連載「学びの意思決定——行動経済学・社会学・認知心理学から考える」全50回の第36回です。学習の仕方の目次を見る
読んだ内容について、自分で問いを作る。これだけの作業が、理解の成績を上げることが繰り返し確認されています。しかも効果量は、教育介入としては小さくない水準でした。
問いを作るには、何が重要かを判断し、答えられる形に言語化する必要があります。第25回で扱った意味の処理、第29回で扱った生成が、同時に起こります。にもかかわらず、この作業は勉強の場面ではあまり使われていません。
要点(結論から)
- 読んだ内容について質問を作る方略を教えると、理解の成績が向上した。
- 効果量の中央値は、標準化されたテストで0.36、実験者が作成したテストで0.86だった。
- 問いの種類によって効果が変わる。既有知識と結びつける問いは、内容の中だけで完結する問いと区別される。
結論——問いを作る作業が、理解を作る
- 読んだ内容について質問を作る方略を教えると、理解の成績が向上した。
- 効果量の中央値は、標準化されたテストで0.36、実験者が作成したテストで0.86だった。
- 問いの種類によって効果が変わる。既有知識と結びつける問いは、内容の中だけで完結する問いと区別される。
- 問いを作る技術は教えられる。自然に身につくものとして放置しない。
- 実務的には、読んだ後に3つ問いを作るだけで始められる。
理由——介入研究が示したこと
効果量の水準
ローゼンシャインらは、生徒に質問を作る方略を教えた介入研究を集めて総説を行いました。
Rosenshine B, Meister C, Chapman S. Teaching Students to Generate Questions: A Review of the Intervention Studies. Review of Educational Research. 1996;66(2):181.
全体として、読んだ内容について質問を作るという認知方略を教えると、介入終了時のテストで理解の向上が見られました。テストはいずれも新しい材料に基づいています。
効果量の中央値は、標準化されたテストで0.36、実験者が作成したテストで0.86でした。この差は、この分野でよく見られる型です。介入に合わせて作られたテストのほうが、効果が大きく出ます。
実務的な読み方としては、小さいほうの数字を目安にするのが安全です。0.36でも、教育の介入としては小さくありません。
どういう問いを作らせるか
キングは、小学4〜5年生のペアに、互いに自分で作った問いを出し合わせる実験を行いました。条件によって、作らせる問いの種類を変えています。
King A. Guiding Knowledge Construction in the Classroom: Effects of Teaching Children How to Question and How to Explain. American Educational Research Journal. 1994;31(2):338-368.
一方の条件では、授業内の考えどうしを結びつける問いを使いました。もう一方では、それに加えて、既有知識や経験と結びつける問いも使いました。問いの型を与えることで、生徒が作る問いの質を統制したわけです。
ここから分かるのは、問いは自由に作らせるより、型を渡したほうがよいということです。型がないと、内容を単純になぞる問い——「○○は何年に起きたか」——ばかりになります。
具体例——使える問いの型
| 型 | 問いの形 | 働き |
|---|---|---|
| 結びつけ | 「AとBはどう関係しているか」 | 要素間の関係を作る |
| 理由 | 「なぜそうなるのか」 | 根拠を扱う |
| 比較 | 「AとCはどこが違うか」 | 区別の手がかりを作る |
| 適用 | 「これはどんな場面で使えるか」 | 使いどころを結びつける |
| 既有知識 | 「前に習った何と似ているか」 | 手持ちの知識に接続する |
5つのうち、上から3つは内容の中で完結します。下2つは、内容の外へつなぎます。第28回で述べたとおり、既有知識との接続は理解を大きく左右します。
今日からできること
- 読んだ後に、問いを3つ作る。 型の表から3種類選びます。作るだけで、答えなくても構いません。
- 「なぜ」を必ず1つ入れる。 事実を問う問いだけでは、処理が浅くなります。
- 作った問いを、翌日の自分に出す。 第34回で述べた分散と組み合わせられます。
- 友人と問いを交換する。 他人の問いは、自分が見落とした部分を含んでいます。
- 試験前に、出題者として問いを作る。 出そうな問いを予想する作業は、範囲の構造を把握しないとできません。
学年で変えるところ
- 小学生——問いの型を紙に書いて渡します。キングの実験でも、型を与える形が使われていました。
- 中学生——定期テストの範囲から、出そうな問いを作る作業が有効です。実際の出題と比べると、精度が上がります。
- 高校生——問いの抽象度を上げられます。「この立場に対する反論は何か」といった型も使えます。
