教養として学ぶあらすじで読む世界文学~中学受験や高校受験、大学受験に効く

00 本記事作成の背景と執筆者の望むこと

教養として学ぶあらすじで読む世界文学を紹介していきます。文学はもちろん、実際に翻訳なり原書なり、実際に書物を読んでみるのがベストです。しかし、一体どんな話でどんな面白さがあるのか分からずに、ただよく聞く文学作品だいうだけで読んでいては、なかなか自分にとってのマイベストに出会うことは難しいですし、今風の言い方をすれば若干非効率です。

たとえば、私なんかの世代ですと、もうとりあえず書店(本屋さん)に行って、多少パラパラと本をめくってみたり、裏表紙に載っているかなり大まかなあらすじを読んだり、著者の経歴を見たり、あるいは学校の先生や友人のおすすめの言葉を参考にしたり、はたまた今風にいえば、帯のキャッチコピーや帯を書いている著名人の推薦の言葉などをみて、「少しでも気になったなら」その書物をとりあえずレジに持って行き、購入し、家で読んでみたものです。

しかし、実際に読んでみるとたいていの場合は、「んー。思っていた話と違うなあ」とか「なんだか自分が求めていた物語ではない」と感じてしまうことがままあるわけです。そして、私のような書物を購入する代金にに糸目をつけないビブリオマニアなど、そもそも書物を買うこと、読む前に買うことそれ自体に既に意義を見いだしてしまう読者はともかく、多くの読者は「無駄な買い物をしてしまった」とか「読書はちょっとこりごりかな」と読書という素晴らしい体験から離れてしまいかねません。

そこで、本稿では、皆さんが一度は聞いたことがある文学作品で、でも「買おうか買うまいか」あるいは「読もうか読むまいか」と悩んでいるような本のあらすじを半ば強引にまとめて紹介し、少なくとも「方向性」として「その本を買って読む(借りて読んでもいいのですが)」ことに後悔が生じず、読書体験が楽しくなることを期待して、あらすじを紹介していきたいと思います。

昨今、読書離れ、活字離れが嘆かれ、どしても手軽にGoogleで検索したり、Wikipediaで概要を知るだけで終わってしまう、そういうクイズ的・断片的な知識だけで終わってしまうという、そういうある種の不幸を少しでも避け、あなたが生涯心に残る座右の書を見つける道しるべになれば幸いです。

01 ヘミングウェイ『だがために鐘は鳴る』(Hemingway, “But For Whom the Bell Tolls”)

名台詞「ぼくは今君と一緒なんだ。そこに、僕ら二人ともいるんだ。行ってくれ」

アーネスト・ヘミングウェー(1899~1961年):アメリカ、シカゴ生まれ。父は医師。ハイスクール卒業後、新聞記者となり、1918年、赤十字野戦病院の輸送車運転手としてヨーロッパに渡り、第一次世界大戦に従軍するが、負傷。『われらの時代に』『日はまた昇る』を執筆し、「失われたし世代」の代表作家となる。アメリカの第二次世界大戦を機会に、従軍報道員としてヨーロッパ戦線で活躍。1952年『老人と海』でピューリッツアー賞を受賞。さらに、1954年、ノーベル文学賞を受賞する。1961年に、自殺。この辺の事情は、中学校や場合によっては小学校の社会の教科書にも記載があるでしょう。

作品の背景:1936年にスペイン内乱が勃発すると、ヘミングウェイは、特派員としてスペインに渡り、政府支援に尽力する。その 内乱を背景にこの作品を執筆した。題名は、17世紀のジョン・ダンの言葉「ゆえに問うなかれ、誰がために鐘はなるやと、その汝のために鳴るなれば」から取られた。この辺は、大学受験の『世界史探求』などでもおなじみかもしれません。文学作品を読むということは、社会を学ぶことにも有機的に繋がっているわけですね。

さらにその先へ。参考文献案内。

  1. マイケル・レイノルズの「Hemingway: The 1930’s」(1997年発行): ヘミングウェイの公的イメージが形成され、彼の作家としてのスキルが成熟していった10年間についての良好なアカウントです。しかし、レイノルズはヘミングウェイの生涯について詳しく知ることで彼の小説についても詳しく知るという一般的な誤解を維持しています​1​。
  2. マイケル・レイノルズの「Hemingway: The Final Years」(1999年発行): レイノルズが敏感に考察する分裂の力の一つは、ヘミングウェイが「誰のための鐘か」より優れたものを書くことは二度とないという彼の恐怖でした​1​。
  3. カルロス・ベーカーの「Ernest Hemingway: A Life Story」(1969年発行): 彼の著書は事実に基づいた包括的な伝記で、ヘミングウェイの全生涯を扱っています。各作品の執筆とそれに対する批評反応が時系列に記録されています。しかし、完全なヘミングウェイ像が本質的なヘミングウェイ像を減少させているかもしれないと指摘しています​2​。
  4. ジェームズ・R・メロウの「Hemingway: A Life Without Consequences」(1992年発行): メロウの伝記はヘミングウェイを行動の男でも完全な愚者でもなく、文学に最も適した人物として描いています。彼はヘミングウェイの最初の作品がなぜ素晴らしかったのかについての鋭い分析を提供しています。また、ヘミングウェイの男性性が彼の最も絶望的な虚構であったという疑念を説得力あるものとしています​3​。

