同じ個数の袋と面積図を手がかりに、文字式の決まり、負の数の代入、1次式の加減をたどります。買い物の例題と練習問題で、等式・不等式の使い分けまで確かめられます。
よくあるのは、夕方の台所のテーブルで宿題を開き、3x+2を見て「3と2を足せば5xになるのかな」と鉛筆が止まる場面です。数字だけの計算なら最後は1つの数になったのに、文字が入るとどこまで計算してよいのか迷います。ここで必要なのは、文字を消そうとすることではなく、文字がどんな量を表すかを読み取ることです。
たとえば、1袋にx個入ったあめが3袋と、ばらのあめが2個あれば、全部で3x+2個です。袋の中身が決まっていないので、合計もまだ1つの数には決まりません。それでも、袋の数とばらの数の関係は、この式だけで伝えられます。
文字を使えば、個数や値段が変わるたびに文章を書き直す必要がなくなります。式を書く、数を入れる、計算をまとめる、数量の関係を示す、という順で進めていきましょう。
この単元で身につけること
- 文字で数量を表します。何をxやaとするのか、単位も含めて決めると、文章を式に置き換えやすくなります。
- 文字式の決まりに従って書きます。かけ算の記号を省く場所や、わり算を分数に直す方法を区別します。
- 式の値を求めます。文字を数に置き換える「代入」を行い、負の数や累乗を含む計算も順序を守って進めます。
- 1次式を計算します。項と係数に注目し、まとめられる部分を見つけ、かっこを外して整理します。
- 関係を等式・不等式で表します。合計が等しいのか、ある数より小さいのかを、文章に合う記号で示します。
前の単元で学んだ正の数・負の数の計算は、文字の前の数を計算するときや、負の数を代入するときにそのまま使います。文字が入っても、かっこの中を先に計算することや、加減より乗除を先に行うことは変わりません。
基本の考え方
文字は、決めた数量の代わりです
図1のように、同じ個数のあめが入った袋が3つあり、別に20個のあめがあるとします。1袋の個数をx個と決めると、3袋分はx+x+x、全部ではx+x+x+20です。同じ数を3回足す部分をかけ算にして、3x+20と書けます。

同じ場面の同じ文字は、同じ数を表します。1袋目だけx=5、2袋目はx=8として1つの式を読むことはできません。一方、袋の中身をすべて5個にした場面と、すべて8個にした場面なら、どちらも3x+20で表せます。文字式は、数が変わっても共通する計算の形を残す書き方です。
式を作る前には、「xは1袋のあめの個数」と言葉で決めておきます。xを袋の個数に変えるなら、同じ3xでも意味が変わるためです。この場面ではxは正の整数ですが、計算問題の文字には負の数や分数が入る場合もあります。
省いてよい記号と、省けない記号
文字式では、数と文字のかけ算の記号×を省き、数を文字の前に置きます。x×3は3x、a×bはabです。文字どうしはふつうアルファベット順に書きます。1×xはx、(-1)×xは-xとし、係数の1は省きます。0×xは0です。
同じ文字の積は、x×x=x²、x×x×x=x³のように累乗で表します。2xはxを2倍すること、x²はxを2回かけることです。数字どうしの2×3を23と書くことはできません。また、足し算と引き算の記号は省けず、x+3をx3とは書きません。
わり算は、x÷4ならx/4、(x+2)÷3なら(x+2)/3と分数で表します。後者のかっこは、x+2全体が3で割られることを示します。x+2/3では、3で割るのは2だけなので別の式です。2÷xは2/xで、この式では割る数のxを0にはできません。
文章を式にするときは単位もそろえます。1個a円の品物を4個買う代金は4a円、時速v kmで2時間進む道のりは2v kmです。x mと30 cmの長さを合わせるなら、cmにそろえて(100x+30) cmと表します。数字と文字を並べる前に、もとの量を確かめましょう。
項・係数・式の値を区別します
5x-3を5x+(-3)と見ると、加法で結ばれた部分は5xと-3です。こうした部分を「項」といいます。文字を含む項で、文字にかけられている数が「係数」です。5xの係数は5、-xの係数は-1です。符号も項や係数の一部として扱います。
3xや-2x+5のように、文字の1次の項だけ、またはそれと数の項の和で表される式を「1次式」といいます。x²を含むx²+1は1次式ではありません。3x+2xは(3+2)x=5xとまとめられますが、3x+2では文字の項と数の項をこれ以上まとめられません。
