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数値解析 コンピュータで正しく計算するための数学|武蔵野個別指導塾
小数の計算がずれる理由から、二分法の誤差保証、連立方程式の条件数、微分方程式の近似までを具体的に計算し、画面に出た数値の確かさを自分で点検する視点を身につけます。

数値解析 コンピュータで正しく計算するための数学
古い画面に並んだ小数を信じてよいでしょうか
パソコン室の古いデスクトップの前で、ノートに「0.1 + 0.2 = 0.3」と書いてから、同じ計算を画面に入力してみます。一般的な2進の倍精度浮動小数点数を使う Python では、結果が 0.30000000000000004 と表示されます。鉛筆では1行で済んだ足し算に、なぜ見慣れない末尾がつくのでしょうか。古い機械だから間違った、と片づける前に、コンピュータが数をどのように保存しているかを考える必要があります。
数学の数直線には、2つの異なる実数の間にも無数の実数があります。一方、決まった個数のビットで保存できる数は有限個です。実数を扱う計算と、有限個の表現できる数を使う計算は、出発点から同じではありません。その間にあるずれを調べるのが、数値解析の重要な役割です。
数値解析では、答えを小数で出せたら終わり、とは考えません。入力の誤差がどれだけ増えるか、途中で何桁失われるか、反復をいつ止めるかまで扱います。近似すること自体を失敗とみなすのではなく、近似値と誤差の情報を組にして答えを作ります。
高校の方程式、微分積分、数列は、この考え方を学ぶための道具になります。多くの理系学部では1〜2年で学ぶ微積分や線形代数を土台として、数値的な解法へ進みます。大きなシミュレーションにも、まずは「この小数のどこまでが確かか」という小さく具体的な問いがあります。

√2を求める計算から、答えの保証へ進む
高校数学では、x² = 2 の正の解を √2 と表せます。これは正確な答えです。しかし、長さを画面上の座標にしたり、別の計算へ渡したりするには、小数での近似が必要になります。平方して2より大きいか小さいかを調べると、
1.4² = 1.96 < 2 < 2.25 = 1.5²
となります。正の範囲では平方が単調に増えるので、1.4 < √2 < 1.5 です。さらに、1.41² = 1.9881、1.42² = 2.0164 ですから、1.41 < √2 < 1.42 と絞れます。この計算では、近似値を探すと同時に、解の居場所を保証しています。
解を挟む区間の中点を選ぶ方法なら、小数の桁を目で探す操作を一定の手順にできます。最初の区間を [1, 2] とすると、中点は1.5で、その平方は2より大きいので、次は [1, 1.5] です。その中点1.25の平方は1.5625なので、次は [1.25, 1.5] です。続いて1.375の平方は1.890625となり、区間は [1.375, 1.5] に縮まります。毎回、解を残しながら区間の長さを半分にしています。
微分を使うと、別の方法も見つかります。f(x) = x² – 2 のグラフを、いまいる点の接線で近似します。接点の横座標を x とすると、接線の方程式は y = f(x) + f′(x) × (X – x) です。これと横軸の交点を次の近似値にするので、
次の近似値 = x – f(x)/f′(x) = (x + 2/x)/2
を得ます。1.5から始めると、次の値は17/12、さらに次は577/408です。小数では約1.416666667、約1.414215686となり、短い計算で √2 に近づきます。これはニュートン法と呼ばれる反復法です。
ここで高校の計算に問いを付け加えます。近づいているように見える数列は、本当に解へ収束するのでしょうか。途中の変化が小さければ止めてよいのでしょうか。接線が横軸と交わらない場合はどうするのでしょうか。数値解析では、計算手順だけでなく、うまくいく条件と止め方を説明します。
高校数学の数列は反復の進み方を表し、微分は誤差の増減を調べ、積分は細かく区切って足す近似へつながります。ベクトルや行列を学ぶと、未知数が多数ある連立方程式にも同じ問いを向けられます。公式を暗記する対象が増えるというより、一度覚えた計算を、誤差を含む状況でも使える形に整えていくのです。
誤差、条件数、安定性を分けて考える
まず、正確な値を x、近似値を x̃ とすると、絶対誤差は両者の差の大きさ |x̃ – x| です。x ≠ 0 のとき、相対誤差は正確な値の大きさで割った |x̃ – x|/|x| と定義します。同じ0.01のずれでも、正確な値が100なら相対誤差は0.0001、正確な値が0.02なら0.5です。必要な精度を相談するときには、絶対的な幅を指定しているのか、値に対する割合を指定しているのかを区別します。正確な値が0の場合、この定義の相対誤差は使えません。
