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位相空間論 開集合で「近さ」を抽象化する|武蔵野個別指導塾

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開集合の定義から連続・コンパクト・連結へ進み、閉区間と開区間の違いを証明で確かめます。距離の数値を手放しても残る性質を、具体例と計算から学べます。

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位相空間論 開集合で「近さ」を抽象化する

冬の自転車置き場で、距離のほかに何を見るか

冬の朝の自転車置き場を思い浮かべてください。塾の入口へ向かう前に、手袋をしたまま鍵を外そうとしています。隣の自転車のハンドルまではわずかな距離でも、そこを通って出口へ進めるとは限りません。タイヤの列に沿って回り込めば、少し遠い通路が出口までつながっています。「近い」と「つながっている」は、同じ問いではないのです。

数学でも、点と点の距離が何センチかという情報と、ある場所から別の場所へ途切れずに移れるかという情報は区別できます。円を楕円に引き伸ばせば距離も曲率も変わりますが、輪が途中で切れるわけではありません。一方、輪から1点を取り除けば、閉じた輪としての性質は失われます。どの変化を許し、どの性質を残すかによって、図形の見方が変わります。

位相空間論では、まず「各点のまわりに、どんな広がりを考えられるか」を開集合という集合の言葉で表します。そこから、連続性、ひとまとまりであること、無限の広がりを有限個の情報で扱えることを考えます。長さや角度の計算を捨て去るためではありません。異なる距離の測り方や、座標を直接書きにくい対象にも、共通の議論を届けるためです。

高校のグラフで使っていた「つながっている」「端を含む」「途中で飛ばない」という言葉は、大学ではそれぞれ検討する定義になります。位相空間論への入口は、難しい形を思い描くことより、その言葉がどの集合について何を約束しているのかを確かめることにあります。

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絶対値の不等式が「まわり」を記述する

高校数学から最も直接につながるのは、数直線上の絶対値です。実数 x、a に対して |x-a| は2点間の距離を表します。例えば不等式 |x-2|<1/3 は、次のように解けます。

-1/3<x-2<1/3

5/3<x<7/3

つまり、2からの距離が1/3未満である点の集合は開区間 (5/3, 7/3) です。「2に近い」という言葉を、どれだけの幅で近いのかまで含めて表しています。端の5/3と7/3は、距離がちょうど1/3なので入りません。

この集合の各点にも、さらに小さいまわりの区間が入ります。例えば x=9/4 はこの開区間に含まれます。右端までの距離は7/3-9/4=1/12、左端までの距離は9/4-5/3=7/12です。そこで半径1/24の区間を x のまわりに取れば、左右とも元の区間からはみ出しません。中心がどれほど端に近くても、端そのものを含まない限り、その点に応じて半径を小さくできます。

ここで全員に共通する半径を選ぶ必要はありません。区間内のすべての点のまわりに半径1/24の区間を置くと、端に近い点でははみ出します。「どの点でも、その点に合う半径がある」という主張と、「全点に同じ半径が使える」という主張は別です。この順序の違いが、後に定義を読むうえで重要になります。

関数の連続性も、同じ不等式から入れます。f(x)=x² を x=2 で考え、出力を4の近くに保つ条件を作りましょう。

|x²-4|=|x-2||x+2|

先に |x-2|<1 とすれば1<x<3なので |x+2|<5です。任意の ε>0 に対して δ=min(1, ε/5) と選べば、|x-2|<δ から |x²-4|<ε が従います。出力の許容幅 ε を受け取ってから、入力の幅 δ を決める計算です。

位相の言葉では、この考えを「出力側の開いた範囲に入る入力の集合も開いている」と言い換えます。例えば f(x)=x² の出力を (1, 4) に限る入力は、-2<x<-1 または1<x<2を満たす点です。逆像は (-2, -1)∪(1, 2) となり、これも開集合です。点の近くを一つずつ調べる方法と、範囲全体を集合で調べる方法がつながり始めます。

ただし、これは一つの開区間で確かめただけです。連続性を結論するには、出力側の任意の開集合について成り立つことが必要です。具体例を解く力に加えて、その例のどの部分が一般の場合にも働くかを見る力が、大学数学で求められます。

