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加法定理—公式の覚え方と2倍角・半角までの導き方|武蔵野個別指導塾

sin 75° は (√6 + √2) / 4。cos の符号を取り違えない確かめ方と、2倍角・半角を自分の手で作り直す道筋を、例題と図で持ち帰ってください。
| 左辺 | 右辺 |
|---|---|
| sin(α + β) | sin α cos β + cos α sin β |
| sin(α − β) | sin α cos β − cos α sin β |
| cos(α + β) | cos α cos β − sin α sin β |
| cos(α − β) | cos α cos β + sin α sin β |
| tan(α + β) | (tan α + tan β) / (1 − tan α tan β) |
| tan(α − β) | (tan α − tan β) / (1 + tan α tan β) |
α と β は角を表す文字で、度でもラジアンでも、どんな大きさの角でもかまいません。tan の式だけは、式に出てくる tan がすべて定義できるときに限ります。範囲は数学Ⅱの三角関数です。
よくあるのは、定期テスト前の放課後の図書室で手が止まる場面です。ワークの問題は cos 75° の値。75° を 45° + 30° に分けるところまでは進んだのに、右辺の真ん中の符号が + だったか − だったか、もう自信がありません。教科書は教室のロッカーの中で、閉館の時刻は近い。スマートフォンに「加法定理」と打ち込むのは、そんな瞬間です。式を受け取るだけでなく、次のテストでは検索せずに済むところまで、ここで手を動かしていってください。
公式の形と文字の意味
加法定理は、2 つの角を足した角や引いた角の sin・cos・tan を、もとの角の sin・cos・tan で書き直す公式です。sin(α + β) の括弧は、かけ算の括弧ではありません。「α + β という 1 つの角の sin」を指しています。
図1の左は半径 1 の円の 4 分の 1 です。x 軸から α = 30° 回り、さらに β = 45° 回った点 P は 75° の位置に来ます。P の高さが sin 75° で約 0.97、横の位置が cos 75° で約 0.26 です。図1の右の 2 本の棒は同じ目盛りで描いてあり、sin 30° と sin 45° を積んだ棒は約 1.21 まで伸びて、半径 1 の線を突き抜けます。円の上の点の高さが半径を超えることはないので、sin は括弧の中に配れません。加法定理は、この「配れない」ものを正しくほどくための式です。

右辺の形には決まりがあります。左辺の + と − を見ながら、次の 3 つを見比べてください。
- sin の式: 右辺は sin と cos が交互に混ざり、左辺の符号がそのまま右辺に出ます。
- cos の式: 右辺は cos どうし、sin どうしの組になり、左辺と逆の符号が出ます。
- tan の式: 分子の符号は左辺と同じ、分母の符号は左辺と逆です。
この加法定理から、角を 2 倍にした式と半分にした式が出てきます。θ はどんな角でもよく、2θ は θ の 2 倍の角、θ/2 は θ の半分の角です。どちらも数学Ⅱで使います。
| 名前 | 式 |
|---|---|
| 2倍角 sin | sin 2θ = 2 sin θ cos θ |
| 2倍角 cos | cos 2θ = cos²θ − sin²θ(= 1 − 2 sin²θ = 2 cos²θ − 1) |
| 2倍角 tan | tan 2θ = 2 tan θ / (1 − tan²θ) |
| 半角 sin | sin²(θ/2) = (1 − cos θ) / 2 |
| 半角 cos | cos²(θ/2) = (1 + cos θ) / 2 |
| 半角 tan | tan²(θ/2) = (1 − cos θ) / (1 + cos θ) |
cos 2θ だけ形が 3 つあります。sin だけの式にしたいときは 1 − 2 sin²θ、cos だけの式にしたいときは 2 cos²θ − 1 を選びます。半角の式は左辺が 2 乗の形で、これは根号を開くときに符号を自分で決めるという意味です。
なぜこの形になるのか
図2は、斜辺 1 の直角三角形を長方形に収めた図です。青い三角形は角 β と斜辺 1 を持つので、残りの 2 辺は cos β と sin β です。これを角 α だけ傾けて置き、まわりを長方形で囲みます。
緑の三角形は斜辺が cos β で角が α なので、縦の辺は sin α cos β、横の辺は cos α cos β です。赤い三角形は斜辺が sin β です。cos β の辺が横の線から α だけ傾いているので、それに直角な sin β の辺は縦の線から α だけ傾きます。したがって縦の辺は cos α sin β、横の辺は sin α sin β です。いちばん長い斜辺 1 は下の辺から α + β だけ傾いているので、その高さが左の辺の sin(α + β)、横幅が上の辺の左の部分 cos(α + β) です。

