問題集を1ページずつ順に解いていくと、その日は調子よく進みます。ところが実力テストになると、同じ問題が解けません。問題の解き方は覚えたのに、どの解き方を使うかを選べない——これが、まとめて解く練習のいちばん大きな副作用です。
対策は単純で、練習のときから種類の違う問題を混ぜておくことです。交互練習(インターリービング)と呼ばれるこのやり方は、教室での無作為化試験でも効果が確かめられています。ただし、実行するうえで避けて通れない性質があります。やっている最中の正答率が下がり、手応えが悪くなるのです。だから多くの人が3日で元に戻します。
この記事では、何を混ぜ、何を混ぜてはいけないか、いつブロック練習から切り替えるか、そして手応えの悪さにどう耐えるかを、手順として書きます。研究の全体像は既存の記事に譲り、ここでは問題集の組み替え方だけを扱います。
この記事の結論
- 混ぜる対象は「問題文を見ただけでは解法が決まらない」もの同士。一次関数と二次関数、面積と体積、時制と態のように、取り違えが起きる組み合わせを混ぜます。
- 習った直後は混ぜません。手順をまだ再現できない段階でのブロック練習には意味があります。切り替えの目安は「解法を見ずに3問連続で正解できたら」です。
- 練習中の正答率は下がります。それは失敗ではありません。中学1年生の教室での試験では、混ぜた群と固めた群の差は1か月後のテストで 61% 対 38% でした。
- 効果は課題によって変わります。系統的レビューでは記憶で g = 0.65 まで、転移で g = 0.66 までの効果が報告されましたが、項目どうしの違いが微妙なときほど有効とされています。
- 混ぜてはいけない組み合わせもあります。まったく無関係な単元を混ぜても、切り替えの負荷が増えるだけで利点がありません。
なぜ続かないのか——手応えが悪くなるから
交互練習が続かない理由は、意志の弱さではありません。正しくやっているときほど、その場の出来が悪くなるという構造そのものにあります。これは学習中の「望ましい困難」と呼ばれてきた現象の典型例です。
絵画の作者を見分ける課題で確かめた実験があります。同じ画家の絵を続けて見せる条件と、複数の画家の絵を混ぜて見せる条件を比べたところ、新しい絵の作者を当てる成績は混ぜた条件のほうが良くなりました。ところが参加者自身は、自分のテスト結果が反対を示したあとでも、続けて見せる条件のほうが効果的だと評価しました。
Kornell N, Bjork RA. Learning concepts and categories: is spacing the “enemy of induction”? Psychological Science. 2008;19(6):585-592.
大学生150人を対象に、この主観的な経験を追跡した研究もあります。交互練習に対する「大変だ」「身についていない」という感覚は、時間とともに改善していくことが示されました。つまり、最初の数回がいちばん苦しく、そこを越えると感覚のほうが追いついてきます。裏を返せば、最初の数回でやめると必ず「効かなかった」という結論になります。
Onan E, Wiradhany W, Biwer F, Janssen EM, de Bruin ABH. Growing out of the experience: how subjective experiences of effort and learning influence the use of interleaved practice. Educational Psychology Review. 2022.
「間隔をあける」と「混ぜる」は別のこと
混同されやすいので先に分けておきます。間隔をあける(分散)とは、同じ種類の練習を日をまたいで配ることです。混ぜる(交互)とは、1回の練習の中に種類の違う問題を入れることです。この2つは独立していて、片方だけをやることもできます。
両方を同じ論文の中で分けて確かめた実験があります。大学生に1種類の問題の解き方を教え、練習を1回にまとめる条件と複数回に分ける条件を比べた実験(分散の検証)と、複数の種類を学んだあとで練習を種類ごとにまとめる条件とランダムに混ぜる条件を比べた実験(交互の検証)です。いずれも1週間後にテストしたところ、分けた条件と混ぜた条件がそれぞれ大きく上回りました。
Rohrer D, Taylor K. The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science. 2007.
