口頭試問と面接の妥当性——構造化は効く、ただし入試面接が学業成績を予測する力はごく小さかった

大学院の面接・口頭試問は、何をどれだけ正確に測っているのか

大学院入試の多くで、筆記試験や書類の後に、面接や口頭試問があります。研究計画書について質問され、専門分野の知識を口頭で確かめられ、ときには志望の動機や入学後の計画を聞かれます。

受験する側からすると、面接は最も「読めない」試験です。同じ答えをしても、面接官によって反応が違う気がする。準備してきた質問は来ず、思いもよらない方向に話が進む。

その感覚には、根拠があります。選抜面接の研究は、人事心理学と医学教育で数十年分蓄積されており、「面接の点は誰が聞くかでどれだけ変わるか」「面接の点は入学後・入職後の成果を当てるか」が数値で分かっています。この記事では、その研究から、面接を受ける側が知っておくべきことを取り出します。

一言でいうと(この記事の結論)
質問と採点基準を揃えた「構造化面接」は、自由な面接より、面接官どうしの一致も、成果の予測力も高い [1] [3]
ただし——医療系の入試面接の統合では、面接の点が入学後の学業成績を予測する力は、ごく小さいものでした(効果量 0.06) [7]
——面接は「一発逆転の場」ではなく、「筆記や書類とは別の何かを、誤差込みで少しだけ測る場」として準備するのが、研究に即した構えです。

結論を先に7点書きます。

  1. 構造化面接は、自由な面接より妥当性が高かった [1]150の妥当性係数の統合では、およそ2倍でした [2]
  2. 妥当性の上限は、高度に構造化された面接で .67、構造化されていない面接で .34 と推定されました [3]
  3. 複数の面接官が同席するパネル面接の一致度は .74、別々に面接した場合は .44 でした [4]
  4. 補正方法を見直した2022年の再推定でも、構造化面接は選抜手法の最上位でした [5]
  5. 反証。医療系入試面接の学業成績への予測力は 0.06、臨床での成績へは 0.17 [7]
  6. 反証。大学の入試面接の実データでは、構造化面接のほうが信頼性が低かった例が複数あります [10] [11]
  7. 面接官の研修と構造化を導入すると、面接官間の一致は .49〜.51 から .66〜.71 に上がりました [12]
マインドマップ図解:口頭試問と面接の妥当性——構造化は効く、ただし入試面接が学業成績を予測する力はごく小さかった
図:この記事の構造(Mapifyで作成したマインドマップ)

1. 「構造化」とは何か——3つの要素

面接研究でいう「構造化」は、「堅苦しい面接」という意味ではありません。主に次の3つを揃えることを指します。

要素 内容 揃えないと起きること
質問の標準化 全員に同じ質問をする 受験者ごとに難しさが変わる
回答評価の標準化 何を答えたら何点か、基準を先に決める 面接官の好みで点が変わる
評定の統合の標準化 複数の評点を決まった式で合算する 話し合いの声の大きさで決まる

1995年のメタ分析は、111の面接官間信頼性係数と49のα係数を統合し、研究デザイン、面接官の訓練、そしてこの3つの構造の次元が、信頼性を左右していたと報告しました。特に複数の評点は、機械的に合算したときに有用で、主観的に統合した場合には有用だという証拠がなかったとしています [3]

一言でいうと
日本の大学院の面接が、どこまで構造化されているかは研究科によってまちまちです。
——受験者にできるのは、「構造化されていたら何を聞かれるか」と「構造化されていなかったら何が起きるか」の両方に備えることです。

2. 構造化面接は、成果をよく予測する

人事選抜の研究では、面接の妥当性がくり返し統合されてきました。

1988年のメタ分析は、世界中の公刊・未公刊研究から150の妥当性係数を集め、「面接は妥当でない」という従来の通説は誤りで、面接はおおむね良い選抜手段だと結論しました。そのうえで、構造化面接の平均妥当性係数は、構造化されていない面接の2倍でした [2]

1994年のメタ分析は、8万6,311人から得た245の係数を分析し、次のことを報告しています [1]

  • 面接の妥当性は、内容・実施方法・基準の性質によって変わる
  • 状況面接(「こういう場面ならどうするか」)は、職務関連の面接より妥当性が高く、職務関連の面接は心理的特性を探る面接より高かった
  • 構造化面接は、構造化されていない面接より妥当性が高かった
  • 職務遂行と訓練成績の予測力は同程度だったが、在職期間の予測力は低かった [1]

