生成AIと学習——取り上げたとき、何が残るのか

生成AIと学習——現時点の実証

2022年11月に ChatGPT が公開されてから、3年が経ちました。

そして、教育研究はすでに大量の検証を積み上げています。効果量のメタ分析だけで、10本以上あります。

結果は、おおむね正です。ただし——最も重要な所見は、効果量の外にあります。

一言でいうと(この記事の結論)
使えるあいだは、成績が大きく上がります。高校数学の圃場実験で、標準的な対話画面で48%、学習用に設計されたもので127%の向上 [1]
ところが、取り上げると——一度も使ったことのない生徒より、成績が17%低くなりました [1]
別の無作為化実験は、「メタ認知的な怠惰(metacognitive laziness)」という現象を報告しています [2]
——この2点を知らずに、効果量だけを見てはいけません。

結論を先に8点書きます。

  1. 約1,000人の高校生の圃場実験。AIを取り上げると、使ったことのない生徒より成績が低くなりました [1]
  2. ただし、学習用に設計された版では、この負の効果がほぼ消えました [1]
  3. 無作為化実験——小論文の得点は上がったが、知識の獲得と転移は変わりませんでした [2]
  4. 出版バイアスを補正すると、効果量は「大」から「小〜中」に縮みました [3]
  5. 効果量の報告は g = 0.46 から 1.14 まで、大きく割れています [4][9]
  6. 自己効力感には、有意な効果がありませんでした [5]
  7. 知識を構成・拡張する使い方では高い学習、手続き的に使う使い方では低い学習になりました [12]
  8. そして——批判的思考では、AIを使わなかった群のほうが優れていたという報告があります [15]

なお、受験勉強での具体的な使い方については、生成AIを受験勉強にどう使うかで扱っています。この記事は実証研究の現状を整理するものです。

1. 効果量は大きい。ただし、幅がある

まず、報告されている数字を並べます。

メタ分析 対象 効果量
2025年 [9] 66研究・129効果量(学部生) g = 1.14
2025年 [8] 大学生 SMD = 0.961
2026年 [6] 35研究・4,193名 g = 0.670
2025年 [7] 37研究 g = 0.577
2026年 [10] 22研究 g = 0.573
2026年 [4] 27研究 認知 g = 0.462/非認知 0.519

一言でいうと(0.46 と 1.14)
同じ対象について、効果量が2.5倍違います。
——違いは含める研究の基準、比較対象、測定方法から来ています。
この幅を無視して「効果量は約1.0」と要約するのは、誠実ではありません。

69本を分析した2024年の系統的レビュー(461引用)は、全体の傾向をこう整理しています [5]

  • 学業成績を改善する
  • 情意・動機づけの状態を高める
  • 高次思考の傾向を改善する
  • 心的努力(mental effort)を減らす
  • 自己効力感には、有意な効果がない

そして著者らは「検定力分析の欠如や、介入後の評価に関する懸念といった方法論的な限界は、結果の慎重な解釈を要請する」と警告し、4つの提言を示しています。

一言でいうと(「心的努力が減る」を、どう読むか)
楽になった、ということです。
——これは良いことでしょうか。認知負荷の記事で見たとおり、減らすべきなのは課題外在的な負荷だけで、理解を作る処理(学習関連負荷)を減らしてはいけません。
この区別が、4節・5節の所見につながります。

2. 出版バイアスを補正すると、縮む

1節の数字には、補正が必要です。

2025年、62研究から135の効果量を統合したメタ分析があります [3]

結果の記述が、この分野の状況を端的に表しています。

「初期の結果は、チャットボットが学習遂行に大きな正の効果を持つことを示した。しかしながら、出版バイアスを統制したあとでは、有意ではあるが小〜中程度の効果が見出された」

  • テキストベースの対話、STEM分野、より長い介入、より低い教育段階で、効果が最も大きかった
  • チャットボットの種類と文化的な差は、学習遂行に有意な影響を与えなかった

著者らの「教育的関連性の陳述」は、こう結ばれています。

「チャットボットは教育を高める見込みを示すが、その影響は出版バイアスによって過大評価されている可能性がある」

一言でいうと
この分野は、新しく、期待が大きく、そして否定的な結果が公表されにくい条件が揃っています。
——バイリンガルの認知ゲーム学習の記事で見たのと、同じ構造です。

