面接官の第一印象はどこまで当たるか——でたらめな回答にも面接官は自信を持った

面接の最初の数分で、評価はどこまで決まるのか

「面接は入室して最初の数十秒で決まる」という話を、受験生も保護者もよく耳にします。本当だとすれば、準備すべきは話の中身より第一印象なのでしょうか。

この問いには、社会心理学の薄切り判断(thin slices:ごく短い行動の断片から人を判断すること)の研究と、産業・組織心理学の採用面接の研究が、それぞれ答えを出してきました。そして両者の答えは、一見すると食い違っています。前者は「短い観察でも驚くほど当たる」と言い、後者は「面接官の直感はあまり当たらない」と言うのです。

この記事では、この2つの研究の流れを突き合わせ、印象管理(impression management:自分を良く見せるための意図的な振る舞い)の研究も加えて、総合型選抜の面接準備に何が言えるかを整理します。面接が制度としてどう変わるかは、当サイトの総合型選抜の面接が必須になると、何が変わるかで扱っています。

一言でいうと(この記事の結論)
短い観察による判断は、複数人の判断を平均すれば一定の予測力を持ちます。面接の冒頭の印象も、その後の評価と結びついていました。しかし一人の面接官の直感は当たりにくく自己呈示の上手さは入学後・入社後の成果と別物でした。準備の中心は「印象の演出」ではなく、質問に中身で答える力に置くべきです。

  1. 5分未満の行動観察による予測の正確さは、38の結果を統合して効果量 r = .39でした [1]
  2. 面接の冒頭(ラポール形成)で良い印象を与えた候補者は、面接官の評価(r = .42)とインターンの内定(r = .22)が高くなりました [7]
  3. 自己アピールは面接評価と正の関係(r = .20)、事実を誇張・創作するイメージづくりは負の関係でした [9]
  4. 【反証】自己呈示の戦術は面接評価を動かしても、後の職務遂行とは結びつかず、非構造化面接ほど影響を受けました [8]
  5. 【反証】でたらめな回答をする相手とも、面接官は本物の面接と同じくらい自信を持って印象を形成し、予測はかえって悪化しました [10]
  6. 【反証】保健医療系の入学面接が学業成績を予測する効果量は0.06と非常に小さいものでした [13]
  7. 面接を短い複数の場面に分けた形式では、場面の数を増やすことが評価者を増やすより信頼性を高めました [15]
マインドマップ図解:面接官の第一印象はどこまで当たるか——でたらめな回答にも面接官は自信を持った
図:この記事の構造(Mapifyで作成したマインドマップ)

1. 薄切り判断——短い観察は、なぜ当たるのか

Ambady と Rosenthal は、5分未満の短い行動観察から客観的な結果をどれだけ予測できるかを、社会心理学と臨床心理学の研究でメタ分析しました [1]

  • 38の結果を統合した予測の正確さの効果量は r = .39
  • 観察時間を長くしても、予測の正確さは上がらなかった。30秒未満の観察と4〜5分の観察で有意差はなかった
  • 顔、話し方、体、声の調子など、どの経路で判断したかは正確さと関係しなかった

続く研究で、Ambady らは大学教員の授業の30秒未満の音声なしの映像を見知らぬ人たちに評価させ、その平均が学期末の学生による授業評価を有意に予測したことを示しました [2]。高校教員についても校長の評価を予測し、6秒・15秒というさらに短い映像でも評価と強く関連しました。一方、細かな非言語行動や外見の魅力の評価は、それほど強く関連しませんでした。

ただし、「短いほど良い」わけではありません。334人の判定者が30人を評価した研究では、全体として観察時間が長いほど正確さは上がり、5分のやりとりの後半の断片ほど判断が正確で、60秒が正確さと長さの比で最適でした [3]。否定的感情・外向性・誠実性・知能は5秒でも中程度に判断できましたが、肯定的感情・神経症傾向・開放性・協調性はより長い観察を必要としました。

一言でいうと
短い観察でも、多くの人の判断を平均すればある程度は当たる。ただし何が見えやすいかは特性によって違い、観察が長いほど、後半ほど正確になる傾向もありました。

2. 面接の冒頭の印象は、最終評価とつながっている

では、実際の面接で冒頭の印象はどれほど効くのでしょうか。Barrick らは、構造化面接の最初の段階(ラポール形成:雑談などで打ち解ける段階)での評価が、面接終了時の得点、その後の追加面接、実際のインターンの内定にどう影響するかを調べました [7]

