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グラフ理論と組合せ論 点と線で世界をモデル化する|武蔵野個別指導塾

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橋を渡る順序や担当の割り当てを、点と線の関係から考えます。オイラー路の条件、平面グラフの公式、最短経路の計算をたどり、高校の組合せが大学の数学につながる道筋を確かめられます。

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グラフ理論と組合せ論 点と線で世界をモデル化する

土手から見える橋を、点と線に置き換える

川沿いの土手のベンチに座って、対岸へ渡る橋をノートに描いてみます。風でページがめくれないよう筆箱を置き、岸と中州を丸で囲み、橋だけを線として残します。数学の問題にするなら、まず「すべての橋を1回ずつ渡る散歩はできるでしょうか」と問いかけられます。橋の長さや川の幅を正確に測らなくても、答えを決められる場合があります。大事なのは、どの土地とどの土地が橋で結ばれているかという関係です。

ここで使うグラフは、関数 y = x² のグラフとは異なります。点を対象、線を対象どうしの関係として表す数学の構造です。川の形を消しても橋の接続関係が残れば、先ほどの問いは残ります。一方、「最も短い距離で歩くには」と問い直すなら、橋や道路の長さを消してはいけません。同じ風景から何を残すかは、解きたい問題によって変わります。

グラフ理論を学ぶ意味は、きれいな図を描くことだけではありません。現実の条件を数学の言葉に移し、その条件のもとで何が可能かを証明し、可能なものをどう探すかまで考えられるようになることです。組合せ論は、こうした有限の対象について、数え方、存在の条件、最適な選び方などを扱います。グラフはその中心的な道具の1つです。

大学で学ぶ数学には、極限や微分のように連続的な変化を扱う分野と並んで、このような離散的な構造を扱う分野があります。高校の「場合の数」で行ってきた区別や数え上げが、証明や計算方法の設計へ広がります。まずは小さな図で、どの条件が答えを左右するのかを丁寧に確かめていきましょう。

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組合せの計算から、つながり方の区別へ

高校の数学Aで学ぶ組合せは、グラフを数える入口になります。A、B、C、Dの4地点を考え、異なる2地点の間に道を引くことにします。道は往復でき、同じ2地点の間には高々1本しか引かず、自分自身へ戻る道は扱わないと決めます。引ける道の候補は、AB、AC、AD、BC、BD、CDの6本です。

4地点から2地点を選ぶ組合せの数 = 4 × 3 ÷ 2 = 6

4 × 3では、AからBを選ぶ場合とBからAを選ぶ場合を別に数えています。道の向きを区別しない約束なので、2で割ります。この説明は公式の丸暗記よりも大切です。道に一方通行を認めれば、ABとBAを同じものとみなせず、数え方が変わるからです。

6本の候補をそれぞれ「引く」「引かない」から選ぶと、地点名を固定したグラフは2⁶ = 64通りあります。これは各候補の選択が独立に行えるという、積の法則の利用です。さらに、道をちょうど3本引く選び方は次のようになります。

6本から3本を選ぶ組合せの数 = 6 × 5 × 4 ÷ (3 × 2 × 1) = 20

ここまでは高校の計算で進められます。しかし、20通りの中には、すべての地点へ移動できるものと、移動できないものが混ざっています。AB、BC、CDなら4地点はひと続きですが、AB、BC、CAならDだけが孤立します。点と線の本数が同じでも、使える移動の仕方は同じではありません。

実際に20通りを調べると、三角形と孤立点になるものは、孤立する地点の選び方に応じて4通りあります。残りの16通りはすべてひと続きです。なぜ他の切れ方がないのでしょうか。4地点が2地点ずつに分かれるなら道は多くても2本です。3地点と1地点に分かれ、道が3本あるなら、その3地点の間にすべての道を引くしかありません。単に一覧を作るだけでなく、場合が尽くされている理由まで示せるところに、組合せの面白さがあります。

ただし、この16通りは地点名を区別した数です。名前を入れ替えて同じつながり方になる図をまとめると、一直線につながる形と、1地点から他の3地点へ伸びる形の2種類になります。「何通りですか」と尋ねられたら、何を同じものとみなすかを先に確認しなければなりません。