文字に数を置き換えることが「代入」で、計算して得た結果が「式の値」です。3x+20にx=5を代入すると3×5+20=35となります。数を入れる前の式と、数を入れた後の値を分けて考えると、「文字式の答えに文字が残ってよいのか」という迷いも減ります。
例題で解き方を確かめる
例題1 買い物の代金と残金を表す
1本120円のペンをa本、80円の消しゴムを1個買い、500円を出します。支払える本数を買うものとして、代金と残金を式で表し、a=2の残金も求めます。
- ペンの代金を120×a=120a円とします。1本の値段に本数をかけると、ペン全部の代金になるからです。
- 消しゴム代を足し、合計を120a+80円とします。消しゴムは1個なので、80にもaをかける必要はありません。
- 残金を500-(120a+80)円とします。引く対象は代金全体なので、かっこでひとまとまりにします。
- a=2を代入し、500-(120×2+80)=500-320=180と計算します。先に買い物の合計を求めると、お金の動きと計算が一致します。
答え:代金は(120a+80)円、残金は{500-(120a+80)}円、a=2の残金は180円です。
残金は420-120a円とも表せます。ただ、文章から式を作る最初の段階では、500から何を引いたのかが見える形にすると、買った物の書き落としに気づきやすくなります。
例題2 負の数を代入して式の値を求める
x=-2のとき、-2x²+3x-1の値を求めます。これは1次式ではありませんが、文字式の表し方と計算の順序を確かめる問題です。
- xのある場所をすべて(-2)に置き換え、-2×(-2)²+3×(-2)-1と書きます。負の数をかっこで囲むと、符号がどこに属するかを確認できます。
- 累乗を先に計算して、(-2)²=(-2)×(-2)=4とします。文字の前にある係数の-2は、2乗の対象に含まれません。
- かけ算を行い、-2×4+3×(-2)-1=-8-6-1=-15と計算します。加減は、累乗と乗算が終わってから行います。
答え:式の値は-15です。
-2x²は「xの2乗の-2倍」です。「-2x全体の2乗」なら(-2x)²と書くので、かっこの有無を見落とさないようにします。
例題3 1次式の減法と数の乗法
(5x+2)-(2x-4)と3(x+2)を、それぞれ計算します。見た目は違いますが、同じ式になることを確かめましょう。
- 最初の式は、引く式全体に-1をかけたものを足すと考えます。(5x+2)-(2x-4)=5x+2-2x+4となり、かっこの中の2つの項の符号が変わります。
- 文字の項どうし、数の項どうしをまとめます。5x-2x+2+4=(5-2)x+6=3x+6です。同じ文字の部分を残して係数を計算します。
- 次の式は分配法則を使います。3(x+2)=3×x+3×2=3x+6です。かっこの外の3は、中の両方の項にかけます。
答え:どちらも3x+6です。
図2のように、縦3、横x+2の長方形を横の長さxと2に分けると、面積は3xと6に分かれます。全体を先に計算しても、分けて足しても面積は同じなので、3(x+2)=3x+6と読み取れます。図はx=4の場合の比率で描いています。

長さとして考える図ではx>0ですが、この計算の決まりはxが負の数でも成り立ちます。また、(6x+9)÷3は(6x+9)/3=2x+3です。わり算でも式全体を割るので、文字の項だけでなく数の項も3で割ります。
例題4 数量の関係を等式・不等式にする
1個80円の品物をx個買い、袋代120円を加えます。合計が600円である場合と、600円以下である場合を式で表します。
- 合計金額を80x+120円とします。袋代は個数に関係なく1回分なので、80xの外に足します。
- 合計がちょうど600円なら、80x+120=600とします。「等しい」という関係を=で結んだ式を「等式」といいます。
- 合計が600円以下なら、80x+120≦600とします。600円ちょうども含むため、小さいか等しいことを示す≦を使います。このように大小関係を示す式が「不等式」です。
答え:ちょうど600円なら80x+120=600、600円以下なら80x+120≦600です。
