成功を自分では動かせない原因に結び付ける見方は、学校への関わりや成績の低さと関連しています。原因説明を変える介入には、数学の成果が改善した研究と、学習成果への効果が見られなかった研究があります。家庭では、解けた内容と本人が考える成功の理由を確かめます。
テストがよくても、子どもは「たまたま簡単だっただけ」と言います。次のテストに向けて、また机にかじりつきます。そんな場面で親が「頑張ったからだよ」と返したとき、子どもが何を受け取ったかを聞きます。点数の話と、その点数をどう説明するかの話を分けてみます。
原因帰属とは、成功や失敗の原因をどう受け取るかということです。ここで扱うのは、成功を運や課題の条件に結びつける見方、そしてその見方を変える試みです。子どもの努力量を見ただけで、心の中の説明まで決めません。
1. 論文を役割で並べる
Zuidemaほか(2023)は、オランダの中等学校に入った生徒の成功・失敗の原因説明を調べています。成功を自分では動かせない原因に結びつける群は、学校への関わり、自尊感情、学校成績がほかの群より低かったと報告しています [1]。一方、失敗の原因を動かせないと捉える群と動かせると捉える群には、それらの指標で違いがありませんでした。成功の説明に目を向ける理由を示す観察研究です。
Sukariyah ほか(2015)は、高校生の数学で原因帰属を捉え直す指導をし、数学の成績と原因説明の改善を報告します [2]。介入を受けた生徒は、成功を運や課題の難しさではなく、努力や能力の結果として見るようになりました。群分けでは数学の成績を合わせて比べる準実験を用いています。成績改善があった研究として読みます。
Whalen ほか(2023)は、授業に組み込んだデジタル数学教材で、個別の原因説明を促すフィードバックの結果を報告します [3]。成功を安定した原因に結びつける見方は改善し、とくに成績の低い生徒がその面で恩恵を受けました。一方、失敗の原因説明、自己効力感、数学の学習成果への効果は見つかりませんでした。成功の受け止め方の変化と得点改善を分ける役割を持ちます。
Graham(2020)は、原因帰属の理論を整理し、原因の所在、安定性、制御可能性という区別と、それぞれが結びつく結果を報告します [4]。ほめる、責めるといった教師の行動が、間接的に「能力が低い」という手がかりになる場合も論じています。励ましの言葉を、そのまま子どもの受け取り方と同一視しないための理論的な論文です。
2. 「努力のおかげ」と言えば十分なのか?
次の研究 [2] では努力と能力が成功の説明に含まれていました。[3] では、失敗を能力不足に、成功を努力のような変わりやすい原因に結びつける不利な見方を背景に、成功を安定した原因に結びつける変化を調べています。似た指導でも、何を変えようとしたかが違います。
「もっと頑張ったから」と言うだけでは、今回できた内容を何も確かめていません。家庭で確かめるのは、解けた問題の途中式や説明を見ながら「ここでは何が分かっていた?」と聞くことです。努力した時間と、身についた内容を同じ箱に入れません。
成功と失敗の説明は、別の問いとして読みます。オランダの研究では、成功を動かせない原因に結び付ける群に違いがあり、失敗の原因を動かせるとみる群と動かせないとみる群の指標には違いがありませんでした。家庭では、できた答案と間違えた答案をそれぞれ置き、本人が挙げる理由を聞きます。解けたときに何を自分の力と感じたかも、振り返りの話題にします。[1]
オランダの調査は657人の生徒を追い、調査時点を通じて同じ原因説明の群にとどまった生徒は52%でした。原因の説明には継続と変化の両方がある結果です。群ごとの成績や自尊感情を比較した所見と、群にとどまる割合は違う指標なので、成功の説明を聞くときも、その時点の内容と以前からの変化を分けて見ます。[1]
3. 成功の見方が変われば成績も上がるのか?
