天びんの図から移項の理由をたどり、分数・小数を含む式、比例式、代金・速さ・過不足の文章題を学べます。途中式と代入による確かめ方まで、自分のノートで試してみましょう。
よくあるのは、宿題のノートの余白に「移項すると符号が変わる」と書いたのに、3x+5=17 の次の行で手が止まるという場面です。5 は -5 にするのに、3x の 3 はなぜ -3 にしないのでしょうか。覚えた言葉だけでは、項を移す操作と、両辺を割る操作の区別がつきにくくなります。
一次方程式は、わからない数を x と置き、等しい関係を手がかりにその値を求める道具です。多くの教科書では中1で学びます。等号の両側に同じ操作をする理由がつかめると、かっこや分数があっても、次に何をすればよいかを判断できます。
計算の答えを出すだけでなく、代金、追いつくまでの時間、配る数の過不足も扱います。文章を式にするところで迷ったら、「何と何が等しいのか」を言葉にしてから、ノートに等号を書いてみましょう。
この単元で身につけること
- 方程式と解の意味を区別します。文字に数を代入して等式が成り立つとき、その数を方程式の解といいます。
- 等式の性質を使って式を変形します。両辺に同じ操作をすれば、等しい関係を保てることが出発点です。
- 移項とかっこの計算を使い分けます。項を等号の反対側に移すときと、同じ辺の中で計算するときでは、符号の扱いが異なります。
- 分数・小数を含む方程式や比例式を解きます。式を扱いやすい整数の形に直し、最後は x=数 の形にします。
- 文章の数量関係から方程式を立てます。求めた数を代入するだけでなく、人数や時間として条件に合うかも確かめます。
前の単元で学んだ正負の数の計算、分配法則、同類項をまとめる計算が、ここで式を整理するための土台になります。符号で止まるなら正負の数へ、かっこで止まるなら分配法則へ戻ると、直す場所を絞れます。
基本の考え方
方程式は「成り立つ数」を探す式です
3x+5=17 のように、文字の値によって成り立ったり成り立たなかったりする等式が方程式です。等号の左側を左辺、右側を右辺、両方を合わせて両辺といいます。x=4 を代入すると左辺は 3×4+5=17 なので、右辺と等しくなります。したがって、この方程式の解は 4 です。
一方、x=3 では左辺が 14 になり、17 と一致しません。「文字に入れられる数」と「方程式の解」は同じ意味ではありません。また、3x+5 だけなら式であって、何と等しいかが書かれていないので、この情報だけで x は決まりません。
例えば、1本 x 円の鉛筆を3本と50円の消しゴムを買い、合計が290円だったとします。代金を等号で結ぶと 3x+50=290 です。50円を除いた240円が鉛筆3本分なので、1本は80円です。式では 3x=240、x=80 と進めます。ここでも、等号は「次に計算する」という合図ではなく、左右の金額が同じという意味です。
天びんから等式の性質を考えます
図1のように、左の皿に x の袋3個と重さ5の分銅、右の皿に重さ17の分銅があると考えます。袋はどれも同じ重さです。左右がつり合っているとき、両方の皿から重さ5を取り除けば、つり合いを保ったまま 3x=12 になります。

等式の性質は、両辺に同じ数を足しても、両辺から同じ数を引いても等式が成り立つというものです。両辺に同じ数をかけても成り立ち、両辺を同じ0でない数で割っても成り立ちます。0では割れないため、割る数には必ず条件がつきます。
3x+5=17 の両辺から5を引くと、3x+5-5=17-5 です。左辺の +5-5 が消えて 3x=12 になり、両辺を3で割ると x=4 になります。図の天びんは正の重さで理由をつかむためのものですが、等式の性質は負の数を扱う式にも使えます。
移項は両辺への操作を短く書く方法です
3x+5=17 から 3x=17-5 と書くように、項を符号を変えて反対の辺へ移すことを移項といいます。5が等号を飛び越えたために変化したのではなく、両辺から5を引いた結果を短く書いています。3x-5=17 なら、両辺に5を足すので 3x=17+5 です。
例えば 5x+2=2x+11 では、文字の項を左へ、数の項を右へ集めて 5x-2x=11-2、3x=9、x=3 と進みます。反対側へ移した +2x と +2 の符号が変わり、動かしていない 5x と 11 の符号は変わりません。
