九九と計算カード—「思い出す練習」が効く根拠|武蔵野個別指導塾

九九を順番に唱えられても計算で止まるときは、カードの使い方を見直せます。答えを隠して確かめる手順と、迷った式を塾へ伝える方法で、家庭の練習を短く区切りましょう。

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九九と計算カード—「思い出す練習」が効く根拠

唱えられるのに、途中の式で止まるとき

よくあるのは、自習室の時計の下で、休憩前に九九を確かめたお子さまが段を唱え終えたあと、「では、7×8は」と尋ねられて急に黙ってしまうという場面です。続けてなら言えるのに、と迎えに来た保護者も首をかしげます。お子さまは小さな声で段の最初に戻り、ようやく答えにたどり着きます。帰宅してからカードを出すと、「もう覚えている」と顔を背けることもあるでしょう。

このとき見たいのは、九九が言えるかどうかだけではありません。段の流れに乗れば言えるのか、式だけを見ても答えを出せるのか、答えが出なくても考えて確かめられるのか。できていることを分けると、必要な練習が見えてきます。

家庭でカードを使う目的は、毎回すべてを速く言わせることではなく、必要な答えを自分で取り出す機会をつくることです。小学校の高学年で九九に迷いが残っていても、練習を幼いものと扱う必要はありません。今の計算を支える道具として、少ない枚数から使い直せます。親子で疲れる前に終え、次に確かめる式がわかる形を目指しましょう。

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「見ればわかる」と「思い出せる」の間にあるもの

九九表を見ながら声を出すと、式と答えを一緒に確かめられます。まだ知らない組み合わせを覚える入り口として、答えを見ることには役割があります。一方、答えを隠して式だけを読むと、その答えを自分で探す必要が生じます。このように、いったん学んだことを手がかりから取り出す活動が「思い出す練習」です。学習心理学では、想起練習と呼びます。

段を唱えるときには、前の言葉が次の言葉を支えます。「しちいちがしち」から続ければ言えるお子さまが、7×8だけでは迷うのは、使える手がかりが違うからです。順番に言えたことは確かな前進ですが、計算の途中では、必要な式が段の順番どおりに現れるとは限りません。そこで、式だけから答えを出す練習を足す意味が生まれます。

九九について、カードを使って答えを思い出す練習と、唱える復習とを比べた研究では、カードによる練習のほうが、短期と長期の両方で流暢さを高めました(Ophuis-Coxほか・2023)。流暢さとは、必要な計算を正確に、滞りを少なく進められることです。家庭では、カードを持ったこと自体より、裏を見る前にお子さまが答えを取り出そうとする時間を持てたかに注目すると、練習の目的を捉えやすくなります。

もう1つ、掛け算の練習方法を比べた研究では、保持の成績は各方法でほぼ同じでしたが、すらすら答えを出す力では、問題を少しずつ混ぜた練習が上回りました(Adamsほか・2023)。この結果を家庭に生かすなら、迷う式ばかりを延々と続けるのではなく、答えを出せる式の中へ、練習したい式を少し加える組み方が候補になります。混ぜることと、いきなり全部をばらばらに出すことは分けて考えましょう。

前者はオランダの2年生48名、後者は米国の4〜5年生36名を対象としており、学年も人数も限られるため、日本のすべてのお子さまに同じ伸び方を見込むことはできません。家庭では、答えを隠して取り組めたか、日を変えても取り出せたかを記録し、お子さま自身の変化を見ながら使い方を調整します。

また、答えを思い出すことと、掛け算の意味を考えることは、練習の中で行き来できます。たとえば7×8が出ないとき、7×7=49を使い、そこへ7を足して56と確かめられます。その場では即答できなくても、式に戻って考える手段を持っています。考えて答えを得たあとで、改めて7×8の答えを思い出してみる。この順序なら、理解を置き去りにせずカードを使えます。

保護者が区別したいのは、「まだ知らない」「考えれば出せる」「思い出せる」の3つです。どれも同じ沈黙に見えることがありますが、必要な支えは異なります。まだ知らない式には説明を、考えれば出せる式には考え方の確認を、思い出せる式には日を変えた確認を用意すると、叱る代わりに次の手を選べます。

カードを少なく選び、隠し、確かめる手順

始める前に道具と終わりを決める

用意するのは、表に式、裏に答えを書いたカードと、小さな記録用紙です。手持ちのカードでも、同じ大きさに切った紙でも構いません。答えが表から透けるなら、紙を重ねるなどして隠します。まず大人が裏の答えを確かめ、書き間違いを直しておきます。お子さまにとって、めくった答えを安心して頼れることが大事です。

