神経神話——「脳科学に基づく」という言葉をどう読むか

「脳科学に基づく」という言葉を見たとき

教材の宣伝、塾のパンフレット、教育セミナーの案内。「脳科学に基づく」「脳の仕組みを活かした」という言葉を、見たことのない保護者はいないでしょう。

この言葉は、強力です。脳の話が添えられているだけで、同じ主張が説得力を持って聞こえることが知られています。

そして、その説得力を利用して広まった誤解が、大量に存在します。経済協力開発機構(OECD)が2002年の「脳と学習」プロジェクトで警告し、神経神話(neuromyths)と名づけたものです [1]

一言でいうと
神経神話とは、科学的事実を出発点にしているが、途中で誤解され、教育現場で通用してしまっている脳についての言説のこと。
完全な作り話ではなく「ゆるく科学に基づいている」ため、見分けるのが難しい。それが厄介さの本質です。

この記事の主題は、個々の神話の真偽ではありません。なぜ、教える側がこれほど信じてしまうのかです。そこには、かなり不都合な事実があります。

結論を先に6点書きます。

  1. 教師は神経神話の約半分を信じている——英蘭242名の調査で49% [1]。国によっては60%超 [2]
  2. 最大の逆説:脳についての一般知識が多い教師ほど、神経神話を信じやすい [1][2][20]
  3. 神話の主な入手源は、メディアではなく教員養成課程と professional な研修という「公式な源」でした [4]
  4. 11カ国1,257名の調査で、90%超が多重知能と学習スタイルに同意 [4]
  5. 信じているだけでなく実際に使われています。マレーシアの調査で、学習スタイルを支持した教師の80%が実際にVAKを実践 [8]
  6. ただし減らせます。15時間のオンライン講座が、短期・長期とも大きく神話の支持率を下げました [13]

なお、学習スタイル説そのものは別記事で、脳トレ(作業記憶訓練)はこちらで扱っています。

1. どれくらい信じられているのか

2012年、この分野の出発点となる調査が行われました。英国とオランダの小中学校教師242名——しかも「学習の神経科学に関心がある」教師——を対象に、脳に関する32の言明(うち15が神経神話)への回答を集めたものです。

結果は次のとおりでした [1]

測定 結果
神経神話を信じた割合 平均 49%(とくに商業化された教育プログラムに関連する神話)
一般知識の正答率 約 70%

その後、同じ手法が各国で繰り返されました。

国・地域 対象 結果
米国 [17] 教育者598名/一般3,045名/神経科学曝露群234名 一般68% > 教育者56% > 神経科学曝露群46%
エクアドル [2] 現職2,193名 神経神話の61.94%、指導myth の60.69%を支持
11カ国 [4] 小学校教師1,257名 21の神話のうち13が全国で蔓延90%超が多重知能・学習スタイルに同意
ハンガリー [6] 教職課程822名 神話への誤答率 56.9%
南インド [14] 中高教師503名 65.5%が2つ以上を信じ、84%が学習スタイル神話
カリブ海諸国 [20] 教師 3分の2が神話の50%以上を識別できず
イタリア [5] 教師820名 一般神話の73%、神経発達に関する神話の70%を正しく識別

2016年のメタ分析的な統合は、いくつかの神話の人気が国を超えて著しく一貫していることを確認しています [19]

2. 最大の逆説——知識が多いほど、信じやすい

この記事でもっとも重要な所見です。

2012年の調査は、予測因子も分析していました。結果は直感に反するものでした [1]

  • 一般向け科学雑誌を読む教師は、脳の一般知識のスコアが高かった。
  • しかし——一般知識が多いことは、神経神話への信念の「増加」を予測した。

著者らの結論は厳しい。「教室での神経科学知見の応用に熱心な教師は、疑似科学と科学的事実を区別することが難しいと感じている。脳についてより多くの一般知識を持つことは、教師を神経神話への信念から守らないようである」 [1]

各国で再現されている

この逆説は、繰り返し確認されています。

  • エクアドル(2,193名)脳知識が多いほど神経神話を信じるが、指導に関する myth は信じにくい——という分離が見られた [2]
  • カリブ海(教師)脳知識のスコアが高いことと、事前の教員養成を受けたことが、どちらも神経神話への信念を「増加」させた [20]
  • トルコ(英語教師114名)脳機能と神経教育の一般知識と、神経神話の受容のあいだに正の相関 [9]
  • ギリシャ(628名)より多くの一般神経科学知識は、神経神話への信念から守らなかった [11]

