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余弦定理—公式と使う場面、2辺と間の角から求める手順|武蔵野個別指導塾

三平方の定理に -2bc cos A を足した形が余弦定理です。2辺と間の角から辺を、3辺から角を出す手順を、鈍角で符号を落とさない確かめ方と一緒に例題で身につけましょう。
| 求めるもの | 余弦定理の式 |
|---|---|
| 辺 a | a² = b² + c² − 2bc cos A |
| 辺 b | b² = c² + a² − 2ca cos B |
| 辺 c | c² = a² + b² − 2ab cos C |
| 角 A | cos A = (b² + c² − a²) / (2bc) |
a, b, c は三角形 ABC の 3 辺の長さです。a は角 A の向かいの辺 BC、b は角 B の向かいの辺 CA、c は角 C の向かいの辺 AB を指します。2 辺とその間の角がわかれば残りの辺が、3 辺がわかればどの角も求まります。
よくあるのは、朝の駅のホームで問題集を開いた、という場面です。次の電車まであと 4 分。ベンチはふさがっていて、問題集は片手で支えています。60° と 2 つの長さが書かれた三角形を前に、a² = b² + c² までは浮かぶのに、その後ろに何が続いたかが出てきません。解答のページをめくれば答えは見えますが、それでは明日も同じところで止まります。式は上の表のとおりです。残りの時間で、どの文字をどこに入れるかを決められるようにしておきましょう。
公式の形と文字の意味
余弦定理は数学Ⅰの「図形と計量」で学ぶ公式で、三角形の 3 辺と 1 つの角を 1 本の式で結びます。「余弦」は cos の日本語名です。表の上の 3 本は、中身は同じ 1 本で、a → b → c → a の順に文字を送っただけです。
読むときに見るのは組です。図1のように、角 A と辺 a は三角形の中で向かい合っていて、式の中でもこの組で現れます。左辺の a² と右端の cos A は必ず同じ文字になり、そのあいだの b と c は角 A をはさむ 2 辺です。

式の各部分は、次の役割を持っています。
| 式の部分 | 何を表すか |
|---|---|
| a² | 角 A の向かいの辺の 2 乗 |
| b² + c² | 角 A をはさむ 2 辺の 2 乗の和(三平方の定理と同じ形) |
| 2bc cos A | 角 A の開き具合で増減する分 |
| cos A | 鋭角で正、直角で 0、鈍角で負 |
角を求める式は別の公式ではありません。1 本目の式を 2bc cos A = b² + c² − a² と移項して、両辺を 2bc で割っただけです。覚える式は、実質 1 本です。
問題を前にしたときに迷うのは、どの辺の式から使うかです。判断は次の表で足ります。
| わかっているもの | 左辺に置く辺 | 求まるもの |
|---|---|---|
| 2 辺とその間の角 | その角の向かいの辺 | 残りの 1 辺 |
| 3 辺 | 知りたい角の向かいの辺 | 角の大きさ(cos の形に直す) |
| 2 辺と、間にない角 | その角の向かいの辺 | 残りの 1 辺(二次方程式になる) |
見るのは辺ではなく角です。左辺に置くのは、知りたい辺ではなく、式に入れる角の向かいの辺です。表の 1 行目と 2 行目では知りたいものと一致するのでこの違いは見えませんが、3 行目で差が出ます。例題4 でその差を実際に確かめます。
なぜこの形になるのか
余弦定理は、三平方の定理を 1 回使えば出てきます。直角のない三角形にはそのまま使えないので、垂線を下ろして直角を作ります。図2のように、頂点 C から辺 AB に垂線を下ろし、その足を H とします。

直角三角形 CAH の斜辺は b なので、三角比の定義から AH = b cos A、CH = b sin A です。AB の長さは c なので、残りは BH = c − b cos A になります。あとは色をつけた直角三角形 CHB で三平方の定理を使うだけです。
- a² = CH² + BH²
- a² = (b sin A)² + (c − b cos A)²
- a² = b² sin²A + c² − 2bc cos A + b² cos²A
- a² = b²(sin²A + cos²A) + c² − 2bc cos A
