「数の感覚がない」という状態はあるのか
計算が極端に遅い。指を使わないと足し算ができない。7と9でどちらが大きいか、一瞬迷う。数直線の上でおおよその位置を示せない。九九だけが、何年経っても入らない。
こうした様子は、しばしば「算数が苦手」「練習不足」として扱われます。しかし研究の世界では、発達性ディスカリキュリア(算数障害)という独立した発達障害として30年以上研究されてきました。
一言でいうと
算数障害とは、知能は年齢相応で、教育も受けているのに、数の処理と計算の習得だけが極端に困難な状態のこと。有病率は3〜6%とされます [16]。
40人学級なら、1〜2人という計算になります。
そして、この分野の中心には「数感覚(number sense)」という概念があります。数を言葉や記号を介さずに、量として直接つかむ能力です。
結論を先に6点書きます。
なお、概念理解と手続き習熟の関係は別記事、数学不安はこちら、読み書きの困難はこちらで扱っています。
1. 数感覚とは何か
人間は——そして多くの動物も——数えなくても、おおよその量を把握できます。皿の上の豆が10粒か20粒かは、数えなくても分かる。この能力を支える仕組みを近似数システム(Approximate Number System, ANS)と呼びます。
この能力は生まれた直後から働き、人間が他の動物と共有しているとされます [9]。
一言でいうと(数感覚の測り方)
画面に青い点と黄色い点をパッと出して、「どちらが多い?」と答えさせます。数えられないくらい短い時間しか見せません。
10個対20個なら簡単ですが、10個対11個になると難しい。どれくらい近い数まで見分けられるかが、その人の数感覚の精度です。
この精度を表す数値をウェーバー比(w)といい、小さいほど精度が高いことを意味します。
4段階の発達モデル
2007年に提案された発達モデルは、数の理解を4段階で捉えます [5]。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 数量の中核表象(基数性)——「数」の意味を与える |
| 2 | 言語的な数記号の獲得(いち、に、さん) |
| 3 | アラビア数字の獲得(1、2、3) |
| 4 | ワーキングメモリの発達にともなう心的数直線の拡張(就学後) |
このモデルは、どの段階でつまずくかによって、異なる経路の算数障害が生じると予測します [5]。
2. 10歳が、5歳の水準
この分野で最も引用される所見です。
2010年、点集合の数量についてのウェーバー比を測定する心理物理学的手法で、定型発達児とディスカリキュリア児の数の鋭敏さを比較した研究が発表されました。
結果は次のとおりです [14]。
- 定型発達児では、数の鋭敏さは年齢とともに向上する。
- ディスカリキュリア児では、数の鋭敏さは深刻に損なわれており、10歳の児が、正常に発達している5歳児の水準で得点した。
- さらに——数の鋭敏さの障害の重さが、記号的な数の操作を要する課題での成績の低さを予測した。
低学力一般ではない
重要な区別があります。2011年、9年生71名を算数学習障害(MLD)群・低到達群・定型群・高到達群の4群に分けて ANS の精度を測った研究です。
結果は——MLD群のANS精度は他のすべての群より有意に低かった。そして、このANS精度は低到達群と定型群を区別しなかったというものでした [9]。領域一般的な能力を統制しても、この関係は残っています。
一言でいうと
「算数の点が低い子」と「算数障害の子」は別です。点が低いだけの子は、数感覚の精度では定型発達の子と変わりませんでした。
つまり——点数だけでは区別がつかないということです。
記号と非記号の両方
2022年、臨床評価に紹介された大規模標本から、算数能力が平均より2SD低く、領域一般の能力は平均的な児童58名を選び、IQ・年齢・視空間記憶を揃えた統制群42名と比較した研究があります。
結果は、ディスカリキュリア児は記号的(数字)・非記号的(点の数)の両方の数感覚で欠陥を示しました。数字比較課題と数量マッチング課題の成績は、交差検証つきロジスティック回帰でAUC = .84 という精度で両群を分離しています [1]。
3. 反証①——それは本当に「数感覚」の問題か
ここから反証に入ります。この分野の中心的な論争です。