3. 核心——取り上げると、下がる

この記事で最も重要な研究です。

2025年、『PNAS』に掲載された圃場実験(207引用)は、約1,000人の高校数学の生徒に生成AIの家庭教師へのアクセスを提供しました [1]

設計の優れた点は、2種類のAIを比べたことです。

条件 中身
GPT Base 標準的な ChatGPT の対話画面をまねたもの
GPT Tutor 学習を保護するように設計されたプロンプトを持つもの

結果の前半は、期待どおりでした。

  • 問題を解いているあいだ GPT-4 にアクセスできると、成績が有意に改善した
  • GPT Base で 48% の成績向上
  • GPT Tutor で 127% の成績向上

問題は、後半です。

「しかしながら、我々はさらに、そのアクセスがその後に取り上げられたとき、生徒は一度もアクセスを持たなかった生徒より実際には成績が悪くなることを見出した——GPT Base で成績が17%低下した。すなわち、GPT-4への無制限のアクセスは、教育上の成果を害しうる」

そして、原因の解釈です。

「保護措置がないと、生徒は練習問題の時間に GPT-4 を『松葉杖』として使おうとし、その結果、自力での成績が悪くなる」

一言でいうと(3つの数字を並べてください)
使えるとき:+48%(Base)/+127%(Tutor)
取り上げたあと:−17%(Base)
そして——GPT Tutor では、この負の効果が大きく緩和されました。
——問題は「AIを使うこと」ではなく「どう設計されたAIを、どう使うか」です。

著者らの結論は、慎重です。「意思決定者は、技能の学習と長期的な生産性を保つために、生成AIの展開の基礎にある設計上の選択について、慎重でなければならない」

4. メタ認知的な怠惰

3節の現象を、学習過程の水準で捉えた研究があります。

2024年、『British Journal of Educational Technology』に掲載された無作為化実験(701引用)です [2]。タイトルに「メタ認知的な怠惰に注意せよ」と入っています。

117人の大学生を、作文課題について4条件に割り付けました。

  • ChatGPT の支援
  • 人間の専門家とのチャット
  • 作文分析ツール
  • 追加の道具なし

結果です。

測定したもの 結果
課題後の内発的動機づけ 群間に差なし
自己調整学習の過程の頻度と順序 群間に有意な差
小論文の得点の改善 ChatGPT群が優れていた
知識の獲得と転移 有意な差はなかった

著者らの解釈です。

「ChatGPT のようなAI技術は、学習者の技術への依存を促し、『メタ認知的な怠惰』を引き起こす可能性がある」

一言でいうと(成果物と学習の乖離)
書いたものは良くなりました。しかし、本人の知識は増えていませんでした。
——協働学習の記事で見た「成果物の質と学習量の乖離」と、まったく同じ構造です。
提出物が良いことは、学んだことの証拠になりません。

著者らの実務への含意も明快です。「AIを学習に使うとき、学習者は、効率的に課題を終わらせるためだけに ChatGPT のフィードバックに盲目的に従うのではなく、知識の理解を深め、評価・モニタリング・方向づけといったメタ認知過程に能動的に関与することに焦点を当てるべきである」

5. 何が上がって、何が上がらないのか

3節・4節を踏まえて、報告されている所見を整理します。

上がったもの 上がらなかった/下がったもの
使用中の課題成績 [1] 使用後の自力の成績(保護措置なしの場合) [1]
小論文の得点 [2] 知識の獲得と転移 [2]
情意・動機づけの状態 [5] 自己効力感 [5]
学習への従事 [11] 批判的思考(ある研究では) [15]
—— 心的努力(減った) [5]

人間の添削と比べると

英語を新しい言語として学ぶ学習者48人を対象に、6週間の反復測定準実験が行われています(542引用)[13]。実験群は ChatGPT(GPT-4)からの作文フィードバック、統制群は人間のチューターからのフィードバックを受けました。