浮動小数点数は、符号、仮数、指数によって数を表す仕組みです。2進で精度が p ビットの正規化された正の数は、概念的には整数部分が1で小数部分が p – 1 桁の2進の仮数に、2の整数乗を掛けて表します。使える指数にも範囲があります。この表現で保存できない値は、近くの表現可能な値に置き換える必要があり、その操作が丸めです。
10進小数の0.1は、2進では有限桁で表せません。保存の時点で近似となり、その近似どうしを足した後にも丸めが起こります。冒頭の表示はその結果です。表示が長いことと、誤差が大きいことは同じではありません。0.1 + 0.2 の結果と、同じ形式で保存した0.3との差は約 5.55 × 10⁻¹⁷ です。ただし、後者の0.3も厳密な有理数3/10そのものではないので、この差と、厳密な答えに対する誤差は区別します。
よく用いられる丸めのモデルでは、実数 z を丸めた値を fl(z) と書き、
fl(z) = z × (1 + δ), |δ| ≦ u
と表します。ここで u は単位丸め誤差です。2進で精度 p、最近接丸めを使う場合には u = 2⁻ᵖ と置けます。この相対誤差モデルは、オーバーフローがなく、丸めの前後で正規化数の範囲にある場合などを想定しています。0に極めて近い非正規化数まで、一律に同じ相対評価を適用してはいけません。よく使われる倍精度では p = 53 で、u は約 1.11 × 10⁻¹⁶ です。
桁落ちは、近い大きさの数を引くときに、それまで共通だった上位の桁が消え、残った値に対して入力の丸め誤差が相対的に大きくなる現象です。例えば、√(1 + t) – 1 を t = 10⁻¹⁶ で計算する場面を考えます。倍精度では1 + tが1へ丸められ、直接の計算結果が0になる場合があります。ところが、分母を有理化すれば、
√(1 + t) – 1 = t/(√(1 + t) + 1)
です。右辺では約 5 × 10⁻¹⁷ が得られます。実数の式として同じでも、有限桁で計算するときの振る舞いは違います。引き算が必ず不正確なのではなく、答えに残る小さな差を、誤差のある大きな数から取り出そうとすることが問題です。
次に、入力のずれに対する問題そのものの敏感さを考えます。正方行列 A が可逆で、行列ノルムをベクトルノルムから導くとき、そのノルムに関する条件数を次で定義します。
κ(A) = ‖A‖ × ‖A⁻¹‖
ベクトルの最大値ノルムは ‖v‖∞ = max |vᵢ|、それから導かれる行列ノルムは、各行の成分の絶対値の和の最大値です。条件数が大きい行列では、右辺や係数の小さな変化が、解の大きな変化につながり得ます。条件数は、使った解法の巧拙だけを測る量ではありません。
これに対して、計算法の安定性は、計算中の誤差をどのように伝えるかという性質です。後退誤差という言葉では、「得られた近似解は、入力をどれだけ変えた問題の正確な解か」を問います。入力の尺度に照らして小さい変化で説明できる計算法を、後退安定な計算法と呼びます。ただし、問題の条件数が大きければ、後退誤差が小さくても解自体の誤差は大きくなり得ます。
誤差の発生源も分けます。測定値のずれは入力誤差、有限桁へ置き換えるずれは丸め誤差、微分や積分を有限個の計算で近似するずれは離散化誤差です。計算桁数を増やしても、粗い刻みで微分方程式を解いたことによる離散化誤差が自動的に消えるわけではありません。何を改善すればよいかは、誤差の種類を見分けて初めて決まります。

二分法の保証とニュートン法の速さを確かめる
二分法の基本となる定理を、仮定から書きます。実数の有界閉区間 [a, b] 上で f が連続であり、f(a) × f(b) < 0 なら、中間値の定理によって区間内に少なくとも1つの零点があります。中点が零点なら終了し、そうでなければ、端点での符号が異なる半区間を残します。正確な計算のもとでこの操作を続ければ、区間は1つの零点へ縮みます。零点が初めから一意であることまでは仮定していません。
初期区間の長さを L とし、n回縮小した後の区間の中点を cₙ、残り続ける零点を α とすると、
|cₙ – α| ≦ L/2ⁿ⁺¹
が成り立ちます。要点は、各段階で零点を含む閉区間を残し、区間の長さが L/2ⁿ になることです。入れ子の閉区間は長さが0へ近づくので1点に絞られ、連続性によりその点で f の値が0になります。中点から区間内のどの点までの距離も、区間の長さの半分以下です。これが誤差評価の理由です。
