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【化学】金属元素②(遷移元素)を図解で総まとめ—鉄 銅 銀 クロム マンガン・錯イオン・イオンの分離|武蔵野個別指導塾

鉄・銅・銀の反応を、酸化数と沈殿の行き先から整理します。錯イオンの形や系統分離の図、鉄の製錬と銅の析出量を求める例題で、色の暗記を反応式につなげて確かめましょう。
よくあるのは、美術室の床のタイルを見ながら無機化学の暗記カードを開き、「鉄は淡緑色だったか、赤褐色だったか」と手が止まる場面です。絵の具なら色の名前を一つずつ覚えれば使えますが、化学では「鉄」という元素名だけでは色が決まりません。金属の鉄なのか、水溶液中のイオンなのか、沈殿した水酸化物なのかによって、観察するものが変わるからです。
この単元では、鉄・銅・銀を中心に、物質の名前、イオンの電荷、反応の条件を結びつけます。クロムやマンガンの色の変化も、酸化数を添えると整理しやすくなります。さらに、アンモニアを少量加えた場合と過剰に加えた場合の違いがわかれば、錯イオンと金属イオンの分離を同じ流れで説明できます。色を見て名前を当てるだけでなく、「なぜ今この物質が残るのか」を反応式で追っていきましょう。
この単元で身につけること
- 遷移元素の共通点を整理します。複数の酸化数、有色の化合物、触媒としての利用を、すべての元素に例外なく当てはまる決まりと区別して理解します。
- 鉄の製錬と鉄イオンの反応をつなげます。酸化鉄から単体を得る還元と、Fe²⁺からFe³⁺への酸化を、電子の授受から説明します。
- 銅・銀の化合物を見分けます。溶液の色、沈殿の色、アンモニアに対する変化を、物質の状態と一緒に覚えます。
- 錯イオンの式と形を読み取ります。中心金属イオン、配位子、配位数を区別し、錯イオン全体の電荷を計算します。
- 混合液中の金属イオンの行き先を追います。沈殿を分けるたびに、固体とろ液の両方へ物質名を書き、分離の順序を説明します。
化学基礎で学んだイオン式、物質量、酸化還元が土台になります。反応式を眺めるだけで混乱するときは、まず左右の原子数と電荷の合計が等しいかを確かめると、知識を組み立て直せます。
基本の考え方
遷移元素と鉄の製錬・化合物
高校化学では、周期表の3〜11族に位置する元素を遷移元素として扱います。鉄Fe、銅Cu、銀Ag、クロムCr、マンガンMnはその代表です。12族の亜鉛Znは、この分類では典型元素に含めます。周期表の中央付近にある金属を、位置の印象だけで全部同じ仲間にしないようにしましょう。
遷移元素には、単体が金属である、複数の酸化数をとるものが多い、有色のイオンや化合物をつくるものが多い、単体や化合物が触媒として使われる、といった特徴があります。酸化数は、電子の偏りや授受を整理するために原子へ割り当てる数です。Fe²⁺の鉄は+2、Fe³⁺の鉄は+3です。ただしAg⁺の水溶液は無色なので、「遷移元素のイオンは必ず有色」と覚えるのは誤りです。触媒とは反応の前後でそれ自身は全体として変化せず、反応を速める物質で、鉄はアンモニア合成、二酸化マンガンMnO₂は過酸化水素の分解に用いられます。
鉄の製錬は、鉱石中の酸化鉄を還元して金属の鉄を取り出す操作です。溶鉱炉では鉄鉱石、コークス、石灰石が使われます。コークスは熱源になるとともに、酸化鉄を還元する一酸化炭素COの生成に関わります。反応の骨格は、C + O₂ → CO₂、CO₂ + C → 2CO、Fe₂O₃ + 3CO → 2Fe + 3CO₂と表せます。最後の式では鉄の酸化数が+3から0に下がり、鉄が還元されています。実際の炉内では段階的に還元が進みますが、量的関係はこの総括反応式で考えられます。
石灰石の主成分CaCO₃は、CaCO₃ → CaO + CO₂によって酸化カルシウムを生じます。これは鉱石中の二酸化ケイ素などと反応し、CaO + SiO₂ → CaSiO₃のようにスラグとなります。スラグは鉄と分けて取り除く成分であり、石灰石そのものが酸化鉄の主な還元剤なのではありません。溶鉱炉で得る銑鉄は炭素を比較的多く含み、その炭素量などを調整したものが鋼です。製錬と製鋼を、どちらも「鉄を熱すること」で済ませないことが大切です。