長方形の向かい合う辺は長さが等しい。公式はこれだけで出ます。
- 左の辺と右の辺: 右は緑と赤の縦の辺を足したものなので、sin(α + β) は sin α cos β + cos α sin β です。
- 下の辺と上の辺: 下は cos α cos β、上は cos(α + β) と sin α sin β を足したものです。cos(α + β) だけを取り出すと sin α sin β を引く形になり、ここに − が現れます。
cos の式の − は、暗記するだけの記号ではありません。上の辺に赤い三角形のぶんが乗っているので、その長さを引いて cos(α + β) を残している、という図の上の事実です。
図2は α と β が鋭角で、α + β が 90° より小さいときの絵です。どんな角でも成り立つことは、図3のように単位円上の 2 点の距離を 2 通りに書いて確かめます。

点 P(cos α, sin α) と点 Q(cos β, sin β) の距離の 2 乗を座標から計算します。sin²θ + cos²θ = 1 を 2 回使うと、2 − 2(cos α cos β + sin α sin β) になります。一方、円全体を -β だけ回転すると、Q は (1, 0) に、P は (cos(α − β), sin(α − β)) に移ります。回転で距離は変わらず、同じ計算で距離の 2 乗は 2 − 2 cos(α − β) です。2 つを等しいとおけば、cos(α − β) の式が出ます。この計算には角の制限が一切ありません。
残りの式は、この 1 本から順に作れます。
- β を -β に置き換えます。cos(-β) = cos β、sin(-β) = -sin β なので、cos(α + β) の式が出ます。
- sin(α + β) は cos(90° − (α + β)) と同じです。(90° − α) − β の cos と見て cos(α − β) の式を使い、cos(90° − α) = sin α と sin(90° − α) = cos α で書き直すと sin の式が出ます。
- tan(α + β) は sin(α + β) / cos(α + β) です。分子と分母を cos α cos β で割ると、tan だけの形になります。sin と tan の引く形は、足す形の β を -β に置き換えるだけです。
2倍角と半角は、図4の順に出てきます。加法定理の β を α にそろえ、文字を θ と書き直すのが 2倍角です。sin(θ + θ) は sin θ cos θ + cos θ sin θ で、同じ項が 2 つ並ぶので 2 sin θ cos θ です。cos(θ + θ) は cos²θ − sin²θ で、sin²θ + cos²θ = 1 を使って片方を消すと、残り 2 つの形になります。

半角は 2倍角の式を解き直すだけです。1 − 2 sin²θ の形を sin²θ について解くと (1 − cos 2θ) / 2 になります。2θ を θ に置き換えれば、sin²(θ/2) は (1 − cos θ) / 2 です。cos の半角は 2 cos²θ − 1 の形から同じ手順で出て、tan の半角はこの 2 つの比です。解き直した形は、次数を下げる式としてもよく使います。sin²θ を (1 − cos 2θ) / 2 に直せば、2 乗が消えて角だけが 2 倍になるからです。
例題で使い方を確かめる
例題1 75° の値
sin 75°、cos 75°、tan 75° の値を求めてください。
- 75° を 45° + 30° と分けます。値を覚えている角に分ければ、右辺がすべて計算できるからです。ラジアンで sin(5π/12) と書かれていたら、π/4 + π/6 と分けます。
- sin の式に入れます。右辺は sin 45° cos 30° + cos 45° sin 30° で、(√2 / 2)(√3 / 2) + (√2 / 2)(1 / 2) から (√6 + √2) / 4 です。√2 × √3 は √6 にまとまるので、根号のまま計算を進められます。
- cos の式に入れます。右辺は cos 45° cos 30° − sin 45° sin 30° で、(√6 − √2) / 4 です。sin 45° と cos 45° が等しいので、sin のときと同じ 2 つの数を引くだけで済みます。
- tan の式に入れます。tan 45° = 1、tan 30° = 1 / √3 なので (1 + 1 / √3) / (1 − 1 / √3) です。分数の中の分数を先に消すため、分子と分母に √3 をかけて (√3 + 1) / (√3 − 1) とし、分母を有理化して (√3 + 1)² / 2 から 2 + √3 を得ます。
- 確かめます。√6 を 2.449、√2 を 1.414 とすると (2.449 + 1.414) / 4 で約 0.97 になり、図1の P の高さと一致します。数値に直せば、符号の誤りをその場で見つけられるからです。