高校の数学では、計算に入る前の設定が問題文に用意されていることも多いでしょう。大学では、その設定自体を定義として扱います。地点名を区別するか、向きを持たせるか、同じ場所に複数の線を認めるか。こうした選択を明示することで、数えた答えを別の人と正確に共有できます。

頂点・辺・道を区別すると、問いが定まる

ここからは、特に断らない限り、頂点と辺の数が有限の単純無向グラフを扱います。単純とは、自分自身を結ぶ辺であるループと、同じ頂点対を結ぶ複数の辺を認めないことです。無向とは、辺に進行方向を付けないことです。

グラフを G = (V, E) と書きます。Vは頂点の集合、Eは異なる2頂点からなる集合を要素とする集合です。記号では次のように表せます。

E ⊆ {{u, v} : u ∈ V, v ∈ V, u ≠ v}

例えば V = {A, B, C, D}、E = {{A, B}, {B, C}, {C, D}} なら、先ほどの一直線のつながり方です。図を折れ曲がらせても、頂点と辺の対応が変わらなければ同じグラフを表しています。線が紙の上で交差しても、そこに頂点を置くと決めない限り、交差点で乗り換えられるわけではありません。

頂点vに接続する辺の本数を、vの次数といい、deg(v)と書きます。上の例では deg(A) = deg(D) = 1、deg(B) = deg(C) = 2です。孤立した頂点の次数は0です。全頂点の次数を足すと辺数の2倍になります。

∑ deg(v) = 2|E|

ここで和は全頂点vについて取り、|E| は集合Eの要素数です。1本の辺は両端の頂点で1回ずつ数えられるので、この等式が成り立ちます。先ほどの例でも1 + 2 + 2 + 1 = 6 = 2 × 3です。小さな数え方ですが、後で一筆書きの条件を導く土台になります。

次に移動の言葉を整えます。歩道は、頂点と辺を交互に並べ、各辺が直前と直後の頂点を結んでいる列です。単純グラフなら、頂点列 v₀, v₁, …, vₖ が、各 i = 1, …, k について {vᵢ₋₁, vᵢ} ∈ E を満たすと表せます。その長さは使った辺の回数kです。歩道では頂点や辺の繰り返しを許します。

この記事では、辺を繰り返さない歩道を小道、頂点を繰り返さない歩道を道と呼びます。始点と終点だけが同じで、それ以外に頂点の繰り返しがない、長さ3以上の歩道を閉路と呼びます。用語の区別を保つと、「同じ場所へ戻る」と「同じ道路を使う」が別の条件だとわかります。グラフが連結とは、任意の u, v ∈ V に対し、uからvへ至る道が存在することです。すべての頂点が互いに到達できる、という言葉を量化しているわけです。

オイラー路は、すべての辺をちょうど1回ずつ使う小道です。頂点は繰り返してかまいません。出発点へ戻るものはオイラー閉路と呼びます。一方、ハミルトン路は、すべての頂点をちょうど1回ずつ訪れる道です。ハミルトン閉路では、最後に出発点へ戻るための重複だけを認めます。「橋をすべて渡る」は辺の条件であり、「土地をすべて訪れる」は頂点の条件です。

違いを確かめるため、四角形ABCDの周に対角線ACを加えます。A→B→C→Dはハミルトン路ですが、辺DAとACを使っていません。A→B→C→D→A→Cは全辺を1回ずつ使うオイラー路ですが、AとCを繰り返します。片方の解を見つけても、もう片方の問いに答えたことにはならないのです。

木は、連結で閉路を持たないグラフです。記号で書けば「Gは連結、かつGに閉路が存在しない」が定義です。一直線の4頂点も、中心から3方向へ伸びる4頂点も木です。木では任意の2頂点を結ぶ道がただ1つあります。道が2つあれば、分かれて再び合流する部分から閉路ができるためです。接続を保ちながら余分な回り道を持たない構造として、木は配線や探索の基本になります。

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一筆書きの判定と、平面を分ける数の関係

一筆書きについては、試行錯誤を始める前に存在を判定できます。少なくとも1本の辺を持つ有限連結無向グラフでは、オイラー閉路が存在することと、すべての頂点の次数が偶数であることが同値です。異なる頂点を始点・終点とするオイラー路が存在することと、奇数次数の頂点がちょうど2個であることも同値です。この2個が始点と終点になります。ここではループも多重辺もない場合を考えれば十分です。