実務的には、問題集の組み替えは両方を同時に実現できます。過去の単元から問題を持ってくれば自動的に間隔があき、種類が混ざれば交互になります。ただし効果の理由は別々なので、効かなかったときにどちらが原因かを切り分けられるよう、記録の欄も分けておくと後で役に立ちます。
まずブロックで固める段階がある
交互練習はいつでも有利なわけではありません。手順そのものをまだ再現できない段階では、同じ種類を続けて解くほうが合理的です。解法を思い出せないまま混ぜても、単に解けない問題が並ぶだけで、選ぶ練習になりません。
切り替えの判断は、次の基準で機械的に決めます。
- 新しい解法を習ったら、まず同じ種類を続けて解きます。ここは教科書どおりで構いません。
- 解説を見ずに3問連続で正解できたら、その単元はブロック練習を終了します。正解の中身は問いません。
- 終了した単元は「混ぜ問の材料」に登録します。ノートの最後のページに単元名を書き足していきます。
- 登録された単元が3つ以上になったら、そこから混ぜ問セットを作り始めます。2つでは混ぜる意味が薄いためです。
この「3問連続」という基準は研究から出た数値ではなく、切り替え時期を本人の感覚以外の場所に置くための運用上の目安です。感覚に任せると、いつまでもブロック練習が続きます。
何を混ぜるか、何を混ぜてはいけないか
判断の基準は一つだけです。「問題文を読んだだけでは、どの解法を使うか決まらない」組み合わせを混ぜます。逆に言えば、見た瞬間に解法が確定する組み合わせを混ぜても、選ぶ練習になりません。
| 教科 | 混ぜる(取り違えが起きる) | 混ぜない(利点が薄い) |
|---|---|---|
| 数学(中学) | 一次関数と二次関数のグラフ、連立方程式の文章題と割合の文章題、面積と体積 | 因数分解と英単語、計算練習と作図 |
| 数学(高校) | 微分と積分の応用、数列の漸化式の型、確率と場合の数、ベクトルと座標 | 三角比の定義の暗記と極限の計算 |
| 英語 | 時制・態・仮定法、関係代名詞と関係副詞、前置詞の使い分け | 単語の暗記と長文読解 |
| 理科 | 電流と電圧の計算、化学反応式の量的関係の型、力のつり合いと運動 | 生物の用語暗記と物理の計算 |
| 社会 | 時代ごとの制度の比較、地形図と気候の読み取り | 年号の暗記と資料読み取り |
数学でいちばん効きやすいのは、図形と関数のように「式を立てる前の判断」が要る組み合わせです。図形の問題だと分かっていれば相似を疑いますが、混ざっていると、まず何の問題かを判断しなければなりません。テストで問われているのは、この判断のほうです。
系統的レビューでも、交互練習が最も役に立つのは項目どうしの違いが微妙なときだと報告されています。芸術系の素材でも理科系の素材でも効果が確認され、遅延テストでも持続していました。
Firth J, Rivers I, Boyle J. A systematic review of interleaving as a concept learning strategy. Review of Education. 2021.
混ぜ問セットの作り方——今日できる手順
問題集を買い直す必要はありません。手持ちの1冊を組み替えるだけです。
- 登録済みの単元から3つ選びます。関連する単元を選びます(例: 一次関数・二次関数・連立方程式)。
- 各単元から3問ずつ、合計9問を選びます。難しい問題は入れません。すでに一度解けた問題で構いません。
- 問題番号だけをノートにランダムな順で書き出します。単元がまとまらないように並べます(例: 関数→方程式→図形→関数→…)。
- この9問を、1回の勉強で通しで解きます。解く前に、どの単元の問題かを自分で言い当ててから取りかかります。この一手が本体です。
- 答え合わせは9問すべて解き終わってからまとめて行います。1問ごとに答えを見ると、次の問題の手がかりになってしまいます。
- 間違えた問題は、「解法を間違えた」か「計算を間違えた」かを分けて記録します。交互練習が直そうとしているのは前者です。
1セット9問は、中学生なら30分前後、高校生なら40分前後で終わる量です。毎日やる必要はありません。週に2セットから始め、そのぶんブロック練習を減らします。総量を増やすのではなく、置き換えるのが要点です。
学年別の入れ方
小学生
- 算数の文章題だけで始めます。1セットは6問、1回15分までにします。
- 混ぜるのは「たし算・ひき算の文章題」と「かけ算・わり算の文章題」のように、式の形を選ぶ必要があるものです。
- 正答率が下がるので、点数を付けないでください。「どの式を使うか」を口で言えたかどうかだけを見ます。
中学生