結果は「2群のあいだに、学習成果の差はなかった」

別の43人を対象に両方のフィードバックを受けさせた研究では、好みはほぼ半々に分かれ、どちらの形式にも明確な利点がデータから見て取れました。著者らは「両方の形式の強みを活かす混合アプローチ」を推奨しています。

一言でいうと
作文の添削については、人間とAIで学習成果に差が出ませんでした。
——知的チュータリングシステムの記事で見た「1対1の人間による個別指導と有意差なし(g = −0.11)」という所見と、同じ方向です。

6. 使い方で、結果が変わる

この分野で最も実務的な所見です。

192人の学生の省察を量的内容分析した2025年の研究(65引用)は、2つの使い方を区別しました [12]

使い方 中身 結果
熟達アプローチ 生成AIを使って知識を構成し、拡張する より高い水準の学習
手続きアプローチ 知識を拡張せずに手続き的に使う より低い水準の学習成果

著者らは「評価の設計を、熟達目標の構造を促すように調整し、生徒が生成AIの出力を単に再生産するのではなく批判的に関与するよう促すことができる」と述べています。

効果量の内訳が示すこと

22研究を統合した2026年のメタ分析は、指導方法ごとの効果量を報告しています [10]

指導方法との組み合わせ 効果量 g
自己調整学習 1.115(最大)
事例基盤学習 0.836
ゲーム基盤学習 0.092(有意でない・最小)

また、学習領域別では認知 0.612、メタ認知 0.619、情意 0.481 と差がなく、中学・高校生(g = 0.928)が学部生(g = 0.538)を上回りました(ただし統計的に有意な差ではありません)。

37研究のメタ分析も、使い方による差を報告しています [7]

  • 宣言的知識の学習を支えるほうが、手続き的知識より効果的だった
  • 従来型の教室と ChatGPT の組み合わせのほうが、反転授業で使うより効果的だった
  • コードを生成させるより、文章を生成させるほうが学業成績が良かった
  • 介入期間は 5〜10 週間が最も効果が大きかった

大学生を対象にした別のメタ分析も、「学級規模50未満」「1〜3か月」「非STEM教科」「学習アシスタントまたは仮想チューターとして機能するとき」に効果が大きいと報告しています [8]

一言でいうと
最も効果が大きかったのは「自己調整学習と組み合わせたとき」(g = 1.115)。
最も小さかったのは「ゲーム基盤学習と組み合わせたとき」(g = 0.092、有意でない)。
——AIが何をするかより、AIを何と組み合わせるかのほうが、効果を左右しています。

7. 教科によって、結果が違う

一言でいうと
非STEM教科のほうが効果が大きいという報告があります [8]。一方でSTEM分野で最も大きいという報告もあります [3]
——ここでも方向は割れています。ただし個別の教科で見ると、条件が見えてきます。

プログラミング——最も条件が整っている

45人の学部生を無作為に2群に分け、プログラミングの授業で検証した研究(725引用)があります [18]。実験群(21人)は週ごとの実習で ChatGPT を使い、統制群(24人)は使いませんでした。

  • 計算論的思考の技能——実験群が有意に高い
  • プログラミングの自己効力感——実験群が有意に高い
  • 授業への動機づけ——実験群が有意に高い

1節で「自己効力感には有意な効果がない」という統合結果を挙げました [5]プログラミングでは、逆の結果が出ています。

一言でいうと(なぜプログラミングか)
コードは、動くか動かないかが即座に分かります。
——AIの出力が正しいかどうかを、学習者が自分で検証できる数少ない領域です。
3節の「松葉杖」問題が起きにくい構造がある、と読むこともできます。これは当塾の推測です。

語学——鍵は「誰が評価するか」

2,431人を含む25の実証研究を統合した2025年のメタ分析は、語学教育に絞って調整変数を検討しました [19]

特定された3つの調整変数です。

  • 生徒のAIリテラシー——AIがどう動くかを理解しているか
  • 課題の計画——何をどう進めるかを設計しているか
  • 課題の評価者——誰が出来を判定するか

著者らの解釈が印象的です。

「この所見はおそらく、用いられた生成AIツールに関係している。具体的には、語学学習のために設計されたわけではない ChatGPT が最も頻繁に使われていた。この汎用の生成AIは、生徒がAIの仕組みを理解し、課題を計画し、教師を評価者として関与させることの必要性を理解することを要求するのかもしれない」

