現代人にこそ必要なリベラルアーツとは何か?

00 リベラルアーツとは何か?

最近、世界中で「教養教育(リベラルアーツ)」の重要性が言われていて、高等教育の現場でも、大量生産型のフォーディズム的なビジネススクール教育から、デザインシンキングにシフトし、さらにはリベラルアーツやアートシンキングへと、めまぐるしい勢いで進化しています。

ここでいうリベラルアーツとは、古代ギリシア・ローマ時代に源流を持つ、「自由七科」のことで、ラテン語の「liberalis(自由人の)」と「art/arts(技術、学問)」がその語源です。19世紀後半から、20世紀のヨーロッパの大学制度において、「人が持つ必要がある技芸(実践的な知識)の基本」と見なされてきました。

もう少し平たく言うと、リベラルアーツとは、知識やスキルのことではなく、ものごとを「どこから見るか」という観点を指しているともいえます。物事を捉えたり、考えたりするときに、観点(視点)は多ければ多いほうがいい。より多くの視点を得られれば、時代の変化にも、自分自身に対する反応にも振り回されなくなる。このような思考法が、まさに現代人に求められているわけです。視点が増えれば、人生のオプションが増え、決断の迷いが減る。そうすれば現代の混乱から抜け出せるようになるでしょう。

さて、古代ギリシアでは、市民としての自由人とそれに仕える奴隷がわけられ、自由人として行くためには一定の素養が求められました。哲学者プラトンの『国家』では、哲学の予備学として、ムシュケー(学芸)および幾何学の学習が必要であると説かれ、彼の私学アカデメイアには、幾何学を理解しない者はこの門をくぐるなかれ、と記されていたようです。

さらにこれが、古代ローマにおける自由の諸技術(arts liberales)と機械的技術(arts mechanicae)の区別にも引き継がれ、前者を英語に訳したものが、リベラルアーツということになります。これらは、ローマ時代末期の5世紀後半から6世紀に、自由七科(septem arts liberales)として定義されることになりました。

そして、キリスト教の理念に基づき、教育内容を整えるために、この自由七科を集大成したのが、中世以降のヨーロッパの大学です。中世の大学には、上級学部として神学、法学、医学の三科目が置かれ、その前段階として論理的思考を教える哲学がありました。さらにその前段階にあったのが、主に言語に拘わる、文法学、修辞学、論理学と数学に関わる四科目、算術と幾何学、天文学、音楽がありました。これが自由七科です。そして、中性のヨーロッパで大学が誕生した際、これらが学問の科目として公式に定められることになりました。

01 現代でもう受け継がれるリベラルアーツ

そして、現代でもその伝統を守っているのが、アメリカ東海岸でも見えられる、アマースト・カレッジやウィリアムズ・カレッジといった教養教育専門のリベラルアーツカレッジです。日本においても、教養学部を置いて、人文科学、社会科学、自然科学の基礎分野を学際的に教育するプログラムを実施している東京大学教養学部や、国際基督教大学(ICU)などが有名です。

VUCAとも言われるほど、変化の激しい時代において、人生の座標軸を与えてくれる指針が教養であるといえるでしょう。教養は、物事の本質を見抜き、時代を先取りする大局観を養う上でも欠かせません。また、教養人というのは、単なる知識量の多寡ではなく、それに伴う人間性の高さも前提となっています。

教養とは、人がよりよくいきるためのもの、如何に生きるかを問う者とも言えます。一橋大学元学長の阿部謹也は、教養とは「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のために何が出来るかをしっている状態、あるいは知ろうと努力している状態」だと言っています。教養は社会的地位の高さに拘わらず、その人の役割において存在し、たとえば、農業であれば、農民は、農業の重要性を理解した上で、米をどう育てるかといった、仕事に対する努力を続けることが、教養です。こうした自分の役割認識に加えて、他の専門分野をうまく学びながら、自分とは異質の価値観をもった他者とうまく協働していくことが教養の役目であるわけです。

教養は人がよりよく生きるため、今の時代こそ必須のものだと思います。長い人類の歴史の中で培われてきた英知を学び、もののありかたやものの定義、ものの見方を学んでいく。今、こうした力こそ、受験科目の学習以上に重要になってきていると思います。

〔英訳版〕

What are the liberal arts that people today need?

The importance of “liberal arts” education (liberal arts) is being talked about around the world these days, and even in the field of higher education, there is a shift from mass-production Fordist business school education to design thinking, and then to liberal arts and art thinking, evolving at a dizzying pace.

The liberal arts in this context refer to the “seven liberal arts,” which originated in ancient Greece and Rome, from the Latin words “liberalis” (of free men) and “art/arts” (skill, study). The term “art/arts” is derived from the words “liberalis” (liberal) and “art/arts” (practical knowledge).

To put it more plainly, the liberal arts do not refer to knowledge or skills, but rather to a point of view from where one “sees” things. The more perspectives (viewpoints) we have when perceiving and thinking about things, the better. The more perspectives we have, the less we will be swayed by the changes of the times or our reactions to ourselves. This way of thinking is precisely what is required of people today. With more perspectives, we will have more options in life and fewer decisions to make. Then we will be able to get out of the confusion of the modern world.

Now, in ancient Greece, there was a distinction between free people as citizens and slaves who served them, and a certain level of the background was required to go as a free person. In Plato’s “The State,” the philosopher Plato taught that the study of music and geometry was necessary as a preliminary to philosophy, and his private school, the Academia, apparently stated that those who did not understand geometry should not pass through its gates.

This was further carried over into the ancient Roman distinction between arts liberals and arts mechanical, the former being translated into English as liberal arts. These were defined as the seven liberal arts (septem arts liberales) in the late Roman period, from the late 5th to the 6th century.

In order to align their educational content with Christian principles, these liberal arts were compiled into the European university from the Middle Ages onward. In the medieval university, theology, law, and medicine were the three advanced faculties, and philosophy, which taught logical thinking, was the first step. The next step was grammar, rhetoric, and logic, which were mainly concerned with language, and four subjects related to mathematics, arithmetic and geometry, astronomy, and music. These are the seven free subjects. When the university came into being in neutral Europe, these were officially defined as the subjects of study.

And even today, liberal arts colleges specializing in liberal arts education, such as Amherst College and Williams College, which can be seen on the East Coast of the United States, are preserving this tradition. In Japan, the University of Tokyo’s College of Liberal Arts and International Christian University (ICU) are well known for their interdisciplinary education programs in the basic fields of humanities, social sciences, and natural sciences.

In this era of rapid change, which is also known as VUCA, the liberal arts are the guiding principle that provides us with the coordinates of our lives. The liberal arts are also indispensable for seeing the essence of things and developing a big-picture view that anticipates the times. Moreover, an educated person is not merely a person with a large amount of knowledge, but also a person with a high level of human qualities.

It can be said that an educated person is a person who asks how to live and how to live better. Former Hitotsubashi University President Kinya Abe said that education is “the state of knowing or striving to know, one’s place in society and what one can do for society. For example, in the case of agriculture, a farmer is educated when he understands the importance of agriculture and continues to make efforts in his work, such as how to grow rice. In addition to this awareness of one’s own role, the role of the liberal arts is to learn other fields of expertise and to work well with others who have different values from one’s own.

I believe that the liberal arts are indispensable in this day and age for people to live better. We must learn the wisdom that has been cultivated over the long history of humankind, and learn how things are, how things are defined, and how to look at things. I believe that these skills are becoming more important than teaching subjects for entrance examinations.

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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