「なぜ勉強するのか」で結果は変わるのか
同じ問題集を、同じ時間だけ解いている2人の生徒がいるとします。一方は「この単元を理解したい」と思っている。もう一方は「隣の席の子に負けたくない」と思っている。
この違いは、結果を変えるのでしょうか。
教育心理学では、この「何のために取り組むか」を達成目標(achievement goal)と呼び、30年以上研究してきました。そして一般には、こう説明されます——「理解したい」(習得目標)のほうが望ましく、「人より上に立ちたい」(遂行目標)は望ましくないと。
研究の実態は、これとかなり違います。
一言でいうと
この分野で最も論争的な所見は——「人より上に立ちたい」という目標のほうが、「理解したい」という目標より、成績を確実に予測するというものです [1]。直感にも、学校で語られる建前にも反します。
結論を先に6点書きます。
- 4つの目標がある——習得接近・習得回避・遂行接近・遂行回避 [17]。
- どの目標も、学業達成との相関はきわめて小さい(r = −.13〜.13、151研究・52,986名)[13]。
- 最大の論争:遂行目標のほうが習得目標より確実に成績を予測する [1]。
- その原因の一端は測定にあります。同じ「遂行接近目標」でも、「人より上回る」型の尺度は r = .14、「有能に見られたい」型の尺度は r = −.14——真逆です [7]。
- 習得目標が最も強く予測するのは、成績ではなくウェルビーイングです。77カ国・59万5,444人のデータで、学業成績との関連は β = .069 [4]。
- ただし実験的に習得接近目標を誘導すると、遂行は高まりました(動機づけは高まらず)[5]。
なお、目標と自己効力感の関係は自己効力感の記事で扱っています。この記事は目標と学業成果の関係に絞ります。
1. 4つの目標
この分野は2つの軸で整理されます。何を基準にするか(習得か遂行か)と、向きはどちらか(近づくか避けるか)です [17]。
| 接近(〜したい) | 回避(〜したくない) | |
|---|---|---|
| 習得(自分の熟達が基準) | 習得接近 「理解できるようになりたい」 |
習得回避 「分からないままにしたくない」 |
| 遂行(他者との比較が基準) | 遂行接近 「人より良い成績を取りたい」 |
遂行回避 「できないと思われたくない」 |
この枠組みの土台となった1997年の研究では、大学の教室で3種類の目標の前提と結果を調べ、次の結果を得ています [11]。
- 習得目標は達成動機と高い有能感の期待に根ざし、内発的動機づけを促進した。
- 遂行接近目標は達成動機・失敗への恐れ・高い有能感の期待に根ざし、成績評価を高めた。
- 遂行回避目標は失敗への恐れと低い有能感の期待に根ざし、内発的動機づけにも成績にも有害だった。
すでにこの時点で、「習得=良い/遂行=悪い」という単純な二分法は崩れています。成績を高めたのは遂行接近目標のほうでした。
習得回避は、そもそも要るのか
4つ目の「習得回避目標」については、存在を疑う分析もあります。2つの主要な尺度についてメタ分析的確認的因子分析を行った研究は、習得回避を含めないモデルのほうがデータへの適合が良く、研究者は習得回避の除外を検討すべきであると結論しました [9]。
2. どの目標も、相関はきわめて小さい
まず数字の大きさを押さえます。
151の研究から172の独立標本(N = 52,986)を統合したメタ分析は、目標どうしの弁別妥当性は良好だとしつつ、次のように報告しています——それぞれの達成目標の基準関連妥当性は低く、r = −.13 から .13 の範囲。2因子・3因子・4因子いずれのモデルでも妥当性は低いままでした [13]。
より多くの研究を含めた別のメタ分析(180論文・N = 81,947)でも、達成目標と達成成果の関連は小さいが有意(r = −.12 〜 .13)という同じ結論でした [20]。
一言でいうと
r = .13 は、成績のばらつきのうち約1.7%を説明する大きさです。つまり——どんな目標を持っているかで説明できる成績の差は、ほぼ無視できる水準。「動機づけを変えれば成績が変わる」という物語は、この数字とは整合しません。
方向は一貫しています。接近動機は高い学業達成と、回避動機は低い学業達成と関連していました [13]。
3. 反証①——この分野最大の論争
ここからが本題です。
2019年の論文は、冒頭でこう書いています——「達成目標研究において最も驚くべき、そして最も論争的な所見は、遂行目標のほうが習得目標より確実に学業達成を予測するということである」 [1]。
