9-1 文学は社会を映す鏡
1.文学の社会的役割とは?
文学とは、単なる物語や芸術ではなく、人間の感情・思想・体験を言語で表現し、社会に問いを投げかける文化的営み です。古今東西の文学作品は、人間の苦悩、社会の矛盾、権力との葛藤、差別や不平等への怒りなどを描き出し、読む者に現実を見つめ直す視点を与えてきました。
2.文学が描く社会問題
◆ 差別・貧困
- 小林多喜二『蟹工船』:労働者搾取と資本主義の矛盾
- 宮沢賢治『なめとこ山の熊』:自然と人間、共存と犠牲
- 芥川龍之介『羅生門』:極限状況での人間の倫理的選択
◆ 戦争・平和
- 大岡昇平『野火』:極限状況下での生存と狂気
- 井伏鱒二『黒い雨』:被爆者の苦しみと差別
- 太宰治『走れメロス』:信頼と裏切りの中の人間性
◆ ジェンダー・家族
- 向田邦子『父の詫び状』:戦後の女性と家庭像
- 津村記久子『ポースケ』:女性と仕事・孤独
- 夏目漱石『こころ』:近代日本における個と家庭の葛藤
3.文学が社会に果たす役割
役割 | 説明 |
---|---|
告発 | 社会の不正や矛盾を暴き、可視化する |
共感 | 読者が他者の視点に立ち、感情を理解する力を育てる |
記録 | 歴史や時代の空気、人びとの暮らしを保存・伝承する |
想像 | 現実を超えて、より良い未来や理想の社会を構想する |
4.文学と主権者教育の接点
- 他者理解と寛容の精神 → 多文化共生社会に必要な資質
- 表現の自由の尊重 → 憲法21条の理解とリンク
- 社会批評の力 → メディアリテラシーや言論の自由と連動
【探究・論述テーマ例】
- 「あなたが読んだ文学作品を通じて、どのような社会問題を考えたか述べよ」
- 「文学は社会の何を映し出すか。具体例を交えて考察せよ」
- 「文学が主権者としての意識を育てるために果たす役割を論ぜよ」
武蔵野個別指導塾
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