鉄の単体は希塩酸に溶け、Fe + 2H⁺ → Fe²⁺ + H₂となります。ここではFe³⁺ではなくFe²⁺が生じます。一方、常温の濃硝酸などでは表面に緻密な酸化被膜ができ、反応が進みにくくなる不動態をつくります。鉄の酸化物は、酸化鉄(Ⅱ)FeO、赤褐色の酸化鉄(Ⅲ)Fe₂O₃、黒色の四酸化三鉄Fe₃O₄を区別します。Fe₃O₄は鉄がすべて同じ整数の酸化数をもつ物質ではなく、+2と+3の鉄を含みます。
水溶液中のFe²⁺は淡緑色、Fe³⁺を含む通常の水溶液は加水分解などの影響で黄褐色に見えます。水酸化物イオンOH⁻との反応は、Fe²⁺ + 2OH⁻ → Fe(OH)₂、Fe³⁺ + 3OH⁻ → Fe(OH)₃です。水酸化鉄(Ⅱ)は生じた直後には緑白色、水酸化鉄(Ⅲ)は赤褐色の沈殿です。Fe(OH)₂は空気中の酸素で酸化されやすく、4Fe(OH)₂ + O₂ + 2H₂O → 4Fe(OH)₃となって色が変わります。
図1のように、横向きの変化を酸化、下向きの変化を沈殿生成として整理すると、同じ鉄でも反応の種類が違うことが見えてきます。図の色分けは物質を区別するためのもので、実物の微妙な色合いを再現したものではありません。

Fe³⁺の確認には、チオシアン酸イオンSCN⁻によって血赤色の錯体を生じる反応も使われます。沈殿ができる反応とは区別しましょう。また、Fe²⁺はヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液で、Fe³⁺はヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液で、それぞれ濃青色の沈殿を生じます。試薬名中のローマ数字は試薬の錯イオン内の鉄の酸化数であり、調べたい鉄イオンの価数と読み違えないようにします。
銅・銀の反応と錯イオン
銅は赤みを帯びた金属で、通常の希塩酸とは水素を発生して反応しません。鉄よりイオンになりにくい銅でも、酸化作用のある硝酸には溶けます。希硝酸では3Cu + 8HNO₃ → 3Cu(NO₃)₂ + 2NO + 4H₂O、濃硝酸ではCu + 4HNO₃ → Cu(NO₃)₂ + 2NO₂ + 2H₂Oが代表的な反応です。硝酸との反応を「金属と酸だから水素」と判断せず、発生する窒素酸化物を区別します。ここで扱う反応は学習上の整理であり、有害な気体を伴う反応を家庭で試すものではありません。
Cu²⁺を含む水溶液は青色です。OH⁻と反応するとCu²⁺ + 2OH⁻ → Cu(OH)₂となり、青白色の沈殿を生じます。水酸化銅(Ⅱ)は加熱によってCu(OH)₂ → CuO + H₂Oと変化し、黒色の酸化銅(Ⅱ)を生じます。銅の酸化物には赤色の酸化銅(Ⅰ)Cu₂Oもあります。CuOとCu₂Oでは銅の酸化数が違い、後者は糖などの還元性を調べる反応でも登場します。
硫酸銅(Ⅱ)五水和物CuSO₄・5H₂Oは青色の結晶、無水硫酸銅(Ⅱ)CuSO₄は白色です。水和物とは、結晶中に一定の割合の水分子を含む物質をいいます。ここでの青色の結晶と、Cu²⁺を含む青色の水溶液は、物質の状態が違います。式に水和水があるか、固体か溶液かまで確認して覚えましょう。
銀は希硝酸と反応し、3Ag + 4HNO₃ → 3AgNO₃ + NO + 2H₂Oとなります。Ag⁺にCl⁻が反応するとAg⁺ + Cl⁻ → AgClとなり、白色の塩化銀の沈殿ができます。臭化銀AgBrは淡黄色、ヨウ化銀AgIは黄色の沈殿で、これらのハロゲン化銀は光によって分解する性質をもちます。Ag⁺にOH⁻を加えたときは、安定なAgOHの沈殿として書くのではなく、2Ag⁺ + 2OH⁻ → Ag₂O + H₂Oとして褐色の酸化銀ができると整理します。
錯イオンとは、中心となる金属イオンに分子やイオンが配位結合してできた、電荷をもつ粒子です。金属に結びつくNH₃、H₂O、CN⁻などを配位子といい、配位子の非共有電子対が結合に使われます。中心金属に直接結びつく配位原子の数が配位数です。この単元の代表例のように各配位子が1か所で結びつく場合は、配位子の数と配位数が一致します。