- sin²A + cos²A = 1 なので、a² = b² + c² − 2bc cos A
2bc の正体はここで見えます。(c − b cos A)² を展開したときの真ん中の項です。2 はそこから来た数で、飾りではありません。
角 A が鈍角のときは、H が辺 AB の上ではなく、BA を A の側に延ばした線の上に来ます。図は変わりますが、式は変わりません。cos A が負になるので b cos A も負の数になり、c − b cos A は c より長くなって、実際の BH の長さと一致するからです。座標で書けばもっと短く済みます。A を原点、B を (c, 0)、C を (b cos A, b sin A) と置くと、2 点間の距離から a² = (b cos A − c)² + (b sin A)² が、鋭角でも鈍角でも同じ 1 行で書けます。
角 A が 90° なら cos 90° = 0 で最後の項が消えて、a² = b² + c² です。三平方の定理は、余弦定理の特別な場合にあたります。図3は、2 辺を 3 と 5 に固定して角 A だけを動かしたものです。基準は b² + c² = 34 で、このとき 2bc = 30 です。

| 角 A | cos A | 2bc cos A | a² |
|---|---|---|---|
| 60° | 1/2 | 15 | 34 − 15 = 19 |
| 90° | 0 | 0 | 34 |
| 120° | -1/2 | -15 | 34 + 15 = 49 |
角を開けば向かいの辺は伸びる。割りばしを 2 本つまんで開けば手で確かめられるこの感覚を、-2bc cos A が数に直しています。鋭角なら三平方の定理より短く、鈍角なら長い。計算の答えをこの向きと照らすだけで、符号の間違いの多くは見つかります。
例題で使い方を確かめる
易しい順に 4 問です。どの問題も、最初にするのは計算ではなく「どの角がわかっているか」を見ることです。
例題1 2辺と間の角から残りの辺を求める
三角形 ABC で b = 5, c = 8, A = 60° のとき、a を求めましょう。
- 角 A が 5 と 8 の間の角であることを確かめます。間の角でなければ、このまま式に入れられないからです。
- 左辺を a² にして数を入れます。わかっている角が A なので、cos A を含む式を選びます。a² = 5² + 8² − 2 × 5 × 8 × cos 60°
- cos 60° = 1/2 を使って計算します。かけ算を先に片づけると、符号を見失いません。a² = 25 + 64 − 40 = 49
- a を求めます。辺の長さは正なので、負の -7 は捨てます。
答え: a = 7
例題2 鈍角で、式の文字が変わるとき
三角形 ABC で a = 7, c = 8, B = 120° のとき、b を求めましょう。
- わかっている角は B なので、左辺は b² です。a² の式を無理に使おうとすると、cos A という知らない値が入ってしまいます。
- 式を書いて数を入れます。かける 2 辺は c と a で、どちらも角 B をはさむ辺です。b² = 8² + 7² − 2 × 8 × 7 × cos 120°
- cos 120° = -1/2 を入れます。引く数が負なので、ここで足し算に変わります。b² = 64 + 49 + 56 = 169
- b を求めます。長さなので正の 13 だけを取ります。
- 向きを確かめます。鈍角の向かいの辺はいちばん長いはずで、13 は 7 と 8 より長く、直角のときの √113(約 10.6)よりも長いので、図3の向きと合っています。
答え: b = 13
例題3 3辺から角を求め、鈍角かどうかを読む
3 辺が a = 7, b = 8, c = 3 の三角形 ABC について、(1) 角 A を求めましょう。(2) この三角形が鈍角三角形かどうかを答えましょう。
-
- は cos A の式に入れます。分子で引くのは、向かいの辺 a の 2 乗だけです。cos A = (8² + 3² − 7²) / (2 × 8 × 3)
- 分子と分母を別々に計算します。まとめて暗算すると符号を落としやすいからです。cos A = (64 + 9 − 49) / 48 = 24/48 = 1/2
