学業感情——「つまらない」は成績の問題である

「つまらない」は、成績の問題である

保護者面談で「授業はどう?」と聞かれた子どもが、いちばんよく返す言葉は「ふつう」か「つまらない」です。

この「つまらない」——退屈——は、長いあいだ研究の対象になりませんでした。不安は研究され、やる気も研究されてきましたが、退屈は「わがまま」の類として扱われてきたのです。

しかし2000年代以降、学業感情(achievement emotions)を体系的に扱う理論が登場し、状況が変わりました。統制価値理論(control-value theory)です。

一言でいうと
統制価値理論は、学習中の感情が2つの判断から生まれると考えます。
統制=「自分にできそうか」/価値=「これは自分にとって意味があるか」。
両方高ければ楽しさ、統制が低ければ不安や絶望、価値が低ければ退屈——という具合に、感情の種類が決まります [4]

ただしこの記事は「感情を整えれば成績が上がる」で終わりません。因果の向き、文化差、時間による減衰——どれも一筋縄ではいきません。

結論を先に6点書きます。

  1. 数学に限定したメタ分析(112研究)で、成績と最も強く関連したのは誇り(r = .344)と絶望(r = −.378)でした [20]
  2. 退屈は成績を下げ、成績は退屈を高める——大学生424名・5時点で相互因果が確認されています [8]
  3. しかし小学生1,242名の研究では、成績が楽しさと退屈を予測したが、その逆は成り立ちませんでした [5]
  4. 中国農村部の中学生954名では、退屈は時間が経つと予測力を完全に失いました [6]
  5. 中国の8年生347名では、統制も価値も英語の成績を予測しませんでした [18]
  6. 53の教育システムを比較した研究では、楽しさが負に媒介するという予想外の結果が出ています [13]

なお、数学不安テスト不安・ステレオタイプ脅威は別の記事で扱っています。この記事は感情全般の枠組みと、とくに退屈に絞ります。

1. 統制価値理論——感情の地図

2006年に提唱された統制価値理論は、達成場面で経験される感情の前提と効果を分析する統合的な枠組みです。統制と価値の評価が、達成感情の喚起の中心にあるという前提に立ちます [4]

この理論は感情を2種類に分けます。

種類 いつ生じるか
活動関連感情 学習している最中 楽しさ、フラストレーション、退屈
結果関連感情 成功・失敗に関して 喜び、希望、誇り、不安、絶望、恥、怒り

理論の系(corollary)には、感情の多様性と領域特異性、より遠い個人的・社会的前提、関与と達成への効果、そして感情・前提・効果のあいだの相互的な結びつきが含まれます [4]

2024年には、この理論が認識的感情・社会的感情・実存的感情まで説明するよう拡張されました [3]

一言でいうと(保護者が使える形)
子どもが「つまらない」と言ったとき、原因は2つに分けられます。
「できないからつまらない」(統制が低い)か、「意味を感じないからつまらない」(価値が低い)か。
前者なら難度を下げる、後者なら何に使うかを示す——手当てがまったく違います。

2. どの感情が、どれくらい効くのか

数学学習における感情を扱った112の研究を系統的に精査し、メタ分析した2025年の研究があります。100種類以上の感情が扱われていましたが、主要なものの結果は次のとおりです [20]

感情 数学の成績との相関
誇り +.344(正で最大)
楽しさ +.247
希望 +.224
退屈 −.187
フラストレーション −.207
−.291
怒り −.322
絶望 −.378(負で最大)

一言でいうと
最も強いのは、正の側では「誇り」、負の側では「絶望」です。「楽しいかどうか」より、「できた自分を誇れるか」「もうだめだと思っていないか」のほうが成績との関連が強い。
授業を楽しくすることより、小さな達成を本人に認識させることと、絶望させないことのほうが優先度が高い可能性があります。

3. 退屈——見過ごされてきた感情

退屈を正面から扱った2010年の研究(5つの調査、北米とドイツの大学生)は、この感情の性質を明らかにしました [7]

まず前提として、達成に関する主観的な統制と価値が、退屈を負に予測しました。理論どおりです。

そして結果として、退屈は次のように関連していました。

  • 注意の問題と正の関連
  • 内発的動機づけ・努力・精緻化方略の使用・自己調整・その後の学業成績と負の関連

これらの所見は、状態としての退屈と特性としての退屈、質的・横断的・予測的という方法論、そして2つの文化的文脈を超えて一貫していました [7]