AgClはアンモニア水に溶け、AgCl + 2NH₃ → [Ag(NH₃)₂]⁺ + Cl⁻となります。[Ag(NH₃)₂]⁺はジアンミン銀(Ⅰ)イオンで、無色、配位数2、直線形です。Cu²⁺へアンモニア水を少量加えたときは、NH₃ + H₂O ⇄ NH₄⁺ + OH⁻で生じるOH⁻によってCu(OH)₂が沈殿します。さらに過剰のアンモニアが存在すると、Cu(OH)₂ + 4NH₃ → [Cu(NH₃)₄]²⁺ + 2OH⁻と表される変化で沈殿が溶け、深青色になります。[Cu(NH₃)₄]²⁺はテトラアンミン銅(Ⅱ)イオンです。高校化学でこの式に着目するときは、配位数4、正方形の配置として扱います。
配位数4をすべて正方形と考えることはできません。テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン[Zn(NH₃)₄]²⁺は正四面体形です。また、ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン[Fe(CN)₆]⁴⁻は配位数6、正八面体形です。NH₃が配位子のときの名称は「アンミン」であり、「アンモニア」をそのまま名称の中へ入れるわけではありません。名称のジ、テトラ、ヘキサは、それぞれ2、4、6に対応します。
クロム・マンガンは酸化数と液性を添える
クロムの代表的なイオンには、黄色のクロム酸イオンCrO₄²⁻、赤橙色の二クロム酸イオンCr₂O₇²⁻があります。どちらもクロムの酸化数は+6です。2CrO₄²⁻ + 2H⁺ ⇄ Cr₂O₇²⁻ + H₂Oの関係があり、酸性側では二クロム酸イオンが、塩基性側ではクロム酸イオンが増えます。この色の変化ではクロムの酸化数が変わらないので、酸化還元反応ではありません。
酸性条件の二クロム酸イオンが還元されると、Cr₂O₇²⁻ + 14H⁺ + 6e⁻ → 2Cr³⁺ + 7H₂Oとなります。ここでは+6から+3への変化なので酸化還元反応です。Cr³⁺を含む溶液の色は配位子などで変わりますが、高校の反応の整理では緑色を代表として扱います。水酸化クロム(Ⅲ)Cr(OH)₃は灰緑色の沈殿で、酸にも過剰の強塩基にも溶ける両性水酸化物です。「色が変わったから酸化還元」と即断せず、まず酸化数を比べます。
過マンガン酸イオンMnO₄⁻は赤紫色で、マンガンの酸化数は+7です。酸性条件ではMnO₄⁻ + 8H⁺ + 5e⁻ → Mn²⁺ + 4H₂Oと還元されます。Mn²⁺はごく淡い桃色で、薄い水溶液ではほぼ無色に見えます。一方、中性から弱塩基性では、MnO₄⁻ + 2H₂O + 3e⁻ → MnO₂ + 4OH⁻として黒褐色の二酸化マンガンを生じる場合があります。同じMnO₄⁻でも、液性によって生成物と受け取る電子数が違います。問題文の「酸性」を読み落とすと、反応式も計算比も変わってしまいます。
例題で解き方を確かめる
例題1 酸化鉄から得られる鉄の質量
純粋なFe₂O₃が16.0 gあります。十分なCOで完全に還元するとき、得られるFeの質量を求めます。原子量はFe=56、O=16とし、反応はFe₂O₃ + 3CO → 2Fe + 3CO₂で表されるものとします。
- Fe₂O₃のモル質量を求めます。56 × 2 + 16 × 3 = 160 g/molです。反応式の係数が表すのは質量比ではなく物質量の比なので、まずgをmolへ直します。
- Fe₂O₃の物質量は16.0 g ÷ 160 g/mol = 0.100 molです。式の係数から、Fe₂O₃が1 mol反応するとFeは2 mol生じるため、Feは0.200 molになります。
- 求める単位へ戻します。0.200 mol × 56 g/mol = 11.2 gです。酸素はCOとともにCO₂へ移るので、生成する鉄の質量が出発時の酸化鉄より小さくなることも確かめられます。
答え:Feは11.2 g得られます。
反応式の2という係数を、16.0 gへそのまま掛けることはできません。もし鉱石中のFe₂O₃の含有率や鉄の回収率が与えられたら、純粋なFe₂O₃の量を先に求めるか、理論上得られる鉄の量に回収率を掛けるかを、何に対する割合なのかで決めます。