開集合を決めると、空間の構造が決まる

距離空間(metric space)とは、集合 X と、その2点 x、y に非負の実数 d(x,y) を対応させる距離 d の組です。任意の x、y、z∈X に対し、次の条件を満たします。

d(x,y)≧0、かつ d(x,y)=0 ⇔ x=y

d(x,y)=d(y,x)

d(x,z)≦d(x,y)+d(y,z)

最後が三角不等式です。途中の点を経由した距離の和は、直接の距離より小さくならないと要求しています。実数上の d(x,y)=|x-y| や、平面上の通常の距離はこの条件を満たします。

点 x を中心とする半径 r>0 の開球を B(x,r)={y∈X : d(x,y)<r} と定めます。距離空間の部分集合 U が開集合であるとは、U の各点のまわりに、U に含まれる開球を置けることです。記号では次のように書きます。

∀x∈U、∃r>0、B(x,r)⊆U

数直線の開区間で考えた小さい区間が、ここでは開球です。空集合 ∅ についてもこの条件は成り立ちます。調べるべき点がないため、条件に反する点もありません。空間全体 X も開集合です。

今度は距離の式から離れて、どの集合を開集合と呼ぶかを直接指定します。集合 X の部分集合を集めた族 τ が、次の3条件を満たすとき、τ を X の位相(topology)、組 (X,τ) を位相空間といいます。

∅∈τ、X∈τ

任意の添字集合 I に対し、すべての i∈I で Uᵢ∈τ ならば ∪{Uᵢ : i∈I}∈τ

U∈τ、V∈τ ならば U∩V∈τ

3番目を繰り返せば、有限個の開集合の共通部分は開集合になります。2番目の和集合は、有限個に限りません。この非対称な条件には理由があります。ある点が和集合に入るなら、少なくとも一つの集合に入り、その中の小さい開球を使えます。有限個の共通部分なら、それぞれの半径の最小値を取れます。しかし無限個の半径に、正の最小値があるとは限りません。

実数の通常の位相では、n=1,2,3,… に対する開区間 (-1/n, 1/n) の共通部分は {0} です。0以外の実数 x は、1/n≦|x| となるほど大きな n を選べばその区間に入りません。ところが {0} は開集合ではありません。0を中心とするどんな正の半径の開区間にも、0以外の点が入るからです。無限個の共通部分まで開集合にするという公理は、普段の数直線に合わないのです。

閉集合は、開集合の反対という印象だけで定義しません。位相空間 X の部分集合 F が閉集合であるとは、補集合 X∖F が開集合であることです。例えば実数全体では [0,1] は閉集合、(0,1) は開集合です。[0,1) はどちらでもありません。一方、∅ と X は開集合であると同時に閉集合です。「開いているか閉じているかの二択」と考えると、この段階で誤解が生じます。

また、開閉はどの空間の中で見るかに依存します。X=[0,1] を一つの空間として、実数から引き継ぐ部分空間位相を入れましょう。その開集合は、実数の開集合 O と X の共通部分 O∩X として書ける集合です。[0,1/2) は (-1,1/2)∩X と書けるため、X の中では開集合です。実数全体の中で開いていなくても、X には0より左の点がそもそも存在しないので問題ありません。

位相空間 X から Y への写像 f が連続であるとは、Y の任意の開集合 V の逆像が X で開いていることです。

V が Y の開集合 ⇒ f⁻¹(V)={x∈X : f(x)∈V} が X の開集合

この f⁻¹(V) は集合の逆像であって、逆関数の存在を要求しません。x² のように異なる入力が同じ出力になる関数にも使えます。さらに、全単射 f が連続で、逆関数 f⁻¹ も連続なら、f を同相写像といい、X と Y は同相であるといいます。位相空間として同じ構造を持つ、という意味です。

同相でも距離が等しいとは限りません。f:(0,1)→(0,2)、f(x)=2x は、逆関数 y↦y/2 も連続なので同相写像です。点間の距離は2倍になります。どの点のまわりがどの範囲に対応するかは保たれ、距離の値は変えてよいのです。

