中学受験の勉強を始めるベストなタイミング

01 一般的な目安としては小学校3年生~小学校4年生から受験勉強の準備を始める

お子様が未来への大きな一歩を踏み出す中学受験。その旅路の開始点をいつに設定すれば最適なのでしょうか?中学受験の勉強を始めるタイミングは、多くの親や教師が深く悩む問題の一つです。始めるのが早すぎると、子供たちに過度のストレスを与えてしまうかもしれません。しかし遅すぎれば、十分な準備時間が取れず、試験でのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。

一般的には、小学校の3年生から4年生の間がゴールデンタイミングとされています。その背後には、中学受験が求める深い知識の海を探検するための時間の確保があります。中学受験で出題される問題の範囲はとても広く、覚える知識の量も膨大です。それを網羅的にカバーするためには、一般的に3年程度の期間が必要とされています。

教育経済学の立場からみると、学習は投資と似ています。貯金を始める時期が早いほど、複利効果により結果的に得られる利益は大きくなるのと同じく、学習を始めるタイミングが早いほど、知識の蓄積と理解の深まりは大きくなります。ただし、これには資源の使用に関する取捨選択が存在します。早期の学習開始は、子供の自由時間や家庭の経済資源を多く必要とします。

そして、その潮流に沿って、多くの大手進学塾では、3年生の3学期か4年生の1学期から始まる3年間のコースが用意されています。3年という期間は長いかもしれませんが、これは子供たちの未来を形成する重要な試験への準備期間と考えれば、ちょうど良いと言えるでしょう。お子様の将来を左右する試験に向けた準備であればそれぐらいの時間は必要といえるでしょう。ましてや、競争率が激しく、出題難易度も高い難関校を目指す場合はなおさらです。

そして、その中身もかなりハードで、一般的に、1日3時間の塾の授業を、小4で週二日、小5で週三日、小6で週四日というのが相場です。さらに、季節講習では合宿などの特別講習や一日に10時間くらいの授業を受けることも少なくありません。しかし、なぜそんなに勉強しなければならないのでしょうか。大学受験で早慶を目指す高校生でも受験勉強は早い生徒でも高校2年生、遅ければ高校3年生から始めるものです。大学受験でさえ1年くらいで終わるのに、何故中学受験では3年もかかるのか。その理由はシンプルで、入試問題の何度が昔に比べると格段に上がっているということがあります。

たとえば、算数の問題のレベルは30年前と比べて飛躍的に難易度が上がっています。たとえば、次の例を見てみましょう。

小学校の教科書レベルの例:3/4÷0.6×2/5

開成中学校の2022年の算数の問題:2.02÷(2/3ー□÷21/8)=5.05×2.8

開成中学校の問題は、逆算という問題ですね。逆算は、中学校入試の定番の計算問題で、現在の中学入試では、正直難しい問題に当たりません。しかし、小学校の教科書レベルの問題は、解けない小学生はおそらくいないでしょう。答えは、1/2です。しかし、開成中の問題の方は、少なくとも逆算の計算問題の演習に慣れていて、四則演算の順序がきちんと理解できていないと回答不能でしょう。大まかな考え方としては、左辺の2.02を右辺の5.05×2.8で割って、(2/3ー□÷21/8)とイコールになる数を割り出します。そして、それが1/7だと分かれば、次に2/3から1/7を引いた数、11/21を21/8で掛けて元になっている11/8を割り出すという計算過程を経ていきます。文字で説明するとややこしいので、下に図示します。

開成中学校の過去問 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

開成中学校「算数」2022年

この問題、決して現代の時勢では難しい問題ではなく、このレベルの問題は、中堅校クラス(いわゆる偏差値46~54程度の中学校のことを中堅校クラスといいます)で普通に類題が出題されます。しかし、実は30年前はこのような問題が中堅校ではな出題されていませんでした。しかし、現在は、上位校が出題した問題を数年後に中堅校が追随して出題するという傾向が顕著になってきているのです。実例を見てみましょう。次の問題は、東京電機大学中学校の2023年の算数の問題です。

