重要判例_エホバの証人輸血拒否事

【判例番号】 L05510022
損害賠償請求上告、同附帯上告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成10年(オ)第1081号、平成10年(オ)第1082号
【判決日付】 平成12年2月29日
【判示事項】 宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有している患者に対して医師がほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで手術を施行して輸血をした場合において右医師の不法行為責任が認められた事例
【判決要旨】 医師が、患者が宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有し、輸血を伴わないで肝臓の腫瘍を摘出する手術を受けることができるものと期待して入院したことを知っており、右手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、ほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで右手術を施行し、患者に輸血をしたなど判示の事実関係の下においては、右医師は、患者が右手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われたことによって被った精神的苦痛を慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
【参照条文】 民法709
民法710
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集54巻2号582頁
訟務月報47巻5号1108頁
裁判所時報1262号140頁
判例タイムズ1031号158頁
判例時報1710号97頁
【評釈論文】 ジュリスト1195号108頁
ジュリスト臨時増刊1202号66頁
別冊ジュリスト245号50頁
別冊ジュリスト258号70頁
訟務月報47巻5号132頁
駿河台法学18巻1号45頁
南山法学25巻4号153頁
判例タイムズ臨時増刊1065号110頁
判例評論521号11頁
法学教室239号41頁
法学教室246号別冊付録22頁
法学教室246号別冊付録3頁
法曹時報55巻1号187頁
法律時報別冊私法判例リマークス23号58頁
法律のひろば53巻7号64頁
民事研修584号13頁
民事法情報164号90頁
NBL736号66頁
 
       主   文 本件上告及び附帯上告を棄却する。 上告費用は上告人の、附帯上告費用は附帯上告人らの負担とする。 理   由 上告代理人細川清、同富田善範、同齊木敏文、同永谷典雄、同山中正登、同大竹たかし、同林圭介、同中垣内健治、同近藤秀夫、同渡部義雄、同山口清次郎、同平賀勇吉、同星昭一、同安岡邦信、同小林隆之、同高柳安雄の上告理由について 一 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 亡Bは、昭和四年一月五日に出生し、同三八年から「エホバの証人」の信者であって、宗教上の信念から、いかなる場合にも輸血を受けることは拒否するという固い意思を有していた。Bの夫である被上告人・附帯上告人Aは、「エホバの証人」の信者ではないが、Bの右意思を尊重しており、同人の長男である被上告人・附帯上告人Cは、その信者である。 2 上告人・附帯被上告人(以下「上告人」という。)が設置し、運営しているD病院に医師として勤務していたEは、「エホバの証人」の信者に協力的な医師を紹介するなどの活動をしている「エホバの証人」の医療機関連絡委員会(以下「連絡委員会」という。)のメンバーの間で、輸血を伴わない手術をした例を有することで知られていた。しかし、D病院においては、外科手術を受ける患者が「エホバの証人」の信者である場合、右信者が、輸血を受けるのを拒否することを尊重し、できる限り輸血をしないことにするが、輸血以外には救命手段がない事態に至ったときは、患者及びその家族の諾否にかかわらず輸血する、という方針を採用していた。 3 Bは、平成四年六月一七日、F病院に入院し、同年七月六日、悪性の肝臓血管腫との診断結果を伝えられたが、同病院の医師から、輸血をしないで手術することはできないと言われたことから、同月一一日、同病院を退院し、輸血を伴わない手術を受けることができる医療機関を探した。 4 連絡委員会のメンバーが、平成四年七月二七日、E医師に対し、Bは肝臓がんに罹患していると思われるので、その診察を依頼したい旨を連絡したところ、同医師は、これを了解し、右メンバーに対して、がんが転移していなければ輸血をしないで手術することが可能であるから、すぐ検査を受けるようにと述べた。 5 Bは、平成四年八月一八日、D病院に入院し、同年九月一六日、肝臓の腫瘍を摘出する手術(以下「本件手術」という。)を受けたが、その間、同人、被上告人A及び同Cは、E医師並びにD病院に医師として勤務していたG及びH(以下、右三人の医師を「E医師ら」という。)に対し、Bは輸血を受けることができない旨を伝えた。被上告人Cは、同月一四日、E医師に対し、B及び被上告人Aが連署した免責証書を手渡したが、右証書には、Bは輸血を受けることができないこと及び輸血をしなかったために生じた損傷に関して医師及び病院職員等の責任を問わない旨が記載されていた。 6 E医師らは、平成四年九月一六日、輸血を必要とする事態が生ずる可能性があったことから、その準備をした上で本件手術を施行した。患部の腫瘍を摘出した段階で出血量が約二二四五ミリリットルに達するなどの状態になったので、E医師らは、輸血をしない限りBを救うことができない可能性が高いと判断して輸血をした。 7 Bは、D病院を退院した後、平成九年八月一三日、死亡した。被上告人・附帯上告人ら(以下「被上告人ら」という。)は、その相続人である。 二 右事実関係に基づいて、上告人のBに対する不法行為責任の成否について検討する。 本件において、E医師らが、Bの肝臓の腫瘍を摘出するために、医療水準に従った相当な手術をしようとすることは、人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する者として当然のことであるということができる。しかし、患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。そして、Bが、宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有しており、輸血を伴わない手術を受けることができると期待してD病院に入院したことをE医師らが知っていたなど本件の事実関係の下では、E医師らは、手術の際に輸血以外には救命手段がない事態が生ずる可能性を否定し難いと判断した場合には、Bに対し、D病院としてはそのような事態に至ったときには輸血するとの方針を採っていることを説明して、D病院への入院を継続した上、E医師らの下で本件手術を受けるか否かをB自身の意思決定にゆだねるべきであったと解するのが相当である。 ところが、E医師らは、本件手術に至るまでの約一か月の間に、手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、Bに対してD病院が採用していた右方針を説明せず、同人及び被上告人らに対して輸血する可能性があることを告げないまま本件手術を施行し、右方針に従って輸血をしたのである。
そうすると、【要旨】本件においては、E医師らは、右説明を怠ったことにより、Bが輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざるを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任を負うものというべきである。
そして、また、上告人は、E医師らの使用者として、Bに対し民法七一五条に基づく不法行為責任を負うものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は、是認することができ、原判決に所論の違法があるとはいえない。論旨は採用することができない。 附帯上告代理人赤松岳、同野口勇、同石下雅樹の上告理由について 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難し、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の裁量に属する慰謝料額の算定の不当をいうものであって、採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)