一言でいうと
「脳についてよく知っている人ほど、脳に関する嘘を見抜ける」わけではありません。むしろ逆のことが起きています。
理由の一つは、関心の高さだと考えられます。脳の話に興味がある人ほど、脳の話を多く目にし、そのなかには正しいものも間違ったものも混ざっている。関心は知識を増やすと同時に、誤解も増やします。

3. どこから来るのか——「公式な源」が主犯だった

神話はどこで身につくのか。この問いに答えた調査が、2025年に発表されました。

11カ国・8言語で1,257名の小学校教師に、神話の蔓延度とその情報源を尋ねたものです。

結果は次のとおりでした [4]

情報源 役割
公式な源——教員養成課程、専門職向けセミナー 主要な獲得経路
職業経験、個人的直感 主要な獲得経路
非公式な源——メディア、ポピュラー文化 役割は小さい

つまり——神経神話は、テレビや雑誌から入ってくるのではなく、教員養成課程と研修から入ってくるということです。

この所見は、他の研究とも整合します。カリブ海の調査では事前の教員養成を受けたことが神経神話への信念を増加させ、一方で教育神経科学に特化した現職研修はスコアを改善しました [20]

ラテンアメリカの1,139名を対象にした2026年の研究は、さらに細かい分離を報告しています——「学位課程の一部として」神経科学教育を受けた者は神話を支持しやすく、「学位課程の外で」神経科学訓練を受けた者は支持しにくかった [18]

一言でいうと
「研修で習ったから正しい」は成り立ちません。むしろ、教員養成や研修で伝えられた内容こそが、神話の主な供給源になっていた。
これは教師個人の問題ではなく、教育界全体の情報の流れの問題です。

4. 専門家と比べると、どうか

神経科学の専門家なら見抜けるのか。比較研究があります。

米国の大規模調査(総計3,877名)では、一般市民68% > 教育者56% > 神経科学曝露群46% という順で神話の支持率が下がりました [17]。ドイツの研究でも、専門家は教師や一般市民より正確に神話を識別しています [16]

ただし、米国の研究の結論は慎重です——「教育や神経科学の訓練は、神経神話への信念を減らすことはできるが、なくすことはできない」 [17]神経科学に多く触れた群でも、なお46%を信じていました。

専門家どうしは一致する

ラテンアメリカの研究は、教師1,139名と神経教育の専門家9名を直接比較しました [18]

  • 教師の信念は変動が大きく、強い合意が見られた項目は16%、強い不一致は43%。
  • 専門家は内部の合意が高く、とくに強い科学的証拠に支持される項目でそうだった。
  • 両群を比較すると60%の項目で不一致。3分の1超の項目で大きな乖離があり、その原因は教師による確立した神経神話の支持だった。

7つの「古典的」神話

米国の研究は探索的因子分析により、7つの「古典的」神経神話が一つにまとまることを見いだしました。内容は、学習スタイル、ディスレクシア、モーツァルト効果、砂糖が注意に与える影響、右脳型・左脳型、脳の10%しか使っていないといった項目です [17]

そして全群を通じて最も支持された2つは、学習スタイルとディスレクシアに関する神話でした [17]

5. 信じているだけでなく、実際に使われている

信念にとどまるなら害は限定的ですが、そうではありません。

マレーシアの教師501名を対象にした調査では、経験年数を問わず75%超が「個人は好みの学習スタイルで情報を受け取ると学習が良くなる」という根拠のない考えを支持し、そのうち80%が実際にVAK(視覚・聴覚・運動感覚)の考えを授業で適用していたと報告されています。神話への同意と実践への同意は正の相関(r = 0.181、p < 0.001) [8]

ドイツの研究でも、現職教師の約半数が「授業で神経科学的原理を使っている」と回答しており、その少なくとも一部は神経神話に基づくものと見られています [16]

オーストラリアの228名を対象にした研究も、主要な神経神話が教室に組み込まれているように見えると結論しています [10]

逆に、肯定的な所見もあります。特別支援の教職課程学生を対象にした研究では、神経神話を正確に識別できた参加者ほど、効果的な指導実践を実施する可能性が高いと報告されています [12]