点の数を比べる課題には、厄介な問題があります。点の数が多い集合は、たいてい面積も大きい。だから「多いほう」を選べても、数を見ているのか面積を見ているのか分かりません。
2016年、この点を切り分けた研究があります。4年間にわたって持続的に算数の成績が低かった児童を対象に、点の数と全体の面積が一致する試行と、逆相関する試行を分けて分析しました。
結果は決定的でした [4]。
- ウェーバー比の群間差が現れたのは、不一致試行(面積が数と逆相関する場合)だけだった。
- 不一致試行におけるANS精度の個人差は、視空間ワーキングメモリによって強く予測された。
著者らの結論——「算数障害におけるANS欠陥とされてきたものは、面積が数と逆相関するときに点の配列から数を抽出することの困難によって説明できる」 [4]。
この反証への、再反証
2024年、この論争を決着させようとした研究が発表されました。数的特徴と非数的特徴の寄与を切り分ける心理物理学的手法を用い、さらに自発的カテゴリー化課題で数量の顕著性を評価したものです。
結果は次のとおりでした [19]。
- 比較課題におけるディスカリキュリア児の低い正確さは、数量の符号化の弱さと結びついており、非数値的バイアスの強さとは結びついていなかった。
- 自発的カテゴリー化課題でも、数に基づくカテゴリー化が弱かったが、非数値情報の影響が強いという証拠はなかった。
- 神経計算モデルのシミュレーションでも、表象資源の減少が数の鋭敏さの発達を妨げる一方、非数値バイアスへの影響はわずかだった。
著者らは「中核的な数感覚の欠陥という仮説を支持する」と結論しています [19]。
現時点では、数感覚欠陥説がやや優勢ですが、決着はしていません。4つの仮説(精密数システムの欠陥/非記号表象の処理の失敗/記号から数量へのアクセス欠陥/領域一般の欠陥)が、なお並立しています [10]。
4. 反証②——「違う」のではなく「遅れている」だけかもしれない
もう一つの重要な論点です。算数障害の子どもの数的技能は、定型発達の子どもと質的に違うのか、それとも単に発達が遅れているだけなのか。
2024年、小学2・3・4年生480名(うち算数障害68名)を対象に、サビタイジング・計数・数量比較・数セット・数直線推定という複数の課題で検証した研究があります。
結果は次のとおりでした [7]。
- 算数障害児の障害は、質的に異なる基礎的数的技能を示すのではなく、特異的な発達の遅れを指し示していた(点の計数を除く)。
- この結果は、4年生の算数障害児と2年生の定型発達児の数学的プロフィールを比較すると裏づけられた——両者は一致していた。
- ただし核心的指標における特異的欠陥は、アクセス欠陥説・OTS欠陥説よりANS欠陥説を支持した。
一言でいうと
「うちの子は他の子と違う仕組みで数を見ている」のではなく、「2年分ゆっくり進んでいる」という理解のほうが、データに合っています。
これは実務的に大きな違いです。特殊な教材が必要なのではなく、同じ道をゆっくり通るということだからです。
5. ひとつの障害ではない
算数障害は均質な状態ではありません。
2016年、11〜13歳の算数障害児を算数事実型(arithmetic fact dyscalculia)と全般型(general dyscalculia)の2群に分け、定型発達児と比較した研究があります。
| 型 | 記号的数処理(数字) | 非記号的数処理(点の数) | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 全般型 | 弱い | 弱い | 生得的なANSの障害 |
| 算数事実型 | 弱い | 問題なし | アクセス欠陥 |
著者らは「異なるプロフィールを持つ子どもにおける算数障害の起源は、分岐している」と結論しています [15]。
保たれている能力もある
算数障害児32名と統制児32名を比較した研究では、大きな数量の処理には低い感度を示したが、サビタイジング範囲(4個程度までの即座の把握)内での正確な計数には障害が見られませんでした [17]。
また視覚的短期記憶の弱さも観察されましたが、それでは低いANS精度を説明できませんでした。
3分の2は併存症がある