1995年のメタ分析 [3] は、信頼性の面から妥当性の上限を、高度に構造化された面接で .67、構造化されていない面接で .34 と推定しました。

2013年の信頼性のメタ分析(125の係数・3万2,428人)では、複数の面接官が同席するパネル面接の面接官間信頼性が .74 で、別々の面接官が別々に行う面接の .44 より大幅に高かった一方、別々に行う高度に構造化された面接の信頼性は、予想より低かったとされています [4]

そして2022年の研究は、過去のメタ分析が「範囲の制限」の補正をしすぎていたとして推定をやり直しました。多くの選抜手法の妥当性は .10〜.20 下方修正されましたが、構造化面接は選抜手法の最上位に浮上しました [5]

一言でいうと(支持する側の証拠)
「面接は当てにならない」は、構造化された面接については誤りです。
——特に「こういう場面ならどうするか」を問う状況面接は、予測力の高い形式でした [1]
院試で「入学後に予定通りデータが取れなかったらどうしますか」と聞かれたら、それはこの形式の質問です。

3. 【反証】大学の入試面接は、学業成績をほとんど予測しない

ここからは、2節の結論をそのまま院試に当てはめることへの反証です。2節の研究のほとんどは職業の選抜です。大学・大学院の入試面接では、結果が違います。

医療系の入試面接を扱った20研究のメタ分析は、次のように報告しました [7]

予測の対象 研究数 効果量(95%信頼区間) 解釈
入学後の学業成績 19 0.06(0.03〜0.08) ごく小さい
臨床での成績 10 0.17(0.11〜0.22) 控えめな正の予測力

医学部入試での人間の判断を扱った2018年のレビュー(14研究、うち6つは計292研究を統合したメタ分析)は、さらに厳しい見方を示しています [8]

  1. 従来型の面接の信頼性は低〜中程度(約 .42)で、これが妥当性を大きく制限している
  2. 100を超える研究から、面接の点は重要な成果と中程度に相関した(補正値で約 .29)
  3. 150を超える研究のメタ分析から、機械的・公式に基づく判定は、全体的・臨床的な判断(人間の総合判断)より良い結果を出した [8]

医学部の標準化された面接の信頼性を2年分のデータで調べた研究も、面接の点の信頼性は低〜中程度で、入試で使われる他の指標ほどの精度はないとし、面接を合否に大きな影響を持つ要素として使うことの公正さに疑問を呈しました [9]

一言でいうと(受験生にとっての意味)
入試面接の点は、誤差が大きく、入学後の学業との結びつきは弱い——これが医学教育研究の到達点です。
——だから、面接で手応えがなかったことを、自分の研究者としての適性の判定だと受け取らないでください。

4. 【反証】構造化すれば信頼性が上がる、とは限らない

「構造化は信頼性を上げる」という1節・2節の一般則にも、大学入試の現場から反例が出ています。

アイオワ大学の医学部入試の3,043件の面接と、2回面接を受けた168人を一般化可能性理論で分析した研究では、面接官間の信頼性でも再検査の信頼性でも、構造化されていない形式のほうが信頼性が高かったのです。ただし、2つの形式の点を組み合わせると、どちらか単独より信頼性が上がりました [10]

救急医学の研修医選抜で、同じ30人の候補者に構造化面接1つと従来型面接2つを課した研究でも、全体の信頼性は構造化面接が 0.43、従来型が 0.81 と 0.71でした [11]。原因は、構造化面接が複数の能力を別々に測ろうとしたため項目間の一貫性が下がったことで、従来型の2つの面接は、4つの領域を評価するよう求められても、一貫して単一の次元で評価していたと分析されています [11]

構造化面接の平均妥当性の高さを認める研究者自身も、構造化面接は主要な選抜手法の中で妥当性のばらつきが最も大きい(.42 ± .24)ことを問題にしています [6]

一言でいうと(「高い信頼性」の落とし穴)
従来型の面接の信頼性が高く見えるのは、面接官たちが「全体的な好印象」という1つの物差しで一貫して評価しているからかもしれません [11]
——一貫していることと、測るべきものを測っていることは、別です。

5. それでも、面接は改善できる

反証だけで終わらせないために、改善の証拠も見ます。

外科の研修プログラムで、面接官45人が3時間の構造化面接の研修を受け、全員に同じ行動ベースの質問と行動基準つき評定尺度を導入した研究では、面接官間の一致(ICC)が、導入前の 0.51(2016年)・0.49(2017年)から、導入後の 0.71(2018年)・0.66(2019年)に上がりましたただし2年目にはやや下がり、定期的な再研修が必要だと示唆されています [12]

医学部の入試で、個人の自由面接と半構造化されたパネル面接を比べた研究では、個人面接の面接官間信頼性が 0.12 だったのに対し、パネル間の信頼性は 0.52でした。パネル面接の点は、入試の学力指標とは相関せず、学力とは別のものを測っていたと報告されています [13]

