説明文の段落の関係が見えない子は構造を再構成できない|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第33回です。学習の仕方の目次を見る

「この説明文、何が言いたいのか分からない」と生徒が言うとき、多くの場合、語彙が難しいわけではありません。一文一文は読めているのに、段落と段落のつながりが見えず、全体がバラバラの情報の集まりに見えているのです。

説明文には、筆者が読者を導くための構造があります。たとえば「比較」「問題と解決」「原因と結果」「説明の列挙」といった型です。ところが、その型を意識せずに読むと、個々の事実は拾えても、筆者の主張の流れを再構成できません。テストの記述問題で「本文の内容を踏まえて答えなさい」と言われた途端に手が止まるのは、この構造の見えにくさが原因であることが少なくありません。

今回は、説明文の構造、とりわけ段落の関係が見えないというつまずきを取り上げます。研究が示す「構造の型が読解と記憶に与える影響」と「構造を教えることの効果」を手がかりに、生徒がどこでどう誤るのか、そして机の前で何を確かめればよいのかを具体的に整理します。

要点(結論から)

  • 説明文の構造には「比較」「問題と解決」「原因と結果」「説明の列挙」などの型があり、型によって情報の整理のされ方が異なります。
  • 構造の型が明確な文章は、同じ情報を列挙型で示した場合よりも内容を思い出しやすいことが研究で示されています。
  • 段落の関係が見えない生徒は、接続語や指示語を手がかりにできず、各段落を独立した情報として処理してしまいます。

結論——段落の関係が見えない子は、情報を拾っても構造を再構成できない

  • 説明文の構造には「比較」「問題と解決」「原因と結果」「説明の列挙」などの型があり、型によって情報の整理のされ方が異なります。
  • 構造の型が明確な文章は、同じ情報を列挙型で示した場合よりも内容を思い出しやすいことが研究で示されています。
  • 段落の関係が見えない生徒は、接続語や指示語を手がかりにできず、各段落を独立した情報として処理してしまいます。
  • 構造を明示的に教える指導は、説明文の読解を改善します。教える構造の種類を増やすことと、書く活動を組み合わせることが効果を高めます。
  • つまずきの本質は「読む力がない」ことではなく、「文章の設計図に気づいていない」ことです。問いかけによって設計図への注意を促せます。

理由——説明文は構造の型によって読まれ方が変わる

構造の型が記憶と理解を左右する

説明文は、同じ内容でも並べ方によって読み手の理解が変わります。たとえば「AとBの違い」を述べる文章は、比較という型をとることで、Aの特徴とBの特徴を対にして整理できます。一方、同じ情報を「Aについての説明、Bについての説明」と列挙するだけでは、読み手は共通点と相違点を自分で見つけなければなりません。

この違いは、読み手が文章を処理するときの枠組み、つまりスキーマの違いとして説明されています。構造の型がはっきりしている文章は、読み手が既有の枠組みを使って情報を整理できるため、内容の保持が促されます。逆に、型が見えない文章では、情報が断片的に処理されやすくなります。

Meyer B, Freedle R. Effects of Discourse Type on Recall. American Educational Research Journal. 1984;21(1):121-143.

この研究では、比較・問題と解決・原因と結果という構造の型が明確な文章は、同じ情報を説明の列挙として提示した場合よりも、内容の想起に優れるという予測が立てられ、二つの研究データがその予測を支持しました。つまり、文章の内容そのものではなく、内容をどう組織化するかが読み手の理解を左右するのです。

教室で言い換えるなら、生徒が「読んだのに覚えていない」と言うとき、それは記憶力の問題ではなく、文章の組織化の手がかりをつかめていない可能性が高いということです。段落ごとの内容は言えても、段落同士がどう関係しているかを問われると答えられないのは、この組織化の段階でつまずいている姿です。

構造を教える指導には読解を改善する効果がある

では、構造に気づけない生徒にはどのような支援が有効なのでしょうか。説明文の構造を明示的に教える指導の効果を調べたメタ分析があります。この分析は、小学2年生から高校生までを対象とした45件の研究を統合し、構造指導が説明文の読解に与える影響を検討しました。

Hebert M, Bohaty J, Nelson J, et al. The effects of text structure instruction on expository reading comprehension: A meta-analysis. Journal of Educational Psychology. 2016;108(5):609-629.