2つの効果量の差が意味すること
標準化されたテストで0.36、実験者が作成したテストで0.86。この差は、研究を読むうえで重要な情報を含んでいます。
実験者が作るテストは、その介入で扱った内容や形式に近くなりがちです。介入と測定が近いほど、効果は大きく出ます。第24回で述べた符号化と検索の対応が、研究の測定にも働いているわけです。
一方、標準化されたテストは、介入とは独立に作られています。そこで0.36が出たということは、介入の効果が、扱った材料の外へも及んだことを示唆します。こちらのほうが、実務上は意味のある数字です。
この読み方は、学習法の情報全般に使えます。効果量が示されているとき、何で測ったのかを確認する。介入に合わせて作られた指標なら、数字は大きく出て当然です。第6回で述べたとおり、比較の相手と測り方を見ることが、数字を読む作法になります。
出題者の視点に立つ
問いを作る作業の応用として、試験対策における使い方があります。範囲を見て、出そうな問いを自分で作る。これは、単なる予想当てではありません。
出題者は、範囲の中から重要な部分を選び、答えられる形にして出します。つまり、出題の作業は、問いを作る作業そのものです。出題者の視点に立つには、範囲の中で何が重要かを判断できる必要があります。
したがって、作った問いが実際の出題と一致するかどうかは、二次的な問題です。重要なのは、作る過程で範囲の構造を把握することです。当たらなくても、その把握は残ります。
実務的な手順としては、範囲を読み終えた後に5問作り、実際の試験の後で照合します。何度か繰り返すと、どういう部分が問われやすいかの感覚ができます。これも第33回で述べた較正の一種です。
なぜ問いを作ると理解が進むのか
問いを作る作業には、複数の処理が同時に含まれています。
第一に、何が重要かを判断する必要があります。すべてについて問いは作れないので、選別が起こります。この選別が、内容の構造の把握につながります。
第二に、答えられる形にする必要があります。曖昧なままでは問いになりません。言語化の過程で、第25回で扱った意味の処理が起きます。
第三に、自分が分かっていない箇所が見えるようになります。問いが作れない部分は、理解が足りない部分です。第33回で扱った較正の材料にもなります。
つまり、問いを作る作業は単独の技術ではなく、これまでの回で扱ってきた複数の原則を同時に動かす作業だということになります。
2人でやると、さらに効く
キングの実験では、ペアで問いを出し合う形が使われていました。1人で作るよりペアのほうが有利になる理由は、いくつかあります。
第一に、答える相手がいることです。自分で作って自分で答える場合、曖昧な問いでも成立してしまいます。他人に出すと、曖昧さが指摘されます。
第二に、他人の問いが、自分の盲点を突くことです。自分が重要だと思った部分と、相手が重要だと思った部分は違います。その差が、見落としの発見になります。
第三に、説明する機会が生まれることです。相手の問いに答えるとき、単語ではなく説明で答えることになります。第29回で述べた生成が起きます。
実行の形としては、第17回で述べたとおり、相手は1人で足ります。同じ範囲を学んでいる相手がいれば、10分で成立します。相手がいない場合は、作った問いを翌日の自分に出す形で代用できます。時間を空ければ、他人に近い条件になります。
問いが作れないときに分かること
問いを作らせると、「作れない」と言われることがあります。これは失敗ではなく、有用な情報です。
作れない理由は、いくつかに分けられます。内容が理解できていない場合、何が重要かの判断ができません。問いの型を知らない場合、どう言語化すればよいか分かりません。範囲が広すぎる場合、選別の負荷が高すぎます。
見分け方は単純で、型を渡してみることです。「なぜ」で始まる問いを1つ作って、と言えば、型の問題なら解決します。それでも作れないなら、内容の理解が足りていません。第21回で述べた前提の確認に戻ることになります。
この切り分けができると、「作れない」という反応が、指導の出発点になります。作れないことを責める必要はありません。どこに戻ればよいかを教えてくれる合図です。
よくある失敗——事実を問う問いだけを作る
問いを作らせると、最初はほぼ全員が事実を問う形になります。「いつ」「どこで」「誰が」。作るのは簡単ですが、処理は浅く、第25回の分類でいえば字面に近い水準にとどまります。
対処は、型を制限することです。「なぜ」「どう関係しているか」「どこが違うか」の3つだけを使う、と決める。制限があるほうが、質の高い問いが出ます。
もう一つの失敗は、問いを作ったあとすぐ答えてしまうことです。作った直後は内容が頭に残っているので、答えは簡単に出ます。第32回で述べたとおり、間を空けてから答えるほうが練習になります。
保護者ができること——「問題を作って」と頼む
家庭でできる形として、子どもに問題を作らせて、それを解くという遊び方があります。内容を知らなくても成立します。
- 「今日習ったところから、3問作って」——作る作業そのものが学習になります。