退屈と成績は、互いを悪化させる

2014年、大学生424名を対象に、1学年にわたる講義で退屈と試験成績を5回測定した縦断研究が行われました。

構造方程式モデリングの結果は明確です——退屈はその後の成績に一貫して負の効果を持ち、成績もその後の退屈に一貫して負の効果を持ちました。性別・年齢・興味・内発的動機づけ・事前成績を統制した後でもです [8]

著者らは、研究者も実践者も、退屈を重要でありながらしばしば見過ごされてきた学業感情として注目すべきだと結論しています。

小学5・6年生を対象に1学年で4波の測定を行った研究でも、高い楽しさと低い退屈がその後の高い成績を予測し、高い成績がその後の高い楽しさと低い退屈を予測するという相互関係が確認されました。さらに感情どうしの時間的関係は成績によって媒介されていました [1]

4. 反証①——向きは「成績→感情」だけかもしれない

ここから反証に入ります。

小学生1,242名(平均9.3歳)を対象に、1学年で4波にわたり3つの感情(楽しさ・退屈・不安)と数学のテスト成績を交互に測定した研究があります。

構造方程式モデルの結果は、3節とは異なるものでした [5]

経路 結果
不安 → その後のテスト成績 負の関連あり
テスト成績 → その後の不安 負の関連あり(相互)
テスト成績 → その後の楽しさ・退屈 予測した
楽しさ・退屈 → その後のテスト成績 予測しなかった

つまり——不安については相互関係が成り立ったが、楽しさと退屈については「成績が感情を作る」一方向しか観察されませんでした。

同じ研究は、学業的浮力(学業上の小さな逆境への適応的な反応)が調整変数になることも示しています。テスト成績が最も高かったのは、不安が低く浮力が高いときでした [5]

効果が続かない場合もある

5年生・7年生1,716名を3年連続で測定した研究では、理論どおりの関係が確認されました——統制と価値が楽しさを正に、怒りと退屈を負に予測し、楽しさが成績を正に、怒りと退屈が負に予測する、という形です。

ただし重要な限定があります。成績が楽しさと退屈に及ぼす効果は、Time 1 から Time 2 にかけてのみ有意でした [2]

また、成績が感情に及ぼす効果は、知覚された有能さによって媒介されていました。成績そのものではなく、「できるようになった」という認識を経由するということです。

5. 反証②——退屈は、時間とともに予測力を失った

中国農村部の中学生954名を対象に、英語学習における楽しさ・不安・退屈と成績を4時点(T1から9週間後まで)測定した研究があります。

結果は段階的でした [6]

  • 3つの感情は、それぞれ単独ではT2(1週間後)とT3(5週間後)の成績を予測した。T4(9週間後)を予測したのは楽しさだけ。
  • 3つを同時にモデルに入れると——楽しさが最も強く最も持続する予測因で、次いで不安がT2–T3の成績を負に予測。退屈は T2–T4 を通じて予測力を完全に失った。

一言でいうと
「退屈しているから成績が悪い」と見えるのは、実は「楽しめていないから」かもしれません。楽しさと不安を同時に考慮すると、退屈の固有の説明力が消えました。
退屈への対処より、楽しめる場面を1つ作るほうが優先度が高い可能性があります。

6. 反証③——統制も価値も、成績を予測しなかった

理論の中核そのものが支持されなかった研究もあります。

中国北部の中学2年生347名を対象に、英語のテストと、統制・価値の評価、達成感情を測定した2025年の研究です。

結果は複雑でした [18]

  1. 知覚された統制は正の感情を正に、負の感情を負に予測した。知覚された価値は正の感情・不安・恥を正に、怒りと退屈を負に予測した。(ここまでは理論どおり)
  2. 知覚された統制も価値も、英語の成績を有意に予測しなかった。
  3. 希望と怒りが成績を正に、不安と絶望が負に予測した。
  4. 統制・価値と成績の関係について、達成感情の有意な媒介効果は認められなかった。

3番目に注目してください。怒りが成績を「正に」予測しています。2節のメタ分析(怒り r = −.322)とは逆の符号です。

7. 反証④——文化によって符号が逆になる

もっとも大規模な反証です。

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)2015 のデータを用いて、53の教育システムにおいて楽しさと退屈が認知的評価と数学の成績のあいだをどう媒介するかを検討した研究があります。