医学部の入試面接の比較研究13件の系統的レビューは、複数の短い面接を回る MMI(multiple mini-interview)が信頼でき、偏りがなく、臨床と学業の成績を予測したとしつつ、質の高い研究は少なく、バイアスのリスクは高く、研究間の異質性は大きいと結論しています [14]

面接の有無で入学した学生を比べた別の系統的レビュー(8研究)では、構造化面接で入学した学生は、臨床試験と社会的能力の点が高く、学業試験の点は低かったと報告されています [15]

一言でいうと
面接は、学力試験と同じものを測る道具ではありません [13] [15]
——大学院の面接で見られているのは、専門知識の量そのものより、「研究という仕事の場面で、どう考え、どう対処するか」に近いものだと考えて準備するのが、この証拠と整合します。

6. 実務——面接・口頭試問に向けた4週間の手順

面接研究のほとんどは「選ぶ側」の研究です。以下は、それを受ける側の準備に翻訳したものです。

  1. 第1週:状況型の質問を10問つくる。予測力の高い形式は「こういう場面ならどうするか」でした [1]「予定の調査協力者が集まらなかったら」「先行研究と逆の結果が出たら」「指導教員と方針が合わなかったら」など、研究計画書に即した場面を書き出します。
  2. 第1週:各質問に、「判断」「理由」「代わりの手」の3点で答えを用意する。構造化面接では、回答評価の基準が先に決まっています [3]基準を知らなくても、判断と理由と代案がそろった回答は、どの基準でも減点されにくい形です。
  3. 第2週:口頭試問用に、専門用語を「30秒で定義し、1つ例を挙げる」練習を20語。筆記で書ける知識と、口頭で即答できる知識は別物です。
  4. 第3週:模擬面接を、少なくとも2人の別の相手と行う。別々の面接官の一致度は低めでした(.44)[4]1人の相手の反応だけで仕上がりを判断しないでください。
  5. 第3週:可能なら1回は、2〜3人が同席するパネル形式で行う。パネル形式は一致度が高く [4]複数の視点から同じ弱点を指摘されたら、それは本当の弱点です。
  6. 第4週:録音を聞き、「全体の印象」ではなく質問ごとに採点する。全体的な印象で評価すると、単一の物差しに引きずられます [11]質問ごとに「判断・理由・代案」がそろっていたかを確認します。
  7. 本番後:手応えを、適性の判定として受け取らない。入試面接の点の誤差は大きいのです [8] [9]

この記事で言えないこと

  • 日本の大学院入試の面接・口頭試問を対象にした妥当性研究は、この記事では確認できていません。引いた研究は、職業選抜と、主に北米の医療系入試です。
  • 日本の各研究科の面接が、どの程度構造化されているか、合否にどれだけ影響するかは、ここからは分かりません。
  • 構造化と信頼性の関係は、研究によって逆の結果が出ています [10] [11]。一般則として断定はできません。
  • 面接の練習が本番の評価を上げるかどうかを直接検証した研究は、この記事では扱っていません。6節の手順は、選ぶ側の研究からの推論です。

当塾の立場

まず、塾に来なくてもできることです。

  • 研究計画書に即した「状況型の質問」を10問書き出す
  • 「判断・理由・代案」の3点で答えを用意する
  • 専門用語を30秒で定義する練習をする
  • 模擬面接の相手を、1人ではなく2人以上にする
  • 録音を、質問ごとに採点する

それでも個別指導を使う理由を、この記事の研究に即して3つ挙げます。

  1. 「印象」ではなく「質問ごと」に採点する相手になれること。全体的な印象での評価は、単一の物差しに引きずられます [11]当塾の模擬面接では、質問ごとに回答の構成を記録し、どの質問で判断・理由・代案が欠けたかを返します。
  2. 読み手を増やせること。別々の面接官の一致度は低めでした [4]ご家族や友人とは別の視点で、研究計画の弱点を突く質問をする相手が1人増えることには、実質的な意味があります。
  3. 筆記と面接を別物として準備すること。面接は学力試験とは別のものを測っていました [13]知識の確認だけでなく、研究の場面での判断を問う質問を中心に練習します。

面接対策の指導を受ける先を選ぶときは、次のように聞いてみてください。

  • 模擬面接の評価は、全体の印象ですか、質問ごとですか
  • 研究計画書の内容に即した質問を、どう作りますか
  • 本番で想定外の質問が来たときの対処を、どう練習しますか