そして「教師は生成AIを用いた語学学習に、より深く関与すべきである」と結論しています。

一言でいうと(汎用の道具を、教材として使っている)
いま学習に使われている生成AIの多くは、学習のために作られたものではありません。
——3節で GPT Base と GPT Tutor の差が 48% と 127% だったことを思い出してください [1]
汎用の対話画面をそのまま使うことは、設計上の選択です。「何も設計していない」という選択ではありません。

「信頼」が、逆向きに働く場合

中国の大学生362人を対象に、構造方程式モデリングで経路を検討した研究(207引用)があります [20]

  • 生成AIは、自己効力感・公正さと倫理・創造性を通じて、学習成績に有意な影響を与えた
  • 「信頼」は、公正さと倫理・創造性と学習成績の関係を有意に調整した
  • しかし——信頼は、自己効力感と学習成績の関係を負に調整した

一言でいうと(信じるほど、自分の力が結果に結びつかなくなる)
AIを信頼している学習者では、「自分にはできる」という感覚が成績に結びつきにくくなっていました。
——4節の「メタ認知的な怠惰」と、同じ方向を指す所見です。
ただしこれは相関に基づくモデルであり、因果ではありません。

8. 批判的思考は、どうなるのか

最も意見が分かれている論点です。

ガーナの大学で125人を無作為に割り付けた研究(295引用)は、批判的思考・創造的思考・省察的思考のいずれも、ChatGPT の導入が目に見えて影響したと報告しています [14]

2022年から2024年の38研究を統合した系統的レビューも、肯定的です [16]

  • 71.4%の研究が、自己調整学習への正の役割を報告——個別化された学習、メタ認知的支援、適応的フィードバックを通じて
  • 62.5%の研究が、批判的思考への有意な役割を報告——分析・評価・省察の過程を支える
  • ただし研究者たちは、技術への過度の依存に警告を発している——「一部の生徒から、自分で考える能力を奪いうる」

反対方向の報告

しかし、直接比較すると結果が逆になった研究があります。

36人の学部2年生を8週間、STEM・起業教育の科目で比較した準実験です [15]。ChatGPT を使った協働学習群(21人)と、使わない協働学習群(15人)を比べました。

  • ChatGPT群は、学習成績・AI意識・認知負荷で優れていた
  • しかし——批判的思考では、ChatGPTを使わなかった群のほうが優れていた

著者らは「ChatGPT への過度の依存と誤用は、生徒の学習成果を妨げうる」と述べています。

一言でいうと(当塾には判定できません)
「批判的思考が伸びた」も「使わない群のほうが伸びた」も、両方報告されています。
——標本が36人の研究と、38研究のレビューを、同じ重さで並べることはできません。ただし方向が逆の所見が存在することは、記録しておくべきです。
そして4節の「メタ認知的な怠惰」と、この所見は整合します。

9. 中高生のデータ

ここまでの研究の大半は、大学生が対象です。

69本の系統的レビューは「ChatGPT の介入は、圧倒的に大学水準で実施されている」と述べています [5]。22研究のメタ分析でも参加者の70.9%が学部生でした [10]

それでも、中高生のデータはいくつかあります。

  • 3節の圃場実験——約1,000人の高校数学の生徒 [1]この分野で最大規模かつ最も設計の厳密な研究が、中高生を対象としています
  • 下位群分析——中学・高校生の効果量 g = 0.928 は、学部生の 0.538 より大きい(有意差ではない)[10]
  • 香港の中学4年生74人——生成AIベースのチャットボットは、規則ベースのチャットボットと比べて、理科の知識・行動的従事・動機づけを高めた [17]

一言でいうと(皮肉な状況)
効果量が最も大きく出ているのは中高生です。
そして、負の効果が最も明確に示されたのも中高生です(3節)。
——同じ集団で、両方が起きています。分けているのは設計です。

なお、17研究・1,735人を統合した従事についてのメタ分析も、「過度の依存といった、生徒の離脱につながる潜在的なリスク」を明記しています [11]