例題2 銅の析出と鉄片の質量変化
Cu²⁺を0.0100 mol含む水溶液に十分な量の鉄片を入れ、Cu²⁺がすべて反応したとします。反応はFe + Cu²⁺ → Fe²⁺ + Cuだけが起こり、析出した銅はすべて鉄片に付着したものとします。原子量Fe=56、Cu=64として、析出した銅の質量と鉄片全体の質量の増減を求めます。
- 反応式から物質量比を読みます。Cu²⁺、溶けるFe、析出するCuの比は1:1:1です。Feは電子を2個失い、Cu²⁺は電子を2個受け取るので、この係数になります。
- 付着するCuの質量を計算します。0.0100 mol × 64 g/mol = 0.640 gです。次に、溶け出すFeの質量は0.0100 mol × 56 g/mol = 0.560 gです。
- 鉄片全体には増える質量と減る質量の両方があるため、差を求めます。0.640 g − 0.560 g = 0.080 gで、全体として増加します。これは銅の析出量そのものとは異なります。
答え:銅は0.640 g析出し、鉄片全体の質量は0.080 g増加します。
この結果は、銅が全部付着しているという条件を使っています。銅がはがれて水溶液中へ落ちた場合には、そのまま鉄片を量っても同じ増加量にはなりません。計算問題では、反応式に加えて「何を取り出して量るか」を確認することが欠かせません。
例題3 錯イオンの電荷・名前・形
[Ag(NH₃)₂]⁺、[Cu(NH₃)₄]²⁺、[Fe(CN)₆]⁴⁻について、中心金属の酸化数、配位数、名称、代表的な形を答えます。NH₃は電荷0、CN⁻は電荷−1の配位子として考えます。
- 錯イオン全体の電荷を、中心金属と配位子の電荷の和として表します。銀ではx + 2 × 0 = +1、銅ではx + 4 × 0 = +2です。したがって銀は+1、銅は+2です。NH₃が増えても、それだけで中心金属の酸化数が変わるわけではありません。
- 鉄ではx + 6 × (−1) = −4とおきます。これを解くとx = +2です。角括弧の外の−4は錯イオン全体の電荷なので、鉄の酸化数を−4としてはいけません。
- 配位子の数を読み、名称と形を対応させます。今回の配位子はいずれも1か所で金属に結びつくため、配位数は順に2、4、6です。形は中心金属と配位子の組合せの知識を使って答えます。
答え:順に、銀は+1・配位数2・ジアンミン銀(Ⅰ)イオン・直線形、銅は+2・配位数4・テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン・正方形、鉄は+2・配位数6・ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン・正八面体形です。
図2のように銀では中心の両側へ2個、銅では中心から等距離の上下左右へ4個の配位子を配置すると、配位数と形を対応させられます。図の線は配位子と中心金属の結びつきを示し、錯イオン全体の電荷は各図の名称の下に示しています。長さは結合距離の実測値ではなく、配置を読むためにそろえています。

正八面体形は、中心の周りの同一平面に4個、さらにその平面の上下に1個ずつ配位子を置く配置です。6個を紙の上で正六角形に並べた形ではありません。式から数を読み取る作業と、立体の配置を覚える作業を分けると、両方を確実にできます。
例題4 銀・鉄・銅のイオンを分ける
Ag⁺、Fe³⁺、Cu²⁺だけを金属イオンとして含む混合液を考えます。高校化学の定性的な分離として、希塩酸でAgClを沈殿させて分け、そのろ液に十分過剰のアンモニア水が存在する条件にしたところ、沈殿と深青色の溶液に分かれました。それぞれに含まれる金属を答えます。各段階で目的の反応は十分に進むものとします。
- Cl⁻との反応を見ます。この3種類ではAg⁺がAgClとして沈殿し、Fe³⁺とCu²⁺は溶液中に残ります。最初の沈殿とろ液を分けることで、銀をほかの2種類から取り出せます。
- ろ液中のFe³⁺とCu²⁺を考えます。アンモニア水が供給するOH⁻により水酸化物が生じますが、過剰のNH₃が存在する最終状態では、銅の水酸化物は錯イオンをつくって溶けます。鉄の水酸化物はこの条件で溶けずに残ります。