√2を [1, 2] から探す場合、n = 19なら誤差の上限は1/1048576、約0.000000953674です。したがって、この段階の中点は絶対誤差0.000001未満の要求を満たします。「小数が何桁か似ている」ではなく、要求から必要な反復回数を先に決められます。ただし、実際のプログラムでは関数値の符号判定も丸めの影響を受けます。数学上の保証をそのまま使うには、符号を正しく判定できていることが必要です。
ニュートン法については、局所的な収束定理が基本になります。f が零点 α の近傍で2回連続微分可能で、f′(α) ≠ 0 とします。このとき初期値 x₀ を α に十分近く選ぶと、
xₙ₊₁ = xₙ – f(xₙ)/f′(xₙ)
で定めた反復は分母が0にならずに続き、αへ収束します。さらに、ある定数 C と十分大きい n に対して、誤差 eₙ = xₙ – α は |eₙ₊₁| ≦ C × |eₙ|² を満たします。この意味で2次収束と呼びます。初期値がどこにあっても収束する、という定理ではありません。
要となる計算は、αでの関数値0を、xₙのまわりでテイラー展開することです。xₙとαの間のある点 ξ について、
0 = f(xₙ) + f′(xₙ) × (α – xₙ) + f″(ξ) × (α – xₙ)²/2
と書けます。反復式に代入すると、次の誤差は f″(ξ)/(2 × f′(xₙ)) に現在の誤差の2乗を掛けた形になります。f′(α) ≠ 0 と連続性によって、十分近い範囲で分母は0から離れます。また f″ は小さな閉区間上で有界なので、係数を一定の C 以下に抑えられます。近くで速くなる理由は、この2乗にあります。
f(x) = x² – 2、x₀ = 1.5 では、x₁ = 17/12、x₂ = 577/408、x₃ = 665857/470832 です。√2との差の絶対値は順に約0.0857864、0.00245310、0.00000212390、0.00000000000159486となります。なお、この例では誤差の関係を直接整理して、
xₙ₊₁ – √2 = (xₙ – √2)²/(2 × xₙ)
と確かめることもできます。正の近似値なら次の値は √2 以上であり、誤差が小さくなった段階で2乗の効果が現れます。有限桁の計算では、最後には丸めの大きさが効いて、この改善がいつまでも続くわけではありません。
失敗例も手で追えます。f(x) = x³ – 2x + 2 にニュートン法を使い、x₀ = 0 とすると、f(0) = 2、f′(0) = -2 なので x₁ = 1 です。次は f(1) = 1、f′(1) = 1 なので x₂ = 0 へ戻ります。以後0と1を繰り返し、収束しません。公式の入力を正しく打ったことだけでは、答えの正しさは保証されません。
停止条件も目的に応じて考えます。|xₙ₊₁ – xₙ| が小さいのは、近似値の変化が小さいという観測です。|f(xₙ)| が小さいのは、方程式へ代入した残差が小さいという観測です。残差を解の誤差へ結びつけるには追加の条件が要ります。例えば近似値と零点を結ぶ区間で f が連続微分可能で、|f′(x)| ≧ m > 0 なら、平均値の定理から |xₙ – α| ≦ |f(xₙ)|/m を得ます。残差だけでなく、その残差をどの程度の誤差と読めるかを点検します。
行列計算が促した、誤差を調べる数学
多数の未知数が互いに関係する問題では、1変数の方程式を解く工夫だけでは足りません。連立一次方程式をまとめて処理し、途中の誤差まで追う必要があります。1947年の「Numerical inverting of matrices of high order」は、大きな次数の行列の逆行列計算を題名に掲げています(von Neumann・Goldstine, 1947)。行列の数値計算が早くから研究課題になっていたことを示す文献です。
行列 A = ((1, 1), (1, 1.001))、右辺 b = (2, 2.001) を考えます。対応する式は x + y = 2、x + 1.001y = 2.001 です。下の式から上の式を引けば、0.001y = 0.001 となり、y = 1、x = 1 を得ます。これが消去法の小さな例です。ところが右辺の後半だけを2.002へ変えると、0.001y = 0.002となり、解は y = 2、x = 0へ変わります。
右辺の最大値ノルムに関する相対変化は0.001/2.001、約0.00049975です。元の解に対する解の相対変化は1です。この行列の逆行列は ((1001, -1000), (-1000, 1000)) なので、‖A‖∞ = 2.001、‖A⁻¹‖∞ = 2001、κ∞(A) = 4004.001 となります。近い2本の式から、それぞれの未知数を区別しようとする敏感さが数に表れています。