カードは選んだ小さな束を一巡したら休み、休んだあとに迷った式だけを確かめて終えます。次の機会には、その式を最初に出してみましょう。時間で終わりを知らせる必要があれば、カードを始める前に終了時刻を決めます。1問ごとの速さを測らず、考え方へ戻ったカードが多い日は束を小さくして、終わりの約束を守ります。

最初は、お子さまが答えを出しやすい式を3枚、少し迷う式を1枚選ぶところから始められます。枚数はお子さまの様子に合わせて変えます。「迷う式を探す」ために最初から全段を試験する必要はありません。宿題で止まった式や、お子さまが気になる式を選ぶと、今取り組む理由がはっきりします。

お子さまが自分で進める3段階

最初の段階は、式の側だけを見て、答えを言うか書くことです。声に出すのが苦手なら、小さな紙に数字を書いても構いません。書く動作で疲れるなら、口で答える形に戻します。表を見たまま裏をのぞかず、自分の答えをいったん決めることが共通の約束です。

次の段階は、裏をめくり、自分の答えと比べることです。合っていれば「自分で出せた」場所に置きます。考えて出したなら「考えた」場所、出なかったり違ったりしたなら「もう一度見る」場所に置きます。場所は紙の上に言葉を書くだけで十分です。答えが合ったかに加え、どう答えたかもお子さま自身が分けられます。

最後の段階は、確かめたカードを少し後でもう一度使うことです。答えを見た直後に言うだけで終えず、別のカードを挟んでから表に戻ります。そこで答えられたら、今日の記録に短い印を付けます。まだ迷ったら、その式を次回の候補に残します。1回の練習で必ず即答できるようにするという約束は置きません。

答えが出ないときには、長い沈黙のまま待ち続けず、「確かめる」に移れます。裏を見て正しい答えを読み、必要なら九九表や図に戻ります。7×8なら、7が8つある様子を点やまとまりで表し、知っている7×7に7を加える方法を使えます。確かめたあとはカードを伏せ、式と答えをもう一度結び付けます。

答えを取り違えたときは、違う答えを何度も言い直させるより、正しい組み合わせを一緒に見ます。たとえば7×8に54と答えたなら、裏で56を確認してから、「7×8=56」と式を含めて読みます。数字の56だけを唱えて終えると、何の答えなのかが抜けるためです。別のカードを挟み、再び7×8を出して、式から答えへつながるか確かめましょう。

教材は役割を分けて使う

カードは、式を見て答えを取り出す道具です。九九表は、出なかった答えや段の並びを確かめる道具です。ノートや点の図は、なぜその答えになるのかを考える道具です。全部を毎回使う必要はありませんが、カードで止まったときの戻り先を決めておくと、お子さまは助けを求めやすくなります。

カードに大きな飾りや色の違いがあると、「赤い紙だからこの答え」と覚えている場合もあります。試しに同じ式を普通の紙へ書き、答えを出せるか確かめてみましょう。そこで迷っても責めず、式そのものを読むところへ戻します。使い慣れた道具での成功を、紙が変わっても使える形へつなぎます。

宿題の計算欄も確認の道具になります。カードで練習した式が出てきたら、その箇所だけを見て答えを出せるか確かめます。ただし、宿題全体の時間をカードの成果として扱うと、書く量やほかの計算の影響が混じります。「この式で迷ったか」という狭い範囲を見ると、次の練習に結び付けやすくなります。

7×8と8×7を一緒に出して迷うなら、片方の式と答えを確かめてから、点の図を回して同じ数になることを見ます。カードは表が式、裏が答えという作りに統一し、表を読んで自分の答えを決めてからめくります。小声でも答えを先に出せれば、自力で思い出した場合と、裏を見て思い出した場合を分けて残せます。

確かめ方を3つ持っておく

第1の確かめ方では、めくる前に答えを決めたかを振り返ります。迷って図へ戻った場合も、そのことを記録してよいと伝えましょう。答えが合ったカードにも、すぐ言えたものと考え直したものがあると気づければ、次に選ぶ枚数や式を調整できます。

第2の確かめ方は、並べる順番を変えることです。答えが出やすい式を含めて少し並べ替え、前のカードがなくても答えられるか見ます。お子さまが自分で混ぜても構いません。ただし、毎回新しい式を大量に加えると様子を追いにくいため、練習中の式がどう変わったかを見られる量にとどめます。