学校で教えられる建前とも、多くの教材の宣伝文句とも、逆です。
3つの説明が検証された
同じ論文は、この現象を説明する3つの枠組みを提示し、大学生を対象に検証しました [1]。
| 枠組み | 主張 | 検証結果 |
|---|---|---|
| 挑戦度 | 遂行目標は簡単な課題でのみ、習得目標は難しい課題で効く | 支持されず |
| 学習の深さ | 遂行目標は表面的知識を測る課題でのみ、習得目標は深い知識を測る課題で効く | 支持されず |
| 学習アジェンダ | 遂行目標は課題の要求が明確なときに効く。習得目標は生徒の興味が評価される中心的話題と一致するときに効く | 支持された |
支持された説明は、実務的にも示唆的です。遂行目標は「何をすれば点が取れるか」が明確なときに機能する。習得目標は「自分が知りたいこと」と「試験で問われること」が一致しているときに機能する。
一言でいうと
定期テストのように出題範囲と形式がはっきりしている場面では、「人より良い点を取りたい」という目標が機能します。
一方、「理解したい」という目標が成績に結びつくのは、本人が興味を持っている内容が、実際に試験で問われる場合だけ。興味と出題がずれていれば、深く学んでも点にはなりません。
4. 反証②——同じラベルで、別のものを測っていた
3節の論争には、測定上の原因があります。この分野を揺るがした2010年のメタ分析です。
243の相関研究・総計91,087名を精査し、達成目標の測定における概念的・方法論的な違いが、目標どうしの相関や成果との関係を調整するかを体系的に検討した研究です。
結果は衝撃的でした [7]。
| 遂行接近目標の尺度の型 | 項目の例 | 成績との相関 |
|---|---|---|
| 規範参照型が多数 | 「クラスの他の人より良くやりたい」 | r = .14(正) |
| 外見・評価型が多数 | 「有能だと思われたい」 | r = −.14(負) |
同じ「遂行接近目標」という名前なのに、測り方によって成績との相関の符号が逆になります。
習得接近目標でも同様の現象が見つかりました。目標に関する言語(「〜したい」という志向を表す表現)を含む尺度は成績と有意に関連せず(r = .05)、含まない尺度は正の関連を持っていました(r = .14) [7]。
著者らの結論は率直です——「達成目標研究者は、概念的に異なる構成概念に同じラベルを使っている」。そしてこの乖離が、生産的な理論検証・研究統合・実践への応用を妨げていると述べています。
一言でいうと
「競争心は成績に良い/悪い」という論争の少なくとも一部は、測り方の違いでした。
「人より良い点を取りたい」(自分の行動の基準)は成績にプラス。
「できる人だと思われたい」(他者の評価が目的)は成績にマイナス。
——見た目は似ていますが、まったく別のものです。
定義を変えると結果も変わる
この所見は、その後さまざまな教育成果に拡張されました。有能感の知覚や自己調整についても、2種類の遂行接近目標が異なるパターンを示すことが確認されています [3]。
さらに一段深い説明——なぜ追求するのか
2016年の研究は、両者を統合する枠組みを提案しました。目標複合(goal complex)モデル——規範的目標の効果は、その目標を追求する理由に依存するという考えです。
大学生(N = 168 および 160)を対象にした2研究の結果です [15]。
- 自律的な理由(楽しさ、挑戦を求める気持ち)で規範的目標を追求すると、自己効力感と興味という適応的な成果を予測し、習得目標とも両立しやすかった。
- 統制的な理由(報酬など)で追求すると、外見目標とまったく同じように振る舞い、援助回避やセルフハンディキャッピングという不適応な成果を予測した。
つまり——「人に勝ちたい」こと自体が問題なのではなく、「なぜ勝ちたいのか」が結果を分けるということです。
5. 習得目標が本当に効くのは、成績ではない
では習得目標には価値がないのか。そうではありません。効く先が違います。
2022年、77の国・地域、595,444人の青少年という桁違いの規模の全国代表データを用いて、習得接近目標の4つの前提と16の結果との関係を検討し、その文化横断的な一般化可能性を検証した研究が発表されました。
結果は次のとおりです [4]。
- 習得接近目標は主に肯定的な達成動機・信念に根ざしており、否定的なものには根ざしていない。
- 最も強く予測したのはウェルビーイングの成果。次いで適応的な動機づけ。
- 達成関連の成果とは、正の関連だが一貫して弱い。とくに学業成績では β = .069。
