推薦書・調査書の言葉は何を測っているか——推薦状の予測力は弱く、属性の偏りは強い

先生が書く言葉は、受験生の何を測っているのか

総合型選抜や学校推薦型選抜では、本人が書く書類とは別に、高校が作成する調査書や、先生が書く推薦書が提出されます。受験生本人は中身を見られないことが多く、「先生にどう書いてもらえるか」は運任せのように感じられるかもしれません。

この記事で考えたいのは、先生が書く言葉に、入学後の成果を予測する力がどれだけあるのか、そしてその言葉には、本人の力以外の何が混ざっているのかです。推薦状(letters of recommendation)の研究は、主に米国の大学・大学院入試と採用の分野で蓄積されています。日本の調査書・推薦書とは形式が違うため、当てはめ方にはこの記事の後半で注意を払います。

一言でいうと(この記事の結論)
推薦状は入学後の成果と正の、しかし弱い相関しか持ちませんでした。ただし学位の取得については、他の指標に上乗せした情報を持っていました。一方で、推薦状の言葉には書かれる人の性別や学校の種類による系統的な違いが含まれます。そして、成績の記録(評定)が予測力を持つ理由は、自己調整の力を映しているからだという研究があります。

  1. 推薦状のメタ分析では、大学・大学院での成果との相関はおおむね正だが弱く学位取得については上乗せの情報がありました [1]
  2. 推薦状に書かれた特性を5つの分類で数えると、後の遂行を r = .32 と .38 で予測しました [2]
  3. 4万7,303人の分析で、高校成績は入試の得点より4年での卒業をよく予測し、その上乗せ分は自己調整で説明されました [11]
  4. 【反証】女性は推薦状でより「協調的」、より「主体的でない」と書かれ、協調的な記述は採用判断と負の関係でした [3]
  5. 【反証】60万件超の出願書類の分析で、私立高校の生徒ほど長い推薦状と人柄に関する記述を受け取っていました [8]
  6. 【反証】6万人の出願エッセイでは、内容と文体がSATの得点以上に世帯収入と相関しました [6]
  7. 標準化された推薦書式でも、推薦者(教授)の評価は、受け入れ後の指導者の評価より系統的に高く出ました [9]
マインドマップ図解:推薦書・調査書の言葉は何を測っているか——推薦状の予測力は弱く、属性の偏りは強い
図:この記事の構造(Mapifyで作成したマインドマップ)

1. 「数字の部分」と「言葉の部分」を分ける

高校から大学へ送られる情報は、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。

部分 中身 この記事で参照する研究
数字の部分 評定平均などの成績の記録 高校成績の予測妥当性 [11]
言葉の部分 人物・活動についての所見、推薦理由 推薦状の予測妥当性と言語分析 [1] [3] [8]

この2つは、予測する力も、混ざる偏りも違います。評定そのものの仕組みと上げ方は当サイトの評定平均の仕組みと上げ方——どこに手を入れると動くかで扱ったので、この記事では「その数字が何を映しているか」と「言葉の部分が何を映しているか」に絞ります。

一言でいうと
調査書を一つの塊として見ると議論が混乱します。成績の記録と先生の所見は、別々の測定として検討する必要があります。

2. 数字の部分——評定が映しているのは「自己調整」

Galla らは、なぜ高校成績のほうが入試の得点より大学卒業をよく予測するのかを問いました [11]

  • 研究1:2009/2010年度に大学へ出願した全国標本4万7,303人で、高校成績は入試の得点を上回って4年での卒業を予測した
  • 研究2:2013年卒の高校3年生1,622人で、高校成績の上乗せの予測力は自己調整の合成指標で説明され、入試得点の上乗せの予測力は認知能力の合成指標で説明された

つまり、評定という数字には、テストの点だけでなく、提出物・締切・日々の準備を積み重ねる力が含まれている、というのが著者らの解釈です。調査書の「数字の部分」が総合型選抜でも重視される理由の一つは、ここにあると考えられます。

3. 言葉の部分——推薦状の予測力は弱い

Kuncel、Kochevar、Ones は、大学と大学院(医学部以外)の入試での推薦状について、GPA、学業成果、遂行の評価、学位取得、研究の生産性との関係を統合しました。医学部の学生については、GPAと実習の評価との関係も検討しています [1]

