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二項定理—公式の意味と係数の求め方、パスカルの三角形|武蔵野個別指導塾

(2x − 3)⁵ の x² の係数を、符号まで落とさず出せますか。二項定理の係数は n 個の括弧から b を選ぶ数え方で決まり、パスカルの三角形も同じ数え方の上に乗っています。
| 知りたいこと | 式 |
|---|---|
| 展開の全体 | (a + b)ⁿ = ₙC₀ aⁿ + ₙC₁ aⁿ⁻¹b + ₙC₂ aⁿ⁻²b² + … + ₙCₙ bⁿ |
| 一般項(第 r + 1 項) | ₙCᵣ aⁿ⁻ʳ bʳ (r = 0, 1, 2, …, n) |
| 係数の値 | ₙCᵣ = n! / (r! × (n − r)!) |
n は何乗するか、r は b を何個選ぶか、ₙCᵣ は「n 個の括弧のうち、b を取る括弧を r 個選ぶ選び方の数」を表します。特定の項の係数がほしいときは、一般項の r を決めて代入すれば終わりです。
よくあるのは、塾の自習室の白板の前で (2x − 3)⁵ の x² の係数を求めようとして、マーカーを持った手が止まるという場面です。(a + b)² なら書ける。(a + b)³ も、がんばれば掛けられる。けれど 5 乗となると、掛け算で押し切る気力は出ません。C の右下に何を書くのか、指数はどちらが減るのか、マイナスはどこで付くのか。公式に見覚えはあるのに、自分の問題に当てはめる最初の一手が出てこない。二項定理で止まるのは、たいていその一手の前です。
公式の形と文字の意味
二項定理は、(a + b) を n 回掛けた式を、実際に掛け算をせずに書き下す公式です。定理そのものは数学Ⅱの「いろいろな式」で学び、係数に使う ₙCᵣ は数学Aの「場合の数と確率」で学びます。2 つの科目にまたがるので、C の計算が曖昧なままだと、式だけが宙に浮きます。
一般項は、図1のように 3 つの部品でできています。ₙCᵣ が「同じ項がいくつできるか」を受け持ち、aⁿ⁻ʳ と bʳ が「どんな文字の積か」を受け持ちます。左から r + 1 番目の項なので、第 r + 1 項とも呼びます。

n = 5, r = 2 を入れて、文字を数に置きかえると次のようになります。
| 記号 | 意味 | n = 5, r = 2 のとき |
|---|---|---|
| n | (a + b) を掛ける回数 | 5 |
| r | b を取る括弧の個数 | 2 |
| n − r | a を取る括弧の個数 | 3 |
| ₙCᵣ | b を取る括弧の選び方の数 | ₅C₂ = (5 × 4) / (2 × 1) = 10 |
| aⁿ⁻ʳ bʳ | その項の文字の部分 | a³b² |
| ₙCᵣ aⁿ⁻ʳ bʳ | 第 r + 1 項 | 10a³b² |
n を小さい順に並べると、形の決まりが目で確かめられます。
| n | (a + b)ⁿ の展開 |
|---|---|
| 2 | a² + 2ab + b² |
| 3 | a³ + 3a²b + 3ab² + b³ |
| 4 | a⁴ + 4a³b + 6a²b² + 4ab³ + b⁴ |
| 5 | a⁵ + 5a⁴b + 10a³b² + 10a²b³ + 5ab⁴ + b⁵ |
この表から読み取れる決まりは 3 つです。
- a の指数は n から 1 ずつ下がり、b の指数は 0 から 1 ずつ上がります。どの項でも指数の和は n です。
- 項の数は n + 1 個です。r が 0 から n まで動くので、n 個ではありません。
- 係数は左右対称です。₅C₂ と ₅C₃ がどちらも 10 であるように、ₙCᵣ = ₙCₙ₋ᵣ が成り立ちます。
中3で覚えた (a + b)² = a² + 2ab + b² は、n = 2 の場合にすぎません。真ん中の 2 は ₂C₁ です。
C の計算は、分子に n から下へ r 個、分母に r から 1 まで r 個の数を並べて掛けます。₇C₃ = (7 × 6 × 5) / (3 × 2 × 1) = 35 です。r が大きいときは対称性で小さくします。₉C₇ は ₉C₂ に直せば (9 × 8) / (2 × 1) = 36 で済みます。両端の ₙC₀ と ₙCₙ は 1 です。どの括弧からも b を取らない選び方は、1 通りしかないからです。