- 最終的な固体と溶液を区別します。固体はFe(OH)₃、溶液中の銅は[Cu(NH₃)₄]²⁺です。深青色なのは溶液であり、深青色の銅の沈殿を得たわけではありません。
答え:最初のAgClに銀、次のFe(OH)₃に鉄、最後の深青色のろ液に銅が含まれます。
最初にAgClを取り除かないままアンモニアを過剰にすると、銀も錯イオンをつくって溶液側へ戻り得ます。したがって試薬名の順番だけでなく、途中で固体と液体を分けることが分離の条件です。酸性のろ液ではNH₃がH⁺とも反応するため、「アンモニアを少し加えた」と「十分過剰に存在する」は同じ条件ではありません。
つまずきやすいところと直し方
色を元素名だけにつけてしまう
誤った書き方は「鉄は赤褐色、銅は青色」です。どこが違うかというと、元素名だけでは単体、イオン、化合物のどれを指すのか決まらず、反応を選べない点です。正しい書き方は「Fe(OH)₃は赤褐色の沈殿」「Cu²⁺を含む水溶液は青色」です。さらに「CuOは黒色の固体」と並べれば、同じ銅を含む物質でも違う色になることが確認できます。
色を覚える表には、物質の式、状態、生成条件の3つを添えましょう。Fe(OH)₂のように空気中で変化しやすい沈殿では、生じた直後か、時間が経過した後かも区別します。色は物質を判断する手がかりですが、色だけで必ず一つの物質に決まるわけではありません。
アンモニアの少量と過剰を同じにする
誤った書き方は「Cu²⁺にアンモニア水を加えると、いつでもすぐ深青色になる」です。どこが違うかというと、少量のアンモニア水による水酸化物の生成と、過剰のNH₃による錯イオンの生成を一つにしている点です。正しい書き方は「少量ではCu(OH)₂の沈殿、過剰では[Cu(NH₃)₄]²⁺を含む深青色の溶液」です。
また「過剰の塩基なら何でも同じ」でもありません。Cu(OH)₂は高校で扱う条件では過剰のNaOH水溶液に溶けませんが、過剰のアンモニア水には錯イオンをつくって溶けます。一方、Zn(OH)₂は両性水酸化物で、過剰のNaOHにも過剰のアンモニア水にも溶けます。NaOHはOH⁻を、アンモニア水はOH⁻の生成と配位子NH₃の両方に関わる、と役割を分けて考えます。
沈殿だけを書いてろ液を消してしまう
誤った書き方は「混合液 → AgCl → Fe(OH)₃ → 銅」です。どこが違うかというと、AgClがFe(OH)₃に変化するように見え、もとの混合液にある別々の金属の行き先が失われている点です。正しい書き方は、反応ごとに「沈殿」と「ろ液」へ枝分かれさせ、それぞれに残る金属を書き込む形です。ろ液とは、ろ過したときにろ紙を通り抜けた液体をいいます。
図3のように、銀の沈殿を横へ取り出し、鉄と銅を含むろ液について次を考えると、例題4の分離を追えます。2回目の分岐でも、沈殿に鉄、溶液に銅があることを両側に記します。金属が途中で消えたり、別の元素へ変わったりしていないかを点検しましょう。

より多種類の金属イオンを扱う系統分離では、塩化物や水酸化物のほかに硫化物の沈殿も利用します。CuSなどは酸性条件でも沈殿しやすい一方、FeSやZnSなどは酸性条件では沈殿しにくく、液性を変えることで分離に利用できます。酸性ではS²⁻が少なくなり、沈殿の生じやすさの違いが現れるためです。覚える対象は「硫化物は全部同じように沈殿する」ではなく、「どの液性でどのイオンが沈殿するか」です。硫化水素は有毒なので、この整理は反応の理解にとどめ、家庭での操作には結びつけません。
練習問題
練習1
純粋なFe₂O₃を8.00 g用い、COで完全に還元します。例題1と同じ反応式に従うとき、得られるFeの質量を求めてください。原子量はFe=56、O=16とします。途中でFe₂O₃とFeの物質量をそれぞれ書きましょう。
練習2
Ag⁺を0.0200 mol含む水溶液から、すべての銀をAgClとして沈殿させます。沈殿の質量を求め、さらにそのAgClが過剰のアンモニア水に溶けたときに生じる錯イオンの式と形を答えてください。原子量はAg=108、Cl=35.5とし、溶解は十分に進むものとします。
練習3