東京電機大学中学校 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

東京電機大学中学校「算数」2023年

解法は上の開成中学校の問題と全く同じです。問題の形もかなり類似していますね。32/5から0.65(13/20)を引き、その結果の23/4から3.5(14/4)を引き、9/4を導き出します。そして、9/4×4/3をして□に入る数字は「3」であると導き出せます。解法を絵で描くまでもなく全く同じ解き方をしていることは分かって頂けるかと思います。ちなみに、東京電機大学中学校の偏差値は、46です。まさに中堅校といってよい偏差値です。

このように、現在の中学校受験では、中堅校クラスでも計算問題レベルで言えば、数年前の御三家などの計算問題と同じレベル問題が出題され、さらに文章問題となると、難関校や最難関校といわれる御三家(男子の開成中学校、麻布中学校、武蔵中学校や女子の桜蔭中学校、雙葉中学校、女子学院中学校)や新御三家(男子の駒場東邦中学校、海城中学校、巣鴨中学校や女子の豊島岡女子学園中学校、鷗友学園女子中学校、吉祥女子中学校)などの最難関中学校はもちろん、それに準ずる難関中学校では、今解いた計算問題とは比較にならない難しい問題が出題されます。

さらに、30年前は、算数と国語の2教科受験で済む中学校が多くありました。そのため、小5からの勉強で間に合ったということもありました。しかし、現在は、4教科を課す私立中学が主流です。もちろん、二回目や三回目の入試試験などで、算数と国語の二科目試験という場合もありますが、これらでは、通常より難易度が上がっており、正直、かなりのレベルの算数の力がないと勝負にならないというのが実情です。そうなると、理科や社会も勉強していかなければなりません。

そういう風に中学校受験が変化しているのに対して、学校の進度はあまりにも遅いというのが実情です。社会で言うと小6でようやく公民を習い、小6卒業時点で全範囲を終えます。これは何も小学校に限ったことではなく、高校でも世界史や日本史は現代史に行く前に学校の授業が終了してしまったり、あるいは全く大学受験には間に合わなかったということは保護者の皆様にもご記憶にあるのではないでしょうか。そうすると、今の小学生たちは、学校で習わないような算数の特殊算と呼ばれる、問題によっては、中学レベルの数学はもとより、高校の数1・数Aや数Ⅱ・数Bの知識が無ければ(いや、無くても解けるのですが、そうした問題を解くのと同レベルの難易度の)解けないような算数の問題への対策をしつつ、学校では全く間に合わない理社を対策しなければなりません。

また、国語の問題に関しても、漢字や故事成句、文法など知識問題はともかく、読解問題については、少なくとも御三家などの問題を見る限り、課題分のレベルはともかく、問題の内容と問われていることは東大の現代文の過去問と変わらないレベルの記述問題が出題されます。主人公の心情が一切課題分に明示されておらず(小説というのは、往々にして、直接的に主人公の心情は明示しないですし、「○○は嬉しかった」という風に書くと幼稚な小説となってしまうので、小説の書き方として、そもそもが、そうなってしまうといえばそうなってしまうのですが)、前後の文脈や課題分の流れから、合理的に推察される主人公の心情を推察し、それを自分の言葉で説明しなければならないような問題がよく出ます。

このように見てみると、どうして中学受験に、3年間もかかるのか理解して頂けたかと思います。大学受験で早慶を目指す高校生でも受験勉強は早い生徒でも高校2年生、遅ければ高校3年生から始めるものです。大学受験でさえ1年くらいで終わるのに、何故中学受験では3年もかかるのか、これで理解できたのではないでしょうか。

02 4年の2学期や5年生からでは手遅れ?

さて、そういう話になると、4年生の2学期や5年生からの中学受験をスタートするというのは、遅すぎるのでしょうか?いえ、それは決して遅すぎるとは言えません。中学受験への道は子供の基礎学力や意欲次第で、短期間でもしっかりと対応できるチャンスが十分にあります。実際、長すぎる準備期間が逆に子供のモチベーションを奪ってしまうこともあり得るのです。小5までは大手進学塾などで一日3時間の授業を週に3~4日受けて算数も得意で偏差値65オーバーだったような生徒が、小6になって燃え尽きてしまうということも少なくありません。大人でさえ、大学受験ときはしんどいという思い出はあったかと思います。それを小3から続けていると、さすがにつらくなってくるというのは自然な人間の心理ではないでしょうか。最悪の場合、勉強がそもそも嫌いになったり、不登校になったりすることもあります。