- 不適応な成果とは、負で弱い関連。
- 前提と共変量を統制しても、さまざまな結果を固有に予測した。
そして16の結果のうち13について、国・地域を超えて一般化可能でした [4]。従来のメタ分析が欧米中心の標本に偏っていたという批判に、正面から答えた研究です。
一言でいうと
「理解したい」という目標は、成績にはほとんど効きません(β = .069)。しかし、その子が学校生活を良い状態で過ごせるかどうかには、最も強く効きます。
これは「習得目標に意味がない」ではなく、「何のために習得目標を育てるのか」を取り違えてはいけないという話です。
6. 実験的に目標を与えると、どうなるか
ここまでは相関研究です。目標を実験的に操作した研究はどうでしょうか。
90研究・235の効果量・11,247名を統合したメタ分析の結果です [5]。
遂行接近目標・遂行回避目標・目標なしと比べて、誘導された習得接近目標は遂行を高めました。ただし動機づけは高めませんでした。
さらに、誘導の仕方によって結果が変わりました。
| 条件 | 結果 |
|---|---|
| 習得接近目標を課題参照の基準で誘導 | 遂行接近目標より良い成績 |
| 遂行接近目標を社会的比較で誘導 | (このとき習得接近目標のほうが良い成績) |
| 目標を目標内容によって誘導 | 習得接近目標がより有益 |
著者らは、目標の枠づけ(framing)と目標の基準(standard)を、研究でも実践でも考慮すべきであると結論しています [5]。
相関研究では遂行目標が優位、実験研究では習得接近目標が優位——という食い違いが、ここにあります。この食い違い自体が、この分野の未解決問題です。
7. 教室の雰囲気が、個人の目標を作る
目標は個人の内側だけの話ではありません。理論は、学習環境に支配的な目標構造(goal structure)が、生徒が採用する目標に影響すると主張してきました。
この主張を検証したメタ分析(k = 68、N = 47,975)の結果です [2]。
- それぞれの達成目標は、対応する文脈的な目標構造ともっとも強く関連していた。(習得接近の雰囲気 → 習得接近目標、など)
- 教育段階と世界の地域が、いくつかの関係を調整した。
- 目標構造を「教室の風土」として枠づけた尺度のほうが、「教師」を参照点にした尺度より高い相関を生んだ。
一言でいうと
「誰が言ったか」より「その場全体の空気」のほうが、子どもの目標に効いています。教師が一人で「理解が大事だ」と言っても、順位が貼り出され、比較が日常になっている教室では、遂行目標が育ちます。
家庭も同じです。親の言葉より、家庭で何が話題になり、何が褒められるかのほうが効きます。
8. 日々の行動として何が起きるか
メタ分析の平均値ではなく、日々の学習のなかで目標がどう働くかを見た研究もあります。
イスラエルの学生154名(平均23.6歳)が、最もストレスの高い試験に向けて10日間の日誌をつけ、毎日の進捗・努力・ウェルビーイング・行動危機(続けるかやめるか迷う状態)を報告した研究です。
多水準モデリングの結果は明確でした [16]。
| 習得目標 | 遂行目標 | |
|---|---|---|
| 日々の努力 | 正に予測 | — |
| 日々の進捗 | 正に予測 | — |
| 行動危機 | 負に予測(減らす) | 正に予測(増やす) |
| 日々の否定的感情 | — | 正に予測 |
さらに、遂行目標が高い生徒では、行動危機が翌日の進捗と肯定的感情を下げました。一方、遂行目標が低い生徒では、行動危機がむしろ翌日の肯定的感情を上げました。そして習得目標が高い生徒では、行動危機と同日の否定的感情が無関係でした [16]。
つまり、習得目標は「つまずいたときの折れにくさ」を作ります。平均成績への効果は小さくても、この性質は実務上大きい。
不正行為との関係
34研究(2000〜2023年)を統合したメタ分析は、目標と学業不正の関係を報告しています [8]。
| 目標 | 学業不正との相関 |
|---|---|
| 習得接近 | ESr = −.201(不正が少ない) |
| 遂行接近 | ESr = −.030(有意でない) |
| 遂行回避 | ESr = .070(小さいが有意に多い) |
そして習得接近目標と不正の負の相関は、中学校でもっとも強く(ESr = −.401)、高校(−.238)、大学(−.133)、小学校(−.106)と続きました [8]。
9. 何を経由して成績に届くのか
小さいながらもゼロではない効果は、何を経由しているのか。