そこは分けて答えます。[3] は成功の原因説明の変化を認めながら、学習成果への効果を認めていません。自己効力感にも効果は見つかりませんでした。「前向きな言葉が増えた」と「数学ができるようになった」は、異なる結果です。見方が改善したという報告を、点数が上がった報告へ読み替えません。
次の研究 [2] は数学の成績を合わせて群を比べた準実験で、成績改善を報告しています。この違いを残すと、家庭で何を見ればよいかがはっきりします。本人の説明と、実際に解ける内容を別々に確認します。
数学の介入を比べると、変えようとした説明の中身が違います。努力や能力を成功の理由にする研究と、成功を安定した原因に結び付けるデジタル教材の研究を、同じほめ方としてまとめずに読みます。家庭では、努力した時間、解けた問題、本人が考える成功の理由をそれぞれ聞きます。答案の途中式を示してもらうと、具体的な学習内容と原因説明を並べて確かめられます。[2][3]
4. 中高生の家庭ではどう置けばよいのか?
最初の研究 [1] は中等学校に入った時期、[2] と [3] は数学を学ぶ生徒を扱います。それでも、成功と失敗を一括りにしない問いは使えます。「できなかった理由」ばかり聞いていたら、できたときにも本人が何を理由にしたかを聞きます。これは原因帰属を観察する視点の持ち込みです。
最初の研究 [1] では生徒の原因説明の群を複数の時点で調べ、同じ群にとどまる生徒も、変わる生徒もいました。ひと言聞いただけで「この子は運のせいにする性格」と決めつけません。問題が違えば何を説明するかも違います。家庭では、うまくいった問題と難しかった問題を具体的に置き、本人が挙げた理由をその問題に照らして聞きます。
理論が区別する原因の所在、安定性、制御可能性は、それぞれ別の見方です。「運だった」と言うとき、課題が簡単だったという意味なのか、分かっていた内容を本人が数えていないのかを聞きます。親が理由を上書きする前に、その言葉が指す問題へ戻ります。教師のほめる・責める行動が間接的な手掛かりになるという議論も、言葉の意図と受け取り方を分けて読む材料になります。[4]
【反証】この回が言えないこと
頑張りすぎる子ほど成功を運に結び付ける、とは今回の研究から言えません。観察研究の群間差は、原因説明だけを変えれば成績差が消える証拠ではありません。数学の成績改善を報告した研究の群分けも無作為ではありません。[1][2]
デジタル教材の研究では、成功の説明は変わりましたが、失敗の原因説明、自己効力感、学習成果への効果は見られませんでした。教師のほめ方の理論を、親の同じ言葉の効果と同一視しません。家庭での文例や確認の順番も、今回の比較対象ではありません。[3][4]
実務——家でできる 3 つの確認
まず、できた問題の説明を聞きます。「運だった」と言ったら、反射的に否定せず、問題のどこが解けたかを本人に示してもらいます。次に、答えを見ずに考え方を説明できるかを確認します。最後に、日をあけたときにも同じ内容を取り出せるかを確かめます。後半では、解き方を説明できた内容と、復習で取り出せた内容をそれぞれ確かめます。
武蔵野個別指導塾は、アクティブリコール、間隔反復、完全1対1 の指導を採用しています。成功の理由を本人から聞く場面と、理解を取り出して確かめる場面をつなげて考えます。定期テストに向けた学習相談は武蔵境の定期テスト対策で受け付けます。考え方と成績を混同しない読み方は、マインドセット研究の現在も参照してください。
よくある質問
Q. 頑張ったことをほめるのは間違いですか?
今回の研究は、親が努力をほめる行動の正誤を判定していません。数学の研究で変えた原因説明と、実際に測った学習成果を区別して読みます。[2][3]
Q. 「運がよかった」と言う子は成績が低いのですか?
その一言だけでは、本人の成績を判定しません。群の関連を扱う研究は、本人の答案と原因説明を別々に確認する材料として使います。[1]
Q. 失敗の理由より成功の理由を聞くべきですか?
成功の理由も聞きます。成功の説明に着目した研究結果を踏まえ、できた部分も振り返りの話題に加えます。[1]
出典
- Attributional Profiles: Considering Multiple Causal Attributions for Success and Failure at the Beginning of Secondary School(Pauline M. Zuidemaほか、2023、Contemporary Educational Psychology)
- The Effect of Attribution Retraining on the Academic Achievement of High School Students in Mathematics(Mohamad B. Sukariyahほか、2015、Procedia – Social and Behavioral Sciences)
- Digital re-attributional feedback in high school mathematics education and its effect on motivation and achievement(Katharina Alexandra Whalenほか、2023、J. Comput. Assist. Learn.)
- An attributional theory of motivation(S. Graham、2020、Contemporary Educational Psychology)