そういう意味もあり、5年生、あるいはそれより後からでもチャレンジできる学習コースを提供する進学塾も決して少なくありません。言い換えれば、勉強を始めるタイミングは、「早ければ早いほどよい」という訳ではなく、「遅ければダメ」ということでもありません。その根本には、中学受験準備の開始タイミングが、子供の性格や個性、そして独自の学習スタイルに大きく影響されるという事実があります。

そして、それ以上に大きな理由が、中学受験というのは、御三家や新御三家などの最難関中学校や難関中学校を初めとした名門校や有名校、ブランド校に進学することだけに意義があるわけではないということです。中学受験への道、そしてゴールは、一様ではなく、それぞれの子供にとって最適なスタートラインやゴール(目標)が存在するのです。そのスタートラインやゴール(目標、志望校)を見つけ出し、一緒に歩みを進めることこそが、子供たちの成功への鍵となります。このことについては、「04 中学受験のメリットについて改めてよく考えてみる」において詳述します。

03 高学年の子どもは暇を持て余してしまうこともある

また、高学年で放課後や夏休みを持て余すお子様が多いことも忘れてはなりません。小学校高学年になってくると、お子様を取り巻く環境も変わります。たとえば、ある小6の男の子の話ですが、夏休みは友達がみな塾などの夏期講習に行っているため、遊び相手がいない。習っているサッカーも、外が暑いのでお休み。夏休み中ずっと暇を持て余し、クーラの効いた部屋でYouTubeを観ているかゲームをするだけしかない、ということが起きたりします。こうした状況になって、初めて「これなら、塾に行かせてあげれば良かった」と後悔する親御さんも少なくありません。

中学校受験というと、冒頭に述べたように、確かに小3や小4から、一回3時間の授業を週に四回程度受けるような猛勉強ばかりがイメージされるかもしれません。さらに、先ほどお話ししましたように、決して小5から受験勉強を始めても遅すぎるということもありません。もちろん、小5や小6から、難関校や有名私立中学校に進学するというのは少々厳しい道でしょう。小3から、猛勉強しているライバルたちに追いつき追い越すのは至難の業と言わざるを得ません。では、小5や小6からの中学校受験ではどうやっていけばよいのでしょうか。そのことを考えるために、そもそも何のために中学受験をするのか基本に立ち返ってみましょう。

04 中学受験のメリットについて改めてよく考えてみる

中学校受験をするメリットとは何なのでしょうか。確かに、首都圏では1/5の生徒が中学受験をしております。東京都に限れば、1/3の生徒が中学校受験をする時代です。そうすると、どうしても「知り合いの○○さんのお宅のお子さんも中学校受験するらしい」と、よそがやっているから、「それならうちも中学校受験させてみるか」とお考えになる保護者の方も少なくないと思います。しかし、何のために中学受験をするのか。そして、中学受験をするメリットとは何か、今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

そもそも、なぜ中学校受験して、私立の中学校、とりわけ、中高一貫校に進学すると良いのでしょうか。それは、以下のような理由が考えられると思います。公立中学校の実情をベースにその違いを対比させて見てみましょう。

公立中学 私立中学(中高一貫校)
高校受験のために、中3で部活を辞めたり、中断しなければならない 高校受験がない分、中学時代を部活動や課外活動など幅広くゆったり過ごせる
学費がかからない 小まめな確認テストや補習授業など面倒見が良い
人員不足で、教員のオーバーワークが問題になっている 教員の層が厚く、指導余力がある
中学/高校でカリキュラムが違いまた、教員も変わり、学習環境も変わる 進度が速く、カリキュラムも、中学/高校で分断されたり、重複が生じず、中高6年間かけて大学受験に専念できる
同じ小学校から進学する子が多い 部活の種類が豊富で、高校生との交流がある
良い意味で雑多な環境、多様な生徒とふれ、社会を知ることができる 自分と学力レベルの合う子が集まる
生徒の学力にバラツキがあり、学校の授業が生徒一人ひとりのレベルにマッチしづらい内容になる 生徒の学力が同じ程度なので、集団授業が行いやすく、落ちこぼれなども発生しづらい