「600円未満」なら80x+120<600、「600円以上」なら80x+120≧600、「600円を超える」なら80x+120>600です。まずはxを求めることより、文章の条件を過不足なく式にすることに集中します。
つまずきやすいところと直し方
文字の項と数の項を混ぜてしまう
誤った書き方は3x+2=5xです。3xはxが3つ分、2は数そのものなので、2を勝手にxの2つ分に変えることはできません。正しい書き方は3x+2のままです。計算できる部分が残っていなければ、文字や+が残っていても答えになります。
確かめるにはx=4を入れてみます。3x+2は14、5xは20となり、同じ値になりません。ただし、ある1つの数で値が一致しても、いつでも同じ式だと確認できたことにはならないので注意します。
かっこの先頭だけに数をかけてしまう
誤った書き方は-2(x-3)=-2x-3です。これは-2をxにだけかけ、-3へのかけ算を抜かしています。正しくは-2×x+(-2)×(-3)=-2x+6です。マイナスどうしの積がプラスになる点まで確かめます。
かっこを引く場合も同じです。7x-(2x-5)なら7x-2x+5=5x+5となります。「符号を変える」とだけ覚えて不安になるときは、引くかっこの前に係数-1が隠れていると考え、両方の項にかける形へ戻します。
「以下」を「より小さい」と読んでしまう
「xは3以下」をx<3と書くのは誤りです。<では3ちょうどが除かれてしまいます。正しくはx≦3です。図3のように、<の端は白い丸、≦の端は塗りつぶした丸にすると、端の数を含むかどうかが見えます。強調した線の側が条件に当てはまる数です。

不等号の開いた側には大きい量、尖った側には小さい量を書きます。x≦3と3≧xは同じ関係です。文章で迷ったら、境目の3を入れて「この値でもよいか」と確かめると、=の部分が必要か判断できます。
練習問題
練習1 次の式を文字式の決まりに従って書きます。(1) x×(-3) (2) (a+4)÷2 (3) a×a。かけ算の記号を省く場合と、かっこを残す場合を区別してください。
練習2 x=-3のとき、4x-5の値を求めます。最初の1行には、代入した負の数をかっこで囲んだ式を書きます。
練習3 (2x-1)+3(x+2)を計算します。かっこを外す行と、同じ種類の項をまとめる行を分けて書いてみましょう。
練習4 1枚100円のカードをa枚買い、包装代50円を加えます。合計が500円未満になる条件を不等式で表します。aを求める必要はありません。
答えと解説
練習1の答えは(1) -3x、(2) (a+4)/2、(3) a²です。(2)はa+4全体を2で割るため、かっこを残します。(3)はaの2倍ではなく、aどうしの積です。
練習2の答えは-17です。4×(-3)-5=-12-5=-17となります。4と-3のかけ算を先に行います。
練習3の答えは5x+5です。2x-1+3x+6=(2+3)x+(-1+6)=5x+5とまとめます。3を2にもかけたか確認します。
練習4の答えは100a+50<500です。左辺が合計金額で、「未満」は500円ちょうどを含みません。包装代にもaをかけていないか見直します。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
文字で表した数量を=で結ぶと、次の方程式につながります。式を整理する計算は、その先の比例や関数でも使います。文字の意味を決める習慣は、文章から必要な数量を取り出す土台になります。
家庭では、5分で次の2つを試せます。まず、3x+20のxを2から3に変え、値が26から29へ3増える理由を袋の図で説明します。次に、-2(x-3)を声に出して読み、かけ算の記号を省かない形へ戻してみます。
個別指導では、式を作れないときは単価×個数の意味まで、符号で止まるときは負の数の乗法まで戻って確かめます。お子さまの説明を聞くときも、答えだけでなく「この文字は何の数か」を尋ねると、困っている場所が見えやすくなります。
まとめ
文字が残った答案は、計算の途中とは限りません。3x+2をそのまま残す判断には、3袋分とばら2個を区別する理解があります。逆に、かっこの中の数を1つ落とすと、もとの数量の関係が変わってしまいます。
ノートを見直すときは、文字に付けた意味と、式の各部分が対応しているかを確かめましょう。文字式の正しさは、答えの短さではなく、もとの数量の関係が最後の1行まで保たれていることで決まります。