10. 塾と家庭で、何が使えるか

ここからは、上の知見を当塾の実務に翻訳した部分です。研究が直接そう言っているわけではない箇所は、そう明示します。

(1) 練習問題を解いているあいだは、使わせない

3節のとおり、保護措置のないAIを練習中に使うと、取り上げたあとの成績が下がりました [1]これが最も明確な所見です。

(2) 使うなら、学習用に設計されたものを使う

3節のとおり、GPT Tutor では負の効果が大きく緩和されました [1]答えを出すのではなく、考え方を促す設定になっているか。

(3) 提出物の質を、学習の証拠にしない

4節のとおり、小論文の得点は上がったのに、知識の獲得と転移は変わりませんでした [2]

(4)「楽になった」を、良い兆候と思わない

1節のとおり、生成AIは心的努力を減らします [5]減らしてよいのは課題外在的な負荷だけです。

(5) 知識を「拡張する」使い方に限定する

6節のとおり、手続き的に使うと、学習水準が下がりました [12]「やらせる」のではなく「自分の答えと比べる」。

(6) 使ったあと、必ずAIなしで確認する

これは当塾の実務判断です。3節の実験は「取り上げたとき」に初めて差が見えました [1]AIありの成績だけを見ていると、この低下は見えません。

(7) 教科によって、方針を変える

7節のとおり、プログラミングでは自己効力感まで有意に上がりました [18]。一方語学では「誰が評価するか」が調整変数でした [19]

これは当塾の実務判断です。——正誤が機械的に判定できる領域(プログラミング、計算)では制限を緩め、判定に人が要る領域(作文、論述)では教師が評価者として関与する。

(8) 「AIを信頼している」と言い出したら、注意する

7節のとおり、信頼は、自己効力感と学習成績の関係を負に調整していました [20]相関に基づく所見ですが、4節の「メタ認知的な怠惰」と同じ方向を指しています。

11. この記事で言えないこと

  • 「生成AIは学習に有害だ」とは言えません。複数のメタ分析が正の効果を報告しています [4][6][7]
  • 「生成AIは学習を助ける」とも単純には言えません。取り上げると成績が下がるという所見があります [1]
  • 効果量は g = 0.46 から 1.14 まで割れています [4][9]
  • 出版バイアスを補正すると、効果は「大」から「小〜中」に縮みます [3]
  • 批判的思考への効果は、報告が逆方向に分かれています [15][16]
  • 研究の大半は大学生が対象で、介入期間は数週間です。長期の追跡はありません。
  • 技術が速く変わるため、2023年のモデルでの検証結果を現在に当てはめられるかは不明です。
  • 日本語での検証は、ほとんどありません。
  • 10節の運用は当塾の実務判断です。

当塾の立場

先に、この記事が当塾にとって不都合な部分を書きます。

当塾は、この連載の記事を書くのに生成AIを使っています。文献の探索、下書き、整合性の検査。そのことを隠しません。

そして——4節の「メタ認知的な怠惰」は、当塾にも当てはまります。AIに調べさせて書いた文章は、書いた側の理解を深めていない可能性があります。だからこの連載は、すべての出典に当たり、効果量と信頼区間を本文に書き、反証を同じ重さで載せるという手続きを取っています。それが、怠惰への唯一の対抗手段だからです。

そして、この記事自体が「熟達アプローチか、手続きアプローチか」(6節)を問われる対象です [12]読者が本文を読まずに、AIに要約させて終わるなら、6節の所見どおり学習水準は下がります。そのために、出典への直リンクをすべて残しています。

もう一点。3節のとおり、無制限のアクセスは学習を害しうる [1]そして塾は、生徒がAIを使っているかどうかを、基本的に把握できません。宿題が完璧に仕上がってくることを、当塾は成果と誤認する立場にいます。