上の図は別に公立中学校を悪くいう意味で書いていません。一言で言えば、私立中学校が、良い意味でも悪い意味でも、護送船団方式とまでは言わずとも、同じような学力、同じような習熟度の生徒と共に切磋琢磨していくイメージであるのに対して、公立中学校は、宇宙人のような秀才もいれば、問題行動ばかりを起こす、いわゆる昔で言うところの不良などもいるような多種多様な環境で、逞しく鍛えられていくというイメージでしょうか。こういうと、公立中学校も「いい意味で鍛えられて社会性が養われそうだ」と思う方もいらっしゃるでしょうし、その通りだと思います。しかし、公立中学校の三つの大きな弱点だけ、最後に触れておくと、

  1. 中学/高校でカリキュラムが分断したり、重複しており、理解が止まったり、混乱が生じる
  2. 負のピア・エフェクト*(あまり素行の良くない友人から受ける影響が悪い意味で働くリスク)がある
  3. 学力が違う生徒同士のため、教育効果が低くなる(正のピア・エフェクトは学力が近い者同士で互いに切磋琢磨し、学力向上すると研究報告されています)

このように考えれば、中学受験のメリット、私立の中高一貫校へ行くメリットというのは、学習カリキュラムが中高6年間で連続しており、理解が深まりやすいことや、問題児からの悪い影響を受けるリスクが低いこと、そして、何よりもお子様と近しい学力の生徒同士で互いに学力を高め合うことができるということにあるとわかると思います。つまり、むやみに無理をして、御三家や新御三家を初めとした超難関中学やそれに準ずる難関中学へ進学することに意味があるのではないのではないか、ということです。

*ピアエフェクト(Peer Effect)は、個人の行動や意思決定において他の人々の影響を受ける現象を指します。特に、同じ社会集団やコミュニティ内の仲間や同輩からの影響が強い場合に用いられます。ピアエフェクトは、人々が他者の行動や意見を参考にし、それに合わせて自分の行動や意思決定を変えることによって生じます。この現象は、人間が社会的な生物であることや、他の人々との相互作用が意思決定に影響を与えることを反映しています。例えば、学生がクラスメートが勉強している姿を見て、自分も勉強に取り組むようになる場合があります。また、若者が特定の流行やトレンドに影響を受けて、それに合わせたファッションや行動をとることもピアエフェクトの一例です。ピアエフェクトは、ポジティブな影響だけでなく、ネガティブな影響も与えることがあります。例えば、問題行動をするグループの一員になることで、個人も同様の問題行動に加担する場合があります。また、社会的な圧力や群集心理によって、個人の判断や価値観が歪められることもあります。

05 中学受験に成功するということはどういうことなのか?

確かに、せっかく大変な勉強をして受験をするのだから、いわゆる「レベルの高い学校」に入らなければ意味が無いのでは無いか、と考える人もいらっしゃるでしょう。しかし、大切なことはお子様の学力を無理矢理背伸びして上げることではなく、お子様の学力と近しい生徒たちと一緒に学習し切磋琢磨する環境を用意してあげることにあったはずです。実際、教育経済学の研究では、たとえば一人だけ優秀な生徒が同じクラスにいたりすると、クラス全体の成績が上がるのではなく、下がってしまうという現象が報告されています。わかりやすく言うと、クラスに一人、あるいは数人だけ学力がとても高い生徒などがいると、他の生徒は「生まれつき勉強ができる奴は違うな」だとか「俺(私)は、あんな風に勉強ができることはない」と諦めさせてしまったり、勉強をやろうとする意欲を失わせてしまうのです。学力向上という意味でのピアエフェクトが働くのは、あくまでも同程度の学力を持った生徒同士の間と研究の結果分かっています。

また、既に述べたとおり、こうした同級生の影響(ピアエフェクト)は優等生よりも問題児からの影響の方が大きく働くと言われています。別に問題行動を起こしたり、素行不良と呼ばれるような生徒一般が悪いとか、否定するという話ではなく、そうした生徒は周囲に大きな影響を与えがちで、とりわけ学習に対する負の影響を与えるということです。もちろん、お子様と異なった多様な個性に触れあうことは、学力には推し量れない社交性やコミュニケーション能力を鍛えてくれる可能性はあるでしょう。

しかし、こと学業に関しては、良いことは一つもありません。もちろん、多様な生き方や人生、価値観があるのは大切なことですが、それは大学へ進学したり、遅くとも社会に出てから学べることです。大学で学問を学んだり、社会に出て生きていくための基礎学力を形成するタイミングは、小学校や中学校、高校ぐらいしかありません。その意味で、中学校や高校でお子様には健やかに学業や部活動、課外活動などに励める環境を提供して上げたいと思うのが親心ではないでしょうか。