[Fe(CN)₆]³⁻における鉄の酸化数と配位数を求め、名称と形を答えてください。また、CrO₄²⁻からCr₂O₇²⁻への変化が酸化還元反応かどうかを、クロムの酸化数から説明してください。CN⁻の電荷は−1、酸素の酸化数は−2とします。
練習4
酸性条件でMnO₄⁻がMn²⁺へ還元され、Fe²⁺がFe³⁺へ酸化されます。MnO₄⁻が0.00200 mol反応したとき、反応したFe²⁺の物質量を求めてください。基本の考え方に示したMnO₄⁻の半反応式と、Fe²⁺ → Fe³⁺ + e⁻を使い、全体のイオン反応式も書きましょう。
答えと解説
練習1の答えは5.60 gです。Fe₂O₃は8.00 ÷ 160 = 0.0500 mol、Feはその2倍の0.100 molなので、0.100 × 56 = 5.60 gとなります。Fe₂O₃が例題1の半分なら、得られるFeも半分です。比の見通しとmolによる計算が一致しています。
練習2の答えは2.87 g、[Ag(NH₃)₂]⁺、直線形です。AgClのモル質量は108 + 35.5 = 143.5 g/molで、Ag⁺とAgClの物質量比は1:1です。0.0200 × 143.5 = 2.87 gとなります。錯イオンになっても銀原子の数は変わらず、全量が溶ければ銀の錯イオンも0.0200 molです。
練習3の答えは、鉄の酸化数+3、配位数6、ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオン、正八面体形です。x − 6 = −3からx = +3です。クロムについては、CrO₄²⁻ではx − 8 = −2、Cr₂O₇²⁻では2x − 14 = −2なので、どちらも+6です。色は変わってもクロムの酸化数は変わらず、酸化還元反応ではありません。
練習4の答えは0.0100 molです。MnO₄⁻の1 molが電子を5 mol受け取り、Fe²⁺の1 molは電子を1 mol放出するので、物質量比は1:5です。全体の式はMnO₄⁻ + 8H⁺ + 5Fe²⁺ → Mn²⁺ + 4H₂O + 5Fe³⁺となります。電荷の合計は左辺が−1 + 8 + 10 = +17、右辺が2 + 15 = +17で、原子数だけでなく電荷も保存されています。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
銅や銀の化合物は、有機化合物の性質を調べる反応で再び登場します。銀鏡反応では銀の錯イオン中の銀が単体へ還元され、還元性を調べる銅の反応では赤色のCu₂Oが生成します。無機化学で整理した「金属の酸化数がどう変わるか」が、有機化学の物質を判定する根拠になります。製錬で見た還元と、分析で使う還元も、電子を受け取る点でつながっています。
家庭では、薬品を使わずに5分でできる確認を2つ行えます。一つ目は、紙にFe²⁺、Fe³⁺、Fe(OH)₂、Fe(OH)₃を書き、色と状態を添えて図1の矢印を再現することです。二つ目は、図3を隠し、Ag⁺、Fe³⁺、Cu²⁺の行き先を沈殿とろ液に分けて描くことです。書けなかった箇所を一つ選び、その反応式を調べ直すところまでを区切りにします。
個別指導では、色の取り違えなら物質の式と状態へ、量の間違いなら反応式の係数とmolへの変換へ戻って確かめます。錯イオンの電荷が合わなければ、中心金属と配位子を分けて電荷を足すところから考え直せます。
まとめ
遷移元素の問題を解くとき、最初から反応の一覧を全部思い出す必要はありません。問題文で与えられた物質の式を出発点に、酸化数、液性、試薬の過不足、固体と溶液の区別を順に確かめると、次の状態を選ぶ根拠ができます。計算では、その変化を表した反応式から物質量の比を読み取ります。
色の名前を思い出せなかった場所も、反応を考え直す入口になります。鉄の赤褐色をFe(OH)₃という式へ、銅の深青色を錯イオンへ結び直せば、観察と反応式が対応します。無機化学の答案を支えるのは、色の記憶に添えた「何が、どの条件で、どちらへ移ったか」という説明です。
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
電話は年中無休。365日、24時間、お電話可能。