引き算の形は、別の公式として覚えません。b の場所に -b を丸ごと入れるだけです。(a − b)ⁿ の一般項は ₙCᵣ aⁿ⁻ʳ (-b)ʳ となり、r が奇数の項だけ符号が負になります。
なぜこの形になるのか
(a + b)⁴ を (a + b)(a + b)(a + b)(a + b) と書き直します。展開とは、4 つの括弧のそれぞれから a か b を 1 つずつ取って掛け、できた積を全部足す操作です。取り方は 2 × 2 × 2 × 2 = 16 通りあるので、同類項をまとめる前の積は 16 個あります。
その 16 個のうち a²b² になるのは、b を取る括弧がちょうど 2 つのときです。図2に、その取り方を全部並べました。b を取る括弧を決めれば、残りの括弧は自動的に a です。つまり a²b² の個数は「4 つの括弧から 2 つを選ぶ選び方の数」で、₄C₂ = 6 となります。係数の 6 は、どこかから降ってきた数ではなく、数えた結果です。

n と r が何であっても同じです。n 個の括弧から b を取る括弧を r 個選ぶと、残りの n − r 個は a を取るので、積は aⁿ⁻ʳ bʳ になります。それが ₙCᵣ 個できるので、項は ₙCᵣ aⁿ⁻ʳ bʳ です。これを r = 0 から r = n まで足せば二項定理になり、証明はここで終わります。a を取る括弧を先に選んでも数は同じなので、係数の左右対称 ₙCᵣ = ₙCₙ₋ᵣ もここから出ます。
公式に特別な値を入れると、確かめの道具が手に入ります。a = b = 1 を入れると、ₙC₀ + ₙC₁ + … + ₙCₙ = 2ⁿ です。n = 4 なら 1 + 4 + 6 + 4 + 1 = 16 で、さきほどの 16 個の積が、ちょうど 5 種類の項へ振り分けられた計算です。
係数だけを取り出して積み上げたものが、図3のパスカルの三角形です。いちばん上の 1 は (a + b)⁰ = 1 の係数なので、n = 0 の段と数えます。ここを 1 段目と数えると、(a + b)⁵ の係数を 1 段ずれて読むことになります。

隣り合う 2 数の和がすぐ下の数になる理由も、展開の中にあります。(a + b)⁵ は (a + b)⁴ × (a + b) です。a³b² ができる道は 2 本しかありません。(a + b)⁴ の 4a³b に b を掛ける道と、6a²b² に a を掛ける道です。だから係数は 4 + 6 = 10 になります。C で書けば ₅C₂ = ₄C₁ + ₄C₂、一般には ₙCᵣ = ₙ₋₁Cᵣ₋₁ + ₙ₋₁Cᵣ です。
使い分けは単純です。全部の項が要るならパスカルの三角形、1 つの項だけ要るなら一般項。n が 5 や 6 までなら三角形は手で書けますが、(x + 1)²⁰ の x³ の係数のために 20 段も積む必要はありません。₂₀C₃ = 1140 を計算すれば済むからです。
例題で使い方を確かめる
易しい順に 4 問です。どの問題も、一般項か三角形のどちらを使うかを最初に決めてから手を動かします。
例題1 (x + 2)⁴ を展開してください
- 係数の段 1, 4, 6, 4, 1 を書きます。全部の項が要るので、C を 5 回計算するより三角形を読むほうが速いからです。
- x の指数を 4 から 0 へ下げ、2 の指数を 0 から 4 へ上げて並べます。式にすると 1 × x⁴ + 4 × x³ × 2 + 6 × x² × 2² + 4 × x × 2³ + 1 × 2⁴ です。どの項も指数の和が 4 になっていることを、並べながら確かめられるからです。
- 数の部分を計算します。係数を 1, 4, 6, 4, 1 のまま残す誤りは、ここで 2 の累乗を掛け忘れることから起きるので、2, 4, 8, 16 を 1 つずつ掛けます。
- 両辺に x = 1 を入れて確かめます。左辺は 3⁴ = 81、右辺は 1 + 8 + 24 + 32 + 16 = 81 で一致します。展開はどの x でも成り立つ等式なので、1 つ入れるだけで大きな誤りを拾えます。
答え:x⁴ + 8x³ + 24x² + 32x + 16