そして、このように考えたとき、中学や高校時代に必要なのは、その学校の偏差値や知名度ではなく、校風や教育理念、そして校友たちがどういう生徒で、お子様やご家庭と合うかどうかということであるということです。そして、そうした校風や教育理念の元、大学への進学実績がどうなっているのかということや、現実的には通うのに通いやすいかということも大切です。

また、いくら校風や教育理念がよくても、大学の進学実績が低いところに進学させるのは、善悪や是非にかかわらず、日本の学歴社会の中では、許容しがたい思いがあるでしょう。学歴というのは、小学校や中学、高校ではなく、通常最終学歴として考えられる大学で判断されてしまうからです。

ここで少し話が横にそれてしまいますが、筆者は、現在の複数の事業を経営しておりますが、起業する前は、もともとさまざまな企業でCFOという立場で仕事をしておりました。CFOというのは、難しくいうと最高財務責任者と訳されますが、簡単に言うと管理部門の責任者ということです。なので、経理や財務が専門であるものの、人事や総務、情報システム部なども統括することが多くありました。そこで、学歴社会を一番実感したのは人事の仕事の際です。たとえば、最近流行のビズリーチという採用ツールがあります。私もよく使っていました。しかし、「いい人材を探そう」ととにかく、何千、何万と登録されている転職志望者の経歴をいちいち見ることもできませんし、企業へ応募してきた人のレジメを全部見ることは、時間的にも労力的にも不可能と言っても過言はありません。

こうした時にどうするかというと、筆者は、決して学歴差別主義者ではないですし、学歴偏重の採用をしたいと考えているわけではないのですが、膨大な応募者のレジメを見る事もできないので、大変残念なことですが、見るべきレジメを減らすために、応募者を何らかの基準で絞り込むしか在りません。そこで一番、手っ取り早い絞り込みの基準としてやむなく使ってしまうのが、「学歴フィルター」というものです。たとえば、「東大・京大・一橋・東工大、早慶上、GMARCH」出身である候補者を絞り込むわけです。後は、その候補者の職歴で今企業として欲しいスキル(公認会計士資格所有者や税理士資格所有者、あるいは簿記1級取得者や英検1級取得者など)で絞り込みます。そうすると、1000名や2000名の候補者が大体、10~20名くらいまでに絞り込めるものでした。10~20名くらいのレジメを見るのはもちろん楽ですよね。新卒の採用でも同じです。志望者全員にSPIなどの採用試験を課したりするにしても、会場を確保するのにも採点を外部の委託業者に依頼するにもかなりのコストがかかってしまいます。なので、書類審査の段階で、先ほどと同じように「東大・京大・一橋・東工大、早慶上、GMARCH」などで書類審査で絞り込まざるを得ないのです。

このように、現実社会で、やはり企業の採用・転職の場面ではよほどインパクトのあるキャリアや資格(弁護士資格、公認会計士やUS CPA資格などの難関資格所持者)でもない限り、「学歴フィルター」で完全にふるい落とされてしまうのは、学歴差別をしたいというわけではなく、実務上やむを得ない面もあるのです。

「それなら、やっぱり難関中学校や名門校を受験しなければならないじゃないか」というご指摘があるかもしれませんが、決して、難関校や名門校ばかりが大学受験に強いわけはありません。たとえば、穎明館中学高等学校(東京都、44~48、偏差値は四谷大塚の数字による)では、早慶上理で55名合格GMARCHで171名合格(2023年)、武蔵野大学付属中学高等学校では(東京都、40~43)早慶上理17名合格GMARCHで45名合格(2023年)、聖徳学園中学高等学校(東京都、40)では、早慶上理30名合格、GMARCH99人名合格、晃華学園高等学校(東京都、50~56)では、早慶上理80名、GMARCH104名合格しています。