結論は2つです。現在の形の推薦状は、中等後教育での成果の多くの側面と、おおむね正だが弱く相関する。しかし、推薦状は学位取得——難しく、動機づけに大きく左右される成果——について、上乗せの情報を提供しているようだ、というものです。論文の副題が「希望の理由」とされているのは、この後者の結果のためです。

推薦状の読み方を変えれば予測力が上がる、という研究もあります。Aamodt らは、推薦状に書かれた特性を識別し、5つのカテゴリーに振り分けて得点化する方法を、心理学の講師と大学院生の遂行の予測に使いました [2]。特性は5つのカテゴリーに信頼性をもって分類でき、後の遂行を r = .32 と .38 で予測しました。論文は、推薦状の予測力が低い理由の一つとして、書き手と読み手の特徴が内容の客観的な分析を妨げることを挙げています。

一言でいうと
推薦状を印象で読むと、予測力は弱い。書かれた特性を決まった枠組みで数えると、予測力は上がりうる。そして、推薦状が特に情報を持っていたのは「最後までやり遂げるか」でした。

4. 【反証】言葉には、書かれる人の属性が混ざる

推薦状の弱い予測力よりも深刻なのは、言葉の選び方に系統的な偏りがあることです。

性別による言葉の違い

Madera らは、社会的役割理論にもとづく2つの研究で、大学教員の公募に提出された推薦状を分析しました [3]。研究1では、女性は男性より協調的(communal)で、主体的(agentic)でないと描写されていました。研究2では、協調的な特徴の記述は、推薦状にもとづく採用判断と負の関係にありました。

化学・生化学の教員公募で男性235人・女性42人に書かれた886通の推薦状をテキスト分析した研究では、男女の違いより共通点のほうが多かったものの、男性の候補者には「傑出した」ことを表す形容詞が有意に多く使われていました [4]。そうした語を多く含む推薦状は、能力を表す語も多く、努力(こつこつ型)を表す語は少なかったと報告されています。

1990年代半ばの米国の医学部で、教員公募の推薦状300通超を談話分析した研究では、女性の候補者への推薦状は、長さの極端さ、基本的な要素が欠けている割合、「疑念を生じさせる表現」の割合、地位を表す語の頻度で、男性への推薦状と系統的に異なっていました [5]

学校の種類と家庭の経済力による違い

大学教員の推薦状は受験とは距離がありますが、高校生に直結する研究もあります。Kim らは、米国の共通出願システムで提出された60万件超の出願書類と、高校のスクールカウンセラーが書いた推薦状を自然言語処理で分析しました [8]

  • 推薦状の長さと話題(人柄、スポーツ、知的な将来性など)に、ほぼすべての属性グループで見かけ上の顕著な差があった
  • その多くは既知の不平等を反映しており、たとえば私立高校の生徒ほど推薦状が長く、人柄に関する文が多かった
  • ただし、その差がどんな意味を持つかは、推薦状が額面どおり読まれるのか、同じ高校・同じカウンセラーの他の推薦状と比べて読まれるのかによる

著者らは、推薦状や標準テストの要件を残すべきか廃止すべきかについて、明確な推奨は導けないと述べ、構造的な機会の文脈の中で書類を読むことの重要性を指摘しています [8]

一言でいうと(反証のまとめ)
推薦状の言葉には、本人の力とは別に、性別の固定観念や、書き手が一人の生徒に割ける時間の差が混ざります。「推薦状は人柄を公平に伝える」とは言えません。

5. 書式を標準化すれば解決するのか

自由記述の偏りを減らすため、評価項目を決めた標準化推薦書式が作られてきました。

大学院候補者の認知的・非認知的な資質を捉えるために開発された7尺度の標準化推薦書式を、インターン選抜の場面で使った研究があります [9]。教授による評価(414人)と、選ばれた学生を受け入れた指導者による評価(51人)を多次元ラッシュモデルで分析したところ、内的一貫性と適合度は満足できる水準で、知識と分析力という2つの認知的尺度が、インターン選抜の最良の予測因子でした。一方で、教授の評価は指導者の評価より系統的に高かったのです。

米国の救急医学の研修医選抜で使われる標準化評価書について、妥当性の証拠をまとめたスコーピングレビューは、22本の関連論文を検討し、内容的妥当性の証拠はあるものの、内部構造・他の変数との関係・結果についての証拠が不足し、回答過程については妥当性に反する証拠があったと報告しています [10]。結論は、標準化評価書の妥当性を支持する公表された証拠は少ないというものでした。