疫学データによれば、算数障害のある子どもの3分の2は併存する状態(言語遅滞、ディスレクシア、ADHDなど)を持ち、3分の1は純粋型です [5]。臨床的には、算数の困難のプロフィールが両者で異なります。
診断基準そのものが揺れている
ブラジルの7〜12歳304名を12下位検査の数的認知バッテリーで評価した研究は、基準によって有病率が変わることを示しました——5パーセンタイル基準では4.6%、z得点基準では7.4% [12]。
著者らは、臨床・教育文脈では総得点の −1.5SD、研究目的では5パーセンタイル以下が適切と提案しつつ、発展途上国では社会経済的環境や教育背景が診断の強い交絡因子になると注意を促しています。
6. 介入は効くのか
ここが、保護者にとって最も重要な部分です。
メタ分析は大きな効果を示す——ただし
6〜12歳の1,792名を含む33研究を統合した2025年のメタ分析は、統合効果量 Hedge’s g = .93 という大きな値を報告しています [2]。
しかし、同じ論文が2つの限界を明記しています。
- 統合効果量を予測する統計的に有意な調整変数はなかった——つまり「何が効いているか」が特定できていない。
- エッガー回帰検定により出版バイアスが検出された。
- そして95%信頼区間は [.38, 3.09]——下限と上限が8倍以上違う。
無作為化試験では、効果が消えた
この記事でもっとも重い反証です。
早期数的技能の成績が低い小学1年生120名(平均6.4歳)を、介入群と統制群に無作為割付した試験があります。介入は14週間、週3回、少人数で実施されました。
結果は次のとおりでした [6]。
| 時点 | 結果 |
|---|---|
| 最初の8週間の直後 | 早期数的技能 d = 0.19/文章題 d = 0.41/近似数感覚 d = 0.35 の中程度で正の効果。 ただし有意だったのは文章題のみ |
| 続く6週間の介入期のあと | すべての効果が消失した |
著者らの結論——「(a) 低成績児の早期数的技能は可塑的であるが、(b) 正の効果が持続するには、頻繁かつ長期の介入が必要である」 [6]。
一言でいうと
短期の集中訓練で数字は動きます。しかし、やめれば戻ります。
これは「効かない」という話ではなく、「続けないと意味がない」という話です。数週間の教材や講座で解決する種類の問題ではありません。
7. そろばんは効くのか
日本の読者にとって直接関係する研究が、2本あります。
2〜3年のそろばんコース
12クラスの児童を対象に、半数がそろばんコースを受講し、長期(2〜3年)の効果を調べた研究です。
結果は次のとおりでした [20]。
- そろばんクラスでは、算数障害と診断された児童は一人もいなかった。
- 統制クラスでの有病率は 6.4% だった。
- そろばんコースの生徒は、年齢・性別・学年・その他の基礎的認知能力を統制した後でも、計算と空間的短期記憶で良い成績を示した。
2か月の短期訓練
同じ研究グループによる別の研究では、算数障害の生徒に2か月のそろばん訓練を行いました。訓練を受けなかった統制群と比べて、数感覚・計算・持続的注意で高い得点を示し、算数障害スクリーニング課題で改善した生徒の割合も大きくなりました [13]。
一言でいうと(ただし注意が要ります)
「そろばんをやれば算数障害にならない」とは言えません。
そろばんクラスに通う家庭と、通わない家庭では、家庭環境そのものが違う可能性があります(自己選択バイアス)。無作為割付ではないので、そろばんの効果なのか家庭の効果なのかを分離できません。
ただし2か月の訓練の研究は統制群つきで、数感覚の改善を示しています。「試す価値のある選択肢の一つ」として読むのが妥当です。
8. 何が効いているのか
介入の中身についても、手がかりがあります。
数直線の訓練
8〜10歳の算数障害児16名と統制児16名に、5週間のコンピュータ訓練(1日15分、週5日)を行い、神経心理検査とfMRIで評価した研究があります。
結果は、両群とも(a) 数の空間表象の改善、(b) 正しく解けた算数問題の増加という利益を示しました。脳活動では、算数障害児は両側頭頂領域の活動が少なく、これは数処理にとって重要な領域の神経機能不全を反映します。訓練後は両群とも関連領域の動員が減少——認知処理の自動化を意味します [8]。
視覚形態知覚が媒介していた