いわば、中堅校(偏差値46~54)より少し下からいわゆる中堅校までの学校ばかりですが、都立高と比較すれば、近隣の偏差値60の小平高等学校で早慶上理8名合格、GMARCH53名合格、小平南高等学校(東京都、偏差値58)で、早慶上で5名合格、GMARCHで74名合格、と比べれば、偏差値60前後の都立高より中高一貫の私立校の方が、上回っています。早慶上理などに限って言えば、5~16倍(16倍ってすごいですよね)です。武蔵野北高等学校(東京都、偏差値67)の近隣の進学指導重点校である名門都立高校ですら、早慶上なら62名合格のみと、前述した中堅校以下の中高一貫校と同程度か、時には負けています。つまり、偏差値60レベルの都立高校より圧倒的に中高一貫校の中学受験で合格した生徒たちの方が、大学受験で勝っているのです。

また、現実的に通いやすくない学校は、身体的負担だけではなく、精神的にも負担が高くなってしまいます。大人でも同じです。社会学の研究で、通勤時間と幸福度の研究で、スイスの研究者アロイス・スタッツァーとブルーノ・フライによれば、通勤時間が20分は問題ないが、30分をすぎると不満が募ってくると報告しており、さらに「通勤に1時間を要する人の場合、職場に歩いて通える人と同程度の満足度を得るためには、その人よりも40%多くお金を稼がなければならない」と述べています。長時間通勤は、それ自体がストレスや健康度低下の源泉となり、あるいは主観的幸福度を低下させることが指摘されているのです。

特に、中学校に入ると科目も増え、教科書やワークなどの教材も多くなります。そして、さらに高校ではその倍くらいに科目数は増えるわけです。正直、まだ成熟していないお子様にとって、重い教科書や教材を抱えての通学は、身体的にも精神的にもかなりの負担となってしまいます。

このように考えると、良い学校というのは、偏差値が高い学校や知名度の高い学校ではなく、校風や教育理念がお子様やご家庭に合っていることや生徒や学校の雰囲気が良く、学力がお子様と近いしこと、そして、教員の質や面倒見が良く、大学進学実績が高いことや家から近く通いやすいことが、本当に大事な条件になってくるといえるのではないでしょうか。

もちろん、この条件というのもお子様やご家庭によって千差万別でしょう。なので、しっかりと進学先の学校を調べ、そして、偏差値やネームバリューなどの見かけだけで判断するのではなく、実際に通学して良いイメージを持てるのかどうかを、より具体的、現実的に考えて志望校を選ぶことが大切であり、そうした志望校に合格し、進学することが中学校受験での成功といえるのではないでしょうか。これは少しキャッチーに言い換えると中学受験というのは、超難関校や難関校、名門校などブランド争奪戦に参加することが成功なのではなく、お子様にとってあまり無理のない範囲で合格でき、行って損はない学校を探すプロジェクトということも可能でしょう。

05 中学受験へのカギは「知識」だけじゃない!お子様の成長を育む、新たな学びの舞台へ

中学受験の準備について、「何を学ぶべきか」という疑問は誰しもが抱くでしょう。現代の中学受験では、「知識」も当然大事ですが、それ以上に「思考力」、「判断力」、「表現力」がより一層重視されています。もちろん、漢字の使い方、方程式の解き方、歴史の事実など基礎知識の習得は欠かせません。しかし、その一歩を踏み出すためには、これらの知識をただ覚えるだけではなく、状況に応じて自在に使いこなす技術が求められます。

それはまるで、知識を道具とし、自身の手足として使いこなす能力と言えるでしょう。頭の中に並べられた知識を単に暗記するだけではなく、それを自由に使いこなし、適切な解答へと導く力が重要なのです。そのためには、「順序立てて考える力」、「最適な手段を選択する判断力」、「他人にも理解できる表現力」を磨くことが大切です。

たとえば、渋谷教育学園渋谷教育学校では、このような問題が出ています。まず、問題のイメージを考えてもらいたいので、日能研さんからイラストを引用しています。その後、テキストで問題文を再度紹介しています。

渋谷教育学園渋谷中学算数2018 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

(日能研より引用)

ーーー

渋男君は、算数のテストでクラスの上位半分に入ったら、ごほうびをもらう約束をお母さんとしました。テストが終わり返却されたところ、渋男君はクラスの平均点よりも低い点数でした。
それを見たお母さんは「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていないわね。」と言いました。

【問題】

「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていない。」とは限りません。
その理由を、お母さんが納得するように説明しなさい。