- 角に直します。三角形の角は 0° より大きく 180° より小さく、その範囲で cos が 1/2 になる角は 60° だけです。sin と違って、cos では答えが 2 つに割れません。
- (2) はいちばん長い辺 b = 8 の向かいの角 B だけを調べます。いちばん大きい角はいちばん長い辺の向かいにあり、その角が鈍角でなければ他の角も鈍角ではないからです。
- cos B = (c² + a² − b²) / (2ca) の分母は正なので、符号は分子で決まります。c² + a² − b² = 9 + 49 − 64 = -6 で負なので、cos B = -6/42 = -1/7 も負で、角 B は鈍角です。
答え: (1) A = 60°、(2) 鈍角三角形(鈍角は角 B)
例題4 2辺と、間にない角が与えられたとき
三角形 ABC で a = 7, b = 8, A = 60° のとき、c を求めましょう。
- 知りたいのは c ですが、左辺は c² にしません。c² の式を書くと cos C が入り、C は未知なので先へ進めないからです。わかっている角 A の向かいの a を左辺に置きます。
- 数を入れます。c を文字のまま残して方程式にします。7² = 8² + c² − 2 × 8 × c × cos 60°
- 整理します。cos 60° = 1/2 なので 2 × 8 × c × 1/2 = 8c となり、49 = 64 + c² − 8c から c² − 8c + 15 = 0 です。
- 因数分解します。解の公式を使うまでもない形です。(c − 3)(c − 5) = 0 より、c = 3 または c = 5
- 両方を調べます。図4のように、C を中心とする半径 7 の円は A から伸びる直線と 2 点で交わるので、どちらの点も頂点 B になれます。

答え: c = 3 または c = 5
c = 5 の三角形は例題1 と、c = 3 の三角形は例題3 と同じ形です。同じ 7 と 8 と 60° から、形の違う三角形が 2 つ生まれています。解がいつも 2 つとは限らず、負の解が出たら長さにならないので捨てますが、確かめもせずに片方を捨てると、この問題では答えが半分になります。
まちがえやすいところ
1 つ目は、角と辺の組を崩すことです。
- 誤った書き方: a² = b² + c² − 2bc cos B
- どこが違うか: 角 B をはさむのは c と a で、b と c ではありません。2bc の b と c にはさまれた角でなければ、式は成り立ちません。
- 正しい書き方: a² = b² + c² − 2bc cos A。左辺の文字と cos の中の文字が同じになっていることを、書いた直後に見ます。
2 つ目は、鈍角で符号を落とすことです。b = 3, c = 5, A = 120° で a を求める場面で起こります。
- 誤った書き方: a² = 9 + 25 − 30 × 1/2 = 19
- どこが違うか: cos 120° は 1/2 ではなく -1/2 です。図3で 19 は 60° のときの値で、角を 120° まで開いたのに辺が短いままというのは、形として起こりません。
- 正しい書き方: a² = 9 + 25 − 30 × (-1/2) = 34 + 15 = 49 より、a = 7
3 つ目は、角を求める式で引く辺を取り違えることです。a = 7, b = 5, c = 3 で角 A を求める場面で起こります。
- 誤った書き方: cos A = (a² + b² − c²) / (2bc) = (49 + 25 − 9) / 30 = 65/30
- どこが違うか: 引くのは求める角の向かいの辺の 2 乗だけで、ここでは a² です。65/30 は 1 を超えています。cos の値は -1 以上 1 以下なので、この時点で式のどこかが間違っているとわかります。
- 正しい書き方: cos A = (b² + c² − a²) / (2bc) = (25 + 9 − 49) / 30 = -15/30 = -1/2 より、A = 120°
覚え方と忘れたときの戻り方
語呂に頼るより、口に出す順番を決める方が向いています。「ビー 2 乗、プラス シー 2 乗、マイナス 2 ビーシー コサイン エー」と読み、左辺の a と最後の A が同じ文字で閉じることを指で押さえます。
忘れたときは導き直します。ノートの隅で足りる計算です。
- 三角形を描き、C から AB に垂線を下ろします。