結果は次のとおりでした [13]

  • 退屈は53システム中25システム(47%)で有意に媒介した。
  • 楽しさは全般に「負に」媒介した——これは予想外の所見。
  • 期待どおりの正の結果が得られたのは、53システム中21(40%)のみ。
  • 仮説と矛盾する結果が出たのは、たとえば韓国とトルコ

著者らは、この予想外の所見が「学業的成功に関してどの感情が重要とされるかについての文化差」を示しているのかもしれない、と論じています [13]

一言でいうと
「楽しく学べば成績が上がる」は、国によって成り立ったり成り立たなかったりします。とくに韓国という、日本と教育文化が近い国で逆の結果が出ている点は、留意すべきです。
日本の学齢児を対象にした検証は、この記事の出典には含まれていません。

8. 統制と価値は、足し算ではなく掛け算

反証を見たうえで、理論のなかで比較的よく支持されている部分を確認します。

中国の大学生550名を対象に外国語学習を調べた研究では、知覚された統制と価値が、正の感情(楽しさ・希望・誇り)と外国語の成績に正に、負の感情(怒り・不安・恥・絶望・退屈)に負に関連しました。

そして重要な所見です——統制と価値は、8つの感情すべてと外国語の成績を予測するうえで交互作用していました。評価が成績に及ぼす乗法的な影響は、4つの感情によって媒介されていました [11]

小学生1,298名を対象にした研究でも、同じ構造が確認されています。統制と内在的価値の交互作用が数学のテスト得点を直接的にも、楽しさを介して間接的にも予測しました。

著者らの整理が実務的です——内在的価値は、統制と数学得点の正の関係を「増幅」した。さらに内在的価値は、統制が低い水準にあるときでも、高い楽しさを通じて数学得点を「保護」した [9]

一言でいうと
「できそう」と「意味がある」は、片方だけでは弱い。掛け算で効きます。
そして——「できそう」が低いときでも、「意味がある」と感じていれば成績が守られるという所見があります。苦手教科でこそ、何のためにやるのかを示す価値があります。

9. 教師との関係が経路になる

感情はどこから来るのか。社会的な前提として、教師との関係が調べられています。

中国の中学生433名を対象にした研究は、教師と生徒の関係が英語の成績に届く経路を、感情ごとに特定しました [16]

感情 経路
学業的な楽しさ 教師生徒関係 → 学業価値 → 学業自己効力感 → 成績(連鎖媒介)
学業的なリラックス 単独媒介+価値・自己効力感を介した連鎖媒介
学業不安 価値の単独媒介、不安の単独媒介、および連鎖媒介
学業的退屈 退屈の単独媒介のみ

退屈だけが、他の変数を経由せず直接の経路を持っていた点が特徴的です。

10. 実験で確かめると

相関研究が中心のこの分野で、実験的な検証もあります。

大学生を対象に、学習の前に楽しさまたは怒りを誘導したうえで、退屈な学習環境で学ばせた研究です。結果は次のとおりでした [12]

  • 学習前に楽しさを経験すること、および学習中に楽しさを感じることは、どちらも成績と正に結びついた。
  • 学習中の怒りと退屈の経験は、テスト得点と負に結びついた。
  • 学習前の怒りは、参加者がその学習課題に与える価値を高めた
  • 知覚された統制は、学習中の退屈と相関した

著者らは、学習前と学習中の両方の感情経験が学習成果と有意に関連するため、どちらも学習成功の改善のために考慮されるべきだと結論しています。

関連して、潜在プロファイル分析により3つの動機づけプロファイル——高統制・楽しさ/低統制・退屈/低価値・退屈——が同定され、高統制・楽しさ群が他の群より良い成績を期待し、低統制・退屈群をすべてのテストで上回ったという報告もあります [14]

11. 「活性化する感情」と「眠らせる感情」

感情の分類には、良い・悪いのほかにもう一本の軸があります。その感情が行動を起こさせるか、止めるかです。

活性化する(動かす) 不活性化する(止める)
正の感情 楽しさ、希望、誇り 安堵、リラックス
負の感情 不安、怒り、恥 退屈、絶望

この2×2で整理すると、なぜ退屈と絶望が厄介かが見えます。どちらも「負」であるだけでなく、行動を止める側にあるからです。不安は苦しいですが、少なくとも机に向かわせることがあります。退屈は向かわせません。