【あらすじ】

ロバート・ジョーダンは、スペイン内乱に際して、共和国軍支援のため、アメリカからやってきた義勇兵である。背が高く、ハンサムな青年で、故国アメリカでは、大学でスペイン語を教えていた。反乱軍との激しい戦いのさなか、ロバートは鉄橋の爆破を命じられる。友人の全面攻撃開始と同時に橋を破壊し、敵の支援活動を阻止するためである。ゴルツ将軍は「爆破は、攻撃開始と同時でなければならない。遅すぎても、早すぎてもいけない」という。目も恨むほど深い峡谷にかかる橋で、戦略的要衝である同地は、警戒も厳重である。それをいつとも確定できない攻撃作戦開始の瞬間に爆破するというのは大変難しい。いや、殆ど不可能に近い課題であった。

彼は現地に赴き、作戦に協力してくれる政府軍支持のゲリラ集団とともに行動した。ロバートが、目が覚めるほど美しい鳶色の肌の娘に出会ったのは、その集団が隠れ家としている洞窟であった。彼女は、日焼けした顔に歯が白く、肌と瞳が同じ金色がかった鳶色をしていた。頬骨が高く、陽気な目元で、唇をきりっと一文字に結んでいる。頭髪は、陽光に色濃く焼けた小麦畑のように、黄金色がかった鳶色をしていた。しかし、髪をなでつけようとしても、すぐに髪の毛が立ってしまうほどの短さだ。髪の毛さえ、短く刈り込まれていなければ彼女は相当の美人だろうと、ロバートは思った。

彼女はロバートに微笑みかけ、彼の向かい側に座って彼を眺めた。彼が視線を返すと、娘は微笑して、膝の上に両手をそろえた。灰色のワイシャツの下に小さな上向きの乳房の形がはっきりとわかった。彼女の名前はマリアといった。彼女は、捕虜となり、丸坊主にされて汽車で護送される途中に、ゲリラ隊によって救出されたのである。ゲリラの拠点である洞窟には、さまざまな人間がいた、彼らはこれまでも反乱軍の支配地域で列車爆破やその他の破壊活動を展開してきた。列車爆破の際には、さまざまな戦利品を獲得することができる。酒、食料品、衣類、その他なんでも手に入れることができた。だが、箸の爆破からは、いかなる戦利品も獲得できない。全員が共和国の理念に共感を抱いているとはいえ、その動機は必ずしも単純ではない。なかには「戦利品」の獲得により大きな関心を抱く者も少なくなかったのである。

洞窟の主パブロは、このゲリラ集団のリーダーであった。だが、橋の爆破には賛成しない。「俺は、橋をやりには行かねえよ。俺も、俺の手下も行かねえ」。橋の爆破は何の儲けにもならないし、危険でさえある。それが橋の爆破に反対するパブロの理由であった。だが、パブロの連れ合いのピラールはそうではなかった。共和国のためならば、たとえ危険を冒しても、ロバートの任務に協力すると言い切った。それは、共和国に寄せる彼女の信頼があるばかりではなく、少なからずロバートに対する彼女の好意・好感にも根ざすものであった。他の仲間は、あまりの危険さに尻込みするか、ビラールの意志が強いことがわかると、賛成に回った。それほど彼らのピラールに対する信頼は厚かった。

反対にパブロは、リーダーとしての実験を次第に失いつつあった。彼は、かつては、民衆運動の熱烈な指導者であったが、次第に日和見主義になり、仲間への思い、ピラールとの不和、ロバートへの嫉妬など、様々な思いを残しながら洞窟を去って行くことになる。しかし、パブロは洞窟を飛び出したものの、再び戻ってみたり、橋の爆破作戦の恐ろしさから、爆破装置を燃やしてしまったりする。だが、彼は迷った末、パブロは結局最後の戦闘を仲間たちとともに戦うこととなる・。

あるとき、ピラールはロバートを指していった。「この人は共産主義者なのよ。コミュニストは、みんなとてもまじめな人たちだわ」。彼女はコミュニストではない、「おまえは共産主義者かい」と尋ねられると「いいえ、私は反ファシストよ」と答えるのであった。スペインでは、1936年2月の総選挙で、共和左派、社会党、共産党などの「人民戦線」が勝利を収め、アサーニャ人民戦線内閣が成立した。しかし、7月には、フランコ将軍を指導者とする軍部右派のクーデターが発生し、さまざまな過程を経て、共和政府は崩壊し、スペインは長きに渡って、フランコの独裁支配に服することに鳴る、