まず必要条件を見ます。途中で通る頂点では、入る辺と出る辺が対になります。すべての辺を1回ずつ使うなら、その頂点に接続する辺は2本ずつ組になるので偶数本です。始点と終点が異なれば、それぞれ出る辺、入る辺が1本だけ余ります。出発点へ戻るなら、その余りも対になり、全頂点が偶数次数になります。

これだけでは「条件を満たせば必ず描ける」という逆向きは示せていません。全頂点が偶数次数の場合、未使用の辺をたどり続けると、出発点以外で行き止まりにはなりません。そこへ入れたなら、入る前まで対になっていた使用辺に1本が加わるので、もう1本の未使用辺が残るからです。したがって出発点に戻れます。まだ未使用の辺があれば、連結性によって、できた閉じた小道のどこかから未使用辺へ進めます。そこで別の閉じた小道を作り、先の小道へ挿し込みます。有限本の辺に対してこれを繰り返せば全辺を使えます。

奇数次数の頂点が2個なら、その2頂点を補助の辺で結びます。この証明の間だけ多重辺を許せば、全頂点が偶数次数となり、同じ構成で閉じた小道が得られます。最後に補助の辺を切り離すと、元のグラフのオイラー路が残ります。条件の確認と、実際の道順を作る手続きがつながっている点に注目してください。

四角形に対角線ACを加えた例では、次数はAが3、Bが2、Cが3、Dが2です。

3 + 2 + 3 + 2 = 10 = 2 × 5

奇数次数はAとCだけなので、AからCへのオイラー路が存在します。しかし、どこから始めても元に戻る一筆書きはできません。先ほどの A→B→C→D→A→C が実際の解です。さらに対角線BDも加えると、全頂点の次数が3となります。奇数次数の頂点が4個あるのでオイラー路は存在しません。一方、A→B→C→Dというハミルトン路は残ります。

もう1つの基本関係が、平面グラフのオイラーの公式です。平面グラフとは、辺どうしが共通の端点以外で交わらないよう、平面上に描けるグラフです。そのように描いた有限連結グラフについて、頂点数をn、辺数をm、面数をfとすると、次が成り立ちます。面には、図の外側の領域も必ず含めます。

n – m + f = 2

対角線ACを入れた四角形では、内側の三角形が2面、外側が1面なので、n = 4、m = 5、f = 3です。

4 – 5 + 3 = 2

外側を数え忘れると答えが合いません。図を囲む枠はグラフの辺ではないので、紙の縁で別の面を増やすこともありません。

証明の核は、閉路上の辺を1本取り除く操作です。連結性を保ったまま、隔てられていた2面が1面になるため、mとfがともに1減り、n – m + fは変わりません。閉路がなくなるまで繰り返すと木が残ります。n頂点の木の辺数はn – 1です。これは、頂点が2個以上なら最長の道の端に次数1の頂点があり、それを辺とともに取り除く帰納法で示せます。木の面は外側の1面だけなので、n – (n – 1) + 1 = 2から元のグラフにも公式が戻ります。

公式から、有限単純連結平面グラフでn ≧ 3ならm ≦ 3n – 6という制限も得られます。各面の境界の辺を、橋に当たる辺は両側を数える約束で数えると、合計は2mです。各面に少なくとも3回の辺の出現があるので3f ≦ 2mです。f = 2 – n + mを代入して整理すると、3(2 – n + m) ≦ 2m、したがってm ≦ 3n – 6となります。

5頂点のすべての頂点対を結ぶグラフK₅は、辺が5 × 4 ÷ 2 = 10本です。しかし平面に描けるなら辺数は3 × 5 – 6 = 9本以下でなければなりません。よってK₅は平面グラフではありません。この制限は必要条件なので、辺数が上限以下だったというだけで平面に描けると結論してはいけません。

橋の巡回から、色分けの証明へ広がった問い

グラフ理論の出発点を理解するには、橋の巡回を「土地の形」から「接続の関係」へ移し替えた考え方を押さえるとよいでしょう。川が曲がっていても、橋が長くても、一筆書きの可否を左右するのは頂点の次数と連結性です。図を現実そっくりにするほど数学として有用になるわけではありません。問いに不要な情報を取り除くことで、別々の場所の問題が同じ定理で扱えるようになります。