パキスタンの大学生2,335名と留学生412名、合計2,747名のデータを分析した研究は、この軸の複雑さを示しています [10]

  • 正・負・活性化・不活性化の各感情を同時にモデルに入れた場合の効果は、それぞれ単独で見たときの効果と異なっていた。
  • 正の感情(希望・楽観)は、肯定的な期待と関与という要素を通じて、学業達成に同等または固有の効果を生んだ。
  • 負の感情(怒り・退屈)では、認知資源と気づきの程度が、学業成果を同じにも違うものにもした。
  • 活性化感情(希望と怒り)と不活性化感情(楽観と退屈)の組み合わせでは、どちらが優勢かが学業達成に影響した。

一言でいうと
子どもは一度に1つの感情だけを感じているわけではありません。「悔しいけれど、もうどうでもいい」のように、活性化する感情と止める感情が同居します。そのとき結果を決めるのはどちらが優勢か
「悔しい」が残っているうちは、まだ手がかりがあります。

12. 感情の手前にあるもの——目標が評価を作る

統制価値理論では、評価(統制・価値)が感情の近い前提です。では評価の手前には何があるのか。

中国の大学生2,268名を対象にした研究は、達成目標遠い前提として位置づけ、経路を検証しました [15]

  • 楽しさは、4つの達成目標すべてと、統制・内在的価値・外在的価値のすべての評価によって予測された。
  • 不安は、外在的価値評価と習得回避目標によっては予測されなかった。
  • 統制価値評価が、3つの達成目標(習得接近・習得回避・遂行回避)と2つの感情の関係を部分的に媒介していた。

つまり——「何のために学ぶか」が「できそうか・意味があるか」の判断を作り、それが感情を作るという連鎖です。

どの評価が、どの感情を作るか

中国11大学の英語学習者2,002名を対象にした研究は、評価と感情の対応をより細かく示しています [19]

感情 最も強く予測した評価
楽しさ 内在的価値(最大の役割)
退屈 内在的価値(最大の役割)
不安 統制(最大の予測効果)

記述統計も示唆的です。参加者は英語学習をある程度は統制可能と感じ、内在的価値と達成価値をかなり高く評価していました。感情としては楽しさと不安が中程度、退屈は低い水準でした。そして不安と退屈は楽しさと中程度に負の相関、両者どうしは中程度に正の相関を示しています [19]

一言でいうと
楽しさと退屈は「意味を感じるか」で決まり、不安は「できそうか」で決まる。
つまり——不安が強い子には難度を下げる、退屈している子には意味を示す。この使い分けが、1節の切り分けをさらに具体化します。

13. 塾と家庭の運用にどう落とすか

ここからは、上の知見を当塾の実務に翻訳した部分です。研究が直接そう言っているわけではない箇所は、そう明示します。

(1) 「つまらない」を2つに分けて聞く

1節のとおり、退屈は統制が低い(できない)場合と価値が低い(意味を感じない)場合で原因が違います [4]。当塾では「解けないからつまらないのか、解けるけど意味がないと思うのか」を分けて聞きます。

(2) 「誇り」を作りにいく

2節のとおり、正の感情のなかで成績と最も強く関連したのは誇り(r = .344)で、楽しさ(.247)より大きい [20]。当塾では「できたこと」を本人の言葉で言わせます。楽しませることより、達成を認識させることを優先します。

(3) 絶望させない

2節のとおり、負の側で最大は絶望(r = −.378)です [20]。6節でも絶望は成績を負に予測しました [18]「この教科はもう無理」と本人が言い始めたら、最優先で手当てします。

(4) 苦手教科ほど「何に使うか」を言う

8節のとおり、内在的価値は、統制が低いときでも楽しさを通じて成績を保護しました [9]。できない教科でこそ、意味を示す価値があります。

(5) 楽しさを1つ作る

5節のとおり、3つの感情を同時に考慮すると楽しさが最も強く最も持続する予測因でした [6]。10節の実験でも、学習前の楽しさが成績と正に結びついています [12]

(6) 成績が動いたら、感情を確認する

4節・5節のとおり、「成績→感情」の向きのほうが確実に観察されています [5][1]。点が取れた直後は感情が動きやすい時期です。そのタイミングで「どうだった?」と聞くと、次の周期に入りやすい——これは研究からの演繹であり、当塾で比較実験をした結果ではありません。