中国の小学校から選ばれた算数障害児80名を、8日間の数量訓練群と統制群(英語書き取り)に無作為割付した研究があります。
介入群は算数成績・ANS精度・視覚形態知覚で有意に改善しましたが、空間処理と文理解では改善しませんでした。
そして媒介分析の結果——訓練による算数成績の改善は、視覚形態知覚の改善によって完全に媒介されていました [3]。
早期・集中・ゲーム型
スペインの算数障害児19名に対し、数の表象・心的数直線の発達・算術的推論を標的とした4か月の集中的なシリアスゲーム訓練を行った研究では、暗算・数直線表象・10進法の理解・文章題解決・転記で有意な改善が見られました(定型発達群には有意な変化なし)[18]。
9. 他の発達特性との関係
5節で見たとおり、算数障害のある子どもの3分の2には併存する状態があります [5]。では、他の発達特性がある場合、数の育ち方はどう違うのか。
自閉スペクトラム症の場合
3〜7歳の自閉スペクトラム症(ASD)児47名と定型発達児47名を比較し、形式的・非形式的な数学能力とANS精度を測定した2026年の研究があります。
結果は、年齢によって分かれました [11]。
| 年齢 | 数学能力の群間差 |
|---|---|
| 3〜5歳 | 有意差なし |
| 6〜7歳 | ASD群が有意に低い |
さらに、ANS精度と数学能力の関係も群によって異なりました。
- ASD群——ANS精度は形式的・非形式的の両方の数学能力と有意に相関。形式的数学能力の固有の分散の5.4%を説明した。
- 定型発達群——ANS精度は非形式的な数学能力とのみ相関した。
一言でいうと
就学前には差がなかったのに、小学校に入る頃に差が出ています。これは「もともとできない」のではなく、形式的な算数の学習が始まる段階で何かが起きていることを示唆します。
そして——ASDのある子では、数感覚が「学校の算数」にまで直接効いているのに対し、定型発達の子では日常的な数の感覚にしか効いていない。同じ数感覚の弱さでも、意味するものが違う可能性があります。
10. 見分けるには何を見るのか
実務的な話に移ります。研究では、どんな課題で算数障害を判別しているのか。
2節で紹介した2022年の研究は、判別に有効だった2つの課題を特定しています [1]。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 数字比較課題(記号的) | 2つの数字(例:3 と 7)を見て、どちらが大きいかを素早く答える |
| 数量マッチング課題(非記号的) | 見本の点集合と同じ数量の集合を選ぶ |
この2つの組み合わせで、AUC = .84 という精度で算数障害児と統制児を分離できました。どちらも数分で終わる、単純なコンピュータ課題です。
著者らは、これらが「リスクのある子どもの早期同定にも、介入の標的にもなりうる基礎的な数的能力」だと述べています [1]。
ただし、スクリーニングと診断は別
ここで注意が要ります。AUC = .84 は「かなり良いが、完全ではない」水準です。5節で見たとおり、有病率の推定自体が基準によって 4.6% と 7.4% のあいだで動きます [12]。
また同じ研究は、発展途上国では社会経済的環境や教育背景が診断の強い交絡因子になると警告しています [12]。教育機会が十分でない子どもを「障害」と判定してしまう危険です。
一言でいうと
「数字の大小を素早く判断できるか」は、家庭でも観察できます。ただしそれは気づきのきっかけであって、診断ではありません。
とくに——十分に教わっていないだけの子を「障害」と扱ってしまう危険が、研究の側からも警告されています。
11. 塾と家庭の運用にどう落とすか
ここからは、上の知見を当塾の実務に翻訳した部分です。研究が直接そう言っているわけではない箇所は、そう明示します。
(1) 「点が低い」と「数感覚が弱い」を分けて考える
2節のとおり、ANS精度は低到達群と定型群を区別しませんでした [9]。点数だけでは判断できません。
(2) 「どちらが多い?」を見る
実務的な手がかりとして、数えずに量を比べる場面で何が起きるかを観察します。「7と9、どっちが大きい?」に一瞬迷うか。おはじきの多い少ないを数えずに言えるか。これは研究の診断手続きではなく、上記の知見から当塾が組んだ観察の目安です。
(3) 「違う」のではなく「遅れている」と考える