冒頭の印象と関連した結果 相関・説明率
インターンの内定の数 r = .22
面接官の評価 r = .42
同じ面接官の後の評価(能力の印象の上乗せ) ΔR² = .05
別の面接官の評価 ΔR² = .05
ラポール形成を飛ばした別の面接官の評価 ΔR² = .05

注目すべきは、冒頭で「有能そうだ」という印象が、好感や自分との類似性を超えて、別の面接官の評価にも結びついていたことです。対照的に、好感や類似性の評価は、別の面接官の判断とは有意に関連しませんでした。著者らは、冒頭の数分の印象には、候補者の能力についての有用な判断が含まれうると解釈しています [7]

3. 印象管理——効く戦術と、逆効果の戦術

面接では、候補者は自分を適した人物に見せようと印象管理を行います。Swider らの研究は、戦術の種類によって効果の向きが逆になることを示しました [9]

  • 自己アピール(self-promotion):面接終了時の得点と正の関係(r = .20)
  • わずかなイメージづくり(slight image creation):負の関係(r = −.11)
  • 大がかりなイメージづくり(extensive image creation):負の関係(r = −.19)
  • 冒頭で「自分は適していないと見られた」と感じた候補者ほど、どの戦術も効果が大きかった(ΔR² = .04〜.10)

スイスの人材紹介会社で行われた164件の実際の採用面接の研究では、面接官が知覚した印象管理は、応募者自身が報告した印象管理と一致しませんでした [12]。面接官が「自己アピールしている」「率直だ」と感じると評価は上がり、「わずかなイメージづくりをしている」と感じると評価は下がりました。一方、偽りの迎合、イメージの防衛、大がかりなイメージづくりの知覚は、評価と関連しませんでした。著者らは、面接官は応募者の印象管理を見抜けると過信しているかもしれないと指摘しています。

一言でいうと
実際にしたことをはっきり伝える自己アピールは評価を上げ、事実を盛る演出は評価を下げる傾向がありました。面接官が「見抜いている」とは限らないものの、盛った話は得になりにくいのです。

4. 【反証】第一印象と自己呈示は、実力を映さない

面接で見えるものは、仕事で得られるものではない

Barrick らのメタ分析は、外見、印象管理、言語・非言語行動という3つの自己呈示戦術と、面接評価および後の職務遂行との関係を統合しました [8]。結論は論文の題名どおり、「面接で見えるものは、仕事で得られるものではないかもしれない」というものです。そして、非構造化面接は特にこれらの戦術の影響を受けていました

面接官は、でたらめな回答にも意味を見出す

Dana らの3つの研究は、非構造化面接がなぜ信じられ続けるのかを調べました [10]。研究1では、参加者が同級生の学期GPAを、過去のGPAなどの有効な情報と、非構造化面接をもとに予測しました。

  • ある条件では、面接相手は無作為な回答システムで答えており、面接は実質的に無意味だった
  • それでも参加者は、本物の回答と同じくらい自信を持って印象を形成した(意味づけ:sensemaking)
  • 面接を行うと、かえって予測が悪くなった(希釈:有効な情報の価値が、診断に役立たない情報で薄まる)
  • 研究3では、参加者は面接なしより、無作為な面接があるほうを選んだ

入学面接の予測力は小さい

保健医療系の学部の入学面接を扱った20研究のメタ分析では、面接の成績が学業成績を予測する平均効果量は 0.06(95%信頼区間 0.03〜0.08)と非常に小さく、臨床実習での成績の予測は 0.17(同 0.11〜0.22)とささやかな正の予測力でした [13]

外見の魅力による偏り

実験研究のメタ分析では、魅力的な人は採用に関わるさまざまな結果で有利に扱われ、加重平均効果量は d = .37でした [11]。この偏りは、職務に関連する情報の量が多くても少なくても違わず、専門家も大学生と同じように影響を受けていました。一方、この偏りは近年の研究ほど小さくなっていました。

自信は、正確さの目安にならない

写真や動画による第一印象の3つの研究では、判断する人は、自分のどの印象が正確かをほとんど見分けられませんでした [5]。自信を左右していたのは、正確さと無関係な要因でした。また、科学系の講演動画の研究では、音声なしの短い抜粋による印象は、講演の科学的な質の評価も娯楽性の評価も予測しませんでした [6]。著者らは、診断に役立つ情報が豊富で視聴者が注意深いときには、表面的な手がかりの影響が圧倒されると考えています。

一言でいうと(反証のまとめ)
自己呈示は評価を動かしても実力とは結びつかず、面接官はでたらめな回答にも意味を見出し、外見の偏りは専門家にもあります。そして、中身のある情報が十分にあれば、表面的な印象の影響は小さくなりえます。