結果として、構造指導は説明文の読解を改善することが示されました。ただし、その効果は、より強い比較条件と比べた場合には小さくなるという留保も報告されています。つまり、何もしないよりは確かに有効だが、他の優れた指導法と比べて常に圧倒的に優れるとまでは言えない、という慎重な読み方が必要です。

また、この分析では効果を高める二要因が特定されました。一つは教える構造の種類を増やすこと、もう一つは指導に書く活動を含めることです。単に「この文章は比較だね」と指摘するだけでなく、複数の型を扱い、実際に生徒自身が構造を意識して書く段階まで進むことで、読解への転移が促されると考えられます。

段落の関係は接続語と指示語に現れる

説明文の構造は、抽象的な概念として存在するだけではありません。文章の表面には、構造を示す手がかりが散りばめられています。代表的なのが接続語です。「しかし」「一方」「つまり」「たとえば」「したがって」といった語は、前の段落と後の段落の論理関係を示す標識です。

また、「このように」「その結果」「こうした違い」などの指示語も、直前の内容を受けて次の展開へつなぐ役割を果たします。段落の関係が見えない生徒は、これらの手がかりを読み飛ばしているか、読んでもその機能を意識していないことが多いのです。

たとえば「しかし」が出てきたら、その前後は対立関係にあるはずです。「したがって」が出てきたら、前の内容が根拠となって後の結論が導かれるはずです。こうした標識を手がかりに段落間の関係を推測する習慣がないと、文章はただの事実の羅列に見えてしまいます。

指導の場面では、接続語を丸で囲ませる、段落の先頭と末尾の文だけを読んで関係を予想させる、といった作業が有効です。構造を教える指導の効果が書く活動と結びつくのも、自分で接続語を使って段落をつなぐ経験が、読みの際の手がかりへの感受性を高めるからだと考えられます。

誤答の例——段落の関係を問うと、内容の羅列で答えてしまう

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
「この文章は何について書かれていますか」に「環境問題について」とだけ答える 話題は分かるが、筆者がその話題をどう扱っているかまで意識していない 「環境問題について、筆者は何と何を比べている?それとも問題と解決策を書いている?」
「筆者の考えを書きなさい」に、本文の事実説明をそのまま抜き出す 事実と筆者の主張の区別がついておらず、どれが結論か分からない 「この段落は事実の説明?それとも筆者の意見?意見だと分かる言葉はどれ?」
「なぜそうなるのですか」に、原因ではなく結果を書く 原因と結果の方向が逆になっている。接続語「そのため」の前後関係を逆に読んでいる 「『そのため』の前と後、どちらが原因でどちらが結果?前の文を『だから』につなげて読んでみよう」
段落ごとの要点は言えるが、段落同士の関係を問われると黙る 各段落を独立した情報として処理しており、段落間の論理関係を意識していない 「第2段落は第1段落の具体例?反対意見?それとも別の話題?」
「まとめの段落はどれか」で、最初の段落を選ぶ 「最初に書いてあることが一番大事」という思い込みがあり、文章の展開を追っていない 「最後の段落の最初の言葉は何?『このように』があったら、何を受けているのかな」

机の前で1対1で確かめるときは、次の手順が有効です。

  1. 短い説明文を1段落ずつ読み、各段落の内容を一文で言わせる。このとき、段落の番号を振っておく。
  2. 隣り合う段落の間に、接続語を補わせる。「第1段落と第2段落の間に入れるなら、『しかし』『たとえば』『そのため』のどれが合う?」と選ばせる。
  3. 補った接続語が正しいか、本文の接続語や指示語と照合させる。本文に「しかし」があれば対立関係、「つまり」があれば言い換え関係と確認する。
  4. 文章全体の構造を「比較」「問題と解決」「原因と結果」「列挙」のどれかに分類させ、その根拠となる段落番号を言わせる。
  5. 同じ構造の短い文章を自分で書かせ、接続語を使って段落をつなぐ練習をする。

小学生では、まず接続語そのものの意味と働きを一つずつ確認することが必要です。「しかし」と「だから」の違いが曖昧なまま説明文を読んでも、段落の関係は見えてきません。短い二文を接続語でつなぐ練習から始め、それが段落同士の関係にも使えることを示します。

中学生では、文章全体の型を分類する活動が有効です。教科書の説明文を「比較型」「問題解決型」「原因結果型」「列挙型」に分け、それぞれの型の特徴を表にまとめさせます。型の名前を覚えること自体が目的ではなく、型を意識することで読みの枠組みができることを体験させます。

高校生では、接続語や指示語が少ない文章、あるいは型が複合した文章を扱います。実際の評論文や新書の文章は、一つの型にきれいに収まらないことが多いからです。複数の型が重なっていることを確認し、筆者の主張がどの段落で最も明確に述べられているかを探す練習が有効です。

よくある誤読——「構造指導をすれば読解が大きく伸びる」は言いすぎ

誤用されがちな「構造指導は効果的」という結論

構造指導のメタ分析は、説明文の読解改善に有効であることを示しました。しかし、この結果は「構造を教えれば必ず読解力が大きく伸びる」という主張を支持するものではありません。分析では、より強い比較条件と比べた場合に効果が小さくなるという留保が明記されています。

Hebert M, Bohaty J, Nelson J, et al. The effects of text structure instruction on expository reading comprehension: A meta-analysis. Journal of Educational Psychology. 2016;108(5):609-629.