4節のとおり、4年生の算数障害児と2年生の定型発達児のプロフィールは一致していました [7]。特殊な教材ではなく、学年を下げた同じ道を通します。
(4) 続けることを前提に設計する
6節のとおり、無作為化試験で効果が消失しました [6]。当塾は、数か月で終わる計画を立てません。
(5) サビタイジングは保たれている可能性を使う
5節のとおり、4個程度までの即座の把握は障害されていないという報告があります [17]。小さい数のかたまりを足し合わせる方略は、残っている能力を使えます。
(6) 数直線を使う
8節のとおり、数直線の訓練で空間表象と計算の両方が改善し、脳活動も変化しました [8]。当塾では、数を「線の上の位置」として扱う場面を意図的に作ります。
(7) 併存を疑う
5節のとおり、3分の2に併存症があります [5]。算数だけを見ていると見落とします。
(8) 評価と診断は専門機関へ
5節のとおり、診断基準そのものが基準によって変わります(4.6% vs 7.4%)[12]。塾が診断することはできませんし、するべきでもありません。
12. この記事で言えないこと
- 原因は特定されていません。数感覚欠陥説がやや優勢ですが、4つの仮説が並立しています [10][4][19]。
- 介入のメタ分析には出版バイアスがあり、信頼区間は [.38, 3.09] と極端に広い [2]。
- 無作為化試験では効果が消失しました [6]。
- そろばんの長期研究は無作為割付ではありません [20]。因果は主張できません。
- 有病率は診断基準で変わります(4.6%〜7.4%)[12]。
- 日本の児童を対象にした研究は、ここに含まれていません。
- 11節の運用は当塾の実務判断です。
当塾の立場
当塾は個別指導の塾です。そして、この記事についても先に書いておきます——当塾は診断機関ではありません。算数障害の評価と診断は、医療・専門機関の仕事です。
この記事の内容は、塾に来なくても実行できます
はっきり書きます。ここまでの内容の大半は、今日から家庭で実行できます。費用はかかりません。
- 「点が低い」ことと「数感覚が弱い」ことを分けて考える
- 「7と9、どっちが大きい?」に一瞬迷うかどうかを見る
- 特殊な教材ではなく、学年を下げた同じ道を通す
- 数直線を使って、数を「線の上の位置」として扱う
- 数か月で終わる計画を立てない
- 算数以外にも困難がないか(読み・注意)を併せて見る
- 気になるなら専門機関に相談する
これを読んで、塾に通わずに実行する方がいるなら、それでいいと考えています。自分で回せる家庭が月謝を払う必要はありません。
それでも塾に通いたい方へ
そのうえで、塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。この記事の内容に即して、理由を3つ書きます。
- 「学年を下げる」判断は、集団では取りにくい。4節のとおり、算数障害は質的な違いではなく発達の遅れであり、4年生の障害児と2年生の定型児のプロフィールが一致していました [7]。つまり必要なのは、その子がいる学年まで戻ることです。しかし学校の授業は学年で進みます。2年分戻って、そこからやり直すという判断は、個別指導でなければ取れません。
- 「続ける」設計が要る。6節のとおり、無作為化試験では8週間で出た効果が、その後消えました [6]。数か月の教材や短期講座では届きません。年単位で同じ記録を持ち続けること自体が、この領域では中身になります。
- 「塾では無理」と言う必要がある。5節のとおり、3分の2には併存症があり [5]、診断基準そのものが揺れています [12]。学習の工夫で届く範囲と、専門機関に委ねるべき範囲があります。当塾はその線を引き、越えません。読み書きの記事でも同じことを書きました。
逆に言えば、この3つをやっていない個別指導に、この点での優位性はありません。塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。
- 学年を下げて教えることはありますか。どこまで下げますか
- 数か月で成果が出なかった場合、どうしますか
- 専門機関に相談するよう勧めることはありますか
当塾がお答えできるようにしておくのが、こちらの仕事だと考えています。
まとめ
- 算数障害の有病率は3〜6%。40人学級で1〜2人 [16]。