そこから、平面をどう分けるか、隣り合う領域をどう塗り分けるかという問いにも進めます。頂点彩色は、各頂点に色を割り当て、辺で結ばれた2頂点には異なる色を使うことです。k色を使う彩色は、写像 c : V → {1, …, k} で、すべての {u, v} ∈ E に対して c(u) ≠ c(v) を満たすもの、と定義できます。必要な色数の最小値を彩色数と呼び、χ(G)と書きます。

四色定理は、すべての有限単純平面グラフGについてχ(G) ≦ 4が成り立つ、という主張です。必ず4色を使うという意味ではありません。道だけなら辺の両端を交互に塗る2色で足りますし、三角形なら3頂点が互いに隣接するので3色が必要です。また、任意のグラフに4色で足りるという主張でもありません。K₅はすべての頂点対が隣接するため5色を必要とします。

地図の色分けと結び付ける場合には、領域を頂点とし、境界の線分を共有する領域どうしを辺で結びます。点で触れるだけの場合は隣接に含めません。通常の、各領域がひと続きである地図をこのように表すと、平面グラフの彩色として考えられます。離れた領域を同じ国だから同色にするなどの追加条件を入れれば、別途その条件を扱う必要があります。日常語の「地図」を定理に結び付けるにも、隣接の定義が欠かせません。

四色定理の成果を伝える数学文献として「Every planar map is four colorable」があります(Appel・Haken, 1976)。この題名が表すのは、特定の地図を塗れたという報告ではなく、平面上の地図全体に対する主張です。小さな図で成功を重ねることと、可能なすべての図に通用する証明を与えることには、大きな隔たりがあります。

さらに「The four color proof suffices」という論考もあります(Appel・Haken, 1986)。証明そのものを題材にした論考が続いていることからも、研究の対象には答えだけでなく、その答えをどう確立するかという問題が含まれると読み取れます。四色定理を入口に学ぶ際には、証明の細部を急いで追う前に、「平面である」という仮定や「高々4色」という結論を正確に言えることが大切です。

例えば、四角形ABCDの周だけならAとCを同色、BとDを別の同色にして2色で足ります。対角線ACを加えると三角形ABCができ、2色では不可能です。A、B、Cに異なる色を付け、DをBと同色にすれば3色で塗れます。1本の辺を加えただけで最小色数が変わる具体例が、抽象的な定理を読むための足場になります。

距離を最小にする問題と、人を組にする問題

道路網を使うなら、辺に距離や所要時間を表す重みを付けます。ここでは非負の重み w : E → [0, ∞) を持つ有限グラフを考え、道の重みを、その道で使う辺の重みの和とします。辺の本数が少ない道と、重みの和が小さい道は一致するとは限りません。

無向の道路網で、辺ABの重みを2、ACを5、BCを1、BDを4、CDを1とします。AからDへの候補を見ると、A→B→Dは2 + 4 = 6、A→C→Dは5 + 1 = 6です。ところがA→B→C→Dなら2 + 1 + 1 = 4です。通る辺が増えても、合計は小さくなります。

非負重みの最短経路を求める方法として、ダイクストラ法があります。出発点Aの暫定距離を0、他を∞とし、未確定の頂点のうち暫定距離が最小のものを順に確定します。確定した頂点を経由する方が近ければ、隣の頂点の暫定距離を更新します。

この例では、Aから直接届くBを2、Cを5にします。次にBを距離2で確定すると、Cは2 + 1 = 3へ更新され、Dは2 + 4 = 6となります。続いてCを距離3で確定すると、Dは3 + 1 = 4へ更新されます。最後にDが距離4で確定します。更新のときに直前の頂点も記録すれば、距離の値だけでなくA→B→C→Dという経路を復元できます。

ここで非負という仮定は本質的です。すべての辺が非負なら、後から遠い頂点を経由して、いったん最小として確定した距離をさらに縮めることはありません。負の重みを認めると、この根拠が崩れます。「毎回いちばん近いものを選ぶ」という手順だけを覚えず、なぜ確定を取り消さずに済むかを考える必要があります。

割り当てには、別の構造が役立ちます。マッチングは、端点を共有する辺がないように選んだ辺集合M ⊆ Eです。つまり、異なる e, f ∈ M に対し e ∩ f = ∅ を満たします。人と作業を別々の頂点集合にし、担当可能な組だけを辺で結べば、1人につき1作業、1作業につき1人という割り当てをマッチングで表せます。頂点を互いに交わらない2集合に分け、辺が常にその間を結ぶグラフを二部グラフといいます。