67論文・206の効果量を統合した2024年のメタ分析は、自己効力感と学習投入が媒介の役割を果たすと報告しています。ただし重要な限定があります——学習投入の媒介効果は中学生群でのみ認められ、大学生群では有意ではありませんでした [12]。
また同じ研究は、習得接近目標と遂行接近目標は学業成績と有意な正の相関、習得回避目標と遂行回避目標は有意な負の相関を示しつつ、いずれも頑健だが弱い相関だと明記しています [12]。
高校生1,429名を対象にした中国の研究でも、学習方略と学業自己効力感の連鎖的媒介を通じて目標が学業的関与を方向づけることが示されました。ただし習得回避目標には、直接的にも間接的にも予測効果がありませんでした [18]。1節で見た「習得回避は除外を検討すべき」という所見と整合します。
大学生を対象にした別の研究では、自己効力感が唯一の有意な媒介者であり、その関係が希望・誇り・絶望という達成感情によって調整されていました [19]。
10. 領域によって話が変わる
最後に、教育以外の領域と比べておきます。
仕事・スポーツ・教育という3つの達成領域について、自己報告の達成目標と、自己報告でない遂行指標の関係をメタ分析した研究があります。
全体としては、接近目標(習得でも遂行でも)は遂行の達成と正の関連、回避目標(習得でも遂行でも)は負の関連でした。しかしこれらの関係は達成領域によって調整されました [14]。
具体例として——教育や仕事の領域と違って、スポーツの領域では、回避目標と遂行のあいだに負の相関が観察されませんでした [14]。
一言でいうと
部活で通用する動機づけの型が、勉強でも通用するとは限りません。「負けたくない」という気持ちがスポーツでは力になっても、教室では成績を下げる方向に働きうる——というのがこの所見です。
11. 塾と家庭の運用にどう落とすか
ここからは、上の知見を当塾の実務に翻訳した部分です。研究が直接そう言っているわけではない箇所は、そう明示します。
(1) 目標の言い換えで成績が動くとは期待しない
2節のとおり、相関は r = −.13〜.13、説明できるのは成績のばらつきの2%未満です [13][20]。「やる気の持ち方を変えれば伸びる」という説明を、当塾はしません。
(2) 「勝ちたい」を否定しない。ただし向きを見る
4節のとおり、「人より良い点を取りたい」は成績にプラス(r = .14)、「できる人だと思われたい」はマイナス(r = −.14) [7]。前者は止める必要がありません。注意すべきは後者です。
(3) 「なぜ勝ちたいのか」を一度聞く
4節のとおり、規範的目標は自律的な理由なら適応的、統制的な理由なら不適応でした [15]。当塾では面談で「1位を取りたい理由」を一度聞きます。これは研究からの演繹であり、当塾で比較実験をした結果ではありません。
(4) 定期テストでは「何を出すか」を明確にする
3節の学習アジェンダ枠組みのとおり、遂行目標は課題の要求が明確なときに機能します [1]。範囲と形式を具体化するだけで、その目標を持つ生徒の成果が上がる可能性があります。
(5) 習得目標は「折れにくさ」のために育てる
5節・8節のとおり、習得接近目標が最も強く予測するのはウェルビーイングであり [4]、行動危機を減らします [16]。成績のためではなく、続けられるかどうかのために育てる——という位置づけにします。
(6) 回避目標を作らない言い方をする
1節・8節のとおり、遂行回避目標は内発的動機づけにも成績にも有害で [11]、不正行為とも正の相関があります [8]。「恥をかかないように」「怒られないように」という言い方は、この目標を作ります。
(7) 空気を見る
7節のとおり、教室の風土のほうが、教師個人の発言より強く関連していました [2]。当塾では成績の順位を掲示しません。家庭でも、誰かと比べる会話が日常になっていないかを一度点検する価値があります。
12. この記事で言えないこと
- 「目標の持ち方を変えれば成績が上がる」とは言えません。相関は r = −.13〜.13 です [13][20]。
- 「習得目標が良い、遂行目標が悪い」とは言えません。遂行目標のほうが成績を確実に予測するという所見があります [1]。
- 測定の問題が未解決です。同じラベルで概念的に異なるものを測っています [7]。
- 相関研究と実験研究の結論が食い違っています(3節と6節)[1][5]。
- 習得回避目標は、構成概念としての妥当性が疑われています [9]。
- 日本の学齢児を対象にした研究は、ここに含まれていません。ただし77カ国の分析には日本も含まれる可能性があります [4](個別の国の結果は本文で確認していません)。