係数行列 A を固定し、右辺だけが Δb 変わったとき、解の変化は Δx = A⁻¹Δb です。行列ノルムの性質と ‖b‖ ≦ ‖A‖ × ‖x‖ を使うと、b ≠ 0 のもとで、
‖Δx‖/‖x‖ ≦ κ(A) × ‖Δb‖/‖b‖
を得ます。これは最悪の場合の上限で、毎回その倍率まで増幅するという意味ではありません。先ほどの例では上限は2.001で、実際の相対変化1を確かに含んでいます。計算結果の不確かさを、入力の不確かさと結びつける仕組みが見えます。
実際に Ax = b を解くときは、逆行列をすべて作るより、消去法で三角形の形に変えて代入する方が適切な場合が多くあります。消去の途中で小さすぎる数を割り算の分母にすると誤差を増幅しやすいため、同じ列の下側も調べて絶対値の大きい成分を選び、行を交換する部分ピボット選択を使います。ただし、行交換で問題そのものの条件の悪さが消えるわけではありません。
浮動小数点の表現と丸め誤差を、計算機システムの設計に関わる話題として説明する文献には、1991年の「What every computer scientist should know about floating-point arithmetic」があります(Goldberg, 1991)。数を保存する仕組みと数学的な誤差評価は、別々に学んで終わる話ではありません。行列の問題が入力に敏感なのか、途中の操作が丸めを増幅したのかを分けることで、精度を上げるべき場所が定まります。
面積と時間発展を有限個の計算へ置き換える
数値積分では、曲線の下の面積を、計算しやすい図形の面積の和で近似します。[0, 1] で f(x) = x² を積分すると、正確な値は1/3です。区間を N 等分し、幅 h = 1/N として隣り合う点を直線で結ぶ複合台形則では、端点の値に半分の重み、内部の値に1の重みをつけ、最後に h を掛けます。
N = 2 なら、評価点は0、0.5、1なので、
T₂ = 0.5 × (0/2 + 0.25 + 1/2) = 0.375
です。N = 4なら T₄ = 0.34375、N = 8なら T₈ = 0.3359375となります。この関数では T(N) = 1/3 + 1/(6N²) という形で計算でき、分割数を2倍にすると誤差が1/4になります。曲線が上に凸か下に凸かを図で確かめると、この場合の台形が真の面積より大きいことも説明できます。ここではグラフが弦の下にある、すなわち f″(x) > 0 であることを使います。
この例で得た規則を、どの関数にも無条件には広げられません。区間内で急に変化する関数、滑らかでない関数、狭い範囲に大きな山がある関数では、必要な分割の仕方が異なります。等分を細かくするだけでなく、変化の大きい場所へ評価点を集める発想も必要になります。数値積分の結果を報告するときには、分割を変えたときに値がどう変わるかを合わせて調べます。
時間とともに変わる量を扱うときは、常微分方程式の数値解法が働きます。初期値問題 y′ = F(t, y)、y(0) = y₀ に対して、陽的オイラー法は、現在の傾きを1刻みの間使い続ける方法です。tₙ = nh として、
yₙ₊₁ = yₙ + h × F(tₙ, yₙ)
で次の近似値を作ります。これは微分係数を差分で置き換える考え方で、高校の接線の計算が、そのまま時間発展の計算になります。
y′ = -y、y(0) = 1 なら正確な解は y(t) = e⁻ᵗ です。オイラー法では yₙ₊₁ = (1 – h)yₙ なので、h = 0.5で時刻1まで進めると y₂ = 0.25、h = 0.25なら y₄ = 0.31640625となります。正確な e⁻¹ は約0.367879441です。刻みを小さくすると、この例では近似が改善します。ただし、毎回の計算では正確な解を知らないのが普通なので、既知の解を持つ問題で手順を点検してから、未知の問題へ進めます。
同じ式は安定性の入り口にもなります。正確な解は時刻が進むと0へ減衰しますが、オイラー法の値が減衰するには |1 – h| < 1、すなわち 0 < h < 2 が必要です。h = 3なら数値解は1、-2、4、-8と大きくなります。これは元の現象が増大しているのではなく、解法と刻み幅の組合せが不適切なのです。刻み幅には精度の条件と安定性の条件の両方があります。
より多くの傾きを使う代表的な方法が、古典的な4段4次のルンゲ=クッタ法です。現在の値を y、時刻を t として、次のように段階を作ります。