ーーー

「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていない。」とは限らない理由を述べよ。ポイントは、「絶対に入っていない」というお母さんの主張の根幹の部分を崩せばいいので、言い換えると、「平均点よりも下だけど、上位半分に入っている例をあげて、説明しなさい。」となります。いわゆる反例を挙げなさいと言う問題ですね。日能研の解説ページにも記載がありますが、反例をあげるときは、極端な数で考えると分かりやすいです。条件は2つあります。一つは、「平均的よりも下」でありつつ、「順位は上位半分」です。この二つの条件を満たすような事例を考えれば良いわけですね。

まず、自分が一位であると確実に平均点より上になってしまうので、1位にはできません。しかし、2位であることは可能です。しかし、2位なのに平均点より下ということは1位と2位の間の点数に大きな開きがなければなりませんね。また、できるだけ平均点を上げてもらうために、1位の人には高い点数を取ってもらわなくてはいけません。その上で、クラスの人数を仮に10人だったとしましょう。

具体的な例として言えば、極端な例になりますが、1位の境くん(武蔵境から取っています、笑)が、100点だったとします。そして、2位の渋男くんが10点で、他の8人の生徒が、それぞれ5点が3名、2点が5名が点であったとします。すると、平均点は{100+10+(5×3+2×5)}÷10=13.5点ということになります。すると、大変残念なことに渋男くんは上位半分のグループに入っているどころか、クラスで2位の点数を取ってにいますが、平均点より下になってしまいましたね。上位半分に入っているところか、2位ですよ(笑。つまり、あとは上記の具体例に加え、「このように極端に高い点数がいて、その他が低い点数の場合、平均点よりも下だけど上位半分に入ることもある」と一言添えてあげましょう。

ちなみに、他の記事で紹介した偏差値の求め方を使って計算すると、1位の境くんが偏差値79くらいで、2位の渋男くんは偏差値49くらいです。中学生に入って習う中央値を挙げると3.5点で、最頻値は2点です。偏差値の計算以降は余談ですので、これは答える必要はありません。、

このように、算数の力というのは、単に計算するというだけに限らず、論理的に物事を見極め、論理的に相手に自分の主張をする際にも用いられる(ビジネスのシーンでは必須ですね)もので、このような能力も現在の中学校受験では求めているわけですね。そして、このような能力を育むためには、周囲からの日々のサポートが欠かせません。例えば、小学3年生までのお子様と一緒にショッピングをしたり、映画を観たり、さまざまな本を読んだりすることで、お子様の思考力を育むための多様な刺激を与えることができます。数学者ガウスは、お父さんがレンガ職人の親方でしたが、給料を払うときに計算を間違ってしまっていたのを、3歳のガウスが指摘して直させたという逸話が残っています。ガウスの例は極端にしても、こうした様々な場面でのふれあいは考える力を養います。自然との触れ合いは理科の勉強を、読書や映画の体験は国語や社会科の勉強に生きるのです。それぞれが子供の思考の種になり、知識を結びつけ、理解を深めるのです。

そういう意味でも、あまりにも低学年から中学校受験の学習をすべきではなく、ある程度思考能力も高まってきた段階から中学校受験に取り組むのが良いともいえるわけですね。もちろん、具体的にいつが一番よいというのは個人差があると思いますが、決して小3からでなければ遅すぎるということはないわけです。

06 子どもの未来を開くキー:いつからどう学ぶ?

舞台は小学3年生までの日常生活。ここでの役割は、好奇心旺盛な探求者。そこには、問いを立て、発見を楽しむ思考力と表現力の種が蒔かれます。そして、4年生に差し掛かると、子どもたちはその種を中学受験という新たな土壌に移し、実践力へと育て上げる任務に挑みます。その道具は「反復」の魔法です。

さて、算数の問題に手こずったら?その答えは、まず、間違えた箇所を慎重に洗い出し、自分が何故間違えたのかを考察することが大切です。見直しの重要性ですね。間違えた問題こそ宝物です。間違えることを恐れるのではなく、果敢に間違えてその都度修正していくことで算数の力が養われるわけですね。逆によくないのは、たまたま当たっていて喜んでしまうことや、計算式や考え方は間違っているのに答えだけが当たっているという場合です。そうなると、間違った思考や解法が身につきかねません。きちんと正しい解法や正解を見直し、間違えてしまったその原因と対策を挙げてみるのです。これを何度も繰り返すことで、「できない」は確実に「できる」へと進化します。特に、算数や理科の計算問題が苦手なお子様にとって、この方法は一筋の光となります。中学受験への道のりは、地道な積み重ねの連続。基礎から着実に、そして忍耐強く学習と復習を重ねていくことで、どんな問題にも立ち向かえる力が育まれます。一歩一歩、確実に前へ進みましょう。