- 11節の運用は当塾の実務判断です。
当塾の立場
当塾は個別指導の塾であり、この記事の内容は当塾の指導方針と無関係ではありません。利害関係を明示しておきます。
この記事の内容は、塾に来なくても実行できます
はっきり書きます。ここまでの内容の大半は、今日から家庭で実行できます。費用はかかりません。
- 「勝ちたい」という気持ちを否定しない
- ただし「できる人だと思われたい」に寄っていないかは見る
- 「恥をかかないように」「怒られないように」という言い方をやめる
- テスト前は範囲と形式を具体化してから取りかからせる
- 「理解したい」は成績のためではなく、続けるために育てる
- 家庭の会話が誰かとの比較で埋まっていないか点検する
これを読んで、塾に通わずに実行する方がいるなら、それでいいと考えています。自分で回せる家庭が月謝を払う必要はありません。
それでも塾に通いたい方へ
そのうえで、塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。この記事の内容に即して、理由を3つ書きます。
- 「勝ちたい」の向きは、答案からは見えない。4節のとおり、「人より良い点を取りたい」と「できる人だと思われたい」は、成績との相関の符号が逆です [7]。しかし本人も保護者も、この2つを区別して自覚していないことがほとんどです。質問への答え方、間違いを指摘されたときの反応、分からないときに聞けるかどうか——こうした場面の積み重ねからしか見分けられません。個別指導はその場面を持っています。
- この分野は、効果が小さいと正直に言う必要がある。2節のとおり、相関は成績のばらつきの2%未満です [13]。「やる気を引き出します」は塾にとって売りやすい言葉ですが、この数字とは整合しません。当塾は、動機づけへの働きかけを主要な商品として売りません。
- 「成績は動いていないが、折れなくなった」を成果として報告できる立場が要る。5節・8節のとおり、習得目標が効くのはウェルビーイングと、つまずいたときの粘りです [4][16]。これは点数には出ません。点数が動くまでのあいだ、何が変わったかを言語化して伝えることが、続けられるかどうかを分けます。
逆に言えば、この3つをやっていない個別指導に、この点での優位性はありません。塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。
- うちの子は「勝ちたい」タイプですか、「できないと思われたくない」タイプですか
- やる気への働きかけで、成績はどれくらい動くと考えていますか
- 点数が動いていない時期に、何を成果として報告しますか
2つ目に正直な数字で答えられる塾は多くないはずです。当塾がお答えできるようにしておくのが、こちらの仕事だと考えています。
まとめ
- 達成目標は4つ——習得接近・習得回避・遂行接近・遂行回避 [17]。習得回避は妥当性が疑われている [9]。
- どの目標も学業達成との相関は小さい(r = −.13〜.13、N = 52,986)[13]。説明できるのは2%未満。
- この分野最大の論争:遂行目標のほうが習得目標より確実に成績を予測する [1]。
- 支持された説明は学習アジェンダ枠組み——遂行目標は要求が明確なとき、習得目標は興味と出題が一致するときに効く [1]。
- 測定が結果を作っていた。「人より上回る」型 r = .14、「有能に見られたい」型 r = −.14 [7]。
- 規範的目標は自律的な理由なら適応的、統制的な理由なら不適応 [15]。
- 習得接近目標が最も強く予測するのはウェルビーイング。学業成績とは β = .069(77カ国・59万人)[4]。
- ただし実験的に誘導すると遂行は高まった(動機づけは高まらず)[5]。相関研究と食い違う。
- 教室の風土のほうが、教師個人の発言より強く関連 [2]。
- 習得目標は努力と進捗を高め、行動危機を減らす。遂行目標は否定的感情と行動危機を増やす [16]。
- 習得接近目標は学業不正と負の相関(中学で最強、ESr = −.401) [8]。
- スポーツでは回避目標の負の効果が見られない。領域が結果を変える [14]。
出典
本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。
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- 教師の期待は生徒を変えるか——ピグマリオン効果の60年が残した結論