k₁ = F(t, y)
k₂ = F(t + h/2, y + h × k₁/2)
k₃ = F(t + h/2, y + h × k₂/2)
k₄ = F(t + h, y + h × k₃)
次の値 = y + h × (k₁ + 2k₂ + 2k₃ + k₄)/6
この方法では中点付近の傾きも使って、1刻みの変化を推定します。同じ y′ = -y を h = 0.5で2回進めると、時刻1で約0.368170844が得られます。1回あたりの関数評価は増えますが、この例ではオイラー法より正確です。十分な滑らかさや解に対する適切な条件のもとで、固定した有限時間区間の大域誤差は h の4乗の程度になります。「4次」とは、表示する小数が4桁という意味ではありません。
応用では、計算された数値が別の判断へ渡ります。例えば、個体ごとの行動を計算するモデルでは、ある量が閾値を超えたかどうかで次の動作が変わることがあります。「What every agent-based modeller should know about floating point arithmetic」は、エージェントに基づくモデルを作る人と浮動小数点演算との関わりを題名に掲げた論文です(Polhill・Izquierdo・Gotts, 2006)。この接点を考えると、丸めは末尾の小数だけでなく、分岐の判定にも関係することがわかります。
例えば、本来0.3になる量について「0.3より大きいなら動く」という条件を設けると、冒頭の足し算を使うか、別の式を使うかで、境界付近の判定が変わり得ます。ここで単に適当な小数を足して解決するのではなく、モデルの閾値の意味、入力の精度、許容する誤差を決めます。現代の大規模な計算でも、面積を足す、時間を進める、条件を判定するという基礎的な操作の確かさが積み重なって、結果の信頼性を支えます。
間違いを消す前に、どこから来たかを追う
数値解析でつまずきやすいのは、式として正しいこと、プログラムが動くこと、結果が十分正確なことを1つにしてしまう点です。有理化の前後で式が同じでも計算結果が変わり、ニュートン法を正しく実装しても収束しない場合があります。だからこそ、失敗した計算は捨てる前に観察する価値があります。
数学における誤差の分析が数学的な考えの理解を深める場合があると論じる教育論考に、「Errors in Mathematics Aren’t Always Bad」があります(Gordon, 2011)。扱う対象は数学の誤差や数値的な近似であり、特定の学年の学習者への効果を数量的に保証するものとしては読みません。ここでの学習では、0という答えが出た桁落ちの計算を、失敗の印だけつけて終わらず、どの段階で必要な情報を失ったかをたどります。
「Discretization vs. Rounding Error in Euler’s Method」は、オイラー法で刻みを小さくすると離散化誤差を減らせる一方、計算回数が増えて丸め誤差を新たに持ち込む関係を扱っています(Borges, 2011)。対象は初期値問題に対する数値計算の仕組みであり、特定の高校生集団に対する指導効果を直接示す研究ではありません。この見方を持つと、「刻みを小さくすれば、いつまでも同じ調子で良くなるはずだ」という予想を、計算して確かめる問いへ変えられます。
学ぶ手順は次のように整理できます。
- 正確な答えを知っている問題を選びます。√2、x²の定積分、y′ = -y の初期値問題などで、入力、近似値、絶対誤差を並べます。正解との比較ができる段階で、更新式や添字の間違いを見つけます。
- 1回の更新を手で追います。二分法なら残す区間、ニュートン法なら関数値と微分係数、ルンゲ=クッタ法なら各段の傾きを書きます。最終値だけを見るより、どの操作を実装したかを確かめやすくなります。
- 条件を1つだけ変えます。初期値、刻み幅、計算精度を同時に変えず、それぞれが結果へ及ぼす影響を調べます。台形則の分割数を倍にして誤差の比を見るように、予測と観測を対応させます。
- 止める理由を文章にします。「区間幅から誤差が要求以下とわかる」「残差と導関数の下限から評価できる」など、判断の根拠を書きます。小数表示が変わらなくなったという事実だけで、正確さの証明にしないようにします。
高校生のうちには、微分の接線、数列の漸化式、積分の面積という意味を、互いにつないで練習できます。電卓を使う前に概算し、答えの符号や大きさを予測することも有効です。特別なプログラミング技術より、途中式を残して、予想と違ったときに戻れる習慣が役立ちます。