5. 2つの研究はなぜ食い違うのか——「集計」と「構造」

薄切り判断は当たるのに、面接官の直感は当たらない。この食い違いを説明しようとしたのが Eisenkraft です [4]。薄切り判断の研究は、複数の判定者の判断を平均した集計レベルで予測力を測っている。一方、実際の面接では一人の面接官が判断する。したがって、直感にもとづく第一印象は、複数の独立した評価者の判断を集めて組み合わせない限り、通常は職務遂行の有効な予測因子にならない、という主張です。

大学の入試側の工夫も、この方向を向いています。マクマスター大学医学部で117人の出願者に、10の短い場面からなるマルチプル・ミニ・インタビュー(MMI)を実施した研究では、信頼性は 0.65でした [14]。そして、従来の面接の妥当性を下げる要因として疑われていた「文脈特異性」について、候補者と場面の交互作用による分散が、候補者による分散より大きかった——つまり、同じ人でも場面によって評価が大きく変わることが示されました。

MMIの研究66件を検討した系統的レビューは、信頼性を報告した40研究から、場面の数を増やすことは、1場面あたりの評価者を増やすより信頼性に大きく効くとまとめています [15]。一方で、MMIの結果と学業成績の関係は、形式の違いにかかわらず小さいかゼロでした。

構造化面接の研究を20年分まとめたレビューも、偏りの低減、構造化面接での印象管理、評定尺度の作り方など8つの主題を検討し、多くが分かっている一方で未解決の問いも多いと結論しています [16]

6. 実務——面接の準備を「中身」に寄せる手順

ここでの研究の多くは採用面接と医療系の入学面接で、日本の総合型選抜の面接とは目的も形式も違います。そのため、以下は研究の方向から導いた準備の方針であり、合否への効果が検証されたものではありません。

  1. 話す内容を「実際にしたこと」で準備する(1問につき5分)。自己アピールは正、事実を盛る演出は負の関係でした [9]。想定質問ごとに、自分の行動と結果を1つずつ書き出します。
  2. 最初の1分の受け答えを練習する(毎回1分×3回)。冒頭の「有能さ」の印象は、その後の評価とつながっていました [7]。挨拶の後、志望理由を30秒で言える形にしておきます。
  3. 模擬面接は、毎回違う人に頼む(2〜3人)。一人の判断は偏りやすく、複数の判断を集めると安定します [4]。家族・先生・塾の講師など、立場の違う人に質問してもらいます。
  4. 模擬面接の講評で、「自信がありそう」かどうかより「答えの中身」を聞く。印象の自信は正確さの目安になりませんでした [5]
  5. 「冒頭で失敗した」と感じても、そこで諦めない。冒頭で不利だと感じた候補者ほど、その後の自己アピールの効果が大きかったからです [9]
  6. 身だしなみは「減点されない」水準で十分と考える。外見の偏りは存在しますが [11]、中身の情報が豊富なら表面的な印象の影響は小さくなりえます [6]

この記事で言えないこと

  • 日本の総合型選抜の面接で、第一印象が合否にどの程度影響するかを調べた研究は、今回確認できませんでした。
  • 引用した面接研究の多くは採用場面か医療系学部の入学選抜で、高校生の大学入試面接とは条件が異なります。
  • 模擬面接を何回行えば本番の評価が上がるか、という数値は研究からは示せません。

当塾の立場

塾に来なくても、家庭でできること

  • 想定質問ごとに「実際にしたこと」を1つ書き出す
  • 家族が交代で面接官役をし、毎回違う人が質問する
  • 講評では「堂々としていたか」より「答えに具体例があったか」を伝える
  • 話を盛る練習ではなく、事実を短く伝える練習をする

それでも個別指導を使う理由

  1. 家族とは違う立場の「別の面接官」になれるから。一人の判断は当たりにくく、複数の独立した判断を集めることが大切でした [4]。家庭での練習に、利害関係の薄い第三者の視点を加えます。
  2. 演出ではなく、答えの中身を鍛えられるから。自己呈示の上手さは後の成果と結びつきませんでした [8]。志望分野の知識や、自分の経験の説明を、質問への答えとして組み立て直します。
  3. 話の「盛りすぎ」を指摘できるから。イメージづくりは面接評価と負の関係でした [9]。本人が良かれと思って加えた誇張を、事実に戻す手伝いをします。

塾を検討するときは、次のように聞いてみてください。

  • 面接指導は、話し方や態度の指導と、答えの中身の指導のどちらが中心ですか
  • 模擬面接は、何人の講師が担当しますか
  • 生徒の経験を実際より良く見せるような指導をすることはありますか