つまり、構造指導は「何もしないよりは有効」という水準の知見であり、他の読解指導法と比べて常に優れているわけではありません。この点を無視して「構造指導こそ最善」と主張するのは、研究結果の誤用です。指導法の選択では、生徒の実態や文章の種類に応じて、構造指導を他の指導法と組み合わせることが現実的です。

「型に分類できれば理解できている」わけではない

もう一つの誤読は、文章を「比較型」「問題解決型」などに分類できたことをもって、理解が成立したとみなすことです。型の分類はあくまで読みの枠組みを得るための手段であり、それ自体が目的ではありません。型が分かっても、各段落の内容を正確に読めていなければ、理解は表面的なものにとどまります。

また、実際の文章は複数の型が組み合わさっていることが多く、一つの型に無理に当てはめると、かえって筆者の意図を見誤ることがあります。指導では「この文章は何型か」を当てさせるクイズに終始せず、型を手がかりに筆者の主張と根拠の関係を追うことに重点を置くべきです。

今週やること——段落の関係を可視化する3つの作業

  1. 教科書か問題集から説明文を1本選び、段落番号を振る。各段落の内容を一文で書き出し、隣り合う段落の関係を「具体例」「反対」「原因」「まとめ」のいずれかでラベル付けする。
  2. 本文中の接続語と指示語をすべて丸で囲み、それぞれがどの段落とどの段落をつないでいるかを矢印で示す。矢印が引けない箇所があれば、そこがつまずきの候補である。
  3. 同じ文章の最終段落を隠し、自分で最終段落を書いてみる。その際、本文で使われている接続語を最低一つ使う。書いたものを本文と照合し、筆者のまとめ方と自分のまとめ方の違いを確認する。

この記事で言えないこと

第一に、ここで紹介した研究知見は、説明文の構造が読解や記憶に与える一般的な傾向を示すものであり、個々の生徒のつまずきの原因を直接診断するものではありません。段落の関係が見えない背景には、語彙の不足、背景知識の欠如、注意の持続の難しさなど、別の要因が関わっている場合もあります。

第二に、構造指導の効果は、指導の質や生徒の学年、文章の難易度によって変わります。メタ分析では効果が確認されたものの、より強い比較条件との差は小さく、すべての教室で同じ結果が得られるとは限りません。特に、構造の型を教えるだけでなく、書く活動と組み合わせるなどの条件が効果に関わるため、単発の指導で成果を期待することはできません。

第三に、この記事で扱ったのは説明文の構造という限られた側面です。物語文の読解、詩の解釈、図表の読み取りなどには、また別のつまずきと支援があります。説明文の構造指導が読解全体の万能薬ではないことを、指導者も保護者も理解しておく必要があります。

当塾の立場

段落の関係を意識する練習は、家庭でも十分にできます。接続語を丸で囲む、段落ごとに一文でまとめる、隣り合う段落の関係をラベル付けする、といった作業は、特別な教材がなくても教科書の文章で実行可能です。まずは家庭でこれらの作業に取り組み、生徒がどの段階で手が止まるかを観察することをお勧めします。

そのうえで、塾が担えるのは、生徒が一人では気づけない読みの癖を、対話を通じて可視化することです。たとえば、生徒が段落の関係を誤ってラベル付けしたとき、「なぜそう考えたのか」を言葉にさせ、本文のどの表現と矛盾するかを一緒に探す手順を取ります。この「誤った読みの理由を言語化し、本文と照合する」という一対一のやり取りは、集団授業では手が回りにくい部分であり、個別指導の利点を生かせる場面です。

出典

  1. Meyer B, Freedle R. Effects of Discourse Type on Recall. American Educational Research Journal. 1984;21(1):121-143.
  2. Hebert M, Bohaty J, Nelson J, et al. The effects of text structure instruction on expository reading comprehension: A meta-analysis. Journal of Educational Psychology. 2016;108(5):609-629.

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