答え: sin 75° = (√6 + √2) / 4、cos 75° = (√6 − √2) / 4、tan 75° = 2 + √3
例題2 条件から足した角の値を出す
α は鋭角で sin α = 3/5、β は鈍角で cos β = -5/13 のとき、sin(α + β) と cos(α + β) の値を求めてください。
- cos α を求めます。cos²α = 1 − (3/5)² = 16/25 で、α は鋭角なので cos α = 4/5 です。加法定理の右辺には sin と cos が両方そろっている必要があるからです。
- sin β を求めます。sin²β = 1 − (5/13)² = 144/169 で、鈍角の sin は正なので sin β = 12/13 です。鈍角で負になるのは cos と tan だけで、ここで符号を誤ると最後まで響きます。
- sin の式に入れます。(3/5)(-5/13) + (4/5)(12/13) は -15/65 + 48/65 で 33/65 です。分母がはじめから 65 にそろうので、通分の手間はかかりません。
- cos の式に入れます。(4/5)(-5/13) − (3/5)(12/13) は -20/65 − 36/65 で -56/65 です。真ん中の − を先に書いてから数を入れると、符号の取り違えが減ります。
- 検算します。33² + 56² は 1089 + 3136 = 4225 で、これは 65² と等しいので sin² + cos² = 1 が成り立ちます。途中の計算を誤ると、たいていこの等式が崩れるからです。
答え: sin(α + β) = 33/65、cos(α + β) = -56/65
例題3 半角で 22.5° の値を出す
cos 22.5° の値を求めてください。
- 22.5° を 45° の半分と見ます。半角の公式は、値を知っている角の半分に使う式だからです。
- 公式の θ に 45° を入れます。cos²22.5° は (1 + cos 45°) / 2 で、(1 + √2 / 2) / 2 です。分数の中の分数を消すために分子と分母に 2 をかけて、(2 + √2) / 4 とします。
- 根号を開きます。22.5° は鋭角で cos は正なので、正の根号を取って √(2 + √2) / 2 です。半角の公式は 2 乗の式なので、符号はここで自分で決めます。
- 確かめます。√2 を 1.414 とすると √3.414 は約 1.848 で、2 で割って約 0.924 です。22.5° は 0° に近い角なので、cos が 1 に近い値になるのは筋が通っています。
答え: cos 22.5° = √(2 + √2) / 2
例題4 2倍角で方程式を解く
0° ≤ θ < 360° のとき、sin 2θ = cos θ を解いてください。
- 左辺を 2 sin θ cos θ に書き換えます。2θ と θ が混ざったままでは、式を 1 つの角にそろえられないからです。
- 右辺を移項して cos θ でくくり、cos θ (2 sin θ − 1) = 0 とします。両辺を cos θ で割らないのは、cos θ = 0 の解を失うからです。
- cos θ = 0 から θ = 90°, 270° です。単位円で横の位置が 0 になるのは、真上と真下の 2 点だからです。
- 2 sin θ − 1 = 0 つまり sin θ = 1/2 から θ = 30°, 150° です。高さが 1/2 の点は、単位円の上に左右 1 つずつあるからです。
- 1 つ確かめます。θ = 150° のとき sin 300° も cos 150° も -√3 / 2 で一致します。解を 4 つ出したあとに 1 つ入れ直すだけで、写し間違いも防げます。
答え: θ = 30°, 90°, 150°, 270°
まちがえやすいところ
sin を括弧の中に配ってしまう
- 誤った書き方: sin(45° + 30°) = sin 45° + sin 30°
- どこが違うか: 右辺は (√2 + 1) / 2 で約 1.21 になり、sin の値の上限 1 を超えます。図1の右の棒がこの状態です。sin は角を高さに変えるはたらきで、数のかけ算とは別物なので、括弧の中に配れません。
- 正しい書き方: sin(45° + 30°) は sin 45° cos 30° + cos 45° sin 30° で、(√6 + √2) / 4 です。
cos の符号を sin にそろえてしまう
- 誤った書き方: cos(α + β) = cos α cos β + sin α sin β
- どこが違うか: α = β = 45° を入れると、左辺は cos 90° = 0 なのに、右辺は 1/2 + 1/2 = 1 です。sin の式の + につられた誤りで、図2でいえば赤い三角形のぶんを引き忘れた状態です。