まとめ

  1. 5分未満の観察による予測の正確さは r = .39 でした [1]
  2. 観察が長く、後半であるほど判断は正確になる傾向がありました [3]
  3. 面接冒頭の有能さの印象は、別の面接官の評価や内定とも結びつきました [7]
  4. 自己アピールは正、イメージづくりは負の関係でした [9]
  5. 【反証】自己呈示は面接評価を動かしても、後の遂行とは結びつきませんでした [8]
  6. 【反証】面接官は無意味な回答にも自信を持って印象を形成しました [10]
  7. 【反証】入学面接の学業成績の予測力は 0.06 と非常に小さいものでした [13]
  8. 第一印象が有効になるのは、複数の独立した判断を集めたときでした [4] [15]

出典

  1. 【薄切り判断のメタ分析】Ambady & Rosenthal (1992). Thin slices of expressive behavior as predictors of interpersonal consequences: A meta-analysis. Psychological Bulletin. DOI: 10.1037/0033-2909.111.2.256
  2. 【30秒の映像と授業評価】Ambady & Rosenthal (1993). Half a minute: Predicting teacher evaluations from thin slices of nonverbal behavior and physical attractiveness. Journal of Personality and Social Psychology. DOI: 10.1037/0022-3514.64.3.431
  3. 【観察時間と正確さ】Carney et al. (2007). A thin slice perspective on the accuracy of first impressions. Journal of Research in Personality. DOI: 10.1016/j.jrp.2007.01.004
  4. 【集計による正確さ】Eisenkraft (2013). Accurate by way of aggregation: Should you trust your intuition-based first impressions? Journal of Experimental Social Psychology. DOI: 10.1016/j.jesp.2012.11.005
  5. 【反証・自信と正確さの乖離】Ames et al. (2010). Not so fast: The (not-quite-complete) dissociation between accuracy and confidence in thin-slice impressions. Personality and Social Psychology Bulletin. DOI: 10.1177/0146167209354519
  6. 【反証・講演の薄切り判断は予測せず】Gheorghiu et al. (2019). A thin slice of science communication: Are people’s evaluations of TED talks predicted by superficial impressions of the speakers? Social Psychological and Personality Science. DOI: 10.1177/1948550618810896
  7. 【面接冒頭の評価と内定】Barrick, Swider, & Stewart (2010). Initial evaluations in the interview: Relationships with subsequent interviewer evaluations and employment offers. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/a0019918
  8. 【反証・自己呈示と職務遂行のメタ分析】Barrick, Shaffer, & DeGrassi (2009). What you see may not be what you get: Relationships among self-presentation tactics and ratings of interview and job performance. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/a0016532
  9. 【印象管理戦術の効果】Swider, Barrick, Harris, & Stoverink (2011). Managing and creating an image in the interview: The role of interviewee initial impressions. Journal of Applied Psychology. DOI: 10.1037/a0024005
  10. 【反証・非構造化面接の錯覚】Dana, Dawes, & Peterson (2013). Belief in the unstructured interview: The persistence of an illusion. Judgment and Decision Making. DOI: 10.1017/s1930297500003612
  11. 【反証・外見の魅力のメタ分析】Hosoda, Stone-Romero, & Coats (2003). The effects of physical attractiveness on job-related outcomes: A meta-analysis of experimental studies. Personnel Psychology. DOI: 10.1111/j.1744-6570.2003.tb00157.x
  12. 【面接官の印象管理の知覚】Roulin, Bangerter, & Levashina (2014). Interviewers’ perceptions of impression management in employment interviews. Journal of Managerial Psychology. DOI: 10.1108/jmp-10-2012-0295
  13. 【反証・入学面接のメタ分析】Goho & Blackman (2006). The effectiveness of academic admission interviews: An exploratory meta-analysis. Medical Teacher. DOI: 10.1080/01421590600603418
  14. 【マルチプル・ミニ・インタビュー】Eva, Rosenfeld, Reiter, & Norman (2004). An admissions OSCE: The multiple mini-interview. Medical Education. DOI: 10.1046/j.1365-2923.2004.01776.x
  15. 【MMIの系統的レビュー】Knorr & Hissbach (2014). Multiple mini-interviews: Same concept, different approaches. Medical Education. DOI: 10.1111/medu.12535
  16. 【構造化面接のレビュー】Levashina, Hartwell, Morgeson, & Campion (2013). The structured employment interview: Narrative and quantitative review of the research literature. Personnel Psychology. DOI: 10.1111/peps.12052

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宮川 涼 Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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