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有限で覆えることと、分離できないこと

コンパクト性(compactness)を定義しましょう。位相空間 X の開被覆とは、X の開集合の族で、それらの和集合が X になるものです。X がコンパクトであるとは、任意の開被覆から有限個を選んで、なお X 全体を覆えることです。

X=∪{Uᵢ : i∈I} ⇒ ある有限集合 J⊆I に対して X=∪{Uⱼ : j∈J}

各 Uᵢ が開集合であることを前提にしています。「有限個の開集合で覆える」というだけではありません。X 自体が開集合なので、それだけならどの空間でもできてしまいます。どんな覆い方を渡されても、そこから有限個を選べる、という強い性質です。

実数の通常の位相では、部分集合 K がコンパクトであるための必要十分条件は、K が閉集合かつ有界であることです。これはハイネ・ボレルの定理です。同じ主張は有限次元ユークリッド空間でも成り立ちますが、任意の距離空間にそのまま広げることはできません。以下の区間の議論では、通常の距離と位相を使います。

閉区間 [0,1] のコンパクト性の証明で、要となる一歩を見ましょう。有限個で覆えない開被覆があると仮定し、区間を半分ずつに分けます。左右の両方がその被覆の有限個で覆えれば、合わせて元の区間も有限個で覆えるので、少なくとも片方は有限個で覆えません。そういう半区間を選び続けると、長さが1/2、1/4、1/8、…と小さくなる閉区間の列ができます。

実数の完備性により、これらの入れ子の閉区間には共通点 c があります。被覆の一つ U は c を含み、U は [0,1] 内で開いているので、c の十分小さいまわりを含みます。やがて選んだ閉区間全体がそのまわりに入り、U だけで覆えます。これは選び方と矛盾します。開集合の「小さいまわりを含む」という局所的な条件が、空間全体を有限個で扱える結論を支えています。

開区間 (0,1) は有界ですがコンパクトではありません。n≧2 に対して Uₙ=(1/n,1) とすると、これらは (0,1) を覆います。どんな x>0 にも1/n<xとなる n があるからです。しかし有限個を選び、その添字の最大値を N とすれば、選んだ集合の和集合は (1/N,1) です。点1/(2N) は (0,1) に入るのに覆われません。例えば添字2、3、5を選んでも和集合は (1/5,1) で、1/10が残ります。覆いの不足を具体的な1点で示せます。

コンパクト性は極値の存在にもつながります。空でないコンパクト空間 X 上の実数値連続関数 f は、最大値と最小値を取ります。連続写像によるコンパクト空間の像がコンパクトになることが鍵です。像の開被覆を f の逆像で X の開被覆へ戻し、有限個を選んでから像へ戻せば、像にも有限部分被覆が得られます。実数のコンパクト集合は閉かつ有界なので、その上限と下限が集合自身に属し、極値が実現します。

具体的には f(x)=x(1-x) を [0,1] 上で考えると、平方完成によって計算できます。

f(x)=1/4-(x-1/2)²

したがって最大値は x=1/2 で1/4、最小値は x=0、1で0です。同じ式でも定義域を (0,1) にすれば、常に f(x)>0 なので最小値0は取りません。n≧2 に対して x=1/n とすれば f(1/n)=1/n-1/n²→0 ですから、下限は0です。最大値は依然として1/4です。「コンパクトでなければ極値が一切ない」のではなく、「連続であるだけでは両方の存在を保証できない」と読みます。

もう一つの柱が連結性(connectedness)です。X が連結であるとは、互いに交わらない空でない2個の開集合 U、V によって X=U∪V と表せないことです。空間を内部で開いた2つの部分に分離できない、と言い換えられます。ここでも開集合は X の中での開集合です。

連結空間の連続像は連結です。もし像を空でない2つの開集合に分離できれば、その逆像が元の空間を分離してしまうからです。実数の区間は連結であり、実数の連結な部分集合は区間なので、この性質は中間値の定理につながります。a<b に対し、[a,b] 上で連続な f が f(a)<c<f(b) を満たすなら、ある t∈(a,b) で f(t)=c となります。像が区間である以上、途中の値 c だけを抜かすことはできません。