だが、「人民戦線内閣」が誕生する前後には、コミュニストは、民衆から相当な信頼を獲得していた。もしフランコのクーデタが失敗し、共和政府が存続し続けていたとすれば、結局スペインには、共和主義政府が生まれていたかもしれない。ロバートはコミュニストではない、彼は、ゲイロードで出会ったコミュニストたちと、みずからの思想や来し方行く末について語り合ったことがある。「僕は帰国しても教授になれるかどうかわからないよ。多分赤だと言って追い払われるだろうからね」。ロバートがそう語ると、ジャーナリストでコミュニストであるカルコフはこう答えた。「うん、おそらく君はソヴィエト連邦にいって、研究を続けることができるだろう、組は弁証法については、どれくらい読んでいるかね」と。ロバートはこう答えた。「僕はエミール・バーンズの編纂した『マルクス主義教程』を読んだ。それだけだ」。ロバートの心には、ファシズムに対する怒り、共和政府への共感、そして共産主義に対する漠たる信頼の思いが交錯していたのである。

ロバートが洞窟の入り口近くで寝具にくるまって寝ていると、人の気配が感じられた。急いで、拳銃を手に取るが、それはマリアであった。彼は握った拳銃を放し、両手を差し伸べて、彼女を下に引き寄せた。彼女は震えていた。メリアは町長の娘であったが、その父が共和主義者であるとの理由で、反乱集団に銃殺されたのであった。その母も、マリアの面前で「町長でった私の夫、万歳」と叫びながら銃殺されていった。マリアは両親が虐殺されるのを目の当たりにしたあと、町役場で父のデスクの上で多数の反乱分子に辱められ、監獄に送られようとしたのである。

心に傷を負う、マリアは、ロバートを慕いながらも、その傷をどうすることもできない。過去を怪我されているがゆえに、男性の愛を期待することができないと思い続けるマリアであった、だが、ロバートは優しく彼女に話しかける、「僕は君を愛しているよ」。マリアは、生まれて初めての愛、そしておそらく生涯唯一の愛となるであろう思いを、ロバートに傾けるようになった。だが、愛し合う二人には死の危険が迫っている。

ジプシー出身のピラールは占いをよく行う、手相もみる。かつてロバートの手相に凶運を発見し、悟られまいとして彼女はうろたえたことがある。そのことを覚えているロバートは、攻撃を前にして、ピラールにいう。「あんたの話しっぷりが、俺がとても気に入った」「私がなんでもあけすけに話すようにしていますのさ」「それじゃあ、俺の手相に出ていたことを教えてください」「いいえ」と彼女は首を振った。「何も見えやしなかったのですよ。

友人の攻撃開始と同時に橋を爆破しなければならない。そして、その攻撃の開始は、友軍が、爆撃開始した爆音でしか判断できない。行き詰まるような緊張が続く中、見方の攻撃開始以前に、敵が全面的な行動を開始したという情報が寄せられた。鉄橋爆破の情報が漏れたのか、敵軍は退去して橋を渡りつつあるのだ。これでは、鉄橋爆破の意味が無くなってしまう。ロバートは、ゴルツ将軍に向け作戦中止を求める伝令を走らせた。しかし、友人内部の混乱、官僚主義、イデオロギーの対立等が渦巻く中、伝令はなかなかゴルツ司令部まで到達することができない。ようやく司令部に到達したときには、すでに友軍が爆音も高く攻撃に移った後であった。

敵が全面的作戦を展開したあとの攻撃であるから、味方の敗北は必至であった。だが、ロバートは、勝利を予測できないにせよ、少しでも味方の有利を図るべく、鉄橋の爆破に取りかかる。橋を守る兵隊を殺し、息詰まる緊張感の中で、爆薬の装着が始まった。すでに敵の戦車は橋を渡り、あるいは橋の直前を侵攻している、激しい銃撃戦の中で、美愛方の相当数も命を失っている。

そのとき、轟音とともに、鉄橋が爆破された。橋上の兵士、戦車もろとも谷底に転落していった。

爆破に成功した一行は、馬で脱出を図る。だが、ロバートたちが岩陰に隠れていることを察知した敵軍は、機関銃や大砲で一行の逃亡を阻止しようとした。脱出するには、馬で一人づつ、敵の猛攻の中を駆け抜けなければならない。一人が駆け抜け、敵が弾丸を込め直している間、次の一人が駆け抜ける、何人かは安全な物陰まで脱出した。パブロもピラールもマリアも脱出に成功した。

だが、不運にもロバートは脱出の途中で馬が倒れ、その下敷きになって、左足を骨折してしまった。とても馬に乗れる状態ではない。仲間がロバートを物陰に引きずっていったが、このあと脱出を続けることは難しい。最後までロバートと一緒にいると言い張るマリアに、ロバートは優しく言って聞かせる。「よく聞いてくれ。僕たちはもうマドリードには行けなくなった。しかし、僕は、どこへだって、君の行くところへついていくよ。わかったかい」。説得に説得を重ねた末に、ロバートはマリアを無理に馬に乗せて追い立てた。追撃する敵が迫ってくる。意識を失いそうになる自分を励まして、ロバートは、マリアたちの脱出を確かにするための機関銃の引き金に指を掛けるのであった。

以上

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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