もう一つの方向が、人工知能による読み取りです。Lira らは、課外活動や仕事の経験を書いた3,131件の出願エッセイについて、研究助手と入試担当者が7つの個人的資質の有無を判定し、そのデータで言語モデルを調整しました [7]。モデルは人間の判定を人口統計上の下位集団をまたいで再現し、全国標本30万9,594人で、コンピューターの得点は6年以内の卒業の予測に上乗せの妥当性を示しました。著者らは、人工知能で個人的資質を評価することの課題も論じています。

6. 【反証】本人が書く文章にも、同じ問題がある

推薦状の偏りを避けて本人の文章を重視すれば公平になる、とも言い切れません。

カリフォルニア大学に2016年11月に出願した6万人の24万件のエッセイを分析した研究は、トピックモデルで内容を、言語分析ソフトで文体を数量化し、自己申告の世帯収入とSATの得点との関係を調べました [6]エッセイの内容と文体は、SATの得点よりも世帯収入と強く相関し、エッセイはSATの得点の分散の多くを説明しました。著者らは、エッセイがSATと似た情報を含んでおり、数値でない書類の中に社会階層がどう埋め込まれているかに入試手続きは注意を払うべきだ、と述べています。

一言でいうと
先生の言葉にも、本人の言葉にも、家庭の背景が映ります。「言葉で評価する入試は、テストより背景の影響が小さい」という前提は、研究では支持されていません。

7. 日本の調査書・推薦書に当てはめるときの注意

ここで見た研究は、米国の大学・大学院入試と教員採用、医学の研修医選抜のものです。米国の推薦状は分量も書式も自由度が高く、書き手も高校の担任とは限りません。日本の調査書は様式が定められ、推薦書も大学ごとに書式が異なります。効果量や差の大きさを日本にそのまま移すことはできません。

それでも、方向として言えることはあります。①成績の記録は自己調整の力を映す [11]、②自由記述の言葉は予測力が弱く、書き手・読み手・書かれる人の属性の影響を受ける [1] [2] [3]、③書き手が生徒について知っている情報の量が、書かれる内容を左右しうる [8]

8. 実務——本人と家庭ができること

推薦書の中身を本人が決めることはできません。しかし、書き手が参照できる情報の量と質は、本人の準備で変えられます。

  1. 評定を支える日々の行動を優先する。評定の予測力は自己調整で説明されました [11]。提出物の期限、授業準備、小テストの復習を、週1回15分で点検します。
  2. 推薦を依頼する2か月前までに、活動記録を1枚にまとめて先生に渡す。「何を、いつ、どのくらい、自分はどんな役割で」を行動の言葉で書きます。書き手の持つ情報の差が推薦状の差になりうるためです [8]
  3. 記録には、努力だけでなく「判断と成果」も書く。推薦状では、傑出を表す語と努力を表す語の使われ方に差がありました [4]。先生が能力を具体的に書ける材料を用意します。
  4. 「協調性」だけで自分を説明しない。協調的な記述は採用判断と負の関係でした [3]。周囲と協力した場面でも、自分が主体的に決めたことを明記します。
  5. 先生への依頼は丁寧に、締切を明示して行う(依頼時に5分)。推薦書は先生の善意による追加の仕事です。
  6. 本人の書類も、家庭の背景に頼らない書き方にする。高価な経験より、身近な経験から何を考えたかを書くほうが、背景による差を小さくできる可能性があります(これは研究結果ではなく、エッセイと世帯収入の関連 [6] を踏まえた当塾の考えです)。

この記事で言えないこと

  • 日本の調査書の所見欄や推薦書が、入学後の成果をどの程度予測するかを示した研究は、今回確認できませんでした。
  • 日本の推薦書に、性別や学校の種類による言葉の偏りがあるかどうかは、この記事の研究からは分かりません。
  • 活動記録を先生に渡すことで推薦書の質や合否が変わるかを検証した研究は、確認できませんでした。

当塾の立場

塾に来なくても、家庭でできること

  • 提出物と締切を守る習慣を、週1回の点検で支える
  • 高校3年間の活動を、学期ごとに数行ずつ記録しておく
  • 推薦を依頼する前に、活動記録を1枚にまとめる
  • 本人の書類で「協調性」以外の言葉を使えているか、家族が読んで確かめる