例えば f(x)=x² を [0,2] 上で考えると、f(0)=0、f(2)=4なので、その間の2を取る点が存在します。さらに f(7/5)=49/25<2、f(3/2)=9/4>2 ですから、その点は7/5と3/2の間にもあります。値を計算して挟む操作の奥に、連続像が分離されないという構造があるのです。

コンパクト性も連結性も、同相写像で保たれる位相不変量です。[0,1] と (0,1) は両方とも連結ですが、前者だけがコンパクトなので同相ではありません。見た目の端の違いを、定義から確かめられる性質の違いとして証明できます。

図形の直観から、開集合を主役にする研究へ

位相の考え方には、図形の連続的な変形を捉えたいという方向と、極限や連続関数の議論を一般の空間へ広げたいという方向があります。実数の区間では自然に見えた定理も、対象を関数全体の集合やより一般の空間へ広げると、どの仮定が働いたのかを問い直さなければなりません。長さが有限という条件だけで足りるのか、端を含むことは何を意味するのか、といった問いが定義を磨きます。

コンパクト性の歴史を扱う研究は、もとの動機となった問いから定義の発展を追い、開被覆によるコンパクト性と点列に関するコンパクト性を明確に区別しています。さらにネットやフィルターによる特徴づけまでを扱っています(Raman-Sundström, 2015)。これは、最初から完成した定義が置かれたのではなく、残したい結論と必要な条件の検討を通じて概念が整えられてきたことを学ぶ入口になります。

ここで点列に関する条件とは、どの点列にも空間内の点へ収束する部分列があるという条件です。距離空間では、これは開被覆によるコンパクト性と同値です。しかし一般の位相空間では同値とは限りません。点列は自然数で順序づけられた点の並びなので、より一般的な近づき方をすべて捉えられるとは限らないためです。ネットやフィルターという道具が登場するのは、単に記号を増やすためでなく、点列だけに依存しない収束の記述が必要になるからです。

開集合そのものをさらに前面へ出す研究もあります。点なし位相という分野を歴史的に概観した論文では、開集合の束を基本的な対象として扱うと説明されています(Johnstone, 1983)。「点なし」という名前から空集合の研究を想像する必要はありません。点を先に集めて空間を作るという順番を変え、開集合どうしの包含関係や演算を出発点にする方向です。

開集合を集めると、包含関係 U⊆V によって大小を比較できます。任意個の和集合と有限個の共通部分を作ることもできます。集合の恒等式として、次の分配法則が成り立ちます。

U∩(∪{Vᵢ : i∈I})=∪{U∩Vᵢ : i∈I}

左辺に入る点は、U に入り、同時に少なくとも一つの Vᵢ に入るので、右辺にも入ります。逆向きも同じ条件を読み戻せます。こうした演算関係に着目すれば、点ごとの座標を書かなくても、空間の局所的な情報を組織立てて扱えます。

通常の位相空間論を初めて学ぶ段階では、この先の理論を急いで覚える必要はありません。ただ、開集合が連続性を定義するための一時的な道具にとどまらず、それ自体が研究の中心になり得ることは覚えておけます。最初に学ぶ公理は、後で使い捨てる準備ではないのです。

データの関係を、木や輪として捉える

位相の応用を考えるときは、まずデータがどのような空間として表されるかを確認します。数値の一覧がそのまま連続な空間になるわけではありません。点どうしに距離を設定したり、一定の条件で結んだりして初めて、近さやつながりを調べる対象ができます。その作り方に分析の意味が含まれています。

例えば4個の点を A=(0,0)、B=(1,0)、C=(1,1)、D=(0,1) と置きます。隣り合う点の距離は1、対角の点の距離は √2 です。距離が t 以下の点どうしを辺で結ぶと、0≦t<1 では点がばらばらですが、1≦t<√2 では正方形の辺がそろい、t≧√2 では対角線も加わります。距離のしきい値を動かすことで、同じデータから見えるつながりが変わります。