これに対し、3x=12 の 3 は x にかかる係数です。+3 という独立した項ではないため、移項して x=12-3 とはできません。かけ算を元に戻すには、両辺を3で割ります。すべての項を一方の辺に集めて整理したとき、ax+b=0(a は0でない数)の形になる方程式を一次方程式といいます。まずは移項して同類項をまとめ、最後に係数で割る流れを使いましょう。
例題で解き方を確かめる
例題1 かっこを含む方程式
3(x-2)=x+8 を解きます。かっこの外の3は、中の両方の項にかかっていることに注意します。
- 分配法則でかっこを外します。左辺は 3x-6 なので、3x-6=x+8 です。先に各項を見える形にすると、移項するものを選びやすくなります。
- x を左辺へ、-6 を右辺へ移項します。3x-x=8+6 となります。文字の項と数の項をそれぞれ集めるためです。
- 同類項をまとめて 2x=14 とし、両辺を2で割って x=7 とします。係数を1にすれば、求める数を読み取れます。
元の式で左辺は 3×(7-2)=15、右辺は 7+8=15 です。途中で整理した式だけでなく、問題の式に戻って確かめれば、かっこの外し間違いも見つけられます。
答え:x=7
例題2 分数と小数が混ざる方程式
(x+1)/3=0.5x-1 を解きます。左辺は x+1 全体を3で割った式で、x+1/3 とは違います。
- 0.5=1/2 と見直し、両辺に6をかけます。分母の3と2の最小公倍数を使うと、一度に分母を払えるからです。
- 左辺は 2(x+1)、右辺は 3x-6 なので、2(x+1)=3x-6 です。右辺の -1 にも6をかけることを忘れないようにします。
- かっこを外して 2x+2=3x-6、移項して 2x-3x=-6-2 とします。まとめると -x=-8 なので、両辺を -1 で割って x=8 です。
代入すると左辺は (8+1)/3=3、右辺は 0.5×8-1=3 です。小数だけの式なら、小数第1位までの係数には10、小数第2位までなら100を両辺にかける方法も使えます。ただし整数の項も含め、両辺のすべての項を同じ倍率にします。
答え:x=8
例題3 比例式
x:15=2:3 を解きます。2つの比が等しいことを表す式を比例式といい、この式は x/15=2/3 という意味です。
- 分数の等式に直し、両辺に45をかけます。15と3の両方で割り切れる数を使うと、3x=30 が得られます。
- 両辺を3で割ります。x=10 となり、比の一方の量が求められます。
- 10:15 を両方5で割って 2:3 になると確かめます。比では一方だけを割らず、両方の数を同じ数で割ります。
一般に a:b=c:d なら ad=bc で、外側どうしの積と内側どうしの積が等しくなります。これは a/b=c/d の両辺に bd をかけた結果です。ここでは b、d は0でないものとします。「斜めにかける」とだけ覚えるより、分数に戻せるようにしておくと、かける組を取り違えにくくなります。
答え:x=10
例題4 速さの文章題
弟が家から毎分60mで歩き始め、5分後に姉が同じ家から同じ道を毎分90mで追いかけます。2人は一定の速さで進むとき、姉は出発してから何分後に追いつくでしょうか。
- 姉が歩いた時間を x 分と置きます。弟は先に5分歩いているので、歩いた時間は x+5 分です。図2では、同じ時刻に追いついても歩いた時間が異なることを横の長さで表しています。

- 道のり=速さ×時間を使い、弟の道のりを 60(x+5)m、姉の道のりを 90x m と表します。同じ場所から出て追いつくので、家からの道のりが等しく、60(x+5)=90x です。
- かっこを外して 60x+300=90x、移項して 300=30x、両辺を30で割って x=10 と求めます。弟は15分歩き、60×15=900、姉は 90×10=900 で道のりも一致します。
図2の目盛りは弟の出発からの時刻で、追いつく位置は15分です。問われた「姉の出発から」は10分なので、図の目盛りをそのまま答えないようにします。時速と分が混ざる問題では、式を立てる前に時間の単位をそろえます。
答え:姉が出発してから10分後
つまずきやすいところと直し方