6. 自信はあるのか——相反する2つの所見

神話を信じている人は、自分の答えに自信を持っているのか。ここは研究が割れています。

研究 所見
オーストラリア228名 [10] 神経神話を支持した参加者のほうが、神話を見抜いた参加者より自分の答えに自信があった
ギリシャ628名 [11] 神話の識別精度は低いが、その誤解への自信も低かった——深く根づいてはいないことを示唆

この違いは実務上重要です。もし自信が高いなら、指摘しても受け入れられにくい。もし自信が低いなら、正しい情報を示せば修正されやすい。

ギリシャの研究は、クラスター分析により教師を3つのプロファイル(萌芽的/中程度/統合された神経科学知識)に分類し、神経神話は情報処理の早い段階で生じると論じています。そして「神話を見つけて直す」のではなく「根源に先回りして対処する」予防的戦略が必要だと結論しています [11]

7. 神経科学リテラシーは、万能の防具ではない

2節の逆説を、より細かく分解した研究があります。

チリの特別支援学校の教育者142名を対象に、一般的な脳知識・神経発達に関する神話・教育に関する神話の3領域を比較した2026年の研究です。

結果は明確な勾配を示しました [15]

領域 誤答の割合
教育に関する神経神話 最も高い
神経発達に関する神話 中間
一般的な脳知識 最も低い

そして重要な所見です。領域全体のレベルでは、正答率と「一般的な脳知識」「教育神経科学への関心」「自己認識している神経科学知識」のあいだに有意な関連はありませんでした。

ただし下位群レベルでは選択的なパターンが現れました——一般的な脳知識が高いことは、ADHDに関する項目では正答の見込みを「下げ」、学習スタイルに関する項目では正答の見込みを「上げ」ました [15]

著者らの結論はこうです——「神経科学リテラシーは、神経神話の支持に対する単一の、領域一般的な保護因子としては機能しない。むしろ、正答率との関係は、評価される主張の具体的な種類に依存するように見える」 [15]

一言でいうと
「脳のことを勉強すれば嘘を見抜ける」は成り立ちません。どの種類の主張かによって、知識が助けにも邪魔にもなります。
とくに教育に結びつけられた主張ほど、見抜くのが難しい——これが一番厄介な部分です。

8. それでも、減らすことはできる

ここまで悲観的な所見が続きましたが、介入研究には希望があります。

スペイン・カタルーニャの203校・807名の小中学校教師を対象に、まず神話の蔓延度を測り、そのうえで15時間のオンライン神経科学講座の効果を統制群と比較した研究です。

結果は次のとおりでした [13]

  • 当初の神話支持の分布は、先行研究と同様だった。
  • 介入は、訓練直後にも長期的にも、神話の蔓延度を大きく減らした。

著者らは、「現職教師を対象とした、低コストで実施が容易な介入が、時間を超えて持続する是正効果をもたらしうる」と結論しています [13]。この分野で、自然な現場環境で行われた数少ない介入研究です。

保護因子についての所見もあります。イタリアの820名を対象にした研究では、関連情報にアクセスする頻度が保護因子として現れ、媒介分析により認知欲求の高さ → 脳に関する情報へのアクセス頻度の高さ → 神経神話の支持の低さという経路が示されました [5]

米国の研究も、より正確な成績を予測したのは、年齢(若いこと)、教育(大学院学位)、神経科学の授業への曝露、査読済み科学への曝露だったと報告しています [17]

9. この研究分野自体の限界

公平を期して、神経神話研究そのものの弱点も書きます。

20年分の研究を精査した2021年の系統的レビュー(24論文)は、次のように結論しています [7]

  • 神経神話は、科学的知識の不足、科学者と教師のあいだのコミュニケーションの断絶、教師が参照する情報源の質の低さの結果として現れる。
  • しかし——神経神話の保護因子・予測因子についてのデータは一貫していない。
  • そして——新しい神経神話を判定するための標準的な科学的方法もガイドラインも存在しない。

最後の点は重要です。「何を神経神話とみなすか」自体が、研究者の判断に委ねられています。

測定器の問題も指摘されています。オーストラリアの研究は、広く使われている神経神話尺度に心理測定上の弱点を発見し、今後の研究が対処すべきだと述べています [10]