(7) 感情への働きかけを主要な商品にしない

2節のとおり、最大の相関でも r = .378(説明できるのは約14%)。6節・7節のとおり、理論の中核が支持されなかった研究や、符号が逆になった研究もあります [18][13]

14. この記事で言えないこと

  • 「楽しく学べば成績が上がる」とは言えません。53教育システムの分析で楽しさが負に媒介し、期待どおりだったのは40%のみでした [13]
  • 因果の向きが確定していません。楽しさ・退屈については「成績→感情」の一方向しか観察されなかった研究があります [5]
  • 退屈の固有の予測力は、時間が経つと消えることがあります [6]
  • 理論の中核(統制・価値→成績)が支持されなかった研究があります [18]
  • 怒りの符号が研究によって逆になっています(メタ分析 −.322 [20] に対し、正の予測 [18])。
  • 日本の学齢児を対象にした研究は、ここに含まれていません。教育文化の近い韓国で予想外の結果が出ています [13]
  • 13節の運用は当塾の実務判断です。

当塾の立場

当塾は個別指導の塾であり、この記事の内容は当塾の指導方針と無関係ではありません。利害関係を明示しておきます。

この記事の内容は、塾に来なくても実行できます

はっきり書きます。ここまでの内容の大半は、今日から家庭で実行できます。費用はかかりません。

  • 「つまらない」を「できないから」か「意味を感じないから」かに分けて聞く
  • 楽しませることより、「今日できたこと」を本人の言葉で言わせる
  • 「もう無理」が出たら最優先で手当てする
  • 苦手教科ほど「何に使うか」を言う
  • 点が取れた直後に「どうだった?」と聞く

これを読んで、塾に通わずに実行する方がいるなら、それでいいと考えています。自分で回せる家庭が月謝を払う必要はありません。

それでも塾に通いたい方へ

そのうえで、塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。この記事の内容に即して、理由を3つ書きます。

  1. 「つまらない」の原因を切り分けるには、解いている最中を見るしかない。1節のとおり、退屈には統制が低い型と価値が低い型があり、手当てが逆です [4]。しかし本人に聞いても、多くは「なんとなく」としか言えません。どの問題で手が止まり、どの問題は解けているのに気が乗らないか——この区別は、隣で見ていないと取れません。
  2. 「誇り」は、外から言語化しないと本人に残らない。2節のとおり、正の感情で成績と最も強く関連したのは誇りでした [20]。ところが子どもは、自分ができるようになったことに気づきません。「3週間前はここで止まっていた」と記録を示して初めて、達成が本人のものになります。その記録を持っているかどうかが分かれ目です。
  3. 「もう無理」の兆候は、点数より先に出る。2節・6節のとおり、絶望は負の感情のなかで最大の関連を持ちます [20][18]。そして絶望は成績が落ちる前に現れます。質問しなくなる、白紙が増える、時間内に手をつけない——こうした変化を早く捉えることが、立て直せるかどうかを分けます。

逆に言えば、この3つをやっていない個別指導に、この点での優位性はありません。塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。

  • 「つまらない」と言われたとき、何を確かめますか
  • できるようになったことを、本人にどう伝えますか
  • 「もう無理」と思い始めている兆候を、どこで見ますか

当塾がお答えできるようにしておくのが、こちらの仕事だと考えています。

まとめ

  1. 統制価値理論:感情は「できそうか(統制)」と「意味があるか(価値)」から生まれる [4]
  2. 数学のメタ分析で最大は誇り(+.344)と絶望(−.378)。楽しさは +.247 [20]
  3. 退屈は注意の問題と正、努力・自己調整・成績と負に関連 [7]
  4. 大学生424名・5時点で、退屈と成績は互いを悪化させる相互因果 [8]
  5. しかし小学生1,242名では、楽しさ・退屈については「成績→感情」の一方向のみ [5]
  6. 成績が感情に及ぼす効果は知覚された有能さが媒介し、T1→T2のみ有意だった [2]
  7. 3感情を同時に入れると、楽しさが最強・最も持続。退屈は予測力を完全に失った [6]
  8. 中国の8年生では、統制も価値も成績を予測せず、怒りが正に予測した [18]
  9. 53教育システムで楽しさが負に媒介、期待どおりは40%のみ。韓国・トルコで逆 [13]
  10. 統制と価値は掛け算で効く。内在的価値は統制が低いときに成績を保護する [11][9]
  11. 実験では、学習前の楽しさも学習中の楽しさも成績と正に結びついた [12]