07 中学受験のための準備マニュアル

中学受験への挑戦をお子様と共に始める親として、何をすべきかという問いに答えるためのガイドラインをお伝えします。その最初の一歩は、お子様が自然と中学受験に向けた興味を持つよう導くこと。

念頭に置いておくべきは、「突然、無理強いせず、ソフトに導く」です。日々の会話やアクティビティに、そっと中学受験の話題や情報を織り交ぜましょう。過去問をゲーム感覚で解かせてみる、有名中学の学園祭に参加するなど、自然に興味を喚起する方法は数多くあります。

重要なのは、お子様が自発的に中学受験について考え、自然と勉強机に向かう環境を作り上げること。なぜ中学受験をするのか、その理由について真剣に話し合い、それが心からの意志であることを確認しましょう。もしまだ意志が固まっていなければ、その決意が生まれるまで待つことも大切です。

そして、お子様が中学受験を決心した時、その情熱を親が全力で支えることが求められます。志望校合格に必要な勉強量を把握し、それを無理なくこなすスケジュールを一緒に作成しましょう。これが親として、お子様の大きな一歩を支える道筋となるのです。

08 受験勉強のコツ:ミニマムゴールを設定し、肯定的なフィードバックを行う

受験勉強における成功の秘訣は、適切なゴール設定にあります。モチベーションを保つためには、「今度のテストで平均点を超える」など、小さな目標をいくつも設定しておくことが重要です。これらは小さな成功体験となり、自信となる糧となります。

また、子どもが目標を達成したときには、「これが特に良かったよ」と具体的なポイントを挙げて積極的に褒めることを忘れないでください。このようなポジティブなフィードバックはお子様の自尊心を養い、学びへの熱意を引き立てます。

そして、目標に到達できなかったときも冷静に接しましょう。決して厳しく叱責するのではなく、その原因を一緒に探り、改善策を考える時間を設けることが大切です。こうしたアプローチこそが、お子様の受験勉強への絶え間ない努力を促す秘訣です。

09 塾選びの秘訣:子どもと最適な塾を見つけるためのガイド

塾への入るタイミングはいつが最適なのでしょう?一般的には、小学3年の冬から4年生の初めが最適とされています。しかし、これは一概に全ての子どもに当てはまるわけではありません。

遊び盛りの3年生時期、子どもたちは友達との絆を深めることに心を向けています。このため、無理に塾に通わせても、それが成果につながるとは限りません。反対に、塾へ入るのが遅くても、子どものやる気と能力によっては十分にそのロスを補えるでしょう。

それでも、塾選びは決して雑に行ってはいけません。「進学塾」一つとっても、その品質は様々です。子どもとの相性や適切なサポートが得られるかどうか、以下の点に注意しながら選びましょう。

  1. 子どもが通学可能な距離にあるか
  2. 過去の進学実績はどうか
  3. 塾の教育方法やカリキュラムが子どもの性格にマッチしているか
  4. 通塾の頻度が子どもの負担にならないか
  5. スタッフや教師の態度が子どもに適しているか

特に、通学距離やカリキュラムには特別な注意が必要です。たとえ実績のある大手塾でも、子どもが通いづらかったり、指導が厳しすぎたりすると、継続するのが難しくなります。また、態度の悪い教師は子どものストレスになりうるので、その点も確認しておきましょう。

10 中学受験の戦略:適切な時期から始める準備の重要性

中学受験は一朝一夕で成果が現れるものではなく、長期戦と覚悟した上での、完璧な準備が不可欠です。ただし、親が一方的に熱を上げ、子どもを無理に受験させるのは得策ではありません。そうではなく、子ども自身が前向きに取り組める環境作りが重要です。

できるならば、小学校低学年から穏やかに準備を進めていきましょう。それが子ども自身が自然と挑戦する力を身につけ、中学受験に対する興味と意欲を喚起する最善の道となります。

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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ryomiyagawa
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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