- 10歳の算数障害児が、5歳の定型発達児と同じ数の鋭敏さだった [14]。
- この欠陥は低学力一般ではなく算数障害に特異的 [9]。点数だけでは区別できない。
- 数感覚の欠陥か、視空間処理の問題かに論争がある [4]。近年は数感覚説がやや優勢 [19]。
- 480名の研究は「質的な違いではなく発達の遅れ」と結論。4年生の障害児=2年生の定型児 [7]。
- ひとつの障害ではない。全般型は記号・非記号とも弱く、算数事実型は記号のみ [15]。
- サビタイジング(4個程度までの即座の把握)は保たれている [17]。
- 3分の2に併存症(言語遅滞・ディスレクシア・ADHDなど)[5]。
- 介入のメタ分析は g = .93 だが出版バイアスあり、CI [.38, 3.09] [2]。
- 無作為化試験では、8週間で出た効果が続く6週間で消失した [6]。
- そろばんクラスでは診断ゼロ、統制クラスでは6.4%(ただし無作為割付ではない)[20]。
- 数直線訓練で空間表象・計算・脳活動が変化 [8]。効果は視覚形態知覚に媒介されるという報告も [3]。
出典
本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。
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- 【出版バイアスあり】Mehari, A. et al. (2025). Effectiveness of interventions for school children with developmental dyscalculia: A systematic review and meta-analysis. Romanian Journal of Applied Psychology. DOI: 10.2478/rjap-2025-0008
- Cheng, D. et al. (2020). Short-term numerosity training promotes symbolic arithmetic in children with developmental dyscalculia. Developmental Science. DOI: 10.1111/desc.12910
- 【反証・ANS欠陥説への異議】Bugden, S. & Ansari, D. (2016). Probing the nature of deficits in the ‘Approximate Number System’ in children with persistent Developmental Dyscalculia. Developmental Science. DOI: 10.1111/desc.12324
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- Lu, Y. et al. (2020). Can abacus course eradicate developmental dyscalculia. Psychology in the Schools. DOI: 10.1002/pits.22441
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- 教育研究をどう読むか——因果推論と効果量の作法
- 教師の「質」は測れるか——付加価値モデルの実証と限界
- 少人数学級は効くのか——テネシーSTAR実験から40年
- 1対1で教えると何が起きるか——チュータリング研究の効果量と、効かない条件
- 「非認知能力」は何を指しているか——自制心・やり抜く力・マシュマロ実験の再検証
- 夏休みに学力は下がるのか——測定が結論を左右した研究史
- 試験で学校を評価すると何が起きるか——説明責任政策の実証とキャンベルの法則
- 保護者の関与はどこまで効くか——宿題の手伝いより、一行の連絡が効く理由
- スマートフォンと注意——学校の持込禁止、「そこにあるだけ」の害、マルチタスクの実証
- 数学不安は成績を下げるのか——相関の大きさ、因果の向き、介入の再現性
- 教師の期待は生徒を変えるか——ピグマリオン効果の60年が残した結論