誤り1 移項していない項まで符号を変える
誤った書き方は、4x-7=9 から -4x=9+7 とすることです。-7 は右辺へ移していますが、4x は左辺に残っているため、4x の符号は変わりません。
正しくは 4x=9+7、4x=16、x=4 です。移項する項にだけ印をつけ、元の符号と移した先の符号を見比べます。迷うときは 4x-7+7=9+7 と両辺への操作を省略せずに書けば、どこが消えたかが見えます。
誤り2 分母を払うとき整数の項を置き去りにする
誤った書き方は、x/2+3=5 の両辺に2をかけて x+3=10 とすることです。2をかける対象は左辺全体なので、+3 にも2をかける必要があります。
正しくは 2×(x/2+3)=2×5、x+6=10、x=4 です。両辺をいったんかっこで囲めば、分配法則を使う範囲が明確になります。分母を消す操作は、分数だけを特別に書き換える操作ではありません。
誤り3 「余る」と「足りない」の向きを逆にする
同じ人数にカードを配り、1人に3枚ずつなら4枚余り、4枚ずつなら2枚足りないとします。人数を x 人として 3x-4=4x+2 と書くのは誤りです。3x は配った分、4x は配るために必要な分で、どちらも手持ちの総数そのものではありません。
図3のように、配った分に余りを足すと手持ちの総数になり、必要な分から不足を引いても手持ちの総数になります。正しくは 3x+4=4x-2 です。移項すると 4+2=4x-3x、x=6 となり、手持ちは22枚です。

図3は解が出た後の枚数で描いています。18+4=22、24-2=22 と確かめると、足すか引くかの理由を目で追えます。「余りは足す」と言葉だけで覚えるより、等号の両側に何の総数を置くかを先にそろえましょう。
練習問題
まず自分で途中式を書き、答えを見た後は元の式への代入まで行いましょう。文章題では、x が何を表すかと単位を書いてから式を立てます。
練習1
2(x+3)=5x-9 を解きましょう。
練習2
0.2x+1=x/2-2 を解きましょう。
練習3
比例式 (x+2):12=3:4 を解きましょう。
練習4
1冊120円のノートを何冊かと、1本80円のペンを2本買うと、合計が760円でした。ノートは何冊買いましたか。
答えと解説
練習1の答えは x=5 です。2x+6=5x-9、6+9=5x-2x、15=3x と進めます。代入すると両辺は16です。
練習2の答えは x=10 です。両辺に10をかけて 2x+10=5x-20、30=3x とします。元の式でも両辺は3になります。
練習3の答えは x=7 です。4(x+2)=36、x+2=9 と進めます。代入すると 9:12=3:4 です。
練習4の答えは5冊です。ノートを x 冊として 120x+80×2=760、120x=600、x=5 です。120×5+80×2=760 で代金が合い、冊数も正の整数になっています。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
一次方程式は、比例の式から未知の数を求めるときや、後に学ぶ連立方程式を解くときにも使います。文章から「同じ道のり」「同じ総数」を見つける読み方も、そのまま次の学習につながります。
家庭では5分を区切り、次の2つを試してみましょう。1つ目は、解いた問題を1問選び、各行の横に「両辺から5を引く」など操作の名前を書くことです。2つ目は、答えを元の式に代入し、左辺と右辺を別々に計算することです。保護者がお子さまに声をかけるなら、「なぜ符号が変わったのかな」と1行だけを尋ねると、説明する場所がはっきりします。
個別指導では、移項の前に等号の意味を確かめ、必要なら文字式の項の区別や正負の数の計算まで戻ります。文章題で止まる場合は、計算を急がず、数量の単位と等しい対象を言葉で整理します。
まとめ
答えが合わないときは、消しゴムで全部消す前に、左右へ違う操作をしていないかを1行ずつ見直してみましょう。代入して一致しなかったことは、解き方を点検する出発点になります。文章題なら、式の計算が合っていても、問われた時間や人数を答えているかという最後の確認が残ります。
ノートに残す価値があるのは、答えの横の丸だけではありません。一次方程式の確かさは、等号の両側が同じだと説明できる1行に宿ります。