例題2 (2x − 3)⁵ の x² の係数を求めてください
- 一般項を ₅Cᵣ (2x)⁵⁻ʳ (-3)ʳ と書きます。2x と -3 を塊のまま a と b に入れるのは、2 とマイナスを落とさないためです。
- x の指数に注目し、5 − r = 2 から r = 3 を決めます。x が入っているのは (2x)⁵⁻ʳ だけなので、ここの指数を見れば足ります。
- r = 3 を代入して ₅C₃ (2x)² (-3)³ とします。全部の項を書かずに、ほしい 1 項だけを取り出せるのが一般項の強みです。
- ₅C₃ = 10、(2x)² = 4x²、(-3)³ = -27 を別々に計算してから掛けます。まとめて暗算すると符号の行方を見失うので、10 × 4 × (-27) = -1080 と 3 つ並べます。
答え:-1080
例題3 (x² − 2/x)⁶ の定数項を求めてください
- x² を a、-2/x を b と見て、一般項を ₆Cᵣ (x²)⁶⁻ʳ (-2/x)ʳ と書きます。分数でも、塊のまま入れる手順は変わらないからです。
- x の部分をまとめます。(x²)⁶⁻ʳ = x¹²⁻²ʳ、(-2/x)ʳ = (-2)ʳ / xʳ なので、一般項は ₆Cᵣ (-2)ʳ x¹²⁻³ʳ です。x の指数を 1 つの式にしないと、r を決める方程式が立たないからです。
- 12 − 3r = 0 を解いて r = 4 とします。定数項とは、x がちょうど消えた項、つまり x の指数が 0 の項だからです。
- ₆C₄ × (-2)⁴ = 15 × 16 = 240 を計算します。₆C₄ は ₆C₂ に直すと (6 × 5) / (2 × 1) = 15 で、計算が軽くなります。
答え:240
例題4 (x + 2y − z)⁶ の x²yz³ の係数を求めてください
括弧の中が 3 つに増えても、考え方は同じです。ここが多項定理の入口です。
- 6 個の括弧を、x を取る 2 個、2y を取る 1 個、-z を取る 3 個に振り分けます。x²yz³ を作れる取り方は、この配分しかないからです。
- 振り分け方を数えます。x の括弧の選び方が ₆C₂ = 15 通り、残り 4 個から 2y の括弧を選ぶのが ₄C₁ = 4 通り、残り 3 個は -z に決まるので 1 通りで、15 × 4 × 1 = 60 通りです。順に選べば、C の計算だけで足りるからです。
- 文字の前の数を掛け合わせます。x からは 1、2y からは 2、-z を 3 回取るので (-1)³ = -1 が出て、1 × 2 × (-1) = -2 です。例題2 と同じく、選び方の数だけでは係数にならないからです。
- 60 × (-2) = -120 を計算します。
答え:-120
一般に、(a + b + c)ⁿ で a を p 個、b を q 個、c を r 個取る項(p + q + r = n)の係数は n! / (p! × q! × r!) で、これが多項定理です。今の問題なら 6! / (2! × 1! × 3!) = 720 / 12 = 60 となり、手順 2 の数と一致します。別の公式として抱え込まなくても、C を 2 回使えば同じ数に届きます。
まちがえやすいところ
係数を ₙCᵣ だけで答える
- 誤った書き方:(2x − 3)⁵ の x² の係数は ₅C₃ = 10
- どこが違うか:₅C₃ は「何通りあるか」しか数えていません。図4のように、(2x)² の 2² と (-3)³ も、同じ項の係数に掛かります。
- 正しい書き方:₅C₃ × 2² × (-3)³ = 10 × 4 × (-27) = -1080

「第 3 項」の r を 3 にする
- 誤った書き方:(a + b)⁷ の第 3 項は ₇C₃ a⁴b³
- どこが違うか:r は 0 から始まります。第 1 項が r = 0 なので、第 3 項は r = 2 です。₇C₃ a⁴b³ は、1 つ右の第 4 項です。
- 正しい書き方:₇C₂ a⁵b² = 21a⁵b²
累乗の累乗で指数を足す
- 誤った書き方:(x²)⁶⁻ʳ = x⁸⁻ʳ
- どこが違うか:2 と 6 − r を足しています。累乗の累乗は掛け算です。r = 1 を入れると、本当は (x²)⁵ = x¹⁰ なのに、誤った式では x⁷ になって食い違います。