- 定期テストの2週間前からではなく、単元が3つ終わった時点で始めます。テスト前だけの取り組みにしません。
- 数学から始め、慣れたら英文法に広げます。5教科同時には広げません。
- 学校のワークは単元ごとに並んでいるので、番号を書き出して順番を変える作業が必要です。この作業自体は3分で終わります。
高校生
- 模試の過去問がそのまま混ぜ問セットになります。自分で組む前に、模試の復習を混ぜ問として扱います。
- 科目ごとに「型」を書き出したリストを作り、リストから無作為に選ぶ方式にします。
- 入試直前期は、新しい単元を混ぜるのではなく、すでに登録済みの単元だけで回します。
正答率が下がっても、方針を変えないための運用
交互練習を始めると、まず正答率が落ちます。ここで方針を戻さないために、始める前に次の3つを決めておきます。
- 「4週間は続ける」と期間を先に決めます。途中で判断しません。教室での試験も数か月単位の実施です。
- 成果を測るのは、1週間以上あとのテストだけにします。その日の正答率は記録しますが、判断材料にしません。
- 保護者は正答率に反応しないと決めます。「今日は何問できた」ではなく「どの単元の問題か言い当てられたか」を尋ねます。
3つ目は家庭で最も効きます。交互練習の最中に「前より解けなくなった」と指摘されると、生徒はほぼ確実にブロック練習へ戻ります。研究が示しているのは、その場の出来が悪いことと、あとで解けることが両立するという点です。声をかける側がこれを知っているかどうかで、続くかどうかが決まります。
記録は次の4欄だけで足ります。欄を増やすと書かなくなります。
| 日付 | 混ぜた単元 | 種類を言い当てられた数 | 間違いの内訳(解法/計算) |
|---|---|---|---|
| 例: 10月3日 | 一次関数・連立方程式・図形 | 9問中6問 | 解法3・計算1 |
3列目が、この練習でいちばん見たい数字です。正答率ではなく、「どの解き方を使う問題か」を判断できた割合を追います。この数字は、正答率より早く上がってくることが多く、続けるための手応えにもなります。
効かない条件
第一に、関係のない単元を混ぜても意味がありません。効いているのは「似ているものを見分ける」練習であって、単に切り替えを増やすことではありません。上の表で「混ぜない」に入れた組み合わせは、切り替えの手間だけが増えます。
第二に、導入直後に混ぜると害になります。解法を再現できない段階では、混ぜても選ぶ材料がありません。ブロック練習を軽視しないでください。
第三に、効果の大きさは材料の種類で大きく変わり、材料によってはマイナスになります。59の研究・158の標本・238の効果量を統合したメタ分析では、全体の効果は g = 0.42 でしたが、内訳は次のように分かれました。
| 学習材料 | 交互練習の効果量(Hedges’ g) |
|---|---|
| 絵画などの視覚的な素材 | 0.67(最も大きい) |
| 全体の平均 | 0.42 |
| 数学の課題 | 0.34(小さい) |
| 説明文・味の弁別 | 全体として有意ではない |
| 単語 | -0.39(まとめたほうが有利) |
Brunmair M, Richter T. Similarity matters: a meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin. 2019;145(11):1029-1052.
いちばん実用上の意味が大きいのは最後の行です。単語を覚える課題では、混ぜるよりまとめたほうが良いという結果でした。英単語の暗記に交互練習を持ち込む理由はない、ということになります。同じ分析では、カテゴリー間で似ている材料ほど、カテゴリー内でばらつきが小さい材料ほど、そして複雑な材料ほど効果が大きいことも示されました。上に書いた「問題文だけでは解法が決まらない組み合わせを混ぜる」という基準は、この結果と整合します。
第四に、この分野の研究は大学生を対象とした実験室の研究に偏っています。系統的レビューもその点を限界として挙げており、教室での大規模な検証は数学を中心に少数あるだけです。
第五に、遅らせて測らないと効果が見えません。中学1年生の教室で行われた実験では、練習期間の直後と30日後の両方で効果が出ましたが、その大きさは直後の d = 0.42 に対し、30日後は d = 0.79 でした。同じ研究でも、測る時期によって見える大きさが倍近く違います。
Rohrer D, Dedrick RF, Stershic S. Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology. 2015;107(3):900-908.