担当者をA、B、C、作業をx、y、zとします。Aはxとy、Bはxのみ、Cはyとzを担当可能とします。最初にAをxへ割り当てると、Bに割り当てられる作業がなくなります。しかし、Aをyへ動かせば、Bをx、Cをzへ割り当てられ、全員に作業が行き渡ります。いったん選んだ辺を交換することが改善につながる例です。

この交換は増加道という考え方で整理できます。現在のマッチングに入っていない辺と入っている辺を交互にたどり、両端が未割り当ての頂点である道を探します。道上の選択を反転すると、マッチングの辺が1本増えます。Aとxだけを組にした段階なら、B→x→A→yがその道です。BxとAyを選び、Axを外すと、組が1つから2つになります。

最短経路や割り当ては個々の解を求める問いですが、ネットワーク科学では、大きなつながり全体の特徴も調べます。規則的な結合と無作為な結合の中間にあるネットワークを、結合のつなぎ替えによって調べる研究があります(Watts・Strogatz, 1998)。この研究は、生物・技術・社会のネットワークを背景に、規則性と無作為性の両極だけでは捉えにくい構造を扱い、高い局所的なまとまりを持つ系に言及しています。

この問題意識を理解するには、ある頂点の隣同士が互いに結ばれているかという局所の見方と、離れた頂点まで何本の辺で届くかという全体の見方を分けるとよいでしょう。前者は身近な集まりの密さに、後者は情報の届き方などに対応します。辺を1本追加したとき、その近くの関係が変わるだけなのか、遠くへの道の長さまで変わるのかを調べることで、ネットワークの構造を複数の尺度から考えられます。

ただし、辺が表すものは応用ごとに違います。道路なら移動可能性、担当表なら実行可能性、人の集まりなら定めた交流の基準かもしれません。道路の距離を表す重みと、交流の強さを表す重みでは、大きい値の意味も変わります。グラフを作った後の計算だけでなく、最初の対応付けを説明できてこそ、数学の答えを現実に戻せます。

図の印象を、定義と反例で確かめる練習

グラフ理論では絵が助けになりますが、絵の印象だけで判断するとつまずきます。線が交差しているから平面グラフではない、と決めるのが一例です。平面性は「今の絵に交差がない」ではなく「交差のない描き方が存在する」という性質です。四角形の両対角線を引いた図でも、片方を外側へ回せば交差なく描けます。逆に、何度描き直してもうまくいかないという経験だけでは、描けない証明にはなりません。

離散数学と数学的モデリングのつながりを扱った研究は、中等教育を主な対象として、頂点と辺のグラフを学校段階で取り組める題材として論じています(Greefrathほか, 2022)。これは授業の題材としての可能性を考える研究であり、グラフを扱えば誰でも成績が上がるという保証としては読めません。学習に取り入れるなら、身近な場面を図にするだけで終えず、その図の頂点と辺が何を表すかを言葉にする練習へつなげたいところです。

また、大学段階の頂点彩色を題材に、探究型の学習課題を設計した研究もあります(Radmehrほか, 2023)。対象は頂点彩色の教授・学習であり、その課題設計を高校生全般への効果と同一視することは避ける必要があります。それでも、色を付けて終えるのでなく、より少ない色では不可能な理由を探す、という学習課題を考える手がかりになります。

具体的には、次の4段階でノートを作ると、図から論理へ進みやすくなります。

  1. 頂点集合と辺集合を書き、向き、重み、重複の扱いを明示します。まず何を対象にしているかを固定します。
  2. 問いを1文にします。「全辺を1回ずつ通るのか」「全頂点を1回ずつ訪れるのか」「合計距離を最小にするのか」を区別します。
  3. 小さな図で候補を作り、次数や道の長さを計算します。成功例に加えて、条件を1つ変えた失敗例も作ります。
  4. 使う定理の仮定を照合し、結論の範囲を書きます。必要条件しか確かめていないなら、存在まで断定しないようにします。

例えば彩色なら、3色で塗った図は「χ(G) ≦ 3」の証拠です。それだけで「χ(G) = 3」とは言えません。三角形を含むことを示せば、少なくとも3色必要なので「χ(G) ≧ 3」も得られ、初めて等号が決まります。解を1つ作ることと、それよりよい解がないと示すことは、最適化に共通する2つの作業です。