ただし、「辺を加える」だけか、「3点が互いに結ばれたら三角形の内部も埋める」かで、輪の扱いが変わります。後者の規則をすべての次元に広げ、互いに結ばれた点の組に対応する単体も加えると、t≧√2 では4点の組に対応する四面体の内部まで含まれます。ここでの四面体は、平面上の点の見た目とは別に組合せから作る抽象的な図形です。平面上の正方形だけを眺めていると、この区別を見落とします。

この小さな計算は、輪の存在を調べる前に、空間の定義を言わなければならないことを示しています。実際のデータ解析では、点の測定誤差、距離の選択、どの範囲のしきい値で特徴が残るかも考える必要があります。1回だけ見えた形を、そのまま対象の本質と決めることはできません。

生物の進化を表す応用では、木構造だけでは捉えにくい関係が問題になります。木では枝分かれを表せますが、異なる系統間で遺伝情報の交換があれば、関係は枝分かれだけで完結しません。代数的位相の考えを用いた研究は、クローン的な進化と網状の進化をともに扱う枠組みを提示し、RNAウイルスの再集合や組換えを特徴づける方法を述べています(Chan・Carlsson・Rabadán, 2013)。

その研究で述べられる、クローン的な進化は木にまとめられる一方、網状の進化は0より大きい次元の非自明な位相を示すという違いは、単に点の個数を数える以上の情報を使うということです。先ほどの正方形の例も、4点という個数だけでは、ばらばらな状態か、輪として結ばれた状態かを区別できません。関係を含めて形を作ることで、追加の情報を表現できます。ただし正方形の計算そのものは、進化の研究結果を再現するものではなく、空間を作る操作を理解するための数学的な例です。

位相空間論はこの応用の計算手順をすべて直接与えるわけではありません。データの形を代数で測る段階には、さらに別の道具が必要です。それでも、対象となる空間を定義し、連続な変化のもとで何が保たれるかを問う基礎がなければ、計算結果の意味を説明できません。開集合の公理とデータの輪は、定義を介してつながっています。

定義を読む順序と、手を動かす順序

最初のつまずきは、記号の量だけではありません。「開集合は端を含まない集合」「連結ならどの2点も道で結べる」といった直観を、そのまま一般の定義と取り違えることです。道で結べるという性質は弧状連結性と呼ばれ、任意の x、y∈X に対して、γ(0)=x、γ(1)=y を満たす連続写像 γ:[0,1]→X が存在することです。弧状連結なら連結ですが、一般には逆は成り立ちません。絵の印象と定義の間に、確認すべき段差があります。

また、研究で使われる「学習」という言葉にも注意が必要です。3次元点群を対象とした深層学習の総説は、コンピュータビジョンやロボティクスなどの応用に関わる手法を整理しています(Guoほか, 2020)。対象は点群を処理する機械学習手法であり、人間の高校生や大学生に対する授業効果を検証した研究ではないため、そこから位相の勉強法の有効性を結論することはできません。この区別を保ち、ここからの手順は、定義と証明を結びつけるための授業上の提案として考えてください。

第一に、問題の最初に「全体の集合」と「位相または距離」を書きます。[0,1/2) が開いているかを答える場合にも、実数全体なのか [0,1] の中なのかで答えが変わります。集合の見た目から判断する前に、どの空間で議論するかを固定します。これだけで補集合や逆像を取り違える誤りを減らせます。

第二に、定義を条件の順番に分解します。開集合なら「点 x を一つ任意に選ぶ」「その点に応じて r>0 を探す」「開球が集合内に入ることを示す」と進めます。コンパクト性なら「開被覆を任意に受け取る」が出発点で、自分に都合のよい覆いを一つ選ぶところから始めないようにします。証明で自分が選べるものと、相手から与えられたと考えるものを区別します。

第三に、否定を作ってから反例を探します。コンパクトでないことを示すには、有限部分被覆のない開被覆を一つ作れば十分です。(0,1) の Uₙ=(1/n,1) では、どんな有限選択にも最大添字 N があり、1/(2N) が取り残される、という順序でした。「無限にあるから無理」という感想を、有限選択をすべて退ける論証へ変えます。