- 作った問題を、実際に解いてみせる。 親が解こうとすると、問いの曖昧さが見つかります。
- 「なぜ」を含む問題を1つ入れてもらう。 型の制限を与えます。
2つ目は、意外に効果があります。問いが曖昧だと、解こうとした側が困ります。その困り方を見ると、作った側は問いを具体化しようとします。この往復が、内容の理解を押し上げます。
なお、問いを作る作業は、教科によって難しさが変わります。物語文や評論文では作りやすく、計算中心の単元では作りにくい。計算の場合は、問いを作るより、第31回で扱った誤りの分類や、第23回の型の一覧のほうが扱いやすくなります。方略は万能ではなく、内容の性質に合うものを選ぶ必要があります。
理系の単元でも問いを作る——自分で問うと理解が深まる
問いを作る作業は、文章を読む教科だけのものではありません。たとえば数学の新しい定理を扱った直後、教科書を閉じて「この定理は、どんな条件が崩れると使えなくなるのだろう」と自問してみる場面が考えられます。公式を覚える前に、その公式が成り立つ前提を探す問いを立てるわけです。
理科の実験単元でも同じことが起こります。結果の数値を眺めて「なぜこの値になったのか」と問うだけでなく、「もし条件を一つ変えたら、どこが最初に影響を受けるだろう」と問いをずらしてみます。この形の問いは、答えが教科書に載っていないことが多く、自分で筋道を組み立てる練習になります。
社会や地理の資料読み取りでも、問いの作り方は応用できます。グラフを見て「増えている」と読むところで止めず、「この増え方は、どの時期から始まったと考えるのが自然だろう」と問うてみます。問いの向きを変えるだけで、同じ資料から引き出せる情報の量が変わることがあります。
大切なのは、正解のある問いを作ることではなく、自分がまだ説明できない部分を言葉にすることです。うまく問いにならなくても、迷いを書き出しておくだけで、その後の読み直しの焦点が定まることがあります。
問いが思いつかない——作ること自体で止まる
問いを作る作業を始めると、最初のうちは「良い問いを立てなければ」という意識が働きやすくなります。しかし、この意識が強くなりすぎると、問いを一つ作るのに時間がかかり、読むこと自体が進まなくなることがあります。まずは質を問わず、気になった箇所に印をつけて短い疑問を書き添える程度から始めるほうが続きます。
次につまずきやすいのは、作った問いを放置してしまう点です。授業のノートや付箋に問いを書いても、そのまま見返さなければ、問いは作っただけで終わってしまいます。週の終わりや単元の区切りなど、見返す時間をあらかじめ決めておくと、問いが生きてくることがあります。
また、問いを作る場面を一人での読書に限ってしまうと、行き詰まりやすくなります。友達や家族に「この部分、どう思う」と投げかけるだけでも、自分の問いが別の角度から照らされることがあります。答えを求めるのではなく、問いを共有する相手がいることが助けになる場合があります。
最後に、問いを作る習慣は、一度に多くの単元へ広げようとすると負担になりがちです。まずは一つの教科、一つの単元に絞り、手応えを確かめてから広げていくほうが、無理なく続けられると考えられます。
この記事で言えないこと
ローゼンシャインらの総説は、読解の介入研究を中心としています。数学や理科の学習に、同じ大きさの効果が出るかは、この総説からは決まりません。また、効果量の中央値は研究間のばらつきを含んでおり、個々の場面での効果を保証するものではありません。
加えて、質問を作る方略は、教えるのに時間がかかります。型を渡してすぐに質の高い問いが出るわけではなく、練習が要ります。短期の試験対策としては、費用が見合わない場合があります。
当塾の立場
読んだ後に問いを3つ作る、型を制限する、翌日に答える。いずれも紙と鉛筆でできます。
武蔵野個別指導塾では、単元の終わりに生徒自身に問題を作らせる時間を置いています。作れない箇所が、そのまま理解の穴になります。加えて、作った問題を次回の冒頭に出すことで、分散の効果も同時に得られます。解かせるだけの指導より手間はかかりますが、把握できる情報の量が違うと考えています。
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出典
- Rosenshine B, Meister C, Chapman S. Teaching Students to Generate Questions: A Review of the Intervention Studies. Review of Educational Research. 1996;66(2):181.
- King A. Guiding Knowledge Construction in the Classroom: Effects of Teaching Children How to Question and How to Explain. American Educational Research Journal. 1994;31(2):338-368.