高校生のうちは、順列・組合せの計算に加え、「同じものを2回数えていないか」「場合を落としていないか」を説明する練習が役立ちます。4頂点くらいの図なら、手で全候補を調べることもできます。その後に短いプログラムで全列挙し、手で得た分類と照らし合わせると、条件の書き落としを見つけやすくなります。ただし、有限個の例で正しかったことを、任意の頂点数に対する証明と取り違えないようにしましょう。

塾が担うのは、答えを先に告げることより、説明のどこで条件が入れ替わったかを一緒に確かめることです。一筆書きの途中で同じ頂点へ戻ったときに、それを禁止したつもりになっていないか。外側の面を数えたか。こうした短い問いで、定義に戻る習慣を支えられます。家庭では、お子さまが描いた図について「この線は何を表しているの」と尋ねるだけでも、説明する機会になります。専門用語の先取りや解答の速さより、条件を自分の言葉で話す時間を持つことが、学びの様子を知る手がかりになります。

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点と線を学ぶ前に確かめたい3つの疑問

微分積分が得意でなくても学べますか

初歩のグラフ理論には、微分積分を使わずに進められる題材が多くあります。集合、場合の数、論理の基本が出発点です。ただし、「計算が少ないから簡単」とは限りません。連結性のように、すべての頂点対について成り立つ条件を読み取る力が必要です。後にネットワーク上の変化を扱うなら、線形代数や微分方程式と結び付くこともあります。入口の違いを、数学の得意不得意を固定する材料にしなくて大丈夫です。

オイラー路を判定できれば、ハミルトン路も判定できますか

同じ次数の条件では判定できません。オイラー路の条件は辺の出入りを対にする考え方から出ますが、ハミルトン路は各頂点の訪問を制限します。四角形に両対角線を加えた例では、オイラー路がなくてもハミルトン路はありました。名前が似ていても、何を1回ずつ使うのかに戻って、別の問題として扱ってください。

コンピュータで全部試せば、証明は不要ですか

固定した小さな問題なら、全候補を正しく調べることで答えを確定できます。ただし、候補の作り方が漏れなく重複の扱いも正しいこと、判定条件が問題と一致していることを説明しなければなりません。頂点が増えると候補も増え、単純な全列挙では扱いにくくなります。次数の定理のように、短い計算で可否が決まる理由を理解することは、計算機を使うときにも役立ちます。

土手のベンチで描いた橋の図へ戻ると、最初はただの丸と線だったものに、いくつもの問いが重なっています。全辺を使えるか、全頂点を訪れられるか、短く歩けるか。1つの図に対しても、条件を変えれば必要な定義と方法が変わります。その違いを説明できることが、図を見る力を数学の力へ変えていきます。

高校の組合せは、大学へ進むと置き去りになる計算ではありません。数える対象を決め、重複を取り除き、存在の理由を示す思考は、木にも彩色にも割り当てにも流れています。小さな図に問いを書き添え、その答えがなぜ成り立つかを一歩ずつ確かめるところから始められます。点と線を描く一手が、世界の関係を読み解く数学への入口になります。

あわせて読む(数学の地図・高校数学の単元解説)

参考文献

  1. Appel, K., Haken, W.(1976)「Every planar map is four colorable」Bulletin of the American Mathematical Society. https://doi.org/10.1090/s0002-9904-1976-14122-5
  2. K Appel, W Haken(1986)「The four color proof suffices」The Mathematical Intelligencer. https://doi.org/10.1007/bf03023914
  3. Duncan J. Watts, Steven H. Strogatz(1998)「Collective dynamics of ‘small-world’ networks」Nature. https://doi.org/10.1038/30918
  4. Greefrath, Gilbert, Siller, Hans-Stefan, Vorhölter, Katrin ほか(2022)「Mathematical Modelling and Discrete Mathematics: Opportunities for Modern Mathematics Teaching」ZDM: Mathematics Education. https://doi.org/10.1007/s11858-022-01339-5
  5. Radmehr, Farzad, Tohidinasab, Khaled, Tavakoli, Mostafa(2023)「Teaching and Learning of Vertex Coloring Using an Inquiry-Based Approach」PRIMUS. https://doi.org/10.1080/10511970.2023.2170505

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