さらに、2026年の研究は「神経科学研究の進展にともなって、神経神話の正確さも変わりうる」と指摘しています [18]いま神話とされているものが、将来そうでなくなる可能性もあります。

10. なぜ脳の話は、これほど説得力を持つのか

ここまでの所見を並べると、一つの問いが残ります。なぜ脳の話だけが、これほど疑われずに受け入れられるのか。

3つの供給要因

2016年のスペインの研究は、神経神話が増殖した原因を3つに整理しています [19]

  1. 十分な知識の欠如
  2. 教育者と科学者のあいだのコミュニケーションの不足
  3. 疑わしい教育商品の効果的なマーケティング

3番目が、この記事でもっとも直接的に保護者に関わる要因です。神経神話は、自然に広まったのではなく、売られています。

1節で見たとおり、2012年の調査は「とくに商業化された教育プログラムに関連する神話」が信じられていたと報告しています [1]。神話は無差別に広まるのではなく、商品になりやすい形のものが選択的に広まるということです。

一言でいうと
「右脳を鍛える」「◯◯型に合わせた指導」は、商品として売りやすい形をしています。子どもを分類でき、対応する教材を用意でき、効果を確かめにくい。
一方「分散して復習する」「思い出す作業を増やす」は、売る対象がありません。正しい知見ほど商品になりにくい——これが、広まり方の偏りを生んでいます。

情報源の質

2021年の系統的レビューは、神経神話を「科学的知識の不足、科学者と教師のあいだのコミュニケーションの断絶、そして教師が参照する情報源の質の低さ」の結果として位置づけています [7]

情報源の質は、実際に測られています。ハンガリーの教職課程学生822名を対象にした研究では、神経神話の受容を予測したのは2つだけでした——男性であることと、神経科学についての主な情報源として Facebook を使う頻度です [6]

逆に、イタリアの研究では関連情報にアクセスする頻度が保護因子でした [5]。米国の研究でも、査読済み科学への曝露が正確さを予測しています [17]

一言でいうと
「どれだけ触れているか」ではなく「何に触れているか」が分かれ目です。SNSで脳の話に多く触れている人ほど神話を信じ、原典や査読論文に触れている人ほど信じにくい。
量ではなく、情報源の種類を見る必要があります。

教師個人の問題ではない

ここで強調しておきたいことがあります。3節で見たとおり、神話の主な入手源は教員養成課程と研修でした [4]。そしてラテンアメリカの研究では、就学前教師と「学位課程の一部として神経科学教育を受けた者」ほど神話を支持していました [18]

つまり——熱心に学んだ人ほど、公式の経路を通じて誤った情報を受け取っていたということになります。

特別支援の教職課程学生を対象にした質的調査も、この構図を裏づけています。参加者は神経神話をめぐる用語に混乱しており、疑似科学に基づく実践をどう見分ければよいか分からない状態でした [12]

一言でいうと
これは「勉強不足の教師」の話ではありません。研修で教わり、資格課程で学び、善意で実践している。だからこそ修正が難しい。
保護者として「それは間違いです」と指摘するのは、ほぼ確実に関係を損ないます。「その根拠になっている研究を教えてください」と聞くほうが、実務的です。

11. 塾と家庭の運用にどう落とすか

ここからは、上の知見を当塾の実務に翻訳した部分です。研究が直接そう言っているわけではない箇所は、そう明示します。

(1) 「脳科学に基づく」を見たら、一度立ち止まる

1節のとおり、とくに商業化された教育プログラムに関連する神話が信じられていました [1]。この表現は、内容の正しさを保証しません。

(2) 「研修で習った」を根拠にしない

3節のとおり、神話の主な入手源は教員養成課程と研修でした [4]。当塾でも、外部研修の内容をそのまま採用せず、出典を確認します。

(3) 頻出の6つを覚えておく

4節のとおり、7つの「古典的」神話が因子としてまとまります [17]。保護者が押さえておく価値があるのは次です。

  1. 学習スタイル(視覚型・聴覚型など)
  2. 右脳型・左脳型
  3. 脳の10%しか使っていない
  4. モーツァルト効果(クラシックを聴くと頭が良くなる)
  5. 砂糖が注意力を下げる
  6. 多重知能(教育的介入の根拠としては支持されていない)