まとめ

  1. 構造化面接の妥当性は、自由な面接のおよそ2倍でした [2]。状況面接が特に高い妥当性でした [1]
  2. 妥当性の上限は構造化 .67、非構造化 .34 と推定されました [3]
  3. パネル面接の一致度 .74、別々の面接 .44 [4]
  4. 再推定でも構造化面接は最上位でしたが [5]、ばらつきは最大でした(.42 ± .24) [6]
  5. 反証。医療系入試面接の学業成績への予測力は 0.06 [7]信頼性は約 .42 [8]
  6. 反証。入試の実データで、構造化面接のほうが信頼性が低い例がありました [10] [11]
  7. 研修と構造化で、面接官間の一致は上がりました [12]
  8. そして——面接は筆記の代わりではなく、別の何かを誤差込みで測る場です。準備は「判断・理由・代案」を、複数の相手の前で質問ごとに磨くことです。

出典

本文中の番号に対応します。抄録に直接あたって確認したものだけを挙げています。結論に反する研究も、同じ基準で載せています。

  1. 【面接の妥当性メタ分析・8万6,311人】McDaniel, M. A. et al. (1994). The validity of employment interviews: A comprehensive review and meta-analysis. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/0021-9010.79.4.599
  2. 【構造化は2倍・150係数】Wiesner, W. H. & Cronshaw, S. F. (1988). A meta-analytic investigation of the impact of interview format and degree of structure on the validity of the employment interview. Journal of Occupational Psychology. DOI: 10.1111/j.2044-8325.1988.tb00467.x
  3. 【面接の信頼性メタ分析・構造の3次元】Conway, J. M., Jako, R. A. & Goodman, D. F. (1995). A meta-analysis of interrater and internal consistency reliability of selection interviews. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/0021-9010.80.5.565
  4. 【パネル面接と個別面接の信頼性】Huffcutt, A. I., Culbertson, S. S. & Weyhrauch, W. S. (2013). Employment Interview Reliability: New meta-analytic estimates by structure and format. International Journal of Selection and Assessment. DOI: 10.1111/ijsa.12036
  5. 【妥当性の再推定・構造化面接が最上位】Sackett, P. R. et al. (2022). Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection: Addressing systematic overcorrection for restriction of range. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/apl0000994
  6. 【反証・構造化面接の妥当性のばらつき】Huffcutt, A. I. & Murphy, S. A. (2023). Structured interviews: moving beyond mean validity… Industrial and Organizational Psychology. DOI: 10.1017/iop.2023.42
  7. 【反証・入試面接の予測力メタ分析】Goho, J. & Blackman, A. (2006). The effectiveness of academic admission interviews: an exploratory meta-analysis. Medical Teacher. DOI: 10.1080/01421590600603418
  8. 【反証・入試での人間の判断のレビュー】Kreiter, C. et al. (2018). A meta-analytic perspective on the valid use of subjective human judgement to make medical school admission decisions. Medical Education Online. DOI: 10.1080/10872981.2018.1522225
  9. 【反証・医学部面接の信頼性】Kreiter, C. D. et al. (2004). Investigating the Reliability of the Medical School Admissions Interview. Advances in Health Sciences Education. DOI: 10.1023/b:ahse.0000027464.22411.0f
  10. 【反証・非構造化のほうが信頼性が高かった】Axelson, R. et al. (2010). Medical School Preadmission Interviews: Are Structured Interviews More Reliable Than Unstructured Interviews? Teaching and Learning in Medicine. DOI: 10.1080/10401334.2010.511978
  11. 【反証・研修医選抜での比較】Blouin, D., Day, A. G. & Pavlov, A. (2011). Comparative Reliability of Structured Versus Unstructured Interviews in the Admission Process of a Residency Program. Journal of Graduate Medical Education. DOI: 10.4300/jgme-d-10-00248.1
  12. 【面接官研修と構造化の導入】Gardner, A. K., Costa, P. & Willis, R. E. (2022). Getting on the Same Page: The Impact of Interviewer Education and Structured Interviews on Interrater Agreement in Residency Interviews. Journal of Surgical Education. DOI: 10.1016/j.jsurg.2022.05.013
  13. 【個人面接とパネル面接】Courneya, C.-A. et al. (2005). Medical student selection: choice of a semi-structured panel interview or an unstructured one-on-one interview. Medical Teacher. DOI: 10.1080/01421590500087340
  14. 【医学部面接の系統的レビュー・MMI】Lin, J. C. et al. (2022). Best practices for interviewing applicants for medical school admissions: a systematic review. Perspectives on Medical Education. DOI: 10.1007/s40037-022-00726-8
  15. 【面接の有無で入学した学生の比較】Lin, J. C., Shin, J. & Greenberg, P. B. (2024). The impact of the medical school admissions interview: a systematic review. Canadian Medical Education Journal. DOI: 10.36834/cmej.76138

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