第四に、一つの条件だけを変えて結論を比較します。閉区間を開区間へ変える、連続全単射に逆関数の連続性を加える、任意個の共通部分を有限個へ制限する、といった比較です。条件が変わるたびに別の大量の例を覚えるより、どこで証明が使えなくなるかを書き込むと、仮定の役割を追えます。

高校生のうちには、絶対値の不等式、集合の和と共通部分、補集合、関数の定義域と値域を丁寧に扱ってください。例えば1<x²<4を解いた後、答えが2つの区間になる理由を言葉にします。微積分を学んでいるなら、最大値と上限、最小値と下限を区別し、端点が抜けたとき何が変わるかを調べると、位相の定義が既知の計算と結びつきます。

塾では、定義の暗記を確認するだけでなく、答案のどの行でその定義を使ったかまで戻って確かめたいと考えています。「r を十分小さくする」と書いたら、何より小さくすればよいのかを実際に一つ選びます。ご家庭では、お子さまが新しい用語をすぐ言い換えられなくても、計算速度だけで理解を判断せず、条件を整理して説明する時間を持てると学習を支えやすくなります。「今日はどの条件を変えると答えが変わったか」という問いなら、用語に詳しくなくても学んだ内容を聞けます。

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開集合から先へ進むための3つの疑問

距離を使わないのに、「近い」といえるのですか

位相は点間の近さを数値で比較する道具ではありません。ある点を含む開集合を使って、その点のまわりを指定します。距離があれば開球から位相を作れますが、位相だけでは一般に元の距離の数値は復元できません。同じ集合に d と2dという距離を入れても、半径を取り直せば同じ開集合が得られます。連続性に必要な近づき方を残し、距離の尺度に依存する情報を手放しているのです。

連続な全単射なら同相ではないのですか

逆関数が連続かどうかを別に確かめます。例えば同じ2点集合 X={a,b} に、すべての部分集合を開集合とする離散位相と、∅、Xだけを開集合とする密着位相を考えます。離散位相の空間から密着位相の空間への恒等写像は連続な全単射です。しかし逆向きでは、離散位相で開いた {a} の逆像 {a} が密着位相で開いていないので連続ではありません。対応する点が同じでも、まわりの構造まで同じとは限りません。

コンパクトなら、点の個数も有限ですか

有限とは限りません。[0,1] には無限個の点がありますが、コンパクトです。有限にできるのは、任意に与えられた開被覆から選ぶ集合の個数です。反対に、離散位相を入れた無限集合は、各1点集合からなる開被覆に有限部分被覆がないためコンパクトではありません。点がいくつあるかと、その空間でどんな覆い方が可能かを区別してください。

冬の朝の自転車置き場で、出口へ続く通路を見つけるとき、目は単なる距離だけでなく周囲のつながりも拾っています。数学ではその感覚を出発点にしながら、何を開集合とし、どの条件で連続性や連結性を述べているのかまで言葉を進めます。閉区間と開区間の違いを端の見た目で終わらせず、有限部分被覆や極値の存在へ結びつければ、抽象的な定義が具体的な判断に働くことを確かめられます。位相を学ぶ歩みは、図形の印象を、条件を示して証明できる理解へ変えていきます。

あわせて読む(数学の地図・高校数学の単元解説)

参考文献

  1. Manya Raman-Sundström(2015)「A Pedagogical History of Compactness」American Mathematical Monthly. https://doi.org/10.4169/amer.math.monthly.122.7.619
  2. Peter T. Johnstone(1983)「The point of pointless topology」Bulletin of the American Mathematical Society. https://doi.org/10.1090/s0273-0979-1983-15080-2
  3. Joseph Minhow Chan, Gunnar Carlsson, Raúl Rabadán(2013)「Topology of viral evolution」Proceedings of the National Academy of Sciences. https://doi.org/10.1073/pnas.1313480110
  4. Yulan Guo, Hanyun Wang, Qingyong Hu ほか(2020)「Deep Learning for 3D Point Clouds: A Survey」IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence. https://doi.org/10.1109/tpami.2020.3005434

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