数学が嫌いになる生徒の特徴とその理由

1+1=2を証明するのは意外と難しい

1+1=2という数式を理解していない小学生はかなり少ないかと思いますし、中学生や高校生なら、100%知っています。しかし、どうして、1+1=2なのか証明することができる小学生はもちろん、中学生や高校生も少ないのは意外と知られていません。実際、理系で何か非常に難しい参考書にちょっと出る程度でしょうか。少なくとも教科書レベルの高校数学では扱われません。

私自身、塾で教えているのは数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・Bまでなので、私の教えられる範囲としても超えています。しかし、大学生時代、論理学の授業で習った記憶だけは覚えています。とはいえ、私が習ったのは、ペアノの公理というよりは、ラッセルの『プリンキア・マテマティカ』で習った程度であり、集合論として、軽く習った程度で、基本的にもう記憶の彼方です。そんな私が何故この問題を取り上げたかというと、数学の学習法について、そして、保護者の皆様が一番気になる「どうしてうちの子は数学が嫌いなのか?」あるいは「数学が苦手なのか?」私なりの見解をご紹介したいと思ったからです。

というのも、多くの生徒が数学が嫌いであったり、苦手であるのは、頭が悪いとか、本当に数学が苦手であるとかではなくて、単に勉強の仕方が、悪いという場合が多いからです。後述しますが、数学が苦手だと思っている生徒にありがちなのが1時間で1問しか数学の問題を解けないというケースや1問を解くのに数時間問題に向き合ってウンウンと頭をうならせているということが珍しくありません。その一方、数学が得意な生徒は1時間で5問どころか、10問でも20問でもと進んでいく生徒が多いです。これは頭の良しあしなどではなく、要領の問題です。といっても、勉強は時間でありません。勉強はやった時間よりもやった量で伸びるものです。要領よく沢山の量の問題解くことができるようになれば、数学嫌いを克服可能どころか、どんな秀才でも追い抜けます。とりわけ、武蔵野個別指導塾のようなマンツーマンの個別指導塾では、誰にでも当てはめるようなカリキュラムは用いず、一人ひとり能力特性に合わせたカリキュラムを作っております。

では、その前に、まずは、1+1=2であることをペアノの公理を用いて証明しておきましょう。ちなみに、数学アレルギーの方はペアノの公理以下、1+1=2の証明終了まですべてすっ飛ばして記事をお読みください。

ペアノの公理

自然数は以下を満たす。*頻繁に出てくる「suc」という言葉は、successorという英語の略語で後に続くもの(次に来るもの)、くらいの意味で理解してください。

  1. 自然数0が存在する。
  2. 任意の自然数aにはその性質、suc(a)が存在する▶次の元が存在する
  3. 0はいかなる自然数の後者でもない▶最小元の存在
  4. 異なる自然数は異なる後者をもつ。a≠bならば、suc(a) ≠suc(b)▶単射性
  5. 0がある性質を満たし、aがある性質を満たせば、その後者suc(a)もその性質を満たすとき、すべての自然数はその後者を満たす▶数学的帰納法の原理

ペアノの公理を満たす場合に対して、加法を次のように定義する。

すべての自然数aに対して、a+0=a

すべての自然数a,bに対して、a+suc(b)=suc(a+b)

1+1=2の証明

で、下ごしらえが揃った上で1+1=2の証明を、上の「ペアノの公理」を用いて以下に証明していきます。

suc(0)=1と定義する。

suc(suc(0))=2と定義する。

ここで加法の定義において、

a=suc(0),b=0とすると、

suc(0)+suc(0)=suc(suc(0)+0))

(また、加法の定義において、a+0=aであるので、)

suc(0)+0はsuc(0)

従って、suc(suc(0))=2となる。

以上、証明終了、Q.E.D.とでも言うべきでしょうか。そこで、多くの皆さんに確認したいのですが、今の証明を一発でおわかりになりましたでしょうか?もちろん、私と違って、理系の方は、すぐに分かる、あるいは「お前の説明(証明)には若干いい加減なところがある」とご指摘されるかもしれません。しかし、理系の方でも「そういえばそんなのあったけかな?」と思われた方もいらっしゃるでしょうし、文系の方はそもそも意味が分からなかったということも少なくないと思います。