第3の確かめ方は、次に取り組む日の最初に出すことです。前回の最後に答えられた式を、答えを見る前に試します。ここで出せたことと、練習直後に出せたことを記録上も分けます。日付と式と「自分で」「考えて」「見て確認」の言葉があれば、細かな点数を付けなくても変化をたどれます。

親が支える部分は小さく決める

保護者は、始める前の準備と、終わりを守る役を引き受けます。「今日はこの式を確かめる」「終わったら箱へ戻す」と見通しを共有し、カードをめくることや仕分けはお子さまに任せます。答えるたびに表情をうかがう様子があれば、大人は少し離れ、最後の記録だけを見る形にしてもよいでしょう。

迷った瞬間に答えの頭の音を言うと、お子さまは助かりますが、自分で出せたかが曖昧になります。手伝うなら「表を見直す」「図で考える」「裏で確かめる」のどれを使うか尋ねます。助けの選び方を支えることで、親がいないと進まない練習から、自分で戻れる練習へ近づけます。

終わりには「全部できたか」より、「どの式を次に確かめるか」を一緒に見ます。時間が来たら途中でも印を付けて片付けます。もう少しできそうな日も、追加するかはお子さまと相談します。毎日の練習が際限なく長くなる見通しを避け、次も手に取れる終わり方をつくります。

カードを嫌がる日は、すぐに枚数を増減する前に、どの部分が嫌なのかを聞いてみます。「人に聞かれるのが嫌」なら自分で裏を見る形、「同じ式ばかりで嫌」なら取り組む式を選ぶ形に変えられます。答えが出ないところを見られたくない場合には、保護者が席を外し、終わったあとに次回用のカードだけ見せてもらう方法もあります。嫌がる理由を練習の調整につなげます。

親の手が空く時間と、お子さまが取り組みたい時間が合わないこともあります。その場合は、先にカードと記録用紙を置き、お子さまが自分で進め、保護者はあとから印を見る形を試せます。裏の答えを確かめる仕組みがあれば、大人が毎回出題役になる必要はありません。片付ける箱まで決めておくと、どこまで終えたかも共有しやすくなります。

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個別指導では、迷い方と次の一手を共有する

家庭でカードを使い始めると、「これでよいのか」「遅いままで大丈夫か」と別の迷いが出てきます。個別指導で塾が担いたいのは、枚数を増やす指示だけでなく、どこで答えが出にくくなるかを見分け、家庭で扱える練習に整えることです。武蔵境で小学生の学習を支える武蔵野個別指導塾でも、相談の出発点は、できないという総評より実際に止まった式です。

たとえば7×8で止まる場合、式の読み方を迷ったのか、別の九九の答えと混ざったのか、段の最初から唱えているのかを見ます。答えを見せる前に「どこまで考えた」と尋ねれば、お子さまの途中の考えを拾えます。正解した場合も、即座に思い出したのか、知っている式から組み立てたのかを分けます。

塾が持つ情報は、迷った式、使えた手がかり、次に試す出し方です。掛け算の意味が曖昧なら、まとまりを図にする説明へ戻ります。意味がわかり、考えれば答えを出せるなら、カードで取り出す練習を組みます。式は読めるのに口頭では言いにくいなら、書いて答える方法も試します。指導方法を選ぶために、正誤の手前まで見ます。

家庭が持つ情報は、始めやすかった時間帯、取り組めた量、困った式が中心です。親がすべての間違いを分析したり、その場で説明を完成させたりする必要はありません。「7×8で止まり、裏を見て終えた」と伝われば、塾で続きを扱えます。家庭の練習は、授業で必要な支援を見つける窓口にもなります。

カードの連絡は、迷った式を小さな袋に分け、そのまま授業で確かめる方法でもできます。袋に「図へ戻った」「知っている式から出した」と本人が選んだ答え方を添えます。塾では表だけで答えられるかを試し、次に混ぜるカードを選んで返します。家庭で別の式に迷ったときは袋の中身を入れ替えれば、長い説明を作らずに練習の対象を共有できます。

進み具合は、カードを何枚終えたかだけで示すと見落としが出ます。同じ式について、「裏で確かめた」から「知っている式で考えた」へ、さらに「式だけで出せた」へと答え方が変われば、その変化が見える記録にします。途中で再び迷った日も消さず、どのような出し方で迷ったかを添えると、練習の調整に使えます。