この記事の内容は、塾に来なくても実行できます

家庭でできることを書きます。費用はかかりません。

  • 練習問題を解いているあいだは、AIを開かせない——最も明確な所見です
  • 使ったあと、同じ種類の問題をAIなしで解かせる——差はそこでしか見えません
  • 「答えを出して」ではなく「自分の答えのどこが違うか教えて」と使わせる——知識を拡張する使い方です
  • 提出物の完成度を、理解度と混同しない——小論文の得点は上がり、知識は増えませんでした
  • 「楽になった」と言い出したら、注意する——心的努力が減ることは、必ずしも良い兆候ではありません
  • そして——計算やプログラミングのように正誤が自分で確かめられる領域と、作文のように人の判断が要る領域を、分けて扱う(7節)

これを読んで、塾に通わずに実行する方がいるなら、それでいいと考えています。自分で回せる家庭が月謝を払う必要はありません。

それでも塾に通いたい方へ

塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。理由を3つ書きます。

  1. 「AI活用」を売り文句にしないこと。2節のとおり、出版バイアスを補正すると効果は小〜中に縮みます [3]。そして3節のとおり、設計次第では害になります。当塾は「AIで個別最適化」とは言いません。
  2. AIなしで解く時間を、必ず確保すること。3節・10節のとおりです。塾の時間は、AIが使えない環境で自力で解く、数少ない機会です。当塾はその価値を、そこに置きます。
  3. 宿題の完成度を、成果として報告しないこと。4節のとおり、提出物の質と学習量は乖離します [2]当塾が保護者に報告するのは、教室で自力でできたことだけです。

塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。

  • 宿題にAIが使われていた場合、どう気づきますか
  • 教室で、AIなしで解く時間はどれくらいありますか
  • 「AIを活用した指導」とは、具体的に何をすることですか

当塾がお答えできるようにしておくのが、こちらの仕事だと考えています。

まとめ

  1. 効果量の報告は g = 0.46 から 1.14 まで割れている [4][9]
  2. 出版バイアスを補正すると、「大」から「小〜中」に縮む [3]
  3. 約1,000人の高校生の圃場実験——使えるあいだは +48%(Base)/+127%(Tutor) [1]
  4. しかし取り上げると、一度も使わなかった生徒より 17% 低かった [1]
  5. 学習を保護する設計では、この負の効果が大きく緩和された [1]
  6. 無作為化実験——小論文の得点は上がったが、知識の獲得と転移は変わらなかった [2]
  7. 「メタ認知的な怠惰」——AIへの依存が、自己調整を妨げうる [2]
  8. 心的努力は減る。自己効力感には有意な効果がない [5]
  9. 作文の添削では、人間のチューターと学習成果に差がなかった [13]
  10. 知識を構成・拡張する使い方は高い学習、手続き的に使う使い方は低い学習 [12]
  11. 自己調整学習と組み合わせたとき最大(g = 1.115)、ゲーム基盤学習と組み合わせたとき最小(0.092、有意でない) [10]
  12. 反証。批判的思考では、AIを使わなかった群のほうが優れていたという報告がある [15]
  13. そして——効果量が最も大きく出ているのも、負の効果が最も明確に示されたのも、中高生である。分けているのは設計。
  14. プログラミングでは、自己効力感まで有意に上がった[18]正誤が機械的に判定できる領域では、条件が違う。
  15. 語学では「生徒のAIリテラシー」「課題の計画」「誰が評価するか」が調整変数だった[19]