- 正しい書き方:(x²)⁶⁻ʳ = x¹²⁻²ʳ
3 つとも、一般項を塊のまま 1 行書かずに暗算へ入ったときに起きます。その 1 行は回り道に見えて、いちばんの近道です。
覚え方と忘れたときの戻り方
公式を丸ごと暗記する必要はありません。式の形を忘れたら、次の順で戻ります。
- (a + b) を n 個、横に並べて書きます。
- b を取る括弧を r 個選ぶと考えて、ₙCᵣ を書きます。
- 残りの n − r 個は a を取るので、aⁿ⁻ʳ bʳ を書き足します。
- n = 2, r = 1 を入れて確かめます。₂C₁ a¹b¹ = 2ab と出れば、(a + b)² の真ん中の項と合うので、形は正しいと言えます。
二項定理に語呂は要りません。一般項を書いたら、C の右下と b の右肩が同じ r か、a と b の指数の和が n か、この 2 点だけを見てください。
三角形のほうは、両端に 1 を置いて隣どうしを足すだけなので、n = 5 の段まで 1 分もかかりません。覚えたかどうかを確かめたいなら、11 の累乗が使えます。11² = 121、11³ = 1331、11⁴ = 14641 は、n = 2, 3, 4 の段と同じ数字の並びです。(10 + 1)ⁿ を展開しているのだから当然で、11⁵ = 161051 で並びが崩れるのは、係数の 10 が繰り上がるからです。
練習問題
例題の手順を見ずに、一般項か三角形かを自分で決めてから解いてください。
- (x − 3)⁴ を展開してください。
- (3x − 2)⁶ の x³ の係数はいくつですか。
- (x − 2/x²)⁹ の定数項はいくつですか。
答えと解説
練習1の答えは x⁴ − 12x³ + 54x² − 108x + 81 です。全部の項が要るので三角形の 1, 4, 6, 4, 1 を使い、-3 の累乗 1, -3, 9, -27, 81 を順に掛けます。符号は 1 項おきに変わります。x = 1 を入れると左辺は (-2)⁴ = 16、右辺は 1 − 12 + 54 − 108 + 81 = 16 で一致します。
練習2の答えは -4320 です。一般項は ₆Cᵣ (3x)⁶⁻ʳ (-2)ʳ で、6 − r = 3 から r = 3 です。₆C₃ = 20、3³ = 27、(-2)³ = -8 を掛けて、20 × 27 × (-8) = -4320 となります。27 を掛け忘れると -160 で止まり、符号を落とすと正の数になります。
練習3の答えは -672 です。一般項は ₉Cᵣ x⁹⁻ʳ (-2/x²)ʳ です。(-2/x²)ʳ = (-2)ʳ / x²ʳ なので、x の指数は 9 − r − 2r = 9 − 3r です。9 − 3r = 0 から r = 3 となり、₉C₃ × (-2)³ = 84 × (-8) = -672 です。分母の x² を x のまま数えると指数が 9 − 2r となり、r が整数になりません。そこで計算の誤りに気づけます。
次に確かめる公式
- 組合せの公式 ₙCᵣ:係数の計算そのもので手が止まるときに戻ります。
- 指数法則:(x²)⁶⁻ʳ や 1/xʳ を整理して、x の指数を 1 つの式へまとめるときに使います。
- 反復試行の確率:確率 p のことを n 回試して r 回起きる確率 ₙCᵣ pʳ (1 − p)ⁿ⁻ʳ を求めるときに使い、二項定理と同じ形がそのまま現れます。
個別指導では、一般項で手が止まったら、₅C₂ の計算と (a + b)³ を括弧から展開するところまで戻って確かめます。どこまで戻れば自力で進めるかは、白板に 1 問書いてもらうと見えてきます。
まとめ
二項定理は、長い式を覚えるための定理ではありません。括弧を n 個並べ、b を取る括弧を r 個選ぶ。その数え上げを式の形に書き留めただけのものです。次に係数で手が止まったら、公式集を開く前に括弧を 3 つ書いてみてください。
括弧を並べて選び方を数えられる人は、この公式を忘れることはあっても、失うことはありません。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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