- 正しい書き方: cos(α + β) = cos α cos β − sin α sin β です。同じ角を入れると右辺は 1/2 − 1/2 = 0 で、左辺と一致します。
半角の 2 乗を落とす
- 誤った書き方: sin(θ/2) = (1 − cos θ) / 2
- どこが違うか: θ = 60° を入れると、左辺は sin 30° = 1/2、右辺は 1/4 です。1/4 は 1/2 の 2 乗なので、左辺の 2 乗が抜けています。根号を開くときの符号も見落としやすく、112.5° のように 90° と 180° の間にある角の cos は負です。
- 正しい書き方: sin²(θ/2) = (1 − cos θ) / 2 と 2 乗のまま書き、開くときに θ/2 の位置で符号を決めます。
覚え方と忘れたときの戻り方
よく使われる語呂に、sin の式を「咲いたコスモス、コスモス咲いた」、cos の式を「コスモスコスモス、咲いた咲いた」と読むものがあります。咲いたが sin、コスモスが cos です。ただし語呂に符号は入っていません。cos だけ逆、という 1 点は自分で足してください。
語呂が飛んだら、次の順で戻ります。
- cos(α − β) の式を書きます。α = β を入れると左辺は cos 0° = 1、右辺は cos²α + sin²α になる形、と覚えれば + を間違えません。
- β を -β にすると cos(α + β) になります。
- α を 90° − α に替えると sin の式が出ます。
- β = α で 2倍角を作り、cos 2θ の式を解き直せば半角です。
- α = 90° と β = 0°、または α = β = 45° を入れて、両辺が一致するかを見ます。
1 行目さえ書ければ、残りは問題用紙の余白で足ります。語呂は速く、導き直しは確かです。両方持っておくと、片方が飛んでも止まりません。
練習問題
手を動かしてから答えを見てください。途中で止まったら、同じ形の例題に戻って手順を読み直します。
- cos 105° の値を求めてください。
- θ は鈍角で sin θ = 5/13 のとき、sin 2θ と cos 2θ の値を求めてください。
- 2 直線 y = 3x と y = (1/2)x がつくる鋭角の大きさを求めてください。
答えと解説
- 105° を 60° + 45° と分けます。cos 60° cos 45° − sin 60° sin 45° に値を入れると、(1/2)(√2 / 2) − (√3 / 2)(√2 / 2) から (√2 − √6) / 4 です。105° は鈍角なので負になるはずで、√6 のほうが √2 より大きいので確かに負です。答えは (√2 − √6) / 4 です。
- 鈍角の cos は負なので、cos²θ = 1 − 25/169 = 144/169 から cos θ = -12/13 です。sin 2θ は 2 × (5/13) × (-12/13) で -120/169、cos 2θ は sin だけの形を使って 1 − 2 × 25/169 で 119/169 です。120² + 119² が 28561 で 169² と等しいので、計算は合っています。答えは sin 2θ = -120/169、cos 2θ = 119/169 です。
- 2 直線が x 軸の正の向きとつくる角を α、β とします。直線の傾きは tan なので tan α = 3、tan β = 1/2 です。引く形の tan の式に入れると、tan(α − β) は (3 − 1/2) / (1 + 3 × 1/2) で、分子も分母も 5/2 になるので 1 です。α も β も鋭角で α のほうが大きいので、α − β は鋭角です。答えは 45° です。
次に確かめる公式
- 三角関数の合成: a sin θ + b cos θ を 1 つの sin にまとめる式で、最大値と最小値を求めるときに使います。加法定理を右辺から左辺へ読む形です。
- 積と和の変換公式: sin α cos β のような積を和に直す式で、数学Ⅲの積分で使います。加法定理の 2 本を足すだけで出ます。
- 三角関数の相互関係: sin²θ + cos²θ = 1 などの式で、例題2のように 1 つの値から残りの値を求めるときに使います。
個別指導では、cos の符号で止まる生徒なら単位円で sin と cos の正負を読むところまで戻り、30° や 45° の値をそらで書けるかを確かめてから加法定理に入り直します。
まとめ
足すときも引くときも、2倍角も半角も、別々に覚える 12 本の式ではありません。cos(α − β) から順に作れる 1 本の筋です。符号に迷ったら特別な角を入れれば、正しい形は式のほうが教えてくれます。閉館の近い図書室でも、もう検索はいりません。定期テストの朝に頭へ入れておく式は、cos(α − β) の 1 本で足ります。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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