武蔵境駅徒歩30秒武蔵野市唯一の完全個別指導塾「武蔵野個別指導塾」

武蔵野個別指導塾

東小金井駅おすすめの個別指導塾・学習塾 多磨駅おすすめの個別指導塾・学習塾 武蔵境駅おすすめの個別指導塾・学習塾 三鷹駅おすすめの個別指導塾・学習塾 武蔵小金井のおすすめの塾及び個別指導塾 西東京市(田無駅)にあるオススメの塾・個別指導塾 東伏見お薦めの個別指導塾・学習塾 西武柳沢駅お薦めの個別指導塾・学習塾 吉祥寺でお薦めの個別指導塾・学習塾 小学生コース 中学生コース 高校生コース 浪人生コース 大学院入試コース 社会人コース 幼児コース

TOPに戻る 文部科学省 学年別個別指導コース テーラーメイドの教育とは? 【武蔵境駅徒歩1分】武蔵野個別学習塾とは? 講師の紹介と教室の案内 個別指導塾のススメ 完全個別指導塾とは何か 英語を学ぶと言うこと 東大合格は難しくない 日本の教育システムの限界 頑張ればできるという幻想 英語を学ぶと言うこと(2) 英語を学ぶと言うこと(単語編) 単語の勉強初級編(1) 武蔵境のおすすめの塾及び個別指導塾 英文法講座 英文法特講(英語から繋げる本物の教養) am_is_are(be動詞) am_is_are(questions) 一瞬で分かる中学校社会【超基礎編①】 一瞬で分かる中学校社会【超基礎編②】 居心地の良いサードプレイス 受験を意識しなくてもハイレベルな授業を受けられる 理数系科目を強みに リベラルアーツ授業で小論文を得意に 英語が得意科目になる やる気を引き出す指導 勉強が楽しくなる個別指導塾 短期間で学校の成績UPにコミットします! 確かな学力を育む、一人ひとりの習熟度に合わせた授業 英語教育を学ぶ魅力について 都立高等学校入試(社会、2017年) 共通テストで満点をとるための世界史 武蔵境駅おすすめの個別指導塾・学習塾 三鷹駅おすすめの個別指導塾・学習塾 現代文には解き方がある 国語の解き方(現代文編)ー現代文への偏見 現代文の記述問題の解き方 現代文の記述問題の解き方(2) 現代文の記述問題の解き方(3) 現代文の記述問題の解き方(4) 現代文の記述問題の解き方(5) 現代文の記述問題の解き方(6) 現代人にこそ必要なリベラルアーツとは何か? ホッブス『リヴァイアサン』 算数の基礎 100分de名著を通じて学ぶ教養 現代文の要約問題の解き方(1) 東小金井駅おすすめの個別指導塾・学習塾 第一講 人間とは何か? 対策を通じて学ぶ倫理思想 多磨駅おすすめの個別指導塾・学習塾 2023年度の入試結果の合格実績 大学教授によるカウンセリング 小論文の基礎の基礎 有名国立も万全・世界史論述問題対策 共通テストや記述試験で満点をとる日本史講義 日本史講義 縄文時代から弥生時代へ 日本史講義 更新世と石器文化 日本史講義 弥生時代から邪馬台国 国立及び難関私大対策世界史特講:イギリス近代史を学ぶ 国立及び難関私大対策世界史特講:イギリス近代史を学ぶ(2) English Quizで学ぶ英単語 大学教育を受けた米国人が学ぶ語彙 英検があれば200~20倍楽に早慶・GMRCHに合格できる 英検準1級はコストパフォーマンスが高い 入塾規約 授業料のご案内 武蔵野個別指導塾 時間割 春期講習のお知らせ 時間割 I am doing(present continuous) 入塾のご案内 夏期講習受付中! 教養とは何か?~中学受験、高校受験、大学受験に生きる教養 勉強が苦手になりやすい家庭の特徴トップ3 我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5 立川の溶岩ホットヨガスタジオのオンザショア
author avatar
ryomiyagawa Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
PAGE TOP
お電話