もちろん、私はここで数学基礎論の話をしたいわけでも集合論の話をしたいわけでも論理学の話をしたいわけでもありません。小学生には少ないのですが、中学生、あるいは高校生になって数学が苦手だ」あるいは「数学は嫌いだ」と思われるお子様に多いのが、こうした1+1=2であるような、「そもそも、それを疑ったり、考えてしまっていては、その都度、かなり高度な数学、あるいは論理学を理解しなければならない」という問題は発生しているケースが少なくありません。子どもによくある「疑問」を感じてしまうということが、数学嫌いの原因になっている場合は、実は意外と多いものです。とりわけ、中学数学で躓き易い単元である二次方程式を学ぶ際に、中学三年生(中高一貫校の場合は、中2)が、次のような数式にあたった際に躓きます。

数学が嫌いになっていくプロセス

それは、2x²-x+2=0のような式です。この二次方程式を解こうと、中学校で習う「解の公式」(ちなみに、解の公式自体は躓き憎く、その前に行う平方完成に躓く生徒が多く、これは高校以降も重要になってくるのですが)に当てはめると、1±√-15/4という数が登場します(判別式D=b²-−4acがマイナスになるとき、実数解がなく、解が虚数になるわけで、解無しと答えるのが良いのですが、中学校で判別式は習いません、高校一年生ですぐ習うのですが)。つまり、√の中の数字が負になるということです。そして、今出た「√-15」という数字に驚きます(正確には、√15iと書くわけですが、複素数、iという虚数単位を習うのは、高校二年生の数Ⅱですし、そもそも、実数解がないとわけですね)

もちろん、虚数単位を使って表現するならば、x=1/4±√15/4iと書くことができ、複素数の範囲内なら必ず解を持ち、二次方程式なら必ず二つの解を持つわけですね。この辺も実数解無しという説明よりも本当は気持ち良いのですが、その説明をするには、√に出会って混同している生徒に教えるには、余計な混乱を広げてしまうだけになるのは明白かと思います。実際既にここまでの説明で既に「??」となってしまった保護者の方もいらっしゃるかと思います。それを子供相手にやったら・・・。はい、間違いなく、数学が嫌いになります。

いや、こういう計算問題は中学校の問題に出ないのですが、計算ミスで√-15のような解答を出してしまうお子さんがたまにいます。そこで、ふと考えてしまうわけです。「√-15って、二乗して-になる数だよね」と。(-n)×(-n)=(+n)と中一で習った常識がいきなり根底から覆されるわけですね。そもそも、それ以前に、マイナス×マイナスがプラスであることをきちんと理解していない中学生も多いです。

そこで、中学生にとって、分かりやすい説明としては、分配法則 a×(b+c)=a×b+a×cと 1+(−1)=0から (−1)×(−1)=1を証明するのが、中学生には分かりやすいかも知れません。分配法則とは、a×(b+c)=a×b+a×cとなるとことです。これを1+(-1)=0とし、両辺に-1をかけると、(-1)×{1+(ー1)}=(-1)×0となります。そして、分配法則で括弧を開くと、(-1)×1+(-1)×(-1)=0となります。(-1)×1=-1なので、-1+(-1)×(-1)=0となります。そこへ両辺へ+1をすると、(-1)×(-1)=1となります。もちろん、もっとイメージを重視し、複素数平面で絶対値を変えずに180°回転してきたと理解するのが、数学的には美しい気もしますが、これでは中学生には理解しづらいかと思います。

もちろん、これはかなり特殊な例です。しかし、この二次方程式が単元にならなくとも、私が担当している生徒さんで、今まで何人かが中学生で初めて√、つまり根号を習った際に「なんでマイナスのルートはないの?」と質問を受けたことは少なくありません。そこで、そもそも二乗して-になるような実数はないよ、などという話をしてもなかなか理解が得られませんし、正直、そんなことを説明しているだけ時間の無駄です(もちろん、それを数学的センスがあると表現することは可能なのですが)。