出典

本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。

  1. Putwain, D. W. et al. (2017). Reciprocal relations between students’ academic enjoyment, boredom, and achievement over time. Learning and Instruction. DOI: 10.1016/j.learninstruc.2017.08.004
  2. Forsblom, L. et al. (2021). Cognitive appraisals, achievement emotions, and students’ math achievement: A longitudinal analysis. Journal of Educational Psychology. DOI: 10.1037/edu0000671
  3. Pekrun, R. (2024). Control-Value Theory: From Achievement Emotion to a General Theory of Human Emotions. Educational Psychology Review. DOI: 10.1007/s10648-024-09909-7
  4. Pekrun, R. (2006). The Control-Value Theory of Achievement Emotions. Educational Psychology Review. DOI: 10.1007/s10648-006-9029-9
  5. 【反証・向きは一方向】Putwain, D. W. et al. (2020). Achievement emotions and academic achievement: Reciprocal relations and the moderating influence of academic buoyancy. Journal of Educational Psychology. DOI: 10.1037/edu0000637
  6. 【反証・退屈が予測力を失う】Li, C. et al. (2022). Anxiety, enjoyment, and boredom in language learning amongst junior secondary students in rural China. Studies in Second Language Acquisition. DOI: 10.1017/s0272263122000031
  7. Pekrun, R. et al. (2010). Boredom in achievement settings: Exploring control–value antecedents and performance outcomes of a neglected emotion. Journal of Educational Psychology. DOI: 10.1037/a0019243
  8. Pekrun, R. et al. (2014). Boredom and academic achievement: Testing a model of reciprocal causation. Journal of Educational Psychology. DOI: 10.1037/a0036006
  9. Putwain, D. W. et al. (2020). The role of achievement emotions in primary school mathematics: Control-value antecedents and achievement outcomes. British Journal of Educational Psychology. DOI: 10.1111/bjep.12367
  10. Iqbal, M. Z. et al. (2023). Toward academic satisfaction and performance: the role of students’ achievement emotions. European Journal of Psychology of Education. DOI: 10.1007/s10212-023-00751-z
  11. Shao, K. et al. (2020). Control-value appraisals, achievement emotions, and foreign language performance: A latent interaction analysis. Learning and Instruction. DOI: 10.1016/j.learninstruc.2020.101356
  12. Mendzheritskaya, J. et al. (2025). Enjoyed and angry students in a boring learning setting: effects on achievement emotions and learning outcomes. Educational Psychology. DOI: 10.1080/01443410.2025.2473447
  13. 【反証・文化差で符号が逆】Tze, V. M. C. et al. (2021). A mediation analysis of emotions based on the control-value theory(TIMSS 2015・53教育システム). Current Psychology. DOI: 10.1007/s12144-021-01840-2
  14. Parker, P. C. et al. (2021). A motivation perspective on achievement appraisals, emotions, and performance in an online learning environment. International Journal of Educational Research. DOI: 10.1016/j.ijer.2021.101772
  15. Li, B. et al. (2024). Achievement goals and emotions of Chinese EFL students: A control-value theory approach. System. DOI: 10.1016/j.system.2024.103335
  16. Yu, X. et al. (2024). How the teacher-student relationship influences adolescents’ English academic performance. Psychology in the Schools. DOI: 10.1002/pits.23187
  17. 【反証・理論の中核が非支持】Liu, M. et al. (2025). Control-value appraisals, achievement emotions and English performance in Chinese middle school students. Acta Psychologica. DOI: 10.1016/j.actpsy.2025.105751
  18. Li, C. et al. (2023). Achievement emotions and control-value appraisals in foreign language learning. Journal of Multilingual and Multicultural Development. DOI: 10.1080/01434632.2023.2183961
  19. Schoenherr, J. et al. (2025). Emotions in mathematics learning: a systematic review and meta-analysis. ZDM – Mathematics Education. DOI: 10.1007/s11858-025-01651-w

教育学・認知心理学・社会心理学・行動経済学・教育経済学の研究をもとにした連載です。

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ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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