それでも個別指導を使う理由

  1. 評定を支える自己調整を、学習の中で具体的に支えられるから。評定の予測力は自己調整で説明されました [11]。定期テストの計画と提出物の管理を、授業の中で一緒に点検します。
  2. 活動を「書き手が使える情報」に整えられるから。推薦状の差には、書き手の持つ情報の差が関わりうる [8]。本人への質問を重ねて、行動と判断を具体的な記録にします。
  3. 言葉の偏りを知った上で、本人の書類を点検できるから。性別や背景による言葉の偏りは研究で繰り返し示されています [3] [6]。自分を説明する言葉が一方に偏っていないかを、第三者として読みます。

塾を検討するときは、次のように聞いてみてください。

  • 評定を上げるための指導と、総合型選抜の書類指導を、どう結びつけていますか
  • 推薦書を依頼する際の準備について、どんな助言をしていますか
  • 書類の添削で、本人の言葉を書き換えすぎないためにどうしていますか

まとめ

  1. 推薦状と入学後の成果の相関は、正だが弱いものでした [1]
  2. ただし、学位取得については上乗せの情報がありました [1]
  3. 書かれた特性を枠組みで数えると、r = .32〜.38 の予測力がありました [2]
  4. 高校成績の予測力は、自己調整の力で説明されました [11]
  5. 【反証】推薦状の言葉には、性別による系統的な違いがありました [3] [4] [5]
  6. 【反証】高校カウンセラーの推薦状は、学校の種類などで長さと話題が違いました [8]
  7. 標準化した書式でも、推薦者の評価は高めに出て、妥当性の証拠は少数でした [9] [10]
  8. 【反証】本人のエッセイも、SAT以上に世帯収入と相関しました [6]

出典

  1. 【推薦状のメタ分析】Kuncel, Kochevar, & Ones (2014). A meta-analysis of letters of recommendation in college and graduate admissions: Reasons for hope. International Journal of Selection and Assessment. DOI: 10.1111/ijsa.12060
  2. 【特性分類による予測】Aamodt, Bryan, & Whitcomb (1993). Predicting performance with letters of recommendation. Public Personnel Management. DOI: 10.1177/009102609302200106
  3. 【反証・性別と協調的記述】Madera, Hebl, & Martin (2009). Gender and letters of recommendation for academia: Agentic and communal differences. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/a0016539
  4. 【反証・886通の言語比較】Schmader, Whitehead, & Wysocki (2007). A linguistic comparison of letters of recommendation for male and female chemistry and biochemistry job applicants. Sex Roles. DOI: 10.1007/s11199-007-9291-4
  5. 【反証・医学部教員の推薦状】Trix & Psenka (2003). Exploring the color of glass: Letters of recommendation for female and male medical faculty. Discourse & Society. DOI: 10.1177/0957926503014002277
  6. 【反証・エッセイと世帯収入】Alvero et al. (2021). Essay content and style are strongly related to household income and SAT scores: Evidence from 60,000 undergraduate applications. Science Advances. DOI: 10.1126/sciadv.abi9031
  7. 【AIによる個人的資質の評価】Lira et al. (2023). Using artificial intelligence to assess personal qualities in college admissions. Science Advances. DOI: 10.1126/sciadv.adg9405
  8. 【反証・高校カウンセラーの推薦状60万件】Kim et al. (2025). Letters of recommendation by high school counselors in selective college admissions: Differences by race and socioeconomic status in letter length and topics discussed. Research in Higher Education. DOI: 10.1007/s11162-025-09847-5
  9. 【標準化推薦書式】Liu, Minsky, Ling, & Kyllonen (2008). Using the standardized letters of recommendation in selection. Educational and Psychological Measurement. DOI: 10.1177/0013164408322031
  10. 【反証・標準化評価書の妥当性】Kukulski & Ahn (2021). Validity evidence for the emergency medicine standardized letter of evaluation. Journal of Graduate Medical Education. DOI: 10.4300/jgme-d-20-01110.1
  11. 【高校成績と自己調整・4万7千人】Galla et al. (2019). Why high school grades are better predictors of on-time college graduation than are admissions test scores. American Educational Research Journal. DOI: 10.3102/0002831219843292

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宮川 涼 Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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