(4) 「うちの子は◯◯型」という説明を受けたら、根拠を聞く

5節のとおり、学習スタイルを信じる教師の80%が実際にVAKを実践しています [8]。これは善意で行われており、悪意の問題ではありません。だからこそ、質問しにくい。

(5) 「詳しい人」の説明ほど注意する

2節のとおり、脳の一般知識が多い人ほど神経神話を信じやすい [1]。専門用語が多い説明は、正しさの保証になりません。

(6) 指摘は責めない形でする

6節のとおり、自信の水準については研究が割れています [10][11]。ただし3節のとおり、多くは公式な研修で教わったものです。個人の不勉強ではありません。

(7) 短い学習でも効果がある

8節のとおり、15時間の講座で長期的な改善が得られました [13]。当塾では、講師研修でこの主題を扱っています。これは研究からの演繹であり、当塾で効果を測定した結果ではありません。

12. この記事で言えないこと

  • 「神経神話を信じると生徒の成績が下がる」とは言えません。信念と実践の関連は示されていますが [8]、学習成果への影響を直接測った研究は乏しく、ある研究は「どのように教育成果に影響しているかを探る研究が必要」と明記しています [20]
  • 「何を神経神話とみなすか」に標準的な方法がありません [7]
  • 広く使われている尺度に心理測定上の弱点があります [10]
  • 保護因子・予測因子のデータは一貫していません [7]。自信の水準についても研究が割れています [10][11]
  • いま神話とされるものが、将来変わる可能性があります [18]
  • 日本の教師を対象にした調査は、ここに含まれていません。
  • 11節の運用は当塾の実務判断です。

当塾の立場

当塾は個別指導の塾であり、この記事の内容は当塾自身にも向けられています。利害関係を明示しておきます。

この記事の内容は、塾に来なくても実行できます

はっきり書きます。ここまでの内容は、すべて家庭で実行できます。費用はかかりません。

  • 「脳科学に基づく」という表現を、内容の保証と受け取らない
  • 頻出の6つ(学習スタイル/右脳左脳/脳の10%/モーツァルト効果/砂糖/多重知能)を覚えておく
  • 「うちの子は◯◯型」と言われたら、根拠を聞く
  • 専門用語が多い説明ほど注意する
  • ただし、言っている側を責めない——多くは公式な研修で教わったものです

これを読んで、塾に通わずに実行する方がいるなら、それでいいと考えています。自分で回せる家庭が月謝を払う必要はありません。

それでも塾に通いたい方へ

そのうえで、塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。この記事の内容に即して、理由を3つ書きます。

  1. この記事は、当塾を含む教育産業への批判である。1節のとおり、とくに商業化された教育プログラムに関連する神話が信じられていました [1]。塾は、この神話を売る側に立ちやすい業態です。「脳科学に基づく指導法」を掲げないことは、当塾が自分に課している制約です。掲げていない理由を説明できる塾を選ぶ価値がある、と考えています。
  2. 出典をたどれる状態にしておく必要がある。3節のとおり、神話の主な供給源は教員養成課程と研修でした [4]。つまり「教わったこと」は根拠になりません。当塾がこの連載で、すべての記事に原典のDOIリンクを付けているのは、読者が自分で確かめられる状態にするためです。塾の主張を、塾の言葉だけで信じてもらう必要はありません。
  3. 「分かりません」と言えることが要る。2節・7節のとおり、知識が多いことは神話への防具になりません [1][15]。専門用語で説明を埋めるほど、かえって危うい。根拠がない部分を「これは分かっていません」と言うことが、この分野では誠実さの最低線だと考えています。この連載に「この記事で言えないこと」を必ず置いているのは、そのためです。

逆に言えば、この3つをやっていない個別指導に、この点での優位性はありません。塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。