この研究チームは、より大規模な無作為化試験も行っています。中学1年生の数学の授業54クラスが、4か月にわたって交互または固めた課題に取り組み、その1か月後に予告なしのテストを受けました。交互練習の群は 61%、固めた群は 38% で、効果量は d = 0.83 でした。教員は特別な研修なしに実施できたと報告されています。
Rohrer D, Dedrick RF, Hartwig MK, Cheung CN. A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology. 2020;112(1):40-52.
この記事で言えないこと
教室での検証がある教科は、いまのところ数学にほぼ限られます。英文法や理科の計算単元に同じ手順を当てはめた大規模な研究は見当たらず、上の表の「混ぜる」欄は、判断基準(問題文だけでは解法が決まらないか)を各教科に当てはめた推論です。効果が同じ大きさで出る保証はありません。
効果量の解釈にも注意が要ります。Firth らのレビューが報告した g = 0.65 や g = 0.66 は「最大で」その水準に達したという意味であり、すべての条件でその大きさが出るわけではありません。また、同レビュー自身が、文献が大学生を対象とした実験室研究に偏っていることを限界として挙げています。
数学に絞ってみると、教室での無作為化試験は大きな効果(d = 0.83)を報告している一方、メタ分析における数学課題の効果は g = 0.34 と小さめでした。この食い違いの理由は、この記事の材料からは特定できません。教室の研究では分散と交互が同時に起きていること、実験室の研究では練習量が少ないことなど、いくつもの違いが混ざっています。したがって「数学なら必ずこの大きさで効く」とは書けません。
個人差についても言えることはわずかです。ここで引用した研究はいずれも群の平均を比べたもので、特定の生徒にとって最適な混ぜ方を予測するものではありません。成績が上がることを保証する記事ではない、という点は明記しておきます。
当塾の立場
ここまでの手順は、塾に通わなくても実行できます。必要なのは手持ちの問題集と、問題番号を書き出すノート1ページだけです。追加の教材も費用もかかりません。まずは数学で1セット9問を組み、週に2回、4週間だけ試してみてください。
その上で塾を使う意味があるとすれば、それは「混ぜる組み合わせを選ぶ判断」と「正答率が下がる時期を一緒に越えること」の2つだと考えています。この記事の研究から分かるとおり、交互練習は正しくやっているときほど手応えが悪くなり、本人も保護者も方針を疑います。武蔵野個別指導塾では、どの単元を混ぜるかを講師が指定し、その日の正答率ではなく2週間後の確認テストで判断する運用にしています。組み合わせの設計と、判断する時期のずらし方を外に預けたい方には、この使い方を勧めます。
関連する研究の解説
- 分散学習と交互学習——同じ時間の配り方で結果が変わる——交互練習の研究全体を、効果量つきで整理しています。
- 数学が「解法の暗記」で止まる理由——考えるとは何をすることか——解法を選べないという状態の中身を扱っています。
- 「わかった気がする」と実際の学習量はなぜずれるのか——手応えと結果のずれを正面から扱っています。
出典
- Rohrer D, Taylor K (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science.
- Kornell N, Bjork RA (2008). Learning concepts and categories: is spacing the enemy of induction? Psychological Science, 19(6), 585-592. doi:10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x
- Rohrer D, Dedrick RF, Stershic S (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107(3), 900-908. doi:10.1037/edu0000001
- Rohrer D, Dedrick RF, Hartwig MK, Cheung CN (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology, 112(1), 40-52. doi:10.1037/edu0000367
- Brunmair M, Richter T (2019). Similarity matters: a meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin, 145(11), 1029-1052. doi:10.1037/bul0000209
- Firth J, Rivers I, Boyle J (2021). A systematic review of interleaving as a concept learning strategy. Review of Education.
- Onan E, Wiradhany W, Biwer F, Janssen EM, de Bruin ABH (2022). Growing out of the experience: how subjective experiences of effort and learning influence the use of interleaved practice. Educational Psychology Review.