見直しの目安も具体的に決められます。裏を見て終わるカードが続くなら、取り出す練習の前に説明を増やします。いつも同じ並びなら答えられる場合は、少ない枚数のまま順を変えます。単独の式では答えられるのに宿題で止まる場合は、実際の計算のどこで迷ったかを授業で確かめます。枚数の増減だけで解決しようとせず、止まる条件に対応します。

家庭での記録と授業中の様子が違うときも、どちらかが間違いだと決めません。家ではカード、授業ではノートだったのか、直前に答えを見たのか、口で答えるか書くかが違ったのかをそろえて見直します。同じ式を近い条件で出すと、次に何を変えるかが絞れます。家庭で止まったという知らせは、授業では見えなかった条件を知る手がかりになります。

お子さまにも記録の意味を伝えます。「これは間違いを数える紙」ではなく、「次にどこを練習すればよいか決める紙」と説明し、次の候補を一緒に選びます。高学年なら、カードを持ち歩くことに抵抗があるかもしれません。その場合は、ノートの式と折って隠した答えでも同じ手順にできます。年齢に合う見た目を選ぶことも、練習の続けやすさに関わります。

また、九九の練習を、今習っている学習を止める理由にしない配慮が必要です。割り算や筆算で九九に迷う箇所があれば、授業の目的に応じて九九表で確かめながら先へ進み、別の短い時間にその式を練習する方法があります。新しい考え方を学ぶ時間と、既に学んだ答えを取り出す時間を分けて確保します。

家庭と塾の間で合意しておきたいのは、終える条件です。疲れて答えが雑になった、カードを見ること自体を嫌がった、言い合いになりそうだった。そんな日は、どこで止めたかが伝われば十分です。塾はその記録を次の出し方に反映し、家庭は次回の短い時間を用意する。それぞれの持ち分が明確なら、毎晩の監督に頼らず練習を組み直せます。

九九カードについての3つの疑問

Q1. 唱える練習はやめたほうがよいですか

段の並びを覚えたり、正しい答えを確かめたりするために、唱える練習を使えます。既に順番どおりなら言える場合は、そこへ式だけから答える機会を足しましょう。唱えるかカードかを家庭で決着させるより、お子さまがどの手がかりで答えているかを見るほうが、練習を選びやすくなります。

たとえば練習の初めに迷う段を確かめ、そのあとカードを伏せて式だけを出します。段の途中まで唱えて答えた場合も、記録には「考えて出した」と残せます。そこから次の機会に同じ式を出し、答え方がどう変わるかを見ていきます。唱えられる力を土台に、取り出し方を増やします。

Q2. 答えるまでに時間がかかるときは、制限を付けますか

まずは、何に時間を使っているかを見てください。式を読み直しているのか、段を唱えているのか、知っている式から計算しているのかで、必要な手助けが違います。家庭で始めたばかりなら、時計は練習全体を区切るために使い、1問ごとの締め切りはいったん置かずに進められます。

長く考えて苦しくなる場合は、「考え方を試すか、裏で確かめるか」と戻り道を示します。毎回同じ式で止まるなら、時間だけを測り続けず、その式を塾へ伝えましょう。速さの数字に先立って、どの答えを正確に出せるか、どこなら自分で確かめられるかを把握します。

Q3. 間違えたカードだけを何度も出せばよいですか

迷う式に取り組む時間は必要ですが、その式だけが続くと、式を読まずに同じ答えを繰り返している場合もあります。答えを出せるカードを間に入れ、表を読み直してから答える形を試しましょう。少しずつ混ぜる方法を家庭で使うときにも、お子さまが扱える量を保ちます。

そして、今日の最後にできた式を、次回の最初にも確かめます。その場で連続して言えたことと、改めて取り出せたことを分けて見られます。再び間違えた場合も、前回の練習を無駄と決めず、答えの確認へ戻ります。次に取り組む式が見つかったと捉えれば、練習の終わりに失敗だけを残さずに済みます。

次に確かめる式が見えれば、今日は終えられる

九九のカードは、覚えているかを大人が判定するだけの道具ではありません。お子さまが答えを出し、裏を見て確かめ、必要なら考え方へ戻るために使えます。答えを隠す、少し混ぜる、次の機会にもう一度確かめる。その流れを、家庭で扱える小ささに整えてみてください。

今夜は、すべての段を確かめなくても構いません。迷った式を選び、終わる時間を決め、答え方を短く残します。相談するときも、その式と記録があれば具体的な話から始められます。「7×7に7を足した」という短い記録があれば、武蔵野個別指導塾への相談にも、次のカードを選ぶ理由が生まれます。

参考文献


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