  • その指導法の根拠は、どの研究ですか
  • 「うちの子は◯◯型」という判断は、何に基づいていますか
  • 分かっていないことは何ですか

3つ目に答えられる塾は多くないはずです。当塾がお答えできるようにしておくのが、こちらの仕事だと考えています。

まとめ

  1. 神経神話=科学的事実を出発点にしつつ誤解され、教育現場で通用している脳の言説。OECDが2002年に警告 [1]
  2. 教師は神話の約半分を信じている(英蘭49%)[1]。国によっては60%超 [2]
  3. 11カ国1,257名で、90%超が多重知能と学習スタイルに同意 [4]
  4. 最大の逆説:脳の一般知識が多い教師ほど、神経神話を信じやすい [1][2][20][9][11]
  5. 主な入手源はメディアではなく、教員養成課程と研修という「公式な源」 [4]
  6. 一般市民68% > 教育者56% > 神経科学曝露群46%。訓練は減らすが、なくさない [17]
  7. 教師と専門家では60%の項目で不一致 [18]
  8. 実際に使われている。学習スタイルを信じる教師の80%がVAKを実践 [8]
  9. 神経科学リテラシーは領域一般の保護因子として機能しない [15]
  10. ただし15時間のオンライン講座で、長期にわたり神話が減少した [13]
  11. 「何を神経神話とみなすか」に標準的方法はなく [7]将来変わりうる [18]

出典

本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。

  1. 【出発点・最大の逆説】Dekker, S. et al. (2012). Neuromyths in Education: Prevalence and Predictors of Misconceptions among Teachers. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2012.00429
  2. Zambrano Ramírez, J. et al. (2025). Prevalence of educational myths among Ecuadorian teachers. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2025.100273
  3. 【情報源の特定】Adiguzel, O. C. et al. (2025). Belief in neuromyths among primary school teachers: A cross-national study of 11 countries. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2025.100264
  4. Bei, E. et al. (2023). Neuromyths: Misconceptions about neurodevelopment by Italian teachers. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2023.100219
  5. Víg, J. et al. (2023). The Prevalence of Educational Neuromyths Among Hungarian Pre-Service Teachers. Journal of Intelligence. DOI: 10.3390/jintelligence11020031
  6. 【分野自体の限界】Torrijos-Muelas, M. et al. (2021). The Persistence of Neuromyths in the Educational Settings: A Systematic Review. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2020.591923
  7. Amran, M. et al. (2025). Seen through teachers’ eyes: Neuromyths and their application in Malaysian classrooms. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2025.100250
  8. Sisman, G. et al. (2025). The Prevalence of Neuromyths Among K-12 English Language Teachers. European Journal of Education. DOI: 10.1111/ejed.70070
  9. Hughes, B. et al. (2020). Why do teachers believe educational neuromyths?. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2020.100145
  10. Pnevmatikos, D. (2025). Exploring the paradox: teachers’ awareness of brain functions and the endorsement of neuromyths. European Journal of Teacher Education. DOI: 10.1080/02619768.2025.2562214
  11. Ruhaak, A. E. & Cook, B. G. (2018). The Prevalence of Educational Neuromyths Among Pre-Service Special Education Teachers. Mind, Brain, and Education. DOI: 10.1111/mbe.12181
  12. 【介入で減らせる】Ruiz-Martín, H. et al. (2022). Tenacious educational neuromyths: Prevalence among teachers and an intervention. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2022.100192
  13. Jeyavel, S. et al. (2022). Neuromyths in Education: Prevalence among South Indian School Teachers. Frontiers in Education. DOI: 10.3389/feduc.2022.781735
  14. 【リテラシーは防具にならない】von Hausen, F. et al. (2026). From neuromyths to neuroscience literacy: a cross-domain study of brain misconceptions among educators in Chilean special schools. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1768430
  15. Hennes, A.-K. et al. (2024). The Prevalence and Usage of “Neuromyths” Among German in-Service- and Pre-Service Teachers. Mind, Brain, and Education. DOI: 10.1111/mbe.12401
  16. Macdonald, K. T. et al. (2017). Dispelling the Myth: Training in Education or Neuroscience Decreases but Does Not Eliminate Beliefs in Neuromyths. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2017.01314
  17. Cerezo García, M. et al. (2026). Neuroscience beliefs in education among teachers in Argentina and other Latin American countries. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2026.100279
  18. Ferrero, M. et al. (2016). Neuromyths in Education: Prevalence among Spanish Teachers and an Exploration of Cross-Cultural Variation. Frontiers in Human Neuroscience. DOI: 10.3389/fnhum.2016.00496
  19. Bissessar, S. & Youssef, F. (2021). A cross-sectional study of neuromyths among teachers in a Caribbean nation. Trends in Neuroscience and Education. DOI: 10.1016/j.tine.2021.100155

教育学・認知心理学・社会心理学・行動経済学・教育経済学の研究をもとにした連載です。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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