は d = .61。親が丸をつけると、この効果は消えます
- 間違えた問題を「どうして間違えたか」で分類させる——計算ミスか、解き方を知らなかったか、問題を読み違えたか
- そして、その分類の結果で、次に何をやるかを変える——測って戻さないなら、測る意味はありません
- テストの回数を増やそうとしない——単元内〜単元間のサイクルで十分です
これを読んで、塾に通わずに実行する方がいるなら、それでいいと考えています。自分で回せる家庭が月謝を払う必要はありません。
それでも塾に通いたい方へ
塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。理由を3つ書きます。
- テストの回数を売りにしないこと。9節のとおり、回数と成績に有意な相関はありませんでした [14]。塾のパンフレットで最も増やしやすい数字が、最も根拠の薄い数字です。当塾は「測った結果で何を変えたか」のほうを記録します。
- 丸つけを、できるだけ生徒に渡すこと。8節のとおり、生徒が始める自己評価は d = .61 で、全体平均 .29 の倍以上です [7]。講師が全部丸をつけるほうが、塾としては「手厚く」見えます。当塾はそれをしません。
- 教科によって期待値を変えること。3節のとおり、推定効果量は国語 .32 に対して理科 .09 です [3]。同じ方法をすべての教科に一律に適用することは、根拠がありません。
塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。
- テストの結果で、実際に何を変えていますか
- 丸つけは誰がしていますか。その理由は何ですか
- 次のテストまでに、うちの子は何ができるようになっていればよいのですか
当塾がお答えできるようにしておくのが、こちらの仕事だと考えています。
まとめ
- 1998年の『Inside the Black Box』が起点。評価を「成績づけ」から「指導を変える情報」へ移した [1]。
- 広く流通する 0.4〜0.7 という効果量は「追跡不能・欠陥あり・古い・未公刊の出典に由来する」 [2]。
- 300本超を精査して残ったのは13本。加重平均 .20。教科別は国語 .32 / 数学 .17 / 理科 .09 [3]。
- 反証。その推定への4つの方法論的批判があり、「かなりの不確実性が残る」 [4][5]。
- その後の統合は 0.19〜0.29 に収束 [6][7][8]。
- ただし証拠の確実性(GRADE)は13件中9件が「非常に低い」 [9]。
- PISA 15万人の分析——「フィードバックを与える」だけでは有意な影響がなかった [12]。
- 効いていたのは「目標の明確化と進捗把握」「指導の調整」、そして「生徒が始める自己評価」(d = .61) [7][12]。
- 活動の回数と成績のあいだに、有意な相関はなかった [14]。
- 総括的テストのほうが効果量が高いという報告もある [15]。
- 小さな研究ほど大きな効果——出版バイアスの典型的な指標 [8]。
- 定着しない理由は、教師の意欲ではなく「網羅すべき量」との衝突 [17][21]。
- そして——「形成的評価」という語は、まだ明確に定義された実践の集合を表していない [2][16]。
出典
本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。
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