塾での指導では、計算の速さだけを採点するのではなく、仮定を読めているか、誤差と残差を区別できているかを一緒に点検します。パソコン室の古いデスクトップの前なら、画面の小数の横へ、ノートに「区間」「刻み幅」「丸め」の欄を作れます。計算結果を写すだけだったノートが、結果の確かさを説明するノートへ変わります。
家庭では、お子さまが長い小数を出したときに、すぐ正誤を尋ねるより、「どのくらいのずれまでならよい計算なの」と聞く余地があります。ご家庭で収束の証明まで教える必要はありません。試した条件を残し、うまくいかなかった理由を言葉にする時間を持てることが、次の学習へつながります。
ここで手が止まるなら、止まった単元まで一緒に戻ります。武蔵境の数学塾(1 対 1)/お問い合わせ
小数の答えと付き合うための3つの問い
正確な式があるなら、近似は不要ですか
正確な式は、比較の基準や性質の理解に役立ちます。しかし、その値を長さ、時間、面積として使う場面では、有限桁の数値が必要になります。また、扱いやすい式で解を表せない問題もあります。式を求めることと、必要な精度の値を得ることは、互いに補い合う課題です。√2という表現を知っていても、1.414と置いたときの誤差は別に考えます。
計算桁数を増やせば、すべて解決しますか
丸め誤差の影響を小さくできる場合はありますが、初期値が悪くて循環するニュートン法は、それだけでは直りません。オイラー法の刻みが不適切なら、精度を上げても離散化や安定性の問題が残ります。条件の悪い連立方程式では、入力自体に含まれる誤差が解へ増幅されます。まずどの誤差が支配的かを調べ、それに合う対策を選びます。
プログラムが苦手でも学べますか
最初は紙の上で数回反復するだけでも、重要な部分を学べます。二分法が解を残す理由、ニュートン法が接線を使う理由、台形則の面積が過大になる理由は、図と式で理解できます。その後で短いプログラムにすると、多くの反復や条件の比較がしやすくなります。計算機は理解の代わりではなく、立てた予測を広い範囲で試す道具になります。
数値解析を学ぶと、画面に表示された数字に対する問いが具体的になります。何の近似なのか、どの仮定のもとで計算したのか、どの誤差を抑えたのか。それを答えられれば、長い小数の列に圧倒される必要はありません。古いデスクトップで実行した短い計算にも、大きな科学計算と共通する判断が含まれています。
数を出す操作の先へ進み、その数を使ってよい理由まで説明しましょう。計算の確かさは、残した途中式と誤差の評価から築けます。
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参考文献
- David Goldberg(1991)「What every computer scientist should know about floating-point arithmetic」ACM Computing Surveys, 23(1), 5–48. https://doi.org/10.1145/103162.103163
- John von Neumann, H. H. Goldstine(1947)「Numerical inverting of matrices of high order」Bulletin of the American Mathematical Society. https://doi.org/10.1090/s0002-9904-1947-08909-6
- J. Gary Polhill, Luis R. Izquierdo, Nicholas M. Gotts(2006)「What every agent-based modeller should know about floating point arithmetic」Environmental Modelling & Software. https://doi.org/10.1016/j.envsoft.2004.10.011
- Sheldon P. Gordon(2011)「Errors in Mathematics Aren’t Always Bad」Mathematics Teacher. https://doi.org/10.5951/mathteacher.105.1.0032
- Carlos F. Borges(2011)「Discretization vs. Rounding Error in Euler’s Method」College Mathematics Journal. https://doi.org/10.4169/college.math.j.42.5.396
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