しかし、こういう壁は何も虚数以外にも、沢山数学には存在しているんですよね。それこそ、冒頭で述べた1+1=2が成り立つということも疑問に思おうと思えば疑問に思うことができるわけですね。そして、それに答えるのは中学生などにとっては、結構大変なわけです。

そして、そうした事態に陥るたびに、どうしてこの公式は成り立つの?」だとか「どうしてこれは○○というやり方で解かないといけないの?」という素朴な疑問を持ってしまうわけです。もちろん、その子のレベルで公式が証明できる、あるいは、証明することを普通に学校や教科書で習っている単元(中2から証明を習いますので)なら問題ないのですが、そうでない場合、そこで、納得のいく有意義な解答が得られないと、数学なんて意味不明だ」と数学が嫌いになります。仮に納得行くまで説明したとしても、それはそれで数学は難しすぎる」と心が折れます。

いや、こういう疑問や壁にぶち当たらなくても、中学生くらいの生徒さんは数学を「ひたすら考えて解くものだ」と考え、そういう風に数学という科目を受け止めているケースが多く、難しい問題に当たって「いくら考えても解けない」という事態に遭遇すると、非常に苛立ちを覚えます。そして、これもまた数学が嫌いになる原因になるのです。

難しい問題に当たって、ずっとその問題を何十分、場合によっては一時間以上考えている生徒が意外と多くいます。宿題で出された問題で、なかなか解けなくて、1時間かかったよ」というわけです。まだこれが一回だけなら良いですが、何問も難問に当たってしまうと(別に難問ではなくとも、その生徒さんにとって難しい問題でも同じです)、毎回たった1問を解くのに1時間とかかかってしまうとだんだん心が折れてきます。10問解くのに10時間かかりかねません。大人でも心が折れますよね。そして、そういう生徒さんは、最終的に数学が嫌いになるのです。

数学嫌いを避けるための方法

そういうわけで、武蔵野個別指導塾では、生徒さんの個性によるので、一概には言えませんが、大抵の場合、「数学を解くときにすぐに(目安としてはMAXで5~10分間)自力で解けなかったら解答や解説を読んで、その解き方や答えを覚えなさい」と指導しています。そうすれば、間違って虚数を導くこともなければ、解法さえ知っていれば、僅か数分で解ける問題に数時間も時間を費やしてしまうなどの無駄や、何よりも精神的ダメージを回避することができます。

しかし、学校の先生は「数学は思考力を問う科目だ」とか「数学は考える科目だ」と指導される先生が多いようです。確かに、そうした側面はありますし、そういう見方や考え方も大事でしょう。しかし、それが数学が苦手になる生徒を生んでしまう危うさを持っていることも忘れてはなりません。数学を自分で解こうとするのは、ある程度できるようになってから、の話です。それまでは、とにかくいろいろな問題パターンやその問題の解き方(解法パターン)を覚えることが大切です。

もちろん、丸暗記すればよいというわけではありません。自分で考えることは大切です。しかし、30分~40分、下手をすると1問に1時間も時間を掛けて問題を解くというのは、不効率過ぎます。3分考えて解けなければ、2分で答えを見て、5分で覚える。さすがに3分だけ考えて諦めるのは、少しきが早いかもしれないので、5分、あるいは10分くらいは考えてみる。それでも解けなければ、一旦2~3分くらいかけて解説で解き方を読んで理解し、もう一度解き直す。あるいは、答えをみて、どうしてその答えになるのか、逆算思考で答えに合わせに行く。

そうすれば他の生徒の3倍~5倍のスピードで問題集や参考書が進みます。これは、一人で延々と問題に取り組んで考えて進もうとする子の一ヶ月分の勉強量の3~5倍の勉強ができることになります。もし、お子様が「数学(算数)が苦手だ」あるいは「数学(算数)は好きではない」という感想を漏らしている場合は、ぜひ、武蔵野個別指導塾までご相談くださいませ。その子の個性に合った適切な対処法をアドバイスさせて頂きます。

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。

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ryomiyagawa
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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