出典

本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。

  1. 【最重要・PNASの圃場実験】Bastani, H. et al. (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics(約1,000名). PNAS. DOI: 10.1073/pnas.2422633122
  2. 【メタ認知的な怠惰】Fan, Y. et al. (2024). Beware of Metacognitive Laziness: Effects of Generative Artificial Intelligence on Learning Motivation, Processes, and Performance(無作為化・117名). British Journal of Educational Technology. DOI: 10.1111/bjet.13544
  3. 【出版バイアス補正】Laun, M. et al. (2025). Chatbots in education: Hype or help? A meta-analysis(62研究・135効果量). Learning and Individual Differences. DOI: 10.1016/j.lindif.2025.102646
  4. Suo, X. et al. (2026). Exploring the Impact of Generative AI-Powered Conversational Agents on Student Learning: A Systematic Review and Meta-Analysis Grounded in Activity Theory(27研究). Journal of Educational Computing Research. DOI: 10.1177/07356331261433396
  5. 【69本の系統的レビュー】Deng, R. et al. (2024). Does ChatGPT enhance student learning? A systematic review and meta-analysis of experimental studies. Computers & Education. DOI: 10.1016/j.compedu.2024.105224
  6. Wu, X. et al. (2026). ChatGPT’s impact on student learning outcomes: a meta-analysis of 35 experimental studies(4,193名). Humanities and Social Sciences Communications. DOI: 10.1057/s41599-026-07019-z
  7. Liu, Z. et al. (2025). The Impact of ChatGPT on Students’ Academic Achievement: A Meta-Analysis(37研究). Journal of Computer Assisted Learning. DOI: 10.1111/jcal.70096
  8. Yu, Q. et al. (2025). Can ChatGPT as a generative AI tool enhance university student academic achievement?. Innovations in Education and Teaching International. DOI: 10.1080/14703297.2025.2605651
  9. Mo, F. et al. (2025). Undergraduate students’ learning outcomes with ChatGPT: A meta-analytic study(66研究・129効果量). Computers and Education: Artificial Intelligence. DOI: 10.1016/j.caeai.2025.100536
  10. 【指導法別の内訳】Doo, M. Y. et al. (2026). Meta-Analysis of ChatGPT’s Influence on Learning Achievement(22研究). The International Review of Research in Open and Distributed Learning. DOI: 10.19173/irrodl.v27i1.8775
  11. Heung, Y. M. E. et al. (2025). How ChatGPT impacts student engagement from a systematic review and meta-analysis study(17研究・1,735名). Computers and Education: Artificial Intelligence. DOI: 10.1016/j.caeai.2025.100361
  12. 【熟達か手続きか】Pallant, J. et al. (2025). Mastering knowledge: the impact of generative AI on student learning outcomes(192名の省察). Studies in Higher Education. DOI: 10.1080/03075079.2025.2487570
  13. 【人間の添削と差なし】Escalante, J. et al. (2023). AI-generated feedback on writing: insights into efficacy and ENL student preference. International Journal of Educational Technology in Higher Education. DOI: 10.1186/s41239-023-00425-2
  14. Essel, H. B. et al. (2023). ChatGPT effects on cognitive skills of undergraduate students: Receiving instant responses from AI-based conversational large language models (LLMs)(125名). Computers and Education: Artificial Intelligence. DOI: 10.1016/j.caeai.2023.100198
  15. 【反証・批判的思考】Ji, Y. et al. (2025). Human–Machine Cocreation: The Effects of ChatGPT on Students’ Learning Performance, AI Awareness, Critical Thinking, and Cognitive Load in a STEM Course Toward Entrepreneurship. IEEE Transactions on Learning Technologies. DOI: 10.1109/tlt.2025.3554584
  16. Sardi, J. et al. (2025). How Generative AI Influences Students’ Self-Regulated Learning and Critical Thinking Skills? A Systematic Review(38研究). International Journal of Engineering Pedagogy. DOI: 10.3991/ijep.v15i1.53379
  17. Ng, D. T. K. et al. (2024). Empowering student self-regulated learning and science education through ChatGPT: A pioneering pilot study(香港・中4・74名). British Journal of Educational Technology. DOI: 10.1111/bjet.13454
  18. Yılmaz, R. & Karaoglan Yılmaz, F. G. (2023). The effect of generative artificial intelligence (AI)-based tool use on students’ computational thinking skills, programming self-efficacy and motivation(45名). Computers and Education: Artificial Intelligence. DOI: 10.1016/j.caeai.2023.100147
  19. Li, Y. et al. (2025). Applying Generative Artificial Intelligence to Task-based Language Teaching and Learning: A Systematic Review and Meta-analysis(25研究・2,431名). TechTrends. DOI: 10.1007/s11528-025-01140-7
  20. Shahzad, M. F. et al. (2024). Exploring the impact of generative AI-based technologies on learning performance through self-efficacy, fairness & ethics, creativity, and trust in higher education(362名). Education and Information Technologies. DOI: 10.1007/s10639-024-12949-9

教育学・認知心理学・社会心理学・行動経済学・教育経済学の研究をもとにした連載です。

author avatar
ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

関連記事

PAGE TOP
お電話