- AH = b cos A、CH = b sin A、BH = c − b cos A と書き込みます。
- 直角三角形 CHB で三平方の定理を使い、展開します。
- sin²A + cos²A = 1 でまとめます。
式が怪しいときは、角を極端な値にして確かめます。A = 90° なら a² = b² + c² で、三平方の定理に戻ります。三角形をつぶして A を 180° にすると a = b + c になるはずで、cos 180° = -1 を入れると a² = b² + c² + 2bc = (b + c)² と確かに合います。A を 0° にすると cos 0° = 1 で a² = b² + c² − 2bc = (b − c)² となり、a は b と c の差です。余弦定理は、2 つの乗法公式のあいだを cos A でつないだ式だと読めます。2 を落として覚えていれば、この確かめで崩れます。
練習問題
例題と違う数で 3 問です。先に手を動かしてから、答えを見てください。
- 練習1: 三角形 ABC で a = 3, b = 4, C = 60° のとき、c を求めましょう。
- 練習2: 三角形 ABC で b = 3√2, c = 1, A = 135° のとき、a を求めましょう。
- 練習3: (1) 三角形 ABC で a = √7, b = 2, c = 3 のとき、角 A を求めましょう。(2) 3 辺の長さが 6, 7, 9 の三角形は、鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形のどれですか。
答えと解説
練習1: わかっている角は C なので、左辺は c² です。c² = 3² + 4² − 2 × 3 × 4 × cos 60° = 9 + 16 − 12 = 13 より、c = √13 です。60° は直角より狭いので、直角のときの 5 より短くなるはずで、√13(約 3.6)は向きも合っています。
練習2: 左辺は a² です。cos 135° = -√2 / 2 を入れると、a² = (3√2)² + 1² − 2 × 3√2 × 1 × (-√2 / 2) となります。(3√2)² = 18 で、最後の項は 3√2 × √2 = 6 を足す形になるので、a² = 18 + 1 + 6 = 25 より、a = 5 です。鈍角の向かいの辺なので 3√2(約 4.2)より長いはずで、向きも合っています。
練習3: (1) cos A = (2² + 3² − (√7)²) / (2 × 2 × 3) = (4 + 9 − 7) / 12 = 6/12 = 1/2 より、A = 60° です。(2) いちばん長い辺 9 の向かいの角だけを調べます。分子は 6² + 7² − 9² = 36 + 49 − 81 = 4 で正なので、cos は正で、その角は鋭角です。いちばん大きい角が鋭角なので、鋭角三角形です。9 という数の大きさに引きずられて鈍角と答えがちですが、符号は計算しないと決まりません。
次に確かめる公式
- 正弦定理: 2 角と 1 辺がわかっているときや、外接円の半径を求めるときに使います。
- 三角形の面積の公式 S = (1/2)bc sin A: 余弦定理と同じ「2 辺と間の角」の条件で面積を出すときに使います。
- 三角比の相互関係 sin²θ + cos²θ = 1: 余弦定理で出した cos A を sin A に直して、面積へ進むときに使います。
個別指導でここにつまずいた生徒を見るときは、公式より先に、cos 120° の値を図から言えるか、(c − b cos A)² を展開できるかまで戻って確かめます。止まっている場所がそこなら、公式を何度写しても手は動きません。
まとめ
余弦定理で最初に決めるのは、計算の順番ではなく左辺の 1 文字です。わかっている角を探し、その向かいの辺を左辺に置く。これが決まれば、鈍角の符号は cos の値がそのまま運び、答えの向きは図3の 3 つの三角形で確かめられます。
ホームで浮かんだ a² = b² + c² は間違いではなく、角の